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第二位、人間  作者: 青野 乃蒼
逆襲の果てに

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31/37

山奥の廃屋

平地は田畑が広がっていて、民家はそう多くなかった。


元居た家の周りには、戸建てはもちろん、アパートやマンション、高層ビルなんかが所狭しと建っていて、閉塞感を感じるほどだった。


なので、むしろとても少なく感じる。


その反面、倉庫と思われる建物は多かった。

ただ、そのどれもが真新しかったり、使われている形跡があった。




やがて、風景が田畑から木々に変わりはじめる。

背の高い杉の木が影を作り、太陽が出ているにも関わらず、足元では冷気を感じる。


さらに奥へと進み、少し山を登ると、木々の合間から建物のようなものが見えた。


「お母さん、あれ」


虎太郎が指差す先を、母も見つめる。


「あら、あんなところに建物があるわね」

「行ってみよう!」


虎太郎は駆け出し、茂みをかき分け進んでいく。


近づくと、ようやくその建物の全容が見えた。

おそらく民家だったのだろう。でも今はそうではないと一目見て分かった。


外壁のほとんどが青々としたツタに覆われ、一階の窓ガラスの一つが割れている。

カーテンは引き裂かれたかのようにズタズタだ。


心霊スポットと言われても違和感がないくらいには、怪しい雰囲気を放っている。


「あった! お母さん、あったよー!」


虎太郎は、まだ辿り着いていない母に手招きをして急かす。


「大きいわね」

「これ、廃屋だよね。使っていいよね」

「ここなら、いいと思うわ」

「倉庫にしようと思っていたのに、思わぬ大収穫だね」

「そうね。前の住人の方に感謝しないと」


ようやく母が、虎太郎の元に着いた。

少し息が弾んでいる。


「中に入ってみようよ」と言いながら、虎太郎は母の返事を待たずに玄関に向かう。


引き戸に手をかけて開けようとしたが、開かなかった。

しかし、鍵がかかっているような感触はなかったので、次は力を込めて開けてみる。


すると、キキーッと不快な金属音を立てながら、半分まで開いた。


やはり鍵はかかっていなかった。

どうやら建付けが悪くなっているだけらしい。


虎太郎がもう一度力を込めると、戸は全開になった。


土間には婦人用の靴が一足置いてあった。

年配が好みそうなデザインをしている。


もしここに老人が一人で住んでいたとすれば、色々と大変だったんじゃないだろうか。


虎太郎は以前の住人に思いを馳せながら、土足のまま家に上がった。


母は律儀に「お邪魔します」と言ってから入ってきた。




玄関を上がってすぐの右手に、開け放たれた扉があった。


中に入ると、そこは二十畳ほどのリビングダイニングだった。

 

ダイニングテーブルや食器棚、ソファ、冷蔵庫などの家財が残されたままになっている。

床には足跡がくっきりつくほどの土埃が堆積していて、住人が長年不在であったことを物語っていた。


「そのまんまだね」

「そうね、親族の方がそのまま放置しちゃってるんでしょうね」

「家具、ボロボロだけど使えそうじゃない?」


テーブルやイスなどの木製のものは朽ちていて厳しそうだが、ソファなどは見た目さえ気にしなければ使えそうだった。


「えぇ、少し掃除すれば使えると思うわ。使えるものは使わせていただきましょう」


虎太郎たちは出立してから三日目にして、ようやく住居を手に入れることができた。

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