第5話:体育館倉庫の密室劇
体育祭の準備で、俺と結衣は古い跳び箱を探しに、体育館の裏手にある第2倉庫へとやってきていた。
薄暗く埃っぽい空気の中、奥へと足を踏み入れたその時だった。
ヒュゥゥゥッ!
外から強烈な突風が吹き込み、立て付けの悪い重い鉄扉を勢いよく煽った。
ガシャァァァンッ!!
鼓膜を破るような轟音とともに、扉が完全に閉ざされてしまう。
「えっ……嘘、開かない!」
ノブをガチャガチャと回す結衣の焦った声が響く。だが、錆びついた扉は外からつっかえ棒でもされたかのようにビクともしない。窓もない倉庫内は、わずかな隙間から漏れる光を除いて、ほぼ完全な暗闇に包まれてしまった。
「マジかよ……誰かが気づいて開けてくれるまで待つしかないか」
「湊……私、暗いの、ちょっと苦手かも……」
震える声とともに、暗闇の中で結衣がギュッと俺の腕にすがりついてきた。
「大丈夫だ。俺が傍にいるから」
安心させるように彼女の肩を抱き寄せると、結衣は「んっ……」と甘い吐息を漏らし、さらに身体を密着させてきた。
視覚が奪われている分、他の感覚が異常なまでに研ぎ澄まされていく。
結衣が着ているのは、薄手の半袖体操服だ。俺の腕に押し当てられた彼女の柔らかい双丘が、腕の輪郭に沿ってくっきりと変形し、その圧倒的な弾力と形を余すところなく伝えてくる。
彼女の早い鼓動が、体操服越しに俺の肌へと直接響いていた。
「湊の体温……すごく熱い。湊の匂いがして、なんだかドキドキする……」
暗闇の中、結衣の顔がスッと近づいてくる気配がした。
「ゆ、結衣……近すぎ……」
直後、俺の耳たぶを、信じられないほど柔らかくて湿ったものが掠めた。結衣の唇だ。
「ひゃっ!?」
「ふふっ……湊、ビクってした。こんなに暗かったら……ここで何をしてても、外の人には絶対わかんないね……」
甘く濡れた声が耳元に吹きかかり、背筋に強烈な電流が走る。
恐怖で震えていたはずの幼馴染は、密室という非日常のシチュエーションによって、完全に別のスイッチが入ってしまったようだった。
「な、なあ結衣、とりあえず離れ……」
「やだ。もっと、湊にくっついてたい……」
結衣は俺の腕に胸を押し付けたまま、もう片方の手を俺の胸元へと這わせてくる。
暗闇の体育館倉庫。逃げ場のない密室で、俺の理性はかつてないほどの危機に瀕していた。




