混血の特異点
「もしかして、君も使えるのか、そのシールドとやらを――」
このシールドこそが、今の虎を最強たらしめている最大の防具だ。
防具と言っても実体はなく、無色透明で、揺蕩うように身体の周囲を覆っている。
いわば、二次元世界の魔法バリアのようなものだ。
「はい。一応、半分は虎の血が交じっていますから」
黒田が目を見開いた。
凛も虎太郎を見ている。
きっと凛も驚いているのだろう。
このことは、誰にも言ったことがなかった。
シールドのことは秘密厳守であると、父に言われていたから。
ただ、使えるとは言ったが、虎のように常時は使えない。
自分が使えるのは一時的、それもかなり限られた時間の範囲内――せいぜい三十秒程度――で、という制約がある。
これは混血によるものだろうと思っている。
「そうか。しかし、君で試すとなると、君に傷を負わせることになってしまうのだが」
「なにも武器は銃や刃物だけではありません。竹刀や木刀だって武器です。それらであれば、傷を負わせることなく試せるかと。当然、シールドが作動すれば、それらの攻撃も防ぎます」
「なるほど。それは盲点だった。それと、もう一つ。シールドの弱点である『恐怖心』についてだが、そもそもこの状況では恐怖心を抱けないから、攻撃を防げないのではないか?」
シールドは恐怖心に反応して作動する。
生物が虎に対して抱く感情が、恐怖心優位である限り、このシールドは作動し続ける。
つまり、シールドを破る方法は、虎に恐怖を抱くことなく、強い意志を持って立ち向かうこと、なのだ。
簡単に聞こえるかもしれないが、これが非常に難しい。
言うは易く行うは難し、である。
いざ目の前に自分を簡単に殺せる相手が現れれば、いくら武器を持っていても恐怖を感じてしまうものだ。
「おっしゃる通りです。ですが、想像してみてください。何の罪も犯していない無抵抗の人間に、竹刀を振るう自分の姿を。どうですか? 全力で振るえるでしょうか? きっと心のどこかに抵抗感があるはずです。このシールドはそういった感情にも反応します」
これは嘘だった。
黒田の指摘は鋭く、もっともなものであった。
ただそれでは、シールドの弱点を証明できない。
しかし、自分のシールドにはもう一つ、虎との相違点がある。
それは、相手の感情に関係なく作動させることができる点だ。
この特徴を活かすしか、虎のシールドの弱点を証明する方法を思いつかなかった。
筋書き通りに動いてもらえるよう、誘導するように手順を述べた。
「なので、最初はいつも通りに攻撃してください。その攻撃はシールドによって防がれます。そして次は、抵抗感がなくなるよう、強い意志を持って攻撃してください。そうすれば、攻撃は僕に当たります」
実際は、初手の攻撃はシールドを作動させ攻撃を防ぎ、二手目はシールドを解除して生身に攻撃してもらうという寸法だ。
「なるほど、よく分かった。では早速試したい。お願いしても良いだろうか」
「はい、構いません」
「おい、誰か、竹刀を取ってきてくれ。道場にあるだろ」
黒田の声に反応して、若めの男が席を立ち部屋を出ていった。




