不眠不休の家探し
田園風景の広がる静かな道を、虎太郎は母と二人で歩いていた。
大地の匂いを含んだ朝風が、二人の間を通り過ぎていく。
気持ちいい――のだろうと思うが、今は何も感じない。
おかげで自分に余裕が無くなってきていることは分かった。
家を出てから既に二日経ち、その間、睡眠以外はほとんど休まずに歩いてきた。
疲労がかなり蓄積されていて、足が思うように前に出ない。
自分がこんな状態なのだから、母はとっくに限界なのではないかと思うが、それでも母は泣き言一つ言わず、ここまで歩いている。
とは言え、これ以上母を歩かせるのは酷だと思った。
もう家からかなり離れているし、これ以上進む必要はない。
どこか落ち着ける場所を探した方がいいだろう。
「お母さん、大丈夫? まだ歩ける?」
「えぇ、大丈夫よ。でも、あとどのくらい進むのかはちょっと知りたいかな」
母が苦笑する。
その顔には、疲労の色がありありと浮かんでいた。
虎太郎は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「ごめん、お母さん。もうこれ以上は進まなくていいと思う。どこか休める場所を探そう。できれば、今後僕たちの住処になるような場所を」
「そうねぇ。でも、お金は持っていないから、それは難しいかもしれないわね」
言わずもがな、虎太郎たちは無一文だ。
この二日、食料は母が事前に用意してくれた非常食で凌ぎ、夜は人気のない茂みの中で眠った。
昔の牢獄生活のようだったが、屋内と屋外は似て非なるもの。
食料もだいぶ少なくなっていて、もう限界に近い状態だった。
「お金が要るようなちゃんとしたところじゃなくていいんだ。とりあえず、雨風さえ凌げる場所が欲しい。どこかないかな」
「そんなところあるかしら……」
母は顎に手を当てて考え始めた。
うんうん唸ってはいるが、なかなか妙案は浮かばないらしい。
答えが出ないまましばらく歩いていると、スレート壁の小さな倉庫が見えてきた。
農業用の道具や車両を置いているのだろう。
お世辞にも綺麗とは言えない、その古びた倉庫を見て、虎太郎はピンとくるものがあった。
「お母さん、倉庫は? 倉庫がいいんじゃない?」
虎太郎の声で顔を上げた母は、周囲を見て、やがてその倉庫に目が留まる。
「倉庫? 倉庫ってもしかして、この倉庫のことを言ってるの?」
「違う、違う。確かにこの倉庫を見て閃いたけど、この倉庫じゃないよ。もっと山奥とかにあるような、誰も使ってない倉庫のこと。それなら使っても何も言われないんじゃない?」
「まぁ、それなら……。でも、ほんとはダメだからね。ちゃんとお金を稼げるようになるまでの間だけよ?」
「はーい、分かりました。じゃぁ、早速探しに行こう」
虎太郎はすぐさま方向転換し、山に向かって歩き始めた。




