あかつきエレファント 其ノ陸②
「もう質問は終わりかの? ゴミ」
「否定しなかったから僕、ゴミのままになってる! 僕はゴミじゃない」
「じゃあ、塵?」
「表現の問題じゃねーよ!」
もういいよ、そのくだりは。
「儂からも一つあるんじゃが、いいかの?」
「いいけど、なんだよ」
「儂、ここに来るまでの道中でな、パンツを落としてしもうたんじゃが、一緒に探してはくれんじゃろか?」
「ノーパンなのに何でわざわざ持ち歩いてんだよ! 持ってくる意味ねーだろ! 百歩譲って持ち歩くのは良しとしても、そんなものを落とすな!」
「仕方ないじゃろ。 気づいたらノーパンじゃったんじゃから」
「履いてたやつかよ! どうやったら脱げんだよ! 脱げたら気づくだろ! ってか気づけ!」
「そう責めるな。貴様がどれだけ儂のパンツが欲しかったかは察するに余りあるが、誰にだってミスはある。無くしたのなら捜せばいいだけの話じゃ」
誰も欲しいなんて言ってねーよ。
履いてたパンツが脱げて消失なんてミス、聞いたことねーよ。
「……捜すのはいいけど、既にどっかの変態がパクってんじゃないか? ってか、仮に見つけたとして、お前はそれを履けるのか?」
「ふむ。洗濯すればなんてことはないと思うとったが、貴様みたいな変態が舐め回したりしとるかもしれんと思うと、洗濯しても貴様の顔がちらついて履くに履けんの。可愛くて気に入っておったんじゃが仕方ない」
僕はそんなことしない。
精々、嗅いだり頬擦りしたり被ったりするくらいだ。
「話は変わるが、貴様よ。○○の消失みたいなタイトルのアニメがなかったかの?」
「とんでもない変わりようだな。百八十度どころか、五百四十度くらい回ってるよ。僕の知ってる限りだけど、『涼宮ハルヒの消失』っていうアニメーション映画があるぜ。アニメ好きの僕としては、名作と言わざるを得ない名作オブ名作だ」
「ほう、名作とな! それはなお良しじゃ。それならなおのこと、その作品にあやかるしかないの」
「何をあやかるんだよ」
「この作品のタイトルじゃ。儂、とんでもないのを思いついたんじゃけど。これで名作確定じゃ。儂にも印税欲しいんじゃけど」
「へえ、自分でハードル上げんじゃん。そこまで言うなら聞かせてくれよ」
既に『禍い物』ってタイトルがあるんだけどな。
まぁでも、聞くだけなら何も問題はない。
「『ショーツの消失』」
「……」
「何か言わんか、貴様」
「……個人的には色んな意味で興味をそそられるしアリだと思うけど、下手すると十八禁コーナーに陳列されそうだから、断腸の思いで却下」
「くっ……、それなら『巫女の魅子、ショーツを消失』でどうじゃ!」
「ショーツの持ち主が巫女だと明らかになったことで、ショーツから得も言われぬ神聖さを感じる! けど、却下だ」
「くはっ! 後世に語り継がれるほどの名作の予感しかせんかったんじゃが、貴様がそう言うのなら仕方ないの」
何とかエロ本扱いになることは避けられそうだ。
ていうか、そんなことよりも、謝っておいた方が良さそうな気がする。
否、謝るべきだ。
あの名作を、拙著のしょうもないオチのために引き合いに出してしまったのだから。
谷川流先生、ごめんなさい。
京アニさん、ごめんなさい。
関係者の皆さん、ごめんなさい。
魅子のショーツと僕のメンツを失ったところで、この辺りが潮時だろう。
僕は彼女に別れを告げて、家に帰った。
道中、終始下を向いて目を皿にしていたのは、言うまでもないことである。




