表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の師、弟子の世界に転生する  作者: 猫狐
五章 残響のパンドラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

366/373

力と正しさ

少し時間は戻り、夏休み初日。

ネイビアは孤児院に帰らず、魔術学院の寮に残っていた。

ネイビアのルームシェアの相手は帰宅しており、がらんと広く感じる。


(……広い、な……)


ネイビアはこの機に今まで行ったことのない学院の場所を巡ってみようと歩いているが、とにかく人が居ない。

トレーニングルームも、図書室も、先輩方の教室でさえ人っ子一人居ない。

残っている人と言えば一部の教師と食事担当のオバチャン、後は同じ居残りの生徒だ。


ふとSクラスの教室から窓の外を見ると、何やら見慣れない制服の人が目に付いた。


(……夏休みに?)


魔術学院の教師に連れられて、訓練場へと向かっていく。


(気になる。何をするのだろう?)


疑問を抱いたネイビアは教室から出て、訓練場の方へと向かった。


訓練場では結界が貼られ、緊張した様子の別学院の男子生徒といつも通りの先生がいる。


「では、君の基礎攻撃魔法をこの的に当ててみてくれ」

「は、はいっ!」


極度に緊張している。もしや、編入などだろうか?

そう思った次の瞬間、男子生徒は言葉を発した。


「『カルム・イグニス』!」


その言葉と共に、収縮された火の攻撃は的に命中し、そのまま吸収された。


「うむ。良い魔法だったぞ」

「あ、ありがとうございます!」


へぇ、とネイビアは感心していた。

カルム・イグニス。火の収縮系統の基礎攻撃魔法として書物に載っている物だ。

ネイビアも名前は目にしたことがあるが、実際に見るのとではだいぶ印象が違う。


そう思っていると、ふっと微笑んだ先生がこちらを見てくる。


「今のカルム・イグニス。君の目にはどう映ったかな?


一学年首席、ネイビア君」

「……流石にバレてますか」


訓練場の中に入ると、率直な感想を述べる。


「よく練られた、良い魔法だと感じました。ただ収縮し切れていない分の魔力が勿体無い、とも思いました」

「そこまで分かるのか。流石、首席生徒は違うな」


そこで区切ると、先生は一度男子生徒の方へと目を向ける。


「確かに、完璧なカルム・イグニスではない。

しかし、完璧とは誰が決めるのだろうか?

最も強い魔術使いか?女王イシュリア様か?それとも、著名な研究者か?

それが誰だかは分からない。だが、不完全でも完璧を目指すことが私は正しいと信じているよ」 

「はい!努力します!」


そう言う男子生徒とは裏腹に、ネイビアはふと考える。


(……じゃあ、完璧な魔術は、絶対に正しいのだろうか)


過ぎる疑念。

皆が、先生が。シア先輩達でさえ、その魔術は完璧ではないと思っている。

しかし、たった一人。限りなく洗練され、喩えるならば模範解答のような魔術を繰り出す先輩が脳裏に浮かぶ。


(……じゃあ、あの先輩は、完璧なのか……?)


そこまで考えて、ふと頭をリセットする。

魔術と人柄、ここに関連は無いはずだ。


「ところでネイビア君。君も一つ、撃っていかないか?」

「……あ、はい!是非!」


宙に飛んだ意識を先生の声が引き戻す。

慌てつつ返事をすると、満足そうに頷いて的が用意される。


「ネイビア君は土の顕現が得意だったね?基礎攻撃魔法に則れば『エイドス・グラン』だが……。中央魔術学院は基礎攻撃魔法に縛られないからね。好きなように攻撃してみなさい」

「わかりました」


ワクワクした目で見つめてくる男子生徒と、優しい眼差しの先生。

一瞬どのような形を作ろうか迷って、即決する。

土が音を立てて形を作り上げていくと、先生と男子生徒から声が上がる。


「おぉ……」

「これは……ゴーレム……!」


人間サイズの土人形……ゴーレムを生み出すと、ゴーレムは的を思い切り殴る。

威力は吸収され、ゴーレムもそこで砂となってサラサラと落ちていった。


「すごいです!これが中央魔術学院のエイドス・グランなんですね!」

「うむ。よく練られていた。さぞかし、努力を欠かさず積んだのだろう」


ネイビアはその言葉を聞きながら、自分の右手の掌を見る。


(……まだだ)


確かに、一学年にしては練られているだろう。

そこは魔術学院Sクラス首席として、恥じないものだと思っている。


だが。


「……先生、先程の的ってどのぐらいの衝撃を加えたら壊れますか?」


唐突な質問に、先生は少し考えて答える。 


「先程の強度のものであれば……ウチの五学年の上澄み、もしくは六学年の生徒が頑張れば壊せるぐらいではないかな?」

「……ありがとうございます」


お礼を言うと、また脳の回転が始まる。


(あの強度、自分も魔力を全部使い果たす覚悟でやれば壊れそうではあった)

(だが、それは先程の男子生徒のカルム・イグニスのダメージも蓄積されているから……)


やはり思い浮かぶのは、偉大で、強くて。

それでも認めたくない存在。


(レテ先輩なら……絶対に壊せる。どんな手加減を加えても。どの属性と系統を合わせても)


強いのだ。

強いが故に、問いたくなってしまう。


(レテ先輩……貴方は、貴方は……)


(……正しいのでしょうか……)


右手に握り拳を作りながら、そう思った。

面白い!続きが気になる!という方は評価やブクマ押してくださると嬉しいです……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ