第12話:雨の日の相合い傘と、密着する濡れた体操服
放課後。朝からの曇り空はついに限界を迎えたらしく、冷たい雨を降らせ始めた。
昇降口で傘を開こうとした俺の背中に、ひょこりと顔を出したのは後輩のくるみだった。
「あーあっ、降ってきちゃいましたね。湊先輩、帰りですか?」
「ああ。お前、傘は?」
「それが、部室に忘れちゃって……」
しょんぼりと肩を落とすくるみ。しかし、俺はその姿を見て別の意味で息を呑んだ。
彼女は陸上部の練習直後だったのか、薄手の半袖体操服と短いスパッツ姿だった。しかも、部室から昇降口まで走ってくる間に濡れてしまったらしく、白い体操服が雨水を吸って肌にべったりと張り付いている。
透け透けになった生地からは、スポーティな下着のシルエットどころか、その奥にある柔らかな肌の色までがうっすらと透けて見えていた。
「おいおい、そんな格好でウロウロすんなよ。風邪ひくぞ」
「心配してくださるんですか? だったら……」
くるみはパッと顔を輝かせると、俺が広げた傘の下へと躊躇いもなく飛び込んできた。
「先輩の傘、半分貸してくださいっ!」
「お、おい! これは一人用だから狭いって!」
「平気ですよぉ。こうやって、くっつけば濡れませんから」
言うが早いか、くるみは俺の右腕に両手でギュッと抱きついてきた。
ただでさえ薄い体操服が雨で濡れているのだ。服の境界線など無いに等しい。彼女の年齢に不釣り合いなほど発育した双丘が、俺の腕にムギュウゥッと容赦なく押し潰される。
冷たい雨水を含んだ布越しの感触と、その奥から伝わってくる彼女の熱い体温。その温度差が、かえって生々しい感触となって俺の神経を直撃した。
「くるみ、お前な……絶対わざとやってるだろ」
「えー? 何のことですかぁ? 私はただ、雨に濡れたくないだけですよ?」
しらばっくれる彼女だが、その小悪魔的な笑みは完全に計算ずくのものだ。
歩き出すと、傘という狭い空間のせいで必然的に二人の身体は擦れ合う。足並みを揃えるたびに、俺の腕の側面に彼女の柔らかな果実がむにゅり、むにゅりと形を変えながら擦り付けられる。
ザァァァッ。
その時、横を通り過ぎた車が、大きな水たまりを跳ね上げた。
「危ない!」
俺は咄嗟にくるみを庇い、自分の身体を盾にするように彼女を傘の内側へと強く引き寄せた。
「あっ……」
ドンッ、と二人の身体が正面から強くぶつかり合う。
結果として、俺の胸板に、くるみの濡れた双丘が完全に押し付けられる形になってしまった。
「……先輩、かっこいい」
至近距離で、くるみが甘い吐息を漏らす。
彼女の顔がスッと見上がり、濡れた前髪の隙間から潤んだ瞳が俺を真っ直ぐに射抜いた。
「でも……こんなにくっついたら、先輩の熱、私の体操服の奥まで伝わってきちゃいますよ?」
「ばっ……変なこと言うな! 車が通ったから仕方なく……!」
「ふふっ。先輩の心臓、さっきよりずっと早く鳴ってます。私の胸越しに、ドクドクって……」
くるみは身を引くどころか、さらに体重を預けるようにして俺の胸元に顔をすり寄せてきた。
雨音のノイズで外界と隔絶された、相合い傘という名の密室。
冷たい雨に濡れた小悪魔後輩の、体温と甘い匂いが混ざり合った強烈な誘惑を前に、俺の理性はもはや風前の灯火だった。




