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禍い物  作者: 青野 乃蒼
あかつきエレファント

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6/13

あかつきエレファント 其ノ肆①

「買ってきましたよ」


神社跡に戻ると、彼女は本殿に凭れかかるようにして僕を待っていた。


彼女に隠れているので本殿の全容は見えないけれど、木造のそれは端々が明らかに朽ちている。


彼女の体重で崩壊するのではないかと、僕は少し心配になる。


ちなみに、少ししか心配していないのは、女性は軽いから大丈夫だろうと高を括っているからではなく、万一崩壊してしまっても僕のせいではないから、である。


要は、当事者ではなく、傍観者だから。



「おぉ、大儀じゃ大儀じゃ」


僕が渡した袋を受け取った彼女は幼女のように、笑顔で袋の中に手を突っ込み、お目当てのどら焼きを取り出した。


封を切ったそばからパクつき、満面の笑みを浮かべる。


「美味! 美味じゃの!」


幸せそうにどら焼きを食べる彼女。


その幸せそうな顔を見ていると――まぁ、買ってきて良かったとは思うかな。


「貴様も食うがよい。ほれ」


彼女は袋から取り出したどら焼きを、僕に差し出す。


「ありがとうございます」


僕が受け取ると、彼女はそそくさと二つ目を取り出して、封を切った。


僕も一つは食べようと思っていたし、一人一つだと彼女に文句を言われるかもしれないと思って、陳列棚に置いてあった四つ全部買ってきたのだけれど、正解だったな。


「ほほほへ、ひはは」


「食べてから喋ってください。何を言っているのか、さっぱり分かりません」


「ほーはお」


ゴクン、と彼女の喉から嚥下する音が聞こえた。


どんだけ頬張ってやがったんだよ。



「ところで貴様、名は何というのじゃ?」


僕もどら焼きを食べていたところだったので、飲み込んでから口を開いた。


当然、嚥下する音は鳴らない。


古門暁(こかどあかつき)です。あなたの名前も教えてもらっていいですか?」


「断る!」



なんでだよ。


『人に名前を訊ねる時は、まず自分から』って教わらなかったのかよ。


せめて、教えてもらったら答えろよ。



「はは、冗談じゃよ、冗談」


またしても軽快に、彼女は笑った。


「儂は、五百城魅子(いおきみこ)じゃ。良い名じゃと思わんか? 魅力のある子じゃぞ? 儂にぴったりじゃ」


気持ちがいいほどの自画自賛だけれど、顔は整っているし、スタイルもいいわけで、まぁ、大胸――概ね彼女の言う通りではある。


「あの、五百城さん。一つ訊いてもいいですか?」


「良いぞ。なんじゃ?」


「五百城さんは、霊とかが見えるんですよね?」


「見えるぞ」


「ということは、霊媒師とか、そういう仕事をされているということですか?」


「それは二つ目の質問じゃから答えられんの」



あぁ、めんどくさい人だな。


でも割とこういう人、いるよな。


マジメンディー!



「まぁ良い。今日は初回ならぬ初会じゃしの、特典として答えてやろう。霊媒師かと言われたら違うんじゃが、説明するのも面倒じゃし、それで良いわ」



霊媒師じゃないのか。


じゃあ何なんだ、とは思わなくもないけれど、霊媒師に近い仕事をしているのだろうことは分かったし、まぁいいか。


他にも訊きたいことがたくさんあるんだけどなー。


五百城さんの独特な喋り方とか。


僕に憑いているらしい霊(?)のこととか。


五百城さんの胸は何カップなのかとか。


けれど、さっきの感じだと答えてくれそうにないよな。


最初に『一つ』って限定したのが痛いな、ミスっちまったぜ。



「さて、腹も膨れたことじゃし、そろそろお開きにするかの」


「五百城さん」


「なんじゃ?」


「僕の霊のことは教えてくれないんですか?」


「そう急かすな。がっつく男は嫌われるぞ。おいおい教えてやるから、安心せい」



やっぱり僕は生殺しにされるらしい……。

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