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第二位、人間  作者: 青野 乃蒼
国家転覆

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銃を持つ人間、丸腰の虎

迎えた二日目の朝、大阪府警に一本の電話が入った。


「虎の群れが外を歩いています!」


通報者から詳しい話を聞いていると、次々に電話が鳴り出し、すぐに回線が埋まってしまった。

電話を切ると、切った瞬間から次の電話が鳴り出し、まさに入れ食い状態だった。


電話の内容はどれも第一報者と同じで、これが嘘やでたらめではなく、真実であることを証明していた。


府警はすぐに自衛隊に協力要請の連絡を入れた後、現場に急行した。

直近の通報をもとに、道頓堀へ向かう。




どれだけ通報があろうとも、現実世界において虎の大群が道端を歩いているなど、到底想像ができない。


心のどこかではありえないと思っていた警察や自衛隊員たちであったが、そんな猜疑心はあっけなく一瞬で霧散した。



虎は確かにそこにいた。


十頭を超える大群で。


観光名所である――例の道頓堀グリコサインが見える――まさにあの橋の上に。



橋の上や周囲は人々でごった返していた。


その場に居合わせた人々は、虎たちが一向に動かないため、恐怖を感じつつも興行か何かだろうと信じて疑わず、皆一様にスマホを手に写真や動画を撮っている。


警察と自衛隊の連合隊はすぐさま「すぐに避難してください! 危ないから離れて!」と避難指示を出す。


隊員たちの切羽詰まった形相と、銃やシールドを携帯した物々しい様相から、人々の間に不安と恐怖が瞬く間に伝播していった。


「逃げろ!」


誰かの声を皮切りに、人々が一斉に逃げ始める。


「焦らないで! 慌てずに避難してください!」


隊員たちが声を上げ続けるが、その声は人々には届かない。


悲鳴とともに流れる人の波は、雪崩のように全てを呑み込んでいった。




雪崩が過ぎ去った後、数人が橋の上に倒れていた。


隊員たちはすぐに駆けつけ救助し、橋から避難させた後、救護班に繋いでいった。


その間、虎たちはそれを、静かに鋭い目で眺めていた。




橋の周囲に一般人が残っていないことを確認した連合隊は、虎が橋から進行できないよう、橋の(たもと)を扇状に囲んで整列する。


連合隊の隊列が整い、虎と人間が対峙する。


両者微動だにせず睨み合い、周囲が真空になったかのように静寂に包まれる。

触れれば切れてしまいそうな細い細い糸が、辛うじて均衡を保っている。



銃を持つ人間と、丸腰の虎。



虚を突かれるわけでもなく、急襲されるわけでもないこの状況において、結果は火を見るよりも明らかだ。


それなのに、虎の雄大な体躯から発せられる獰猛なオーラと、鋭い眼差しから放たれる強烈な殺気に圧される連合隊員たちは、劣勢のように感じていた。


「かまえ!」と隊長の号令が静寂を破ると、最前列の隊員たちは素早く片膝立ちの姿勢になり、銃を構える。


カチャカチャと銃が揺れる音が鳴る。


無数の銃口を向けられてもなお、虎たちは動かない。


引き金を引く、そのたったワンアクションで死ぬという状況に置かれているにもかかわらず、虎たちは堂々と屹立している。


隊員たちは隊長の号令を待つ。


その間に頭上のはるか上から、ヘリコプターのプロペラ音が響いてきた。


隊列のはるか後方には、報道陣が大きなカメラを構えている。

そのカメラに向かって、女性のアナウンサーが状況を伝えている。


「大阪の道頓堀に、突如として多数の虎が姿を現しました――」

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