ゆいデリューション 其ノ貮①
僕に取り憑いていた象の霊を祓ってもらってから最初の登校日。
僕は足取り軽やかに、まるでスキップでもするような身軽さで登校した。
しかし本当に体が軽いだよな。
今思えば、僕は『大リーグボール養成ギプス』でも付けてたんじゃないかなと思うもんな。
今度トライアウトにでも参加してみようかな。
席に着くと、あにはからんや、媛野がセミロングの美しい黒髪を揺らしながらやって来た。
「おはよう、古門くん」
僕は媛野の顔を見た瞬間、あの日に見た血塗れのナイフが蘇り、背筋がゾクッとした。
あの日は金曜日だったので、媛野とはあの日以来の再開だった。
「……おはよう、媛野」
「古門くん、変わったね」
「変わった? 何が?」
制服を着てきたし、髪型もいつも通りだし、整形だってしてないし、性転換手術も受けてないんだけど、何が変わったんだろう?
「前に言ってた、近寄り難いオーラがきれいさっぱり消えてるよ」
「ホントか! 良かったー。多分大丈夫だとは思ってたんだけど、媛野が言うなら間違いないな。あー、安心した」
霊のせいで良かったー。
僕自身のせいじゃなくて良かったー。
これで僕も友達が出来るようになるよな。
なるよな?
「その様子だと、何か原因があったってことだよね? それって何だったの? どうやって解決したの? ちょっと気になるなー」
「教えるのはやぶさかではないけど、出来れば別の場所がいいかな……」
やましいことなんて一つもないんだけど、衆人環視の中で霊的な話をするのはちょっと抵抗感があって憚られるんだよなー。
ほら、オカルト話ってそういうところあるじゃん?
僕はこれから大事な時期だし、友達が出来るかどうかの分水嶺に立ってるのに、墓穴を掘るようなことはしたくないんだよ。
避けれるリスクは避けておかないとさ。
「そっか。でも、もうすぐ予鈴が鳴っちゃうし、今からは移動出来ないよね。んー、どうしよう。……あ、じゃあ、放課後はどう?」
「放課後? 僕は別に構わないけど、媛野は大丈夫なのかよ。部活とか習い事とか、家庭の事情とかはないのか?」
「大丈夫、大丈夫。オールオーケーだよ。じゃあそういうことで。また放課後ね」
媛野はくるりと身を翻し、自席へと戻っていった。
どうやら僕は、美女と放課後デートらしい。
いえーい。
僕はこれを機に、大人の階段を上っていくのかもしれないなー。
媛野が僕のシンデレラだったりして。
妄シストの血が騒ぐぜ。




