4話 儀式
「ツ…!きゃっ」
ツァイトに近寄ろうと足を動かすが、それよりも先に誰かに腕を引っ張られた。
「…っ…カシア!」
「ピス大丈夫か!?…ここは一旦逃げるぞ!」
突然現れたカシアはそう言って走り出す。
「ツァイトは!?」と言おうとしたが、ツァイトはカシアの脇に抱えられていた。
どうやら私を引っ張る際に回収したらしい。
「…っ。何が起こってるの!?」
「そんなことは後で話す!とりあえず逃げるんだ!」
そうカシアは叫ぶ。
私は逃げる最中に辺りを見渡す。
どこからか黒い何かが現れ地面に突き刺さっている。
それに空も暗い。
まるで世界が滅びる前のような光景だった。
* * * *
そんなことがあり、カシアとピスは逃げるように夜鳩の室内へと駆け込んだ。
「…っ…はぁ…。…ねぇカシア。何が起こっているの?」
私は訳が分からずにカシアに問うた。
あんな真っ暗な空、夜や嵐以外で初めて見た。
「…多分だが…ピスを攫った二人組が何かしたんだと思う…」
「あの?」
「あのだ」
こくりとカシアは頷く。
「でも…ツァイトはなんで倒れたの?私さ、あのどこからかやって来た黒い奴に何回か当たったけど怪我もしてないの。だけどツァイトはこんな傷だらけになったでしょう」
「なんで」と包帯にまかれたツァイトの腕を握りり聞いた。
人間と精霊種。種族の違いがここで出ているのだろうか。
「…多分だが…呪いのせいだな」
「呪い?」
「あぁ。…ピス。お前昔話知ってるか?巫女の話…」
「巫女の話」なんどかオウムのように音場を繰り返し思い出した。
「あぁ!知ってる!それ呪いが生まれた話の…」
「そうだ。そこでフィディスも生まれたんだが、人はそこでなんでも願いを叶えるフィディスこそが罰を与えられた種族の希望の光だと誰かが言ったんだ。だが実際は違う。呪いこそが罰を与えられた種族の光だったのに」
カシアは早口でそう言った。
心なしかカシアが焦っているように感じる。
「…それでだ。呪いが今さっき解呪されてしまった。止めようとしたんだが遅かった…。俺も思い出したのは今さっきなんだ」
「え?」
私はそう言葉を零すもカシアは気にしていないようだった。
「そうだ。だから…もう俺達も…っ…」
カシアは頭を押さえる。
私は慌ててカシアの背をさすった。
「大丈夫?カシア」
「…あぁ。だからだな。俺達人間以外の種族は…この世界に耐えられない。…多分体に不調が出てしまう…」
「カシア!?カシア!?」
段々とカシアの呼吸が荒くなってきた。
眉間に皺をよせとても苦しそうだ。
「力を持つものは完璧ではいけない。完璧でいると目を付けられる。だって…完璧は神だけでいいから…だから目を付けられないように…人間が最後の力を使い他種族に呪いを与えたんだ。不完全なものになるように。…っ…このままじゃ他種族が力を出せなくなる」
「な、なんでそんなことカシアが知っているの?」
私はカシアの手を握り聞く。
そうするとカシアは力なく笑ってこう言った。
『俺が創造神だから』
だと。
* * * *
「これで…世界を壊すことができる…」
シブ木は一人でそう呟く。
目の前には陣の上で血を流し倒れているモリがいた。
彼女はもうすでに息絶えている。
だってシブキ自ら殺したのだから。
本当はこの儀式。巫女が必要だった。
それも前世からの巫女ならなおいいと思っていたが、別に昔にこだわらなくても儀式はできる。
だからモリを言え贄にしたのだ。
彼女は今代の巫女だから。
彼女が自分を好いていたのも丁度良かった。
自分が甘い顔をして、「俺のために死んでくれるか?」と問えば喜んで命を差し出してくれた。
なんといい女だろか。
その言葉通り殺してやった。
だからこの儀式が完成したのだ。
「世界なんて滅んでしまえ」
前世でも滅ぼそうとしたが、創造神が出てきて滅ぼしきれなかった。
前世のモリが巫女から火を奪いたくなるような状況を作ったというのに。上手くいかないものだ。
まぁそれは今回上手くいったからいいのだが。
まず。フィディスを集め、儀式の準備をした。
陽虎はフィディスの危険性を分かっていて盗み封印していたみたいだが、それを解呪して自分たちがフィディスを回収していた。
少しは誰かに渡して暴れるように仕向けた。
だって本当の計画を嗅ぎつかれたら面倒だったから。
少しずつ少しずつ準備を始めたのだ。
ピスを誘拐したのもその一環。
だが魂が散らばっていたせいでくっつける手間が増えたが、計画が達成するためならそのくらいなんてことなかった。
(まぁ逃げられてしまったがな)
そう過去のことを思い返していると、とある人物から連絡が来た。
協力者。‥‥夜鳩側からしてみれば裏切り者だ。
そして画面に書かれていた人物の名前はというと。
『フェナ』だった。
夜鳩のピスを攫ったのはフェナだったのだ。
「フェナ。協力感謝する」
「いえいえ。呪いもさっさと全国に解呪させるようにしただけだし…ま。それでこっちは大騒ぎだけどねー」
フェナは感情の無い声でそう答える。
そう。裏切者はフェナだったのだ。
前のピスと一番仲が良かったからこそ、その日のピスの動きが分かっていた。
「…じゃあな。きっとお前の声を聞くのもこれで最後だろう。…礼を言う」
「そんな感謝しなくたっていいよー。私はこの世界好きでも何でもないから。じゃあね。ちょっくらピス達のことを足止めしてくるから。あんたはさっさと世界を滅ぼしてね」
「あぁ」と言ってシブキは通話をきった。
これで準備が整った。
あとは壊すのみだ。




