表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡きレテの果て〜世界を駆け巡る忘却少女の冒険譚〜  作者: 雪道 蒼細
5章 全種族大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/55

2話 あの日の後悔 前編


 「…そのフィディスをバラまいているのは本当に私たちの組織だと世界には認識されているのか?」

 「?そうだあろう?お前たちは…」


 何当たり前のことを言っているんだ?といわんばかりの顔をボスはダージリンに向ける。

 

 それにダージリンは衝撃を受けた。今までもそうだったのだろうか。

 夜鳩が自分タイのことを追いかけていたのはフィディスを盗んだということもあるだろうが、バラまいているという方がもしかしたら大きかったのではないだろうか。


 「…あのね…私達…フィディスは盗んでいるけど、バラまいたりはしていないのよ?」

 「…?ならだれが…」


 眉間に皺をよせボスが問う。

 だが生憎ダージリンたちもそれは知らない。

 

 「…それは分からない。けれど私はそれに関してあなた方と協力がしたいと思ったの」

 「ーーそれはどんあ?」


 目を細めボスはダージリンを見る。


 「それは私たちにとっての敵を一緒に倒してほしいと言ことよ。そのフィディスをバラまいている組織のね…。…信用でき何のなら私を気が済むまで切り刻んでもいいわよ?死ぬ寸前までなら」


 そう言って精霊術で作った氷の剣をボスに持たせる。

 先は本物の剣同様鋭くとがっているため刺したらもちろん血が出る。


 「……いや。…切り刻みはしないが。…」


 とブツブツとボスが呟き始める。

 ダージリンは急かすわけでもなく、その様子をじっと見る。

 だがダージリンの視線に気づいたボスは一度咳ばらいをし、剣をダージリンに返す。


 「お前たちを完全に信用するわけではない…だが…共通の敵がいるとならば共に戦おう」

 「…そう。じゃあよろしくね。夜鳩のボスさん」


 そう言ってダージリンはボスと握手を交わした。


 * * * *


 夜鳩の拠点から少し南に行ったところに墓がある。

 夜鳩で殉職した者達の墓ともう一つ。


 全種族大戦時に命を落とした者達の墓がある。

 そこに花を添え手を合わせるのはツァイトだ。


 「…ツァイト」


 ピスはツァイトの後姿を見てそう呟く。


 「…なんじゃピスか。どうしたのじゃ?」

 

 ツァイトは後ろを振りむきピスに尋ねる。

 

 「…いや。用はないの。…お墓…ここでみんな眠っているんだね」

 「そうじゃの…」


 生ぬるい風が吹く。

 そして葉が宙を舞った。


 「…ねぇ。ツァイト。こっちの墓の人達は全種族大戦の時に命を落としたんだよね」

 

 そう尋ねるとツァイトは無言で頷いた。


 「そっか…ツァイトの友達も?」


 少し前に話したことだ。

 ツァイトの友人は皆種族が違く、戦争で命を落とした。そう聞いている。


 だがツァイトは首を横に振った。

 

 「いや。ここにいるのは人間たちだけじゃ。わしの友人の骨は埋めさせてもらえなかったからの」

 「…そう…なんだ」


 それもそうかと納得する。

 今と違い戦争中に敵の骨を自分の陣営の墓に入れるなどあるはずがない。

 少し考えれば分かったことだ。


 「…ピスよ。少しだけ老人の昔話に付き合ってくれんか?」

 「え」

 「なに。ただ聞いてくれるだけでよいよ。誰かに聞いてほしかったんじゃ」


 そう言ってツァイトは墓を見た。

 墓を見るツァイトの瞳がどこか寂しそうで、私は気づけば「いいよ」と返事をしていた。

 

 

 :

 :



 わしは幼いころ一人が好きな子供だった。

 人と話すのが不慣れというわけではないが、一人の方が楽だった。

 それに戦争中で友人になった人が次会うときまで生きているか分からない。

 そいて友人が死ぬたびに悲しんで自分の心がすり減るのが嫌で…わしは一人だった。


 そんなわしにも転機が来る。


 いつものように家の庭で本を読んでいた時だ。

 紙飛行機が頭の上スレスレを通過した。


 「?」


 そのまま地面に落ちるかと思われた紙飛行機は急に上へ急上昇しどこかへ飛んでで行こうとしていた。

 なんだかそれが面白くて、不思議で。気づけばわしは追いかけていた。

 

 「はぁっはあっ。待て。待てよ」


 わしは必死に手を伸ばし紙飛行機を追いかけた。

 だが紙飛行機に集中しすぎていたせいで、誰かが前にいたことに気づかなかった。


 「うわっ!」


 わしは驚き転んだ。

 後ろに倒れたので、尻がすごく痛かった。

 

 「あ。悪い!」


 尻をさすりながら立ち上がろうとすれば、目の前に手が現れた。

 視線を上げれば、青色の髪をした青年が手を伸ばしていた。


 「ごめんなぁ。ぼーっとしててさ。…ってお前人間か?珍しいなこんなところに」

 「え?」


 てっきり目の前の人物も人間だと思っていたわしは驚いて目を丸くした。

 

 「あー俺は天種なんだ」

 「て、天種‥‥」

 「あ。そんな驚くなよ…種族同士が戦争してるって言ってもそれは大人がだろー?」


 そう言って天種の青年は笑った。

 なんだか思いの外友好的な天種の青年なのでこちらもつられて笑ってしまった。


 そこからだ他種族との交流ができたのは。


 天種の青年は良く他種族の友達と遊んでいるらしい。仲間に入れてやると言われ、紹介してくれた。

 紹介してくれたのは魔法使いの少女。精霊種の青年。竜種の少年だった。


 それと会った時に知ったのだが、あの紙飛行機は魔法使いの少女が気まぐれで作ったものだったらしい。

 だが気まぐれで作ったものがこうして新たな友人とで会わせてくれたので感謝しかなかった。

 

 そこからだ。

 楽しい時間が始まったのは。


 友人たちとは本当に色々なことをした。

 泥団子を投げあったり、水鉄砲で遊んだり、かくれんぼをしたり鬼ごっこをしたり。毎日が本当に楽しかった。

 

 いつも皆と集まっている場所は葉っぱによって入り口が隠されている秘密基地のような場所なので爆弾が落ちてくることもないし大人に気づかれることもなかった。

 

 だからずっとこんな時間が続くと本当に思っていたんだ。


 わしが軍に入ることになるまでは。


 「え!?お前兵隊になんのかよ!?」


 天種の青年が呆気にとられたような顔をしてそう言った。


 「…しょうがないだろう。国からの命令なんだ。逆らったら殺される。…だから戦争が終わるまでは君達とは会えないと思う…」

 「そうか…大変だな…と言いたいが実は私にも戦いに参加するよう父に言われた」

 

 精霊種の青年がポツリと言った。


 「そっかー。じゃあ寂しくなるな。…戦争。前は身近に感じなかったが大人になると嫌でも分かってくるもんだな」


 竜種の青年がそう言った。

 魔法使いの女は無言で頷く。


 「ま。さっさと戦争終わらせてもらおう!そしてまた五人で会おうぜ!」

 「ちょ。さっさと戦争終わったらこの中の誰かの種族が巻けたとかにならない!?」


 天種の青年が慌ててそう言った。


 「そうかも…だが仕方がない。…戦争だしな」


 精霊種の男はそう言った。


 そうしてわしたちは会わなくなった。


 …ただ会わなくなるだけならどんなに良かったか。



 

 次回投稿がやや遅くなるかもしれないです。遅くとも4月の6日に投稿予定です。

 流れとしては次の章で最終章という感じです。あともう少しだけお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ