第74話:夕暮れの帰り道。委員長のエールとポケットの中の体温
生徒会室での熱を帯びた密室から解放された俺たちは、顔の火照りを冷ますように、茜色に染まった夕暮れの校門へと向かっていた。
「天道くん。結衣さん」
校門前でノートに目を落としていた風紀委員長の神崎しずくが、顔を上げてこちらを見た。
彼女は俺たちの間の絶妙な空気感と、少しだけ乱れた制服の襟元に気づくと、ふっと小さく息を吐き、静かに歩み寄ってきた。
「……二人とも、少し服が乱れていますよ」
いつものように小言を言いながらも、しずくの手は優しく結衣のブレザーの襟元を直し、乱れた髪をそっと耳にかけてやる。
そして、しずくは俺を一瞥した後、結衣に向かって柔らかく、けれど少しだけ寂しそうな微笑みを浮かべた。
「天道くんは鈍感ですから……結衣さん、しっかり手を引いてあげてくださいね」
それは、風紀委員長としての言葉ではなく、一人の女の子としての静かなエールだった。
少しだけ潤んだ瞳を伏せ、真っ直ぐに結衣の背中を押してくれたしずく。結衣は「……うん、ありがとう、神崎さん」と小さく頷き、決意を込めたような目で俺を見上げた。
校門を出て、二人きりの帰り道。
冬の冷たい風が吹き抜ける中、結衣がタタッと小走りで俺の隣に並び、肩が触れ合うほどの距離まで近づいてきた。
「あのさ、湊……」
「ん?」
「手、冷たくなっちゃった」
言うが早いか、結衣は俺が着ている冬用コートの右ポケットの中に、自分の小さな手をスッと滑り込ませてきた。
「えっ……」と驚く間もなく、ポケットという暗く狭い密室の中で、結衣の冷えた指先が俺の指に絡みつき、ぎゅっと強く握りしめられる。
「結衣、お前……」
「いいでしょ。……神崎さんも、しっかり手を引いてあげてって言ってたし」
照れ隠しのように前を向いたままの結衣だが、その耳の裏は夕日よりも赤く染まっていた。
ポケットの中で繋がれた手。肌と肌が直接触れ合い、俺の体温が結衣の指先をじんわりと温めていく生々しい感覚が、心臓の鼓動を跳ね上げる。
だが、それだけではなかった。
ポケットの中に手を入れ、指を絡ませたまま歩くということは、二人の身体は必然的に『完全に密着した状態』を強いられる。
歩幅を合わせて歩くたび、俺の右腕に、コートの厚みを容易に貫通してくる結衣の圧倒的な柔らかさが、押し付けられては離れ、また押し付けられるという反復を繰り返した。
厚着をしているのに、むにゅりとした極上の果実の感触が、歩く振動に合わせて生々しく形を変えながら腕に擦り付けられる。
触れ合う手と手から流れ込む熱と、すぐ横から漂ってくる甘いベビーパウダーの香り。
そして、一歩踏み出すごとに腕を包み込む、逃げ場のない柔らかな質量。
他の女の子たちの切ない未練と優しさを背負って、明確に一人の女性として隣を歩く結衣の存在感に、俺の理性は冬の冷たい風の中でも跡形もなく溶け出していくのだった。
【次回予告】
ヒロインたちの後押しを受け、お互いの気持ちに気づき始めた湊と結衣。
そんなある週末の夜、季節外れの大雪が街を包み込む。
結衣の両親は親戚の家に出かけており、彼女は一人で留守番をしていた。
「湊……ごめん、うちの暖房、壊れちゃったみたいで……」
雪の降る夜、寒さに震えながら湊の部屋へ転がり込んできた結衣。
着ているのは、薄手のもこもこしたルームウェアだけ!
「私の部屋、寒くて眠れなくて……湊のベッド、一緒に入ってもいい?」
暖房の効いた部屋で、一つの毛布に包まる二人。
冬の寒さを言い訳にした、これまでで一番無防備な距離感。
コートもブレザーも隔てない、薄手のルームウェア越しに押し付けられる熱を帯びた素肌と、限界を突破する柔らかな鼓動!
次回、第75話『雪の夜の添い寝。毛布の中の体温と最後の決意』
明日も理性の崩壊をお楽しみに!




