秘密の暴露
交番に着くと、中で男の警官が、書類に何かを書いていた。
「あの、すみません」
警官が顔を上げて、こちらを見る。
「はい、何でしょうか?」
「折り入って相談があるのですが、話を聞いていただけないでしょうか?」
こちらを見て、かなり若いと判断したのだろう。
警官の口調が柔らかいものに変わった。
「うん、いいよ。ここに座って」
警官は机の前に置いてある椅子に手を向ける。
その椅子に、凛と虎太郎が座った。
机を挟んで、警官と向き合う形になる。
「相談ってどんなことかな?」
「荒唐無稽な話だと思われるかもしれませんが、聞いてもらえますか?」
「もちろん。心配しないで大丈夫だよ、ちゃんと聞くから。落ち着いて、ゆっくり話してくれるかな?」
「分かりました」
虎太郎は一つ深呼吸をする。
息を吐ききった後、事前に計画した順序で話し始める。
「先日、僕たちの母が虎に襲われて、死にました。なぜ母は殺されなければならなかったのか、なぜ虎は罪のない人間を殺すのか、僕には分かりません。そんな虎が憎いです。母を殺した虎を赦せません。だから、決めました。凛と二人で決めました。虎を殲滅するって。だから、お願いです。僕たちに協力してください。一緒に戦ってください」
警官は口を挟むことなく、最後まで話を聞いてくれた。
一つ息を吐いた後、警官は口を開いた。
「お母さんのことは、残念だったね。私は幸いにも、身内が虎に襲われたことはない。だから、君たちの気持ちが分かる、とは簡単に言えない。でも、長年警官をやっているから、虎の残虐さはよく知っている。虎がいなくなればいいのにという声もたくさん聞いてきた。私自身もそう願っている。でも、私たちにはどうすることもできない。彼らに抵抗するための武器がない。だから、ごめんね。君たちに協力することは、できないよ」
「そんなことはありません。人間の武器は虎に通用します。銃だって当たるし、刃物だって刺さります。その方法を、僕は知っています」
「何を言って――」
虎太郎が帽子を取る。
「僕は獣人だからです!」
警官は獣の耳を見て、度肝を抜かれたように唖然としている。
「僕は、虎と人間の間に生まれました。三歳――十八歳までは虎として生きていましたが、それからは人として生きています。だから、虎のことを知っています。虎になぜ武器が通用しないのか、通用させるにはどうすればいいのか、その方法も知っています」
「そ、それは本当なのかい……?」
「はい、本当です。全て教えます」
「じゃぁ、一応聞かせてもらってもいいかな?」
秘策である虎の秘密――虎に武器を通用させる方法を警官に話した。
警官は、そんなことで通じるようになるのかと信じていない様子だったが、一旦は飲み込んだようだった。
「もしこれが本当なら、虎に攻撃できるようになるわけだけど、君はいいのかい? さっき殲滅するって言ってたけど、それだと君のお父さんも……」
「それは大丈夫です。人には見分けがつかないと思いますが、僕にはどれが父かすぐに分かります。家族を殺すつもりはありません。対象はそれ以外の虎です」
「分かった。君たちの気持ちも意気込みも十分に伝わった。ただ、私だけでは決められないんだ。だから、少し時間をくれるかな?」
「分かりました。吉報を待っています」
連絡先を渡して、交番を後にした。
外に出た後、大きく息をついた。
肩の力がどっと抜けて、気が張り詰めていたことを自覚する。
突然、凛が虎太郎の肩をはたいた。
「言ったでしょ、大丈夫だって」
「うん。相談に来て正解だったよ。ありがとう」
警官の反応は上々だったと思う。
時間をくれというのは、おそらく上に掛け合うということだろう。
結果が待ち遠しいが果報は寝て待てと言うし、後は天に任せて、自分はやるべきことをやって待とう。




