3話 あの日の後悔 後編
兵隊になったツァイトは友達のことを考える余裕もなく、ずっと誰かを殺していた。
もう種族など関係なしに殺していたのだ。
最初は殺した時夜も眠れなかった。
だが人は慣れるものだ。
五人目を殺した時には熟睡できるようになっていた。
それが恐ろしくもあったが、何とも思わなくもなっていた。
そんな人殺しの日々がいつまで続くのだろう。
そう思っていたある日のことだった。
いつものように誰かを殺しに行く。
その道中だった。
少しは慣れたところで男女の二人がいた。
女は男にすがりつき何かを訴えていた。
声を出していないことを考えるに魔法使いなのだろう。
捕虜だろうか。そう思い眺めていたが、よく見ると知り合いだということに気づいた。
ツァイトの友人で会った魔法使いの少女だ。
間違いない。
少しあっていない間に背が伸びていたのですぐに気が付かなかった。
「何をしているんだ?」
気になったので近くにいた同僚に小声で話しかける。
同僚は最初何のことを言っているか分からないようだったが、魔法使いのいる方を指させば「あぁ」と言って頷く。
「魔法使いって俺達人間が捕虜として使っているときたまにあるじゃないですか。その捕虜の一人が急にどこかへ走っていこうとしたから捕まえてるみたいですよ」
「逃げても無駄なのに」と同僚が言う。
ツァイトは助けようと思った。友人だ。
どんなに自分が人殺しになって変わっていても。友人を助けたいという思いは残っていた。
だが助けることは結果的に叶わなかった。
なかなか捕虜の集団に戻らない魔法使いに対し人間の男が苛立ち頭を銃で撃ちぬいたのだ。
その後分かったことだが、友人だった魔法使いはたまたま魔法で怪我している人間の子供を見つけたから助けようとしたかったらしい。
言葉を伝えられなかったがゆえに起こった悲劇とも言えた。
魔法使いを殺した人間は「紛らわしいんだよ」と愚痴っていた。
ツァイトはそう言った男の首を絞めそうになったことを今でも覚えている。
一人友人を失ったことに対し悲しんでいたツァイトだが悲劇はまだまだ終わらなかった。
次は精霊種の友人が死んだのだ。
精霊種との戦いの時。ツァイトはその戦いに参加していた。
そして友人が死ぬ現場を見てしまったのだ。
胸を突かれ、即死だったと思う。
だが喚きもせず。静かに死んでいた。
皆「精霊種はわめかなくて表情が無いから殺しやすい」と言っていた。ツァイトはそれが怖いと思った。
死体を永遠と眺めていたら上官に殴られた。
その次は竜種だった。
なかなか倒すことのできない竜種をようやく生け捕りにできたと喜んでいた。
お祭り騒ぎだったので気になり近づけば、友人の竜種がそこにはいた。
そしてそに皆石を投げ暴言を吐いていた。
友人がそんな目に合っているのに耐えられず、その次の日ツァイトはこっそりと逃がそうとした。
だが友人はツァイトを見てこういったのだ「誰だ。お前」と。
そこでツァイトは思い出した。
もうこの青年と一年も会っていないと。
忘れられて当然だ。だが悲しかった。友人にすら覚えられていないのかと。
そしてその数日後。友人は死んだ。
もうここでツァイトはおかしくなっていたのだ。
三人の友人の死体を見て。生きる意味すらもよく分からなくなっていて。
だからせめて天種の友人だけは生きていてほしいと思ったのだ。
なのに。
「はぁっ。…やっ!」
今回は天種との戦いだ。
これが終われば戦争が終わるだろう。そう誰かが言っていた。
そのせいだからだろうか。自分が誰と今。戦っているのか。それすらに気づけなかった。
「…は?」
強いと思った敵と戦ってどのくらいの時間が経っただろうか。
敵は明らかに手加減していて、舐められているのかと思った。
だから卑怯な手も使った。どんな形でも勝ちたかったからだ。
だが何故その敵が手加減していたのか。相手を殺してようやく気がついた。
相手は天種の友人だったのだ。
だから相手は手加減していたのだ。
そして自分の呪いを発動させないために。
戦いの途中から明らかに向こうは自我が消えていた。
自分が卑怯な手を使ってでも勝とうとしたからだろう。
(…俺が…殺した)
仲間は皆勝利に喜んでくれた。
だがツァイトは喜べなかった。
ずっと友人を殺したことが頭から離れなかった。
戦争はそれで終わったが、もうツァイトの心はほぼ壊れかけていた。
平和がよりツァイトの心を蝕んだのだ。
* * * *
「そう…だったんだね」
「…そうじゃ。だからわしは呪いの研究に協力している。…夜鳩に入った理由も償いと言えば償いじゃな」
ツァイトはどこか遠い空を見てそう言った。
いつかにカシアが言っていた。初遺体の時だっただろうか。
「贖罪のためにいる」のだと。
メルロのように身を守るために入った者もいれば、アザーのように保護されたものもいる。
だが一方で自身の罪を償うためにカシアやツァイトはこの組織へ入ったのだ。
「あの戦争の勝敗はうやむやになっておる。だからわしも犯罪者にhあなっておらんのだ。親はわしが生きて帰ったこと。犯罪者にならなかったことに喜んでおったが、わしはいっそ犯罪者になってしまいたかった。友人を殺して生き残った罪を償うために…」
「そ…っか」
私も罪を償うためだったりするのだろうか。
分からない。
分からないけど…それなら前のピスの分の罪も私が背負いたい。そう思った。
「それじゃピス。家へ帰ろうか。もうすぐ夕飯じゃろ」
「そうだね…。今日はなんだろう。カレーかな?」
墓に背を向けツァイトを話を続ける。
今日も平和に一日が終わる。それに感謝をしよう。
そう。
思ったのに。
「…!ピス!」
「え」
ツァイトは何かに気が付き私を押した。
私は何が起こったか分からず目を丸くする。
そのすぐ後だった。
世界が一瞬にして闇に包まれた。
私は恐怖心に包まれ辺りを見回す。
すると少しは慣れたところでツァイトが血まみれで倒れていた。
「…え?」
一週間以内には次の話を投稿したいと思います。
最終章をどうするか迷ってしまい…投稿ゆっくりになっています。すみません。




