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禍い物  作者: 青野 乃蒼
ゆいデリューション

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ゆいデリューション 其ノ漆①

「猫の死体、増え続けてるんだって」


奇しくも、またしても僕は、猟奇的殺猫事件の続報を、学校の昼休みに昼食を終えて机に突っ伏している時に聞いた。


盗み聞いた。


話していたのも当然、前回と同じ女子二人組だ。



この噂話を魅子に話してから、二週間ほどが経過しているのだが、その間に事態が鎮静化するということはなかったようだった。


彼女たちの話を聞く限りでは、殺猫の頻度であったり、その内容には触れられていなかったので、話に上がらないということは――あくまでも推測の域を出ないが――露骨に頻度が増したり残虐性が増した、というようなことはないのだろう。


つまりは現状維持。


停滞とも言える。


深刻化していないだけ良いとも言えなくもないが、まぁどっちかと言えば、断然悪い。


犯人の中で蟠(わだかま)る心の闇は、依然として、辛うじて、燻ったままだということだ。


魅子は時間の問題だと言っていたけれど、よく考えれば、もはやタイムオーバーになってしまっているのではないかと思う。


この前魅子に言ったように、僕はこの噂がいつ頃から立ち始めたのかは知らない。


知らないけれど、火のない所に煙は立たぬと言うように、煙が立ち上るより以前から、火の手は上がっているものだ。


つまり噂が立つということは、犯人が最初の犯行に及んだ時からそれなりに月日が経っている――ということは言える。


加えて、僕が初めてこの噂を女子二人組から聞いた時の内容はこうだった。



『最近、猫の死体がよく見つかるんだって』



その時点で犯人は、既に複数回に亘って――噂が立ってしまうほどに、犯行に及んでいるということになる。


この二点から言えることは、現時点から遡ったとして、犯人が最初の犯行に及んだのは少なく見積もっても一ヶ月以上前のことだろう。


つまりは一ヶ月以上前のXデーに、犯人が抑え込んでいた心の闇は制御しきれなくなり、暴走した結果がこの極めて猟奇的な犯行ということであり、逆に言えば、そのXデーから既に一ヶ月以上も経っているということなのだ。


僕は専門家ではないので正確なところは魅子に聞くしかないのだが(魅子が専門家なのかどうかは知らないが、僕よりも詳しいことは確かなので)、常軌を逸した奇行に走るほどに膨れ上がった闇を抱えた状態が一ヶ月も続けば、その執念は霊体へと変化してしまっていると思うのだ。


元より本人の健康状態もかなり危うい気がするし、霊体の卵(そんなものが存在するのか知らないけど)になった気分で考えると、『依り代の命が危ないな。今のうちに霊体にならねば!』という最後の命を燃やして――みたいな精神で霊体化を急ぐような気がするんだよな。




てなわけで、僕の中では既に霊体化してしまっているだろうという結論に達したわけなのだけれど、じゃあその霊ってどんな霊なのだろう? と思って考えてみても、全く分からなかった。


そもそもどんな霊がいるのかさえ知らない。


魅子に教えてもらうまで、象の霊がいるということも知らなかった。


象の霊なんているんだ! って感じだった。


象がいるなら他の動物も大抵はいるんじゃないかと思えてくる。


他の動物の霊が憑いたらどんな症状なんだろう?


象はその巨大な体躯らしく、僕の肩に乗って(?)その重さで僕を苦しめたけれど、虎だとどうなんだろう?


首元にでも噛みつかれたら即死だよな……。


こわっ。


あ、でもそれを言うなら、僕だって象本来の重さで乗られていたら一瞬でたこせんべいになっていただろうし、虎と言えど即死なんてことはないのかもしれないな。




というわけで、専門家の魅子先生にご教示いただこうと、僕は神社跡にやって来た。

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