第16話:風紀委員長の厳格な持ち物検査と、予期せぬ押し倒し
放課後の人気のない廊下を歩いていた俺は、背後から響く凛とした声に足を止められた。
「そこのあなた。止まりなさい、天道湊くん」
振り返ると、腕に『風紀委員』の腕章を巻き、銀縁メガネの奥から鋭い視線を放つ女子生徒が立っていた。
学園の規律を絶対とする堅物にして、風紀委員長である神崎しずく(かんざき しずく)だ。きっちりと一番上までボタンの留められたブラウスと、乱れ一つない三つ編み。まさに風紀の権化のような彼女だが、その制服の奥には、学園でも一、二を争うであろう規格外の双丘が押し込められていることを、一部の男子は密かに知っている。
「なんだよ、神崎。俺、何か校則違反でもしたか?」
「ええ。あなたのそのカバンから見えている不純な物体はなんですか? 今すぐ没収します」
しずくが指差したのは、俺のカバンの隙間から覗いていたゲーム雑誌の表紙だった。たしかに少し肌色成分が多めのキャラクターが描かれているが、決して年齢制限のあるような不純異性交遊を助長する代物ではない。
「いや、これただのゲーム雑誌だってば!」
「問答無用です! このような破廉恥なものを学園に持ち込むなど、風紀委員長として見過ごすわけにはいきません!」
しずくは俺の反論を聞き入れず、ズンズンと距離を詰めてカバンを強引に奪おうと手を伸ばしてきた。
「おい、引っ張るなよ!」
「放しなさい! あなたという人は、いつもそうやって風紀を乱して……あっ!」
引っ張り合いになった瞬間、しずくの足がもつれた。
彼女は極度の堅物であると同時に、驚異的なドジっ子でもあるのだ。
バランスを崩し、大きく後ろへ仰け反るしずく。
「危ない!」
俺は咄嗟に彼女の腕を引き寄せ、かばうように身体を入れ替えた。
しかし、お互いの勢いを殺しきることはできず、もつれ合ったまま俺たちは廊下の床へと倒れ込んでしまった。
ドンッ!
「いったぁ……大丈夫か、神崎……って、うおっ!?」
目を開けた俺は、自分がとんでもない状況に陥っていることに気づいた。
俺は床に倒れたしずくの上に馬乗りになり、完全に『押し倒す』体勢になっていたのだ。
しかも、彼女のメガネは衝撃で外れて床に転がり、きっちりと結ばれていた三つ編みも解けて、艶やかな黒髪が床に散らばっている。
さらに致命的なのは、俺の胸板に、彼女のブレザーの下に隠されていた暴力的なまでの果実が、ムギュウゥッと凄まじい弾力で押し潰されていたことだった。
「……っ!?」
普段はきっちりと布で覆い隠されている分、その反動なのか、信じられないほどの柔らかさと温もりがダイレクトに伝わってくる。
「あ、あの……天道くん……」
視界がぼやけているのか、しずくはトロンとした潤んだ瞳で俺を見上げてきた。
普段の鋭い視線はどこへやら、メガネを外した彼女の素顔は驚くほどあどけなく、そして艶っぽかった。
「ご、ごめん! 今すぐ退くから!」
「ま、待ちなさい……」
俺が慌てて立ち上がろうとすると、驚いたことに、しずくの両腕が俺の背中に回り、ギュッと抱きついてきたのだ。
「か、神崎……?」
「今、急に立ったら……その、摩擦で……もっと変な感じに、なっちゃいます……」
顔を真っ赤にして俯く風紀委員長。
その言葉の通り、密着した状態で身じろぎをするたびに、彼女の豊かな双丘が俺の胸に擦り付けられ、お互いの制服越しに熱がどんどん上がっていくのがわかる。
「こんな破廉恥な状況……風紀委員長として、あるまじき行為……でも……」
しずくの口から、微かに甘い吐息が漏れた。
実は極度のムッツリスケベであるという彼女の裏の顔が、この密室のような状況で完全に顔を出してしまったらしい。
「天道くんの心音、すごく早いです……私、なんだか身体の奥が熱くなってきて……っ」
俺の背中に回された彼女の手が、制服の生地をギュッと強く握りしめる。
規律に厳しい風紀委員長が、自ら風紀を乱すように俺を引き留め、その極上の柔らかさで俺の理性を削り取りにきている。
誰もいない放課後の廊下。
堅物なはずの少女が放つ隠しきれない熱情と甘い香りに、俺の下半身はまたしても致命的なダメージを受けようとしていた。




