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第二位、人間  作者: 青野 乃蒼
逆襲の果てに

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41/44

僕を攻撃してください

こういうことは時間が掛かると思っていた。


しかし、予想に反して、結果は翌日に届いた。


昼間、仕事をしているとスマホが鳴った。

見知らぬ番号からの着信だった。


もしかして、昨日の警官からでは? と淡い期待を抱いていると、その期待通り、警官からの電話だった。


「昨日の話を上に相談したんだけど、もっと詳しく話を聞かせて欲しいってことになってね。だから、ご足労をかけるんだけど、指定の場所まで来てくれないかな。場所は追って連絡するよ」

「分かりました。後ほど伺います」


結果としては、交渉継続ということになる。


つまり、切り捨てられなかった。


自分の話を聞いて、検討の余地があるとの判断になったということだ。


それが単純に嬉しかったし安堵した。






指定されたのは管区警察局だった。


虎太郎は松本に事情を説明して早退させてもらい、一度家に帰った後、凛とともに電車に乗った。


ロビーに着いて、虎太郎は警官に電話を掛けた。


すぐに警官がやって来て、二人を部屋まで案内した。



その部屋は、広々とした会議室のような場所で、中にはスーツ姿の厳めしい顔をした人たちが、円卓を囲むようにずらりと座っていた。


「どうぞ、そちらに掛けてください」


重々しい、腹の底に響くような声だった。


言われた通り、入口に一番近い空いている席に二人は座った。


「私は局長の黒田だ。今日はよろしく頼む。話は佐藤巡査長から聞いている」


佐藤巡査長というのは、警官のことを言っているのだろう。


「虎太郎くんといったね。君は、虎と人間の間に生まれた獣人だと聞いたが」

「はい、その通りです」


虎太郎は証明するため帽子を取る。


黒田が息を吞む気配があった。

ただ、声は出さず、静かに耳を見つめていた。


「確かに、その耳が何よりの証拠だな。ありがとう。さて、本題に入ろう。君は、虎に武器を通用させる方法を語ってくれたが、この方法で本当に通用するようになるのかね?」

「はい。この方法なら通用します」

「それを証明することは?」

「それは……」


言葉に詰まった。


証明するのは難しい。


証明のために虎を殺せば、それが虎の世界で広まり、こちら側の準備が整う前に大規模な襲撃を喰らう可能性が高い。


そうなれば、もうチャンスはやってこないだろう。


「すまない。意地悪な質問をしてしまった。ただ、我々も君の話を鵜吞みにするわけにはいかないのだよ。人の命に関わるからね。それに、君が虎側のスパイだって可能性もある」

「それはありません!」


凛が机を思い切り叩いて立ち上がり、すごい剣幕で怒声を上げた。


「私たちは虎に母を殺されたんです! 何の罪もない母を殺されたんです! 私たちがスパイだなんてあり得ません!」


力いっぱいに握りしめられた凛の拳が震えている。


目には怒気が孕み、射貫くように黒田を睨みつけていた。


こんなに怒りを露にする凛を、虎太郎は初めて見た。


「すまない。非礼を詫びよう。許してほしい」

「分かってくれればいいです」


凛はそう言って、ゆっくりと椅子に座った。


黒田が咳払いをする。


「……話を戻そう。やはり、我々としてはその方法を信用する材料がほしい。何かないだろうか」


何かと言われても、何もない。


実際にその方法で虎を攻撃してもらうことが、最良にして唯一の材料だ。


虎太郎は何も思い浮かばず、ちらと凛を見る。


凛も顎に手をついて、必死に考えているようだった。凛を眺めていると、ふと凛から言われた言葉がフラッシュバックした。



――だって、コタにはその耳があるんだから。



それで閃いた。


これなら、信用してもらえるかもしれない。


「では、僕で試しましょう。僕を攻撃してください」

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