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そのホログラムで敵を穿て  作者: フィング
7/10

猫は鳴く

久しぶりだから、割とスランプ気味ではある(´ε` )

 寂れた街並み。ただそれだけなら、貧しい地域と一言で済ませれる。ただ、威圧的な大人が多く見える。貧民にしては出来の良い衣類をまとい、場の空気も相まって近寄りがたい連中だ。


 本来ここスラム街は、ただ貧しい人だけが住む場所だった。それがどういうわけか、世間から弾かれた悪人どもの受け皿として扱われている。


 迷惑なことこの上ない。アルフェはつくづくそう思う。


「また、増えた」


 夜は彼らのテリトリーだ。狩人が獲物を狙って徘徊する。今日もまた一人、いたいけな少年が夜道を歩く。最悪なことに、ガラの悪い連中が道を塞ぐ。


「よお、坊主」


 男は相手の返答を待たず、アルフェの髪に掴みかかろうとしてきた。子供相手に躊躇もせず、後ろの仲間もヘラヘラ笑ってた。


 夜な夜な歩く不気味な子供に、違和感を持たないものなのだろうか。


「ん、あ?」


「おい、さっきまでここにいたよな」


 声をかけ、すぐさま伸ばしたその手は闇を掴んで霧散する。そこに獲物だと思った少年の姿はない。


「まさか気の所為ってことは……」


 すると、背後から物音がした。


 ゴト、ボット……っと物が崩れる。男どもは振り返った。


「そこか!」


「……いや、あれは」


『ンナァ〜』


 暗闇の中、物音のした先に黄色い目が浮かんで見えた。そこにいる生き物の形は見えなかったが、それから発せられる声がその正体を示す。


「んだよ猫かよ」


「拍子抜けだ。おい、別のとこ行くぞ」


「お、おう」


 不思議なこともあるものだ、さながら猫騙し。さき程の猫が人に化けてたというのだろうか。


 あるいは、人が猫に化けたのだろうか。


「いやー、物騒になったものだー」


 と、猫はつぶやいた。そんな気がした。

 黒猫は不幸を呼ぶ生き物としてよく名を挙げられる。彼らはそれを知らないのだろう。だがきっと、すぐにでもその事実を知ることになるのだろう。


 =☆☆=☆☆=☆☆=


 日が沈み、遠くの山で横一線の光が走る。

 場所は変わり、ビル群とは少し離れた駐屯地。その内にクミの住まう孤児院こと『ブドウ園』が併設されていた。


 その扉の前で、クミはぶつぶつと何かつぶやいていた。


「外の空気が吸いたかった……違う。秘密の訓練……違う。先の任務で傷心して……はヤダ」


 どうやら、帰りが遅くなった言い訳を模索している様子。それもそのはず、内心波乱万丈な一日を過ごした彼女だが、その原因は静止を無視した単独行動に他ならない。それでいて成果もあげられず、相手に手玉に取られたわけなのだから、報告するにも躊躇すると言うもの。


 だからこそ、言い訳を考えてるわけなのだが、そんな彼女の目の前で扉が明けられるのだった。


「あ、グリム……中隊長」


「はぁ、とりあえず中に入れ。そこで話を聞く」


「……わかりました」


 グリムの口から出たため息がすべてを語っていた。それを悟れないほどクミも鈍感ではない。今日何度目かの胃痛に悩まされながら、クミは重い足を上げ玄関を上がった。


 ここの孤児院は、他よりも広い造りになっているが、有事のことを考慮しあらゆるところに潜伏できるポイントがある。その場所に目を凝らすと、クミ以外の子供たちが身を隠しながらこちらの様子をうかがっていた。


 どうりで静かなはずだ。彼らもまた聡い子たちだ、危険な空気には人一倍敏感だ。


「さて、とりあえずそこに座れ」


「はい」


 グリムには、リビングにある椅子に座らされた。今日の昼、サンドイッチを食べた席と同じだ。


「えっと、今回の件は……」


「言い訳は後で聞く。まずは俺の話を聞け」


「……はい」


 有無を言わせぬ言葉に組みは息を呑む。いざ怒るグリム中隊長を前にし、子供であり部下であるクミはまるで、猫を前にしたネズミのようだ。


「まず、普段で歩かないお前のことだから知らなかったと思うが、ここの施設を出る際は許可証を発行する必要があるんだ。まあそれに関しては、他に外出してる子供たちにかまけて、許可証の確認を怠った警備員の落ち度だな」


 ふと、体から空気が抜けるような感覚がクミに流れた。予想外の追求だが、あくまでクミ一人の失敗ではない。それ以上の失態を抱えてる手前、それと関係ない軌道に話が進むのはクミにとって好都合だった。


「こちらこそ、無断で外に出てしまって……」


「まだ、ある」


「……はい」


 今一度、浅さかな考えを持った自身を恥じる。これだけ説教の空気を振りかざしているのにも関わらず、簡単に話が終わるはずなかったのだ。


「うちら、スペルクラブの隊員に支給されるアーリーコアにはGPSが付けられてるんだ。盗難防止兼隊員の位置把握のためにな。後は分かるか?」


「はい……」


「これまでのを聞いて、お前の言い分を聞かせてもらおうじゃないか」


 まさに王手。ここまで言われてしまったら、もう返せる言葉なんてない。クミは観念し事の顛末を語った。


 無断で昨日の現場に赴いたこと、アルフェと戦闘し負けたこと、ラーメンを奢らされそうになったことから、胃がもたれてることまで、隅々まで吐いた。吐いたとは言葉をだ、他意はない。


「なるほどな、相変わらず食えない奴だ。とは言え、昨日も含めあいつに二度も命を握られたということを忘れるな。今回は運が良かっただけだ。別の現場なら殺されるか、捕まって拷問されていた可能性だってあったんだ。わかるか?」


「はい」


「もとより危険な任務をこなすお前らだが、俺だって子供を見殺しにするほど廃れちゃいねぇんだ。せめて、俺の手の届く範囲にいろ。今後単独で危険を冒すことはするな」


「はい。肝に、銘じます」


「とりあえず、今回の件を通して何か厳罰を科す必要がある。上から言われたのは、謹慎期間の延長。それと外出禁止だ。任務には当分呼ばれないと思え」


「……分かりました」


 これは、自身の軽率な行動が招いた結果だ。それでも、厳罰としては軽い方だろう。それは、クミがまだ成長途上の子供であり、グリム中隊長がいろいろ手を回してくれたからに他ならないだろう。


「これで話は終わりだ。ちなみに、夕食は食えそうか?」


「いえ、ちょっと」


「そうか。なら胃薬飲んで、他の身支度を済ませて寝ろ。風呂はもう湧かせてある」


「はい。お気遣いありがとうございます」


「おい、そこのお前たち。いつまで隠れてるつもりだ。さっさと夕飯の準備するぞー」


「はーい」


「もう、腹減って仕方ないぜ」


 やはり、グリム中隊長は皆の親足りうるお人だ。そんな人に迷惑をかけたしまったことを悔いて、今から反省しよう。


 ふと、あるノートパソコンに目が向いた。グリム隊長が使用してたものだろう。そこに、ある人物の資料が表示されていた。


『アルフェ・ノーラ:βグループ/ブドウ園 正規隊員。失踪の後、依然行方不明である』


 そこには、まだ身綺麗だったころの少年の顔写真が掲載されていた。

猫はなく(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

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