『ねこのみこん.com』
最近、いろんな作品を思いついては書き溜めてたりしてます。そのせいで、投稿は滞ってます。
まるで自由人、猫のよう。
町の中心地、広い公園に併設された博物館がある。近代はアーリーコアが一強として台頭しているが、それまでに壮絶な企業競争が行われていたという。そんな、先人たちによる歴史的遺産を後世に語り継ぐため、ここ「歴史工学博物館」が創設されたのだという。
そんな博物館も今年で5周年を迎えるということで、イベントの準備が執り行われていた。
「どうも初めまして。ねこのみこん編集部のシェイミーです。こちらは、カメラドローンにして、うちのマスコットのミケにゃんです。本日はどうも、よろしくお願いします」
深々とした帽子をかぶり、その中のメガネがちらりとこちらを見る、そんなどこかいたいけな少女。その横を追従するは、猫耳の生えたデザインの丸々としたドローンだ。シェイミーの手元にあるタブレットで操作されているようだ。
彼女らに対して、スーツを着た紳士的な若い男性が軽くお辞儀をする。シェイミーと、一応と言わんばかりにドローンのミケにゃんを見ながら。
「ご丁寧にどうも。私はここの副主任を務めております、レオンと申します。こちらとしても、今回はどうぞ、よろしくお願いします」
「はい!」
イベントとあらば飛んでくるは、記者の嵐。アーリーコアによる大々的な飾りつけは、まるで遊園地などで見受けられるアトラクションのよう。特に目を引くのは、博物館上部に鎮座する巨大なロボットだろう。さぞ、内部も一新され豪華になっていることだろう。
そんな一大イベントの先行取材を取り付けたのが、ネット記事「ねこのみこん」である。
情報通も参考資料としては外せない、先行記事の代名詞として知られているのがこの「ねこのみこん」だ。取り上げられる内容の信憑性や信頼性が問われるネット記事において、ねこのみこん以上に信用を勝ち取ったネット記事は近年ほかに類を見ないと言われている。
「それでは、さっそく参りましょう」
「はい」
正面入り口を入ってすぐ、巨大な工業機械が出迎える。形からしてバックホウ、一般的にはショベルカーと呼ばれているものだ。大きなアームが二つ、小さなアームも二つ。暗闇の中で遭遇しようものなら、化け物と見間違えていたかもしれない。
「これはまた、巨大な機械ですね」
「そうですね。アーリーコアの普及により、最初に衰退していったのは、このような大型機械と言われています。金銭面に安全性、実用のどれをとってもアーリコアにかなわなかった。邪魔な岩も、重い鉄骨も、今では輸送ホログラムが浮かして運ぶのが常識になっていったのは記憶に新しいです」
「それにしても、状態がかなりいいですね。噂では、企業競争中の兵器として扱われる計画があったと。その影響もあり、多くは解体されてしまったと聞きましたが」
「はい。このショベルカーのように完璧な状態で保管された工業機械は意外にも少ないです。これから見る展示品の多くは、修繕を施したものになっています。中には、ロストテクノロジーとなって復元できなかった物も……」
「あまり気をお落とさないでください。諦めず研究や復元に力を入れて、今につなげて来たのではありませんか」
シェイミーの指摘に、レオンはゆがんだ笑顔を見せる。一生懸命に取り繕ってはいるが、どこか綻びのある表情。5年という短いようで長いその年月に、どれだけの苦労を重ねてきたのだろうか。
「時代に追いつけなかったとはいえ、ここに保管されている機械技術も、本来なら世に広められるべきものだと私は思います。そんな意思を皆様と共有したい。改めて、いい記事を期待しています」
「そうですね。せめて、先人たちが築き上げてきた功績、我々で語り継ぎましょう」
「ありがとうございます。では、先へ進むとしましょう」
「はい」
入り口にあったショベルカーほどの巨大な機械は、以降見受けられることはなかったが、どの展示も興味深いものである。これらの機械が発展したもしもの未来というシミュレーション映像や、技術体験コーナーなど、広い展示スペースを利用したものが多く見受けられた。しかし、これらの展示を行うにあたり、アーリーコアが使用されるのが皮肉のようで仕方がない。
「では最後に、本日の目玉展示の場所へ案内いたします」
「目玉……ということは、アレですか?」
アレとは、本日5周年を迎えるにあたり、特別に展示されることになった物。普段は、精密機械用の特別倉庫にて保管されているものだが、二日限定で展示されるのだそうだ。
「こちら、クロニク・ロボティクス社制作のロボット部品の一つ『ロスト・アーム』です。かつて、アーリコアを制作した会社アーリコーポレーションと並ぶ二強とされていた、あのクロニク・ロボティクスの失われし技術の一部。現代のアーティファクトと呼ばれております」
「これが、あのロストアームですか。現状あのアーリコアですら再現のできていなという、伝説のロボットパーツ……」
それは、機械で作られた人の腕。白い外角は光沢を放ち、関節部分に見える黒い骨格とのコントラストが美しい。よく見れば、指先には指紋のような模様も見える。何とも細かなつくりだろうか。内部には配線のようなものは無く、それらの機能は全て骨格内部に搭載されているそうだ。
「奇麗ですね。それに、この空間。暗い配色の部屋の真ん中に一つ置かれた展示品。まさにこの日の展示のためだけに用意されたかのような」
「そうですね。本来なら、いつでも見れれるよう手配する予定だったのですが、貴重なもの故、長らく倉庫に眠らせることになってしまいまいました。しかし、新たなセキュリティの導入や、外部からの金銭的援助により、今回の展示に繋がりました」
「なるほど、そんな背景が」
「もし好評であれば、今後も展示していきたいとも考えております。まだ、確定ではありませんが」
「…………それにしても」
「どうかなさいましたか?」
シェイミーはガラスケースに手を置き、中のロスト・アームをまじまじと見つめる。しばらく動かなかったが向き直り、レオンへ質問を投げかける。
「こちら、レプリカですよね?」
「え……あ、いえ。あいや、はい。よ、よくわかりましたね?」
気づかれないとでも思っていたのか、レオンの額から汗が足らりと落ちていく。
「我々は見聞きに自信がありますからね、うちのミケにゃんにかかれば分析は余裕ですよ。まあでも、今回は広告用ということで、本来の展示品はまだ倉庫にあるということでしょう?」
「も、もちろんですとも。本物は展示に向けて、準備中です」
「わかりました。それでは、こちらの展示品についてもう少し詳しく……」
ロスト・アームに連なるロストシリーズは、好事家の影響により高値が付けられるようになっている。中には、全ロストシリーズを組み合わせることによって、失われた技術が稼働できるなんて噂もある。
「もし、このロボットが町を歩く姿を、ぜひ見てみたいものですね」
こうして、数時間に渡る取材は終わった。レオンに見送られてから、シェイミーはしばらく歩いた。
「あ、そういえば。まだ正面撮って無かった。よろしくミケにゃん」
指示に合わせて、ドローンのミケにゃんは空高く飛来する。見下ろした分だけ、博物館上部に鎮座するロボットのその巨大さがより顕著に見える。
「見出しは…………巨大なロボット襲来、過去を代表する特別展覧会。かな?」
タブレットごしに、シェイミーはシャッターボタンを押す。これは使えそうだと、ミケは思った。
ミケ「にゃーお」




