ゆいデリューション 其ノ陸①
僕は魅子に言われた通り、大体一週間に一度の間隔で神社跡に行っている。
何曜日に行くというような取り決めはしていない(決めてしまうと義務感を感じるので好きじゃない)ので、ふと思い出した時に、七日以上経っていてその日の天気が悪くなければ行く、という感じにしている。
几帳面できっちりかっちりしているタイプの人からすれば、『それで忘れないの? 大丈夫?』と言いたくなるだろうけれど、ノープロブレム。
何の心配もいらない。
自慢ではないが、僕には友達がいないので、普段から予定が入るということがない。
なので、いつ魅子と会ったかを忘れることがないのだ。
まぁ仮に友達がいたって、僕は女の子との約束を忘れたりしないけどね。
僕って紳士だから。
え? なになに?
女子との約束が複数入っていたとしても、絶対に忘れないと言えるのか、だって?
ちっちっち。
そんなの愚問だな。訊く前から分かりきっている。
有り得ない。
有り得ないんだよ――僕にそんな状況が訪れるなんてことが。
分かっているくせにこういう質問をしてくるんじゃないよ、バカヤロー。
冗談はさておき、僕は媛野と魅子の三人で会って以来、九日ぶりに神社跡に来ていた。
「そういえば、貴様は血塗れナイフと付き合いは長いのかの?」
「その物騒な呼び名はそろそろやめてやれよ。それに、この前みたいに本人の前でうっかりそれで呼ばれたら、肝が冷えるどころじゃねーんだよ」
ていうか、普通に媛野って呼んだ方が短いだろ。
「えー、儂、結構気に入っとるんじゃけど。二つ名みたいでカッコいいじゃろ、血塗れナイフ」
「否定はしないけどさ、現実世界でその二つ名は血生臭いというか、犯罪の匂いしかしないぜ? それに女の子向けでもないだろ」
「なんじゃ貴様、男女差別か? 男尊女卑か? 犯罪に男も女もないじゃろうが。女だって人を殺すぞ? それに、女の方が血には慣れておるわ、毎月見るんじゃし」
差別したつもりも女性を下に見たつもりもないんだけどな。
とんだ言い掛かりなんだけど、言ってることはごもっともなんだよな。
言い方が露骨過ぎてちょっと怖いけど。
それに、最後の一言を言われると、男としては肩身が狭くなるというか、触れにくいというか、とにかく、何も言えなくなっちゃうんだよなー。
下ネタ大好きだし平気で言うくせに、こういう手の話になると途端に神妙になる男という生き物って、一体何なんだろうね。
どうでもいいけど、月桂冠ってちょっと言い難いよね。
活舌とかの問題じゃなくて。
聞くだけでも、全然関係ないのにちょっともぞもぞした感覚になったりするもんね。
ちなみに僕、所長とか署長とかも若干もぞっとするんだけど。
あれ?
もしかして僕だけ?
「……とにかく、真相が究明されるまでその二つ名は封印ということで」
「つまらんの。じゃあ何と呼べばいいんじゃ?」
「普通に名前で呼べばいいだろ」
「つまらん」
そこに娯楽性を求める必要はないだろ。
ただでさえ会話の半分以上が冗談を占めていそうなのに、呼び名までふざけていたら収拾がつかなくなるぞ。
ボケもボケすぎると聴衆側が聞き慣れて飽きちゃうしな。
ボケと認識されなくなって干されちゃうぜ。
一発屋芸人みたいにな。
何事もほどほどが肝心ってわけだ。
「つまるもつまらんもあるか、名前なんだから」
「仕方ないの。封印が解かれし時まで、しばし待つとしよう。……で、名前なんじゃったっけ? いや、待て! 言うな! ここまで出とるんじゃ! すぐ出るんじゃ!」
魅子が喉元に手刀をとんとんと当てる仕草をして、んーとかあーとか唸っている。
よく見る光景だけど、冷静に見てみると、これ、どう見ても「アイーーン」だよな。
志村けんはこの仕草から着想を得たのだろうか。
まぁ違うだろうな。
「あっ! 思い出したぞ!」
「そうかい、良かったな。言ってみろよ」
「秘野!」
「上手いこと言ってんじゃねーよ!」




