8 GWうどん旅
ゴールデンウイーク、近くのマルナカへ買い物へ行く。渋滞している。
四国は香川の、そのまた僻地に住んでいる私。この期間だけは、人間を沢山見ます。
何故か?それは讃岐うどんです。
私のケロロことNinja ZXの調子は、悪くない。私自身も絶好調です。
このゴールデンウイークの間、あちこち走り回った。どこを走り回ったかと言えば、この狭い香川県の中、私とケロロは、うどん屋さんを尋ねて駆け巡ったのです。
連休中は、県外からのお客が多い。
彼ら彼女らは、何をしに御越しになっているのでしょう。うどんです。はるばる、瀬戸大橋を渡り、または明石大橋、鳴門大橋を渡りうどんを食べに来ます。一杯400円程のうどんのために、高い高速料金を支払い時間をかけてお出でになります。
でも解かる気がします。一言で讃岐うどんと言っても、店により味は様々です。麺の触感、スープの味、好みは分かれるところです。
しかし、一度自分に合う味を見つけてしまえば、それを再び味あうために、どうしてもまた食べに行きたくなるのです。
俗に言う、中毒です。うどん中毒は、身体的依存性と精神的依存性を伴います。大変危険です。この期間、特に街道沿いのうどん屋さんは中毒患者の行列ができるほどです。
平日の昼食は、高松市内のうどん屋さんで食べるのが割りと多い。うどんは好きな方です。
折角の連休なので、県外客に混じり、普段行けない高松市外のうどん屋さんを食べに行って見ました。
そして連休初日、それに嵌りました。最初の1軒目が運よく私の舌にあったのだ。
国道11号線を東に走ると、沿道に大きな釜を掲げたうどん屋さんがありました。
釜の下には「やってます」の文字が書かれた板が立てられている。店の名は権平うどん。駐車場はほぼ満車。店の外は、客が列を作って待っていた。
うどん屋さんは客の回転が速い。待ち客が列を作っていても、思ったより待つことは無い。私は駐車場の空いた所にケロロを停め、列の最後尾に並ぶことにしました。
5分も待つことなく、列の最前列に立ちました。暖簾の向こうは透明なカラスの引き戸があり、中の様子がよく見える。待ち客は、ここから席を立つ客を見て店内に入っているようです。
店内には、4人掛けのテーブルが6つ、小上がりに座敷テーブルが3つある。小上がりは、家族連れが食べていた。4人掛けのテーブルは全て相席のようだ。
テーブル席の客が一人、食べ終わり席を立つ。私は玄関の引き戸を開け中に入る。
「いらっしゃい」
低くて渋いオヤジの声が掛けられる。声がした方を見ると、白い法被の上着にねじり鉢巻きをした50歳代の男が、うどんを打っていた。
私は反射的に会釈をして、空いた席に座る。
「いらっしゃいませ。何にしますか」
席に座ると直ぐに年配の女性店員から声を掛けられました。私は待っている間に決めていたうどんを注文する。
「天ぷらうどんを並みで、後おでんも欲しいのですが」
「天ぷらうどん並み一つ、おでんは、そこから好きなのをどうぞ」
おでんはセルフらしい。他の県の事は知らないが、香川県のうどん屋さんは、おでんを季節通して置いてある。
おでんの種類は、各店同じような物です。だしの汁も同じです。変わるのは、おでんに掛けるカラシでしょうか。
私は、チクワとコンニャクを皿に取り、黄色いカラシを掛けます。
「さて、ここのおでんはどんな味かな」
私は席に着くなりパクリとチクワを口に入れます。すると、チクワから染み出すだしとカラシが絡み、口の中に、広がって行きます。
「んまーい」
一本のチクワをハフハフ、ムシャムシャと食べます。これは当たりだ。
チクワを一本食べ終わる頃、天ぷらうどんが運ばれて来た。
グッドタイミング。
うどん鉢には、薄い琥珀色のスープの中に真っ白なうどんが、溢れんばかりに沈んでいる。その上には、やや小ぶりで、これも白い海老天が乗っている。
私は七味唐辛子を少しだけ掛け、溢れそうなスープを鉢に口を付けて啜ります。
「わー」
何のだしだろう。いりこ?昆布?解りません。薄い塩味にほんのりとした甘み。美味しい。
次は麺、割りばしでうどんを2本掴んで、ズルズルズー。高松でいつも食べている麺より腰が柔らかい。それが、この薄味のだしに合う。
次は海老天、白く大きさも控えめの海老天を箸で抓んで、一齧り。柔らかい衣がだしを吸って更に柔らくなり、口の中に溶けます。
後の記憶はありません。気が付けばうどん鉢の中は空っぽ。あったはずのコンニャクのおでんも串だけになっていました。 解せぬ。
私は、今まで知らなかった味に出会えた。
更に、私はケロロを得た事により、フットワークが軽くなっています。羽が生えたように何処へでも飛んでいきます。
誰も止めることができません。
ブイーン、チュルチュル御馳走様でした。ブイーン、チュルチュル御馳走様でした。ブイーン、チュルチュル御馳走様でした。ブイーン・・・・。
花から花へ飛び渡る蝶のように、私はうどん屋からうどん屋へ飛び渡った。
香川県内にうどん屋さんと呼ばれるお店は、約600軒あるそうです。この連休で私が行ったうどん屋さんは15軒でした。全体の2.5%です。まだまだ楽しみは続きます。
この食べ走りを蝶のようにと想像していたのですが、父にこの事を話すと、「ブイーン、ブイーンなら、花の蜜を集めるミツバチだな。」と言われ納得しました。
「なるほど、私はハニー」
その響きに甘い感情を感じます。そう誰かに呼ばれたい。
「ふふふ」
「お前何か勘違いしているが、ハニーは蜂蜜の事で、俺が言っているのは蜂の方だからな。英語で言うならビーだな」
「・・・・」
誰かにビーと呼ばれる。甘い感情は一欠けらもない。
父の話はともあれ、私のゴールデンウイークは充実していると思う。
でも、28歳の初夏、うどん一色の休日、うどんのように真っ白だ。少しは色があってもと思わないでもない。
ゴールデンウイークの最終日、家族でBBQを楽しんだ。67kgの体重が、70kgに変化していた。解せぬ。まさかと思うが、鳥1kg、豚1kg、牛1kgを食べたのか。計算は合っている。そう言えばビール350mlを6本飲んだ記憶がある。
となると、2.1kgはビール、残り900gが鳥豚牛の重さだ。これなら納得。




