第19話:家庭科室の裸エプロン疑惑と、背後からの甘い味見
放課後。廊下を歩いていた俺の鼻腔を、出汁と醤油のなんとも言えない食欲をそそる匂いがくすぐった。
匂いの元を辿って家庭科室の引き戸を開けると、夕日が差し込む調理台の奥で、コトコトと鍋を煮込んでいる人影があった。
「あ、天道くん。こんにちは」
ふわりと微笑んだのは、図書委員の美月先輩だった。
「先輩、家庭科室で何してるんですか?」
「ふふっ、ちょっとお料理の練習。今度、天道くんに手作りのお弁当を作ってあげたいなって思って」
さらりと爆弾発言を落とす先輩だが、俺の視線と意識は、彼女の言葉よりもその『姿』に完全に釘付けになっていた。
火を使っていて暑いからだろう。先輩は指定のブラウスを脱ぎ、肩紐の細い薄手のキャミソールの上から、直接フリル付きのエプロンを身につけていた。
しかし、彼女の規格外すぎる双丘がエプロンの生地を大きく前方に押し上げているせいで、横から見るとキャミソールの存在が完全に隠れてしまっているのだ。
むき出しになった白い肩。そして、エプロンの脇からあふれんばかりに主張している、柔らかな果実の横顔。
(なっ……は、裸エプロン!?)
男のロマンにして最終兵器とも言えるその破壊力抜群の錯覚に、俺は入り口で完全に硬直してしまった。
「天道くん? どうしたの、顔が赤いよ」
「い、いえ! なんでもないです! すごく美味しそうな匂いがするなって……!」
「本当? ちょうど肉じゃがが煮えたところなんだ。ねえ、味見してくれない?」
先輩は小首を傾げながら、木べらと小皿を持って俺のそばへとやってきた。
歩くたびに、エプロンという薄い布一枚(に見える)の奥で、圧倒的な質量が暴力的に揺れている。
「じゃあ、少しだけ……」
俺が小皿を受け取ろうと手を伸ばした瞬間。
美月先輩はクルリと俺の背後に回り込み、あろうことか、後ろから俺の身体をすっぽりと抱きしめるように腕を回してきたのだ。
「えっ!? せ、先輩!?」
「はい、あーんして」
俺の肩越しに顔を出し、スプーンに乗せた肉じゃがを俺の口元へと運んでくる。
だが、当然ながらそんな味覚に集中できるはずがない。
背後から抱きつかれたことで、美月先輩の巨大で柔らかすぎる双丘が、俺の背中にムギュウゥッと容赦なく、そして完全に押し潰されていたのだ。
「っ……!」
エプロンの薄い生地越しでもわかる、極上の弾力と圧倒的な包容力。彼女が呼吸をするたびに、背中に押し付けられた二つの果実がむにゅり、むにゅりと形を変え、俺の背筋にゾクゾクとするような快感を走らせる。
「ほら、冷めちゃうよ? あーん」
「あ、あーん……むぐっ」
半ば強制的に口に入れられた肉じゃがは、たしかに美味しかったはずだが、味が全く頭に入ってこない。
先輩の甘いバニラの香りと、肉じゃがの出汁の匂い。背中を支配する極上の柔らかさと、耳元で囁く艶っぽい声。
「どう? 美味しい?」
「お、美味しいです……でも、背中が……っ」
「背中? ああ……ごめんね、私のが大きすぎて、邪魔になっちゃったかな?」
先輩はわざとらしく身をよじり、背中への密着度をさらに高めてきた。
柔らかい感触が俺の背中全体を擦り上げるように動き、脳内麻薬がドバドバと分泌されていくのがわかる。
「でもね、こうして天道くんにくっついていると、私までなんだか熱くなってきちゃった。……ねえ、天道くん」
背中に張り付いたまま、先輩の濡れた唇が俺の耳たぶを甘く掠めた。
「お料理の味見の次は……私の味見も、してみる?」
夕暮れの家庭科室。
エプロン姿の先輩が仕掛ける、視覚と触覚の逃げ場のない波状攻撃に、俺の理性は鍋の中のじゃがいもよりもドロドロに溶かされようとしていた。




