ゆいデリューション 其ノ貮②
待ちに待った放課後。
媛野はすぐにやって来た。
どうやら媛野も、僕とのデートを楽しみにしているようだ。
かわいいやつめ。
「移動しよっか」
「そうだな」
そう言って僕は、席を立つ。
媛野はそれを見るや歩きだしたので、僕はそれについていく形になる。
媛野の足取りには迷いがなかった。
すたすたと歩いていく。
どうやら媛野は既にプランを考えているらしい。
「媛野、どこに行くんだ? オシャレなカフェか? それともバーとか? ちょっと遠いけど、映画館ってのもありだよな」
「え?」
「え?」
「別棟の空き教室だけど」
「……あー、なるほどね。その手もあるか」
僕としたことが、これは盲点だった。
学校という公共の場で密やかに公序良俗に反することをするという、その背徳感と緊張感を味わいながらってのもあったんだなー。
媛野は意外とコアな癖をお持ちなのかもしれない。
それはそれで――興奮するぜ。
「何となく話が噛み合っていない気がするんだけど」
「気のせいじゃないか?」
「古門くんの気のせいこそ気のせいだと思う」
「なんでそう思うんだよ」
「だってさっき、まるでこれからデートにでも行くような口ぶりだったから」
「そそ、そそそそんなことけないと思うはど?」
「動揺しすぎて『け』と『は』が入れ替わっちゃってるよ」
む。
言われるまで気づかなかった。
「百歩譲ってバーはいいとしても、映画館は無理があるよ。会話が出来ないもん。これじゃ本末転倒だよ」
ま、最初から分かってたけどね。
もう少し夢を見ていたかったんだよ。
空き教室に入って、僕は手近の席に座った。
媛野は座らず、僕とは少し離れた机に凭れた。
なんでちょっと離れてるんだろう。
「ここなら問題ないでしょ?」
「あぁ、何も問題ないよ」
「じゃあ教えてよ。古門くんがぼっちだった理由」
間違ってはないけどさ。
もう終わったことだからいいんだけどさ。
言い方って大事だぜ?
頭いいやつって、こういうところが抜けてたりするよな。




