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禍い物  作者: 青野 乃蒼
あいウィーゼル

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あいウィーゼル 其ノ貮②

「……ところで、僕に何の用かな? 僕、壺を買うお金なんてないんだけど」


「ツボ? ツボは買うものではなく押してもらうものでは? まぁお金を払ってマッサージしてもらうという意味では、ツボを買い取ってもらうと言えなくもないですけど。でもそれなら、買い取るというより刈り取るの方がしっくりきますけどね」



なるほど、どうやら僕の懸念は杞憂と言うか、とんだ勘違いだったらしい。


後半何が言いたいのかよく分からなかったし。



「ちなみに私、ポケモンではツボツボ推しです」


「へえ、そうなんだ。ちなみに僕はタマタマ推しだ」


「やだー、先輩。私のボケにかこつけて下ネタ言わないでくださいよー。タマタマ潰しますよ?」


「はぁっん! やだ! 待って! 今ひゅんってなった! 股のあたりがひゅんってなった! お願いだから、それだけはやめて」


「しかし、男という生き物は強いのか弱いのかよく分かりませんよねー。筋力はありますけど、それ以外はてんでダメですよね。急所があるくせに骨格的にまる出しですし、色香にすぐ惑わされますし、エロいことしか考えてませんし、禿げますし」



彼女の言いたいことはよく分かる。


男である僕としても概ね同意する。


なぜ急所であるタマタマを、あんな薄っぺらい袋で包んでいるのか。


あまりにも扱いがぞんざいではないか?


不敬を承知で言うが、これは明らかに神の設計ミスだと苦言を呈さざるを得ない。


そもそも急所を用意している時点でミスとも言えるが、急所を設定しなければならなかったのだとするならば、せめて急所を守るような骨格にすべきだろう。


亀の甲羅のような、蟹の甲殻のような、堅牢な盾を用意すべきだろう。


間違っても防御力皆無な麻袋のようなもので済ませていいはずがない。



と、つい溜まっていたタマタマに対する不満をぶちまけてしまったが、僕が声を大にして言いたいのは、そこではなく。


「ハゲは生物学上の強弱に関係ないだろ」


「ハゲは男性ホルモンが強いのが原因なんですよ? 暁先輩も気をつけてくださいね。女の子の晴れ着の帯を引っ張って「あーれー」ってしたいとか、野球拳で女の子を裸にしてやりたいとか、ツイスターゲームであわよくば胸に触りたい、なんてやらしいことを考えていたら、そのうち禿げますよ」


「さっき脳内で考えていたことを何で君が知ってんだよ!」


「仲睦まじく肩を寄せ合って歩く男女を見ながら、暁先輩はそんなことを考えていたんですねー。スーパー戦隊ならぬスーパー変態ですね」



そんなもん日曜の朝から絶対流せねーよ。


平和を守るどころか、子供たちの童心をぶち壊しちゃうよ。


製作会社と視聴者の間でバトル勃発しちゃうよ。


この場合、果たしてヴィランはどちらなのだろう?



「……話が取っ散らかってきたから戻すけど、僕に何の用なの? ってかごめん、そもそも君は誰なの?」


「怪しい者じゃないですよ?」


「それを最初に言うやつが一番怪しいんだよ」


「実は私、こう見えてテレビドラマのプロデューサーをしているんです」


「へぇ、高校生なのに凄いね。ちなみに最近はどんな作品を?」


「嗜好変態エロブラジャーです!」


「スーパー変態から離れろ!」



もし実在するとしても、それはテレビドラマじゃなくてAVだろ。


そんな十八禁ものの制作に、十八歳未満の人間が携われるかよ。



「……とりあえず、名前を教えてくれ、名前を」


「イリア・イヴァノヴナ・ヅィミール・ナウモーヴァです」



おぉ、さすが洋風の顔立ちとあって、名前は完全に異国だな。


本人が色白というのもあるが、なんとなくロシアを思わせた。


しかしこれまたさすがと言わざるを得ないが、外国とあって名前が長い。


今聞いたばかりだと言うのに、最初に言ってくれた『イリア』しか覚えていない。


でも外国の人って、通称と言うか愛称みたいなのがあったはずだよな。


ボブとかマイケルとか、そういうやつ。


確かそれは親しい間柄にしか呼ばせないとかなんとかあったような気はするけど、とにかく何でもいいから短いやつを教えてもらおう。



「略して、飯綱(いいづな)です」


「飯綱かよ!」


「はい、飯綱です」


「バリバリの日本人じゃねーか! 異国情緒が台無しだよ!」


「異国情緒も何も、私は純国産です」



純国産て。


人間に対して使う言葉じゃねーだろ。


初めて聞いたぞ。



「ちなみに、下の名前は?」


「アンチャン・イテマウゾコラ」


「何で名前は不良の脅し文句なんだよ。それに片言で言われると脅されてる気がしねーよ」


「そんなわけで改めまして、飯綱愛(あい)です」



どんなわけだよ。


ってか、しかしかなり高等なボケをかまされた気分だぜ。


高校生だけにな。


見た目と雰囲気からしてパリピと言うか、チャラチャラしてると言うか、まぁ言ってしまえば(僕が言うのもなんだけど)頭悪そうな感じがしてたんだけども、案外キレる頭を持っているのかもしれない。



「名前に『い』が三つあるので、胃酸って呼んでください」


「いや呼ばねーよ。下手したらゲロと同じだぞそれ」



せめて遺産にしろよ。


それでも呼ばないけども。


死んでないから不謹慎だしな。

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