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第二位、人間  作者: 青野 乃蒼
逆襲の果てに

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33/38

猫耳

「……ぷっ、わーっははははは!」


虎太郎の予想をはるかに超えて、男は急に噴き出した。


男は腹を抱えて笑っている。


虎太郎は何が何だか分からなかった。


「兄ちゃん、なんやそれ。猫耳か? マジか? そんな趣味があるんか!」


笑い続ける男を見ているうちに、ようやく状況が掴めてきた。


そうか、そうなのか。

人間には、これが猫耳を付けているように見えるんだ。


そりゃそうだ。

これを一目見て、本物の耳だなんて普通思わないか。


とんだ取り越し苦労だったと分かり、男に釣られたように虎太郎も笑った。


「腹痛い、腹痛いわ兄ちゃん」と言いながら、男は涙を拭った。


虎太郎はそっと、フードを被り直した。


「まぁ、趣味は人それぞれやからな。わろうてもうたけど、気にすんな」


男は虎太郎の肩をバシッと叩いた。


「せや、ほんで仕事の話やけどな、悪いけど、うちは十分人足りとるから、雇うてはあげられへんな。まぁ、うちの場合、人足らんでも雇う余裕なんかあらへんけどな」

「そうですか……」

「すまんな。せやけど、この辺で仕事探すんは大変やで。こんな田舎に仕事なんかあらへんし。でも訳ありやからここで探しとんのやろ? 頑張りや」


「ありがとうございます」と言って、虎太郎は佐々木組を後にした。


仕事が決まらなかったのは残念だが、人当たりのいい人で良かった。


それに、自分の耳は猫耳趣味だと勘違いされると分かったのは大きな発見だ。

万が一さっきのようなことが起こったときは、猫耳だと言ってごまかそう。


虎太郎は気持ちを切り替えて、次を探した。






一日中探し歩き、同じようなプレハブ小屋をいくつか見つけたが、どれも今は使われていないようだった。


結果この日は、収穫ゼロに終わった。


日が完全に落ち切り暗闇に包まれるなか、虎太郎は新居に帰宅した。

当然、電気は通っていないので、家は真っ暗だった。


「おかえり、コタ。遅かったわね」

「せっかく遠くまで行ったから、できるだけ探そうと思ってね。そしたら遅くなっちゃった」

「そう。それで、どうだったの?」

「ダメだった。一ついいところを見つけたんだけど、断られちゃったよ。また明日探してみる」

「残念だったわね」

「うん。それはそうと、お母さんの方はどうだったの?」


虎太郎の問いを聞いて、母の顔が急にパッと明るくなる。


「それがね、受かっちゃったのよ! なんか、丁度人手が足りてなかったらしくて。運が良かったみたい」

「それは良かった! おめでとう」

「ありがとう。これでとりあえずは暮らしていけそうね。だから虎太郎は、無理せずゆっくり探しなさいね。焦らなくていいから」

「分かった。断られたおじさんにも、『この辺で仕事を探すのは難しい』って言われたし、焦らず気長に探してみるよ」


そうは言ったものの、本音はそうではなかった。


いつまでも母を一人働かせ、自分は無職の穀潰し、というわけにはいかない。

一日でも早く仕事を見つけたい。


心の中ではそう思っていた。






翌日、母は早速仕事に出掛けた。


虎太郎も母と一緒に家を出て、仕事探しを始める。


今日は山を下った先の岐路で母と別れた。

昨日とは違う道を行って探そうと思ったのだ。


昨日とは打って変わって、この辺りは田畑が少なく、代わりに建物が多く軒を連ねていた。

街の中心部とはいかないまでも、昨日行った周辺よりは、幾分活気が感じられた。


これなら仕事を見つけられるかもしれない、と虎太郎は少し期待していたが、結果は昨日と変わらなかった。


確かに、工場や事務所がそれなりにあって、声を掛ける回数は増えた。

しかし、大半が間に合っているの門前払いで、取りつく島もないといった感じだった。


その後も各地を歩き回って探索を続け、それらしい店や工場を見つけては声を掛けたが、雇ってもらえることはなかった。

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