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第二位、人間  作者: 青野 乃蒼
逆襲の果てに

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作戦決行

警察庁で、虎太郎と凛は殲滅作戦の説明を受けた。


作戦決行日は一週間後。


自衛隊五百人を派遣し、銃はもちろん、榴弾砲やロケット弾、戦車なども用意するらしい。


また、住民の安全を確保するため、大規模災害を想定した避難訓練と称して既に告知しており、皇帝の住処を中心に半径一キロ圏内の住民は、当日正午までに強制的に圏外へ避難させるよう手配済みということだった。


佐藤から方針は粗々のものだと聞いていたが、説明を受けた限りでは、かなり緻密に組まれていて、ほぼ決定されているように感じた。


何か質問や提案はあるかと聞かれたが、素人の自分たちに何も言う事はなかった。




決行までの一週間、特にすることがなかった虎太郎と凛の二人は、外出許可を得て、東京観光に出掛けた。


あまりお金は持って来ていなかったが、幸いにも東京は公共交通機関が充実していて、遠いところにも足を運ぶことができた。


近場の日比谷公園はもちろん、東京タワーやスカイツリー、明治神宮、浅草寺など、有名どころを中心に回っていった。


凛も東京は初めてだったようで、とても楽しんでいた。


二人で東京観光を満喫していると、あっという間に日々が過ぎていった。








決行日当日の正午。


辺りは目を疑わずにはいられないほどに人がいない。


誰の声も聞こえない。


時折吹く風が木々を揺らす音だけが、響いてくる。


集められた五百人の自衛隊員がずらりと整列している。


その後ろには、数台の戦車が控えていた。

砲台の口先が鈍い光を放っている。


一人の男――この一週間で何度も顔を見たので分かるが警察庁長官――が、隊員たちの前へ歩み出た。


「虎が日本を支配するようになってから五十年。これまでに多くの人が犠牲となった。数え切れないほどの人たちが辛酸をなめてきた。しかし、そんな日々は今日で終わりだ。我々は、ついに悲願を果たすときがきた。諸君、これまでの屈辱を糧とし、必ずや勝利を掴み取ろうぞ!」


「はっ!」と返事をした隊員たちは、一斉に敬礼する。


「では最後に、虎太郎くんからも一言頼めるかな」


これは事前にお願いされていたことだった。


長官に促された虎太郎は、隊列の中央に立つ。


五百人の隊員の目が一点に集まる。


「きっかけは、私の母が虎に殺されたことでした。なぜ殺されなければならなかったのか、その答えは未だに分かりません。きっと答えなんてないのだと思っています。ですが、かと言って心の傷が癒えるわけではありません。では、この深く深く抉られた傷をどうやって治癒するか。――報復です。私は、報復しかないと考えました」


隊員たちは、一時も目を離すことなく話を聞いてくれている。


「皆さんご存知のとおり、僕は獣人です。その獣人が虎を殺すことに躊躇いはないのか、と思われる方もいるかもしれません。僕は人として生きると決めて、人として生きています。人として生きることで、人の優しさを知りました。温もりを知りました。そして、痛みを知りました。ですから、躊躇(ためら)いなどありません。私の復讐を果たすことで、大切な人たちの願いを叶えることにもなる。こんな嬉しいことはありません。皆さんもそれぞれに思いを抱えて、今ここに立っていると思います。その思いは、必ず日本の平和に繋がっています。自分のため、隣にいる同士のため、そして国民のため、共に戦いましょう!」


虎太郎は拳を天に突き上げる。


隊員もそうしてくれるかと思っていたが、さすがは公務員。

律儀に拍手で返してきた。


ただ、各々の眼は炯々とし熱を帯びている。

長きに亘った屈辱の日々に終止符を打たんとする強い意志をひしひしと感じた。




陣頭指揮は長官ではなく、大隊長が取ることになっている。


大隊長が合図を出す。


五百人の軍勢が一斉に進軍を開始した――。

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