このはフロッグ 其ノ肆③
とは言え手をこまぬいていては、一向に本屋から出られない。
帰れない。
そう思って、思いついた案をとにかく試した。
三階から下へ下りる方法がないか、試行錯誤を繰り返した。
下りる際の一段目が右足か左足か、二階の床に触れる足が左足か、それとも両足か。
一段飛ばしで下りればどうか。
不調法極まりないが、発想を転換して階段を下りなければいいのではと、手摺りを滑って下りるという方法も試した――が。
そのどれも全く効果はなかった。
何をやっても振り出し――四階に戻ってしまった。
「万策尽きたな……」
まさか僕に『SHIROBAKO』の名言(?)を言う機会があろうとは。
嬉しいような。
悲しいような。
でも人生において、そんな機会というか窮地に立たされることは、ないに越したことはないことを思えば、これは悲しむべきなのだろう。
「あはは……あは…………は……は」
笑うしかなかった。
途切れ途切れの自虐的嘲笑が、自分しかいない寂しい四階のフロアに空しく響く。
「しかし、参ったな。どうやったら帰れるんだろう」
自分一人しかいないので、つい考えを口に出してしまう。
静けさを打ち消すために。
生憎というか、田舎なので当然と言うべきか、自分以外に客はいないらしい。
少なくとも三階と四階には、だけど。
一階と二階にはいるかもしれないが、三階もしくは四階まで上がってくる人はいるだろうか。
それを待って、その客が階下へ下りる際についていくというのは有りかもしれない。
四階にいても仕方がないしな、と僕はとりあえず三階に下りた。
残念ながら、今のところ三階に客はいなかった。
後はひたすら待つしかない。
とは言え、ただ待つというのも芸がないし、客が上がってこなければ時間を浪費するだけになる。
何か他に策はないだろうかと思った、その矢先だった。
「そう言えば時間、今何時だ?」
僕はポケットからスマホを取り出す。
スマホの画面を見たところで、脳にビリっと電気が走った。
その電流は、僕に新たな気づきを与えてくれた。
「あ! そうか、電話して助けを求めればいいのか!」
僕はなんて馬鹿なんだ。
何も僕一人で対処する必要なんてない。
こういうオカルト的な話に詳しい人に、僕よりも頭のいい人に、助けてもらえばいいじゃないか。
「僕はなんて間抜けなんだ! あはは!」
僕は快哉を叫びそうになるのを堪えつつ、まずは電波を確認した。
こういうオカルト的な、いわゆる怪奇現象に遭遇した時というのは、通信機器の類が軒並み使えないというのはよくある話だ。
だが幸いにして、それは無用な心配だった。
「よし、電波は問題ない。これならいける!」
僕の頭の中に真っ先に浮かんだのは、魅子だった。
僕が象の霊に取り憑かれていることを見抜き、そして祓った人物であり。
媛野唯が自身の妄執によって苦しんでいたことを見抜いた人物でもある。
今起きている超常現象には打って付け、これ以上の適任はいまい。
「ちっ……くそっ!」
が、僕は舌打ちせざるを得なかった。
魅子は現代社会においておおよそ考えられないのだが、スマホはおろか携帯すら持っていないのだ。
パソコンを持っているかすらも怪しいので、現状において魅子と連絡の取れる手段はなかった。
「スマホぐらい持っとけよ、あいつ!」
愚痴りながら苛立ちを発散させて頭を切り替え、次に浮かんだ人物に電話を掛けた。
もっとも、僕が頼れる人物など、もう彼女しかいないのだが。
彼女はスリーコールもしないうちに電話に出た。
「もしもし、どうしたの? 古門くん」
「助けてくれ、媛野」




