表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そのホログラムで敵を穿て  作者: フィング
8/10

月昇る、猫の集会

 我作者、引っ越してきたー・・・(*´ω`*)

 今日は月が良く見える日だった。時折雲がさえぎることもあったが、夜に活動するには都合の良い日だった。


 しかし、今の俺たちには光を見ることができなかった。夜の紛れるほど暗い体から、猫の声を放つそんな化け物が視界を覆うせいで。


「なんなんだよ、こいつは……」


「ニャー……そう、そんな声が聞こえたら狙われてる証拠。ここは危険な場所だと、お母さんに教えてもらえなかった?」


「こ、子供の声!?」


「そうなんじゃない? 小柄だけど僕は人間さ、猫に化けてるだけで」


 それは確かに猫のようなシルエットだが、体格や骨格からして本物のそれとは程遠い。それなのに、俺たちは気づけなかった。月光が隠れてた少し前、確かにこいつは黒猫の姿をしてた。


 これは、まるでおとぎ話に出てくる化け物だ。月の魔力が化け物の正体を暴くといった、そんな夢物語のような出来事に、俺たちは襲われたんだ。


「ここは、僕らの縄張りなんだ。確かにここは法の手が届かない場所だけど、安全な場所でもない。分かったら、とっとと去れ」


「く、っそ……」


「なんでったて、こんな目に」


 俺たちはただ、いい小遣い稼ぎになると聞いてやって来ただけだ。


 ここのスラム街は、懸賞金のかけられた犯罪者が良く集まる場所らしい。だからこそ、仲間を募ってここまでやって来たのに、フタを開ければとんだ化け物がいたものだ。


 恐らく折れてるであろう足を引きずりながら必死に逃げた。必死だったが、周りが静かすぎて嫌でも耳に聞こえちまった。あの化け物の、最後の言葉を。


「アーリーコア起動。メール送信。これより30分後に会議をする、遅い時間だけど早急に共有したいことがある」


 紛れもない人の、それも子供の声だ。その事実が、俺にたたきつけるような痛みを錯覚させる。こんな子供一人に負けたなんて屈辱的だ。同時に、疑念もよぎる。もしいつぞやの懸賞金が、あのような子供にかけられていたものだとすれば世も末だ。


 奴が何を企んでるかは知らないが、ここは知らぬが吉。もはや、理解することでさえ嫌に思える。


 俺たちは必死に逃げた。黒猫の正体を暴いてくれた月が、再び雲に隠されるより前に早くここから離れなければならない。でないと、化け物に襲われたのだと言い訳ができなくなってしまうから。


 =☆☆=☆☆=☆☆=


 静まり返った会議室。かつても、スーツを着た格式ある研究者が座っていたであろう椅子は、アルフェには大きすぎる気がした。


 メールを送信し、きっちり30分。連なる椅子の上に、モニターが浮かび上がる。


「路地裏の耳、白猫(シロねこ)、参上……」


「路地裏の目、三毛猫(ミケねこ)です」


「路地裏の牙、虎猫(トラねこ)だ」


「路地裏の長。黒猫(クロねこ)。一週間ぶりだね、みんな」


 会議室の椅子に座るのは、黒猫ことアルフェ・ノーラただ一人。他は椅子の上に表示されるようモニターが浮かんでいる。それぞれ、白猫に三毛猫、虎猫を模したイラストが描かれているようだ。


「こんな時間に珍しいじゃねーか、黒猫。少なくとも定例会議はまだ先のはずだろ」


「そうだね、でも急を要するかもしれないからみんなを呼んだんだ。改めて、こんな夜遅くにごめんね」


「謝んな。お前がそこまで言うなら、よっぽどなんだろ。まさかだとは思うが、誰かがへまをしたわけじゃねぇよな?」


「だとしたら、へまをしたのは僕になるかなトラ。まずは事の経緯を説明する。昨夜のことなんだけど……」


 緊急を要するほどの案件。それは、β(ベータ)グループもといスペルクラブとの接触があったこと。加えて、独断ながらこちらを探るように二度目の接触があったことだ。


「あー、なるほどつまり。黒猫んところの潜伏場所がばれた挙句、警戒対象になったことはほぼ確定と。さっきは謝んなとか言ったが訂正する。今度直接、俺たちの所に土下座しに来い」


「ちょっとちょっと、トラ。それは言い過ぎじゃない。これは最早不慮の事故でしょ?」


「そうかもしれないが、この事態は紛れもない黒猫が一番危惧してたものだろ。これ言っちゃなんだがよ、見殺しにすることはできなかったのかよ」


「だから、トラってば!」


「いいよ、ミケ。トラの言い分はごもっともさ。本来なら、スペルクラブの連中は僕らの敵のはずだからね」


 モニター越しでも、ふつふつと怒りがにじみ出てるのが分かる。虎猫の名に恥じない圧力だ。とは言え、感じの悪い奴だが馬鹿ではない。いつも率先して意見を出してくれる、まとまりの悪い猫の集会を引き締めてくれるのも、いつだって彼だ。


「まあ、言い訳にしかならないけど、相手が元同僚でさ。あの場所にいい思い出はなかったけど、親友が傷つくところは、流石に見てられなくてね」


「親友?」


「……はぁ。まあ、お前らしいっちゃお前らしいか黒猫。だがなぁ、まさか俺たちの使命。忘れてねぇよな?」


「流石にね」


 彼は、猫の集会の締め付け役。同時に数少ないアルフェの理解者だ。こういう時、他人の心情を思って理解してくれる心優しき猫だ。


「じゃあ、今後どうすんだよ。計画の方は?」


「前倒しでいくよ、少なくとも今月中から」


「だとしたら真っ先に、アーリーコアの調達しないとな」


「そうだね、そこのところはミケに……」


「ちょっと待って、二人とも」


 気を取り直し、会議を進め要素したところで、再びミケが静止に入る。まだ何か懸念点があるとでも言うのだろうか。


「なんだミケ。まだ何か……」


「多分これシロちゃん、寝ちゃってるよね」


「あらら~?」


「うっそだろおい!?」


 懸念も懸念。それこそ、会議を開いてから一言も喋らない白猫のモニター。よく耳を澄ますと、寝息のような音がかすかに聞こえてきた。


「相変わらずマーペースだな。シロの奴は」


「まぁ、これじゃあ会議は進められないし今日は解散で。次の会議は随時メールする」


「それはいいが、これだけは聞かせろ」


「なに、トラ」


「最初の標的、それは何処になると思う?」


「歴史工学博物館。その展示品、ロスト・アーム内のデータ抽出だよ」


「そうか、わかった」


 トラの言葉を最後に、会議は終了した。各々のモニターが閉じられ、アルフェも部屋を退室していった。あとは、うんともすんとも言わない白猫のモニターが、暗い部屋で薄っすら光り続けていた。


「……ぅん。あれ、会議始まってた?」


 そんな気の抜けた声が会議室に通るのは、ちょうど月が見えなくなる早朝だった。

 今後どれぐらい忙しくなるかは分からんから、次回は一応未定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ