表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第二位、人間  作者: 青野 乃蒼
国家転覆

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/50

国家転覆

あまりにも凄惨な屍山血河(しざんけつが)の現場に、女性アナウンサーが嘔吐する。

他にも数名が口元を手で押さえ、吐き気を堪えている。


存命の隊員が半数ほどになった頃、隊員の一人が奇声を上げながら逃走した。

それを見た他の隊員たちも、次々に逃げ去っていく。


それでも、虎たちは襲撃の手を止めることはなく、逃げる隊員たちを捉えて蹂躙する。



やがて現場が死体の山だけになり正気に戻った報道陣は、カメラなどの機材を置いたまま、一目散に駆け出した。


テレビの画面は、リヒトたちを遠巻きに映したまま、定点カメラになっている。


『聞こえているか、人間共』


声が聞こえてくる。リヒトはカメラに向かって爪を差している。


『よく分かっただろう。お前たちの力、我々の力。これが全てだ。今のうちに、死ぬまでにやりたいことリストでも作って消化しておくといい。もうじき貴様らの時代が終わるのだからな。せいぜい楽しんでおくことだ。それと、最後にもう一つ。我々は今から総理大臣の首を取りに行く。総理大臣殿、せっかく前もって宣告してやったのだ。しっかり首を洗っておいてくれ。では、また後ほど会おう』


声の後、リヒトたちはくるりと身を翻し駆け去っていった。




想像を絶する事の顛末に、千尋はただただ呆然と立ち尽くしていた。


頭の整理が追いつかない。

何もかもが分からない。


あの声は本当にリヒトで間違いないのか。

リヒトの声だとするなら、どうやって話しているのか。

声が聞こえるときの、脳に響くようなあの感覚は何なのか。

リヒトたちに銃弾が当たらないのはなぜか。


そして、なぜこのようなことをリヒトたちはやっているのか――。


唯一理解したのは、園長が言った『最期』の言葉が、リヒトたちではなく、人間に対しての言葉に変わってしまったことだ。


あの声は告げていた。



人間の時代は終わる、と。



普段であれば、一笑に付して終わりだ。


だが、今は否定できない。

させてくれない。


目の当たりにしたあの惨劇が、その隙を与えない。


紀元前から脈々と続いてきた人間の世界が、今まさに、終わろうとしている。






道頓堀での事件から約四時間後、虎が国会議事堂に押し寄せ、首相を襲撃した。

首相はまもなく死亡が確認されたと報道された。


リヒトが首相を殺害すると事前宣告したのに、なぜ首相は逃げなかったのかと千尋は疑問に思ったが、ピンポイントでニュースキャスターが説明してくれた。


首相は『国会を放棄することはできない。国民が危険に晒されている中、自分だけ特別扱いで逃げるわけにはいかない』などと言って、逃避を拒否したようだった。


首相の鏡のような殊勝な心掛けだなと千尋は感心した。


いつもは冴えない政策ばかり打っていた気がするが、私欲を貪るような悪徳政治家ではなく、ちゃんと日本の最高司令官としての責務を全うしていたのだなと、今更ながら印象を改めた。




テレビ画面が切り替わる。


議場が映し出された。


議長席にリヒトが立ち、議長を取り囲むように配置された議員席の方に、他の虎たちが並んでいる。


人の姿はない。

ただ、椅子や机の至る所に、人のものであろう血痕が見える。


カメラは次第にリヒトをズームアップしていく。


リヒトはそれに気づいたかのように、カメラに視線を向けた。


『先ほど報道があったように、我々は大役を果たした。ついに総理大臣を討ったのだ。これで、日本は終わりだ。貴様らの時代は終わった』


人ではない、何か得たいの知れない怪物の、下卑た哄笑が聞こえてくる。

闇の底から這い上がってきたような、人間を蔑む響きがする。


『そして、ただいまをもって、この国は我々虎が統治する。新国家の誕生だ。その記念すべき最初の国王は、私、リヒト・カイザーだ』


議員席にいた虎たちが、まるで快哉を叫ぶかのように吠える。


ピラミッドの頂点から滑落したような、牙城が崩落していくような、そんな音が響いた気がした。

これにて第一章、終幕です!

いかがだったでしょうか?

少しでもお楽しみいただけたのであれば幸甚です。


次回より第二章に突入します!

よろしければお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ