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禍い物  作者: 青野 乃蒼
あかつきエレファント

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9/15

あかつきエレファント 其ノ陸①

不覚にも、コンビニも二夜連続となってしまった。


幸いにして店員は昨夜と違う人だったので、「こいつ、今日も来てらー」みたいな顔をされることはなかった。


魅子はまるで昨日の再現のように、袋を渡した途端にポテチを取り出して封を切り、幼女のように喜んでポテチを食べている。


間違えることなく『うすしお味』を買ってきたので、僕は絶交されずに済んでいる。



――今のところは。



人間万事塞翁が馬と言うし、何が起きるか分からない。


未だに素性のよく分からない彼女だ。


いつ逆鱗に触れたり、地雷を踏んだりするか、分かったものじゃない。




「せっかく友達になったことだし、色々と訊きたいことがあるんだけど……」


「なんじゃ、儂に興味津々じゃの。良いぞ、何でも訊くがよい。スリーサイズぐらいは答えるにやぶさかでないぞ」


「マジですか?」


「マジマジ、大マジ、マジ卍じゃ」


「じゃあ……バスト、お願いしゃーす!」


「『大』じゃ」


「大?」


「そうじゃ、『大』じゃ」


魅子が両手で、その『大』を持ち上げる。


「いや、その……大きいのは分かるけど、もう少し細分化して欲しいと言うか、むしろそっちの方が標準だと思うけど」


「そんなものは知らんわ」


「知らない? それはないでしょ。下世話な話、それだとブラジャーが買えないと思うんですけど」


「そんなもん、付けておらんわ」


「マジですか?」


「マジマジ、大マジ、マジ卍じゃ」


「ノーブラじゃないですか!」


「ノーブラじゃ」



まさかの衝撃的カミングアウトだった。


ひゃっほーい!


ノーブラということは、もしや、もしかすると、もしかするのか。


もしかするのかもしれない!



「ノーパンですか?」


「ノーパンじゃ」



ひええええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーい!


ノーパン、ノーブラだってよ!


痴女じゃねえか!


やべえよ、この人。



……なんて、さすがに僕も馬鹿じゃない。


ノーブラはあるにしても、ノーパンはないだろ。


いや、普通はノーブラもないか。


とは言え、確かめる必要はあるのではなかろうか。


いや、ある!



「本当かどうか怪しいので、その袴の中を見せてもらってもよろしいでしょうか?」


僕もただの変態だった。


「構わんぞ」


「構わないのか!」


「ただし、金は取るぞ」


「ちなみに、おいくらでしょうか?」


「二億じゃ」


「二億!」



遊女かよ。


払えるわけねーだろ。



「……一生掛けても払えるかどうか分からないので、とりあえず信じることにします。で、痴女さん」


「誰が痴女じゃ! 殺すぞ、貴様」


「殺さないでください。すみませんでした」



怖いよ、怖すぎるよ。


ちょっとしたジョークで殺されちゃうのかよ。


やっぱり友達じゃないよな、僕たち。



「……話を戻す、というか僕が元々訊きたかったことが始まってないから、話を始めるんだけど。魅子のその喋り方は、方言的なやつなのか?」


「趣味じゃ」



趣味だったのか。


全く乱れのない流暢な喋り方だが、相当年季が入っているのかもしれない。



「訊くまでもないけど、金髪に染めてるのは?」


「趣味じゃ」



そりゃ趣味だよな。


それ以外で髪を染めるなんて、白髪染めくらいしかないよな。



「じゃぁ、その巫女姿は?」


「趣味じゃ」



やっぱ趣味かー。


コスプレってことだな。



「こんな場所に来るのは?」


「趣味じゃ」



これも趣味なのか。


神社跡という特殊な場所でノスタルジーに浸るみたいな――。



って、そんなわけあるか!


そんな趣味聞いたことねーよ!


まぁ、趣味は人それぞれだし、ないとは言えないけれど、どうも怪しいんだよな。


さっきから『趣味じゃ』しか言ってないし。


一応、確かめておくか。



「ポテチは?」


「美味じゃ」


「水は?」


「無味じゃ」


「魅子は?」


「神じゃ」


「僕は?」


「ゴミじゃ」



なるほど、テキトーに答えていたわけじゃないらしい。


後ろの二問は大いに異論の余地があるけれど(特に最後の問いな!)。


しかし、ますます分からないな、この人。


ミステリアスの域を超えてる――というか、域に収まってない。


謎が多すぎる。


けど、ノーパンノーブラで夜道を歩く人がいるように、人には人の事情ってものがあるし、魅子にも事情ってものがあるのかもしれないな。


女性が話したくないことをあれこれと詮索するのは、野暮ってもんだ。


これ以上は訊くまい。


僕、紳士だから。

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