8話
私はもっと積極的に色々な事を手伝おうと思い、庭の手入れや温室の管理などもやっていた。前世でも植物や花が大好きだった私にとって最高の天職だと思った。
そんな仕事の合間にも、リノアスと喋っていた。しかしそれはいつものように屋根裏部屋ではなく、手伝いをしている庭の隅っこの影や、温室の端だった。
私とリノアスは身分差が大きい。私の扱いは雑ではあるが…。だが雑だからこそ、身分差が下の者と密会してると公に晒されれば、国民からこの家の者までに悪い噂が広まってしまう…。ストレートにいくと国外追放の運命の私がこの行動を取るのはあまりにハイリスクノーリターンだ。
なのになぜこっそりリノアスと話しているのかというと…、
数日前
「あの…、エレノア様」
「ん?どうしたのリノアス」
「エレノア様はいつも食事を持ってきて下さる時に僕とお話して下さると思うのですが…、あの、それを…」
私はヒヤッとした。もしかしたら私と話してもつまらないからやめて欲しいって言うのかと思ったからだ。しかしその解答は綺麗な程に真反対だった。
「もっとお話する回数を増やして欲しいなっ…て…」
リノアスはモジモジと顔を赤らめながら言った。
それにしてもよく顔が赤くなるな。
「えっと…、それはなんで?」
「…僕の我儘でしかないんですが、エレノア様とお話するのが本当に楽しいんです、本当にお食事の時の時間では足りないぐらい…」
なにそれ可愛い!と思ったが周りからの信頼を得るために手伝いをしたりと意外と一日が忙しいのだ。やんわりと断ろう
「…嬉しいわ、ありがとう、でもね私も一日ずっと貴方とお話している訳にはいかないの、一応公爵令嬢としてやる事もあって…」
「…エレノア様」
「ん?何?」
言い終わらないうちにリノアスはぼそっと私の名前を言った。分かってくれたのかな…。
「次のお仕事する場所はどこなんですか?」
「え?」
意外な質問だった。それを聞いて何かあるのだろうか?
「ええっと…、明日から一応お庭でお手伝いをしようかなと…」
「でしたら僕が庭まで出向きます。」
「えっ?」
「エレノア様に毎度僕のところまで出向いて頂くなんて恐れ多いです。本当に休憩時間の1、2分とかでいいんです、貴方様と共にいたいんです。」
「ええっと、でもあまりに一緒にいすぎるとなんか変に怪しまれちゃわない?」
「ええ、だから本当に庭の誰も来ないような隅とかで」
あまりに熱心に説得してくるから心が揺れ動いていた。
「なんでそんなに…、一生懸命に説得してくるの?」
「……!…、貴方様と、もっとお近付きに…なり…たいので…」
彼は更に顔を赤らめた。嬉しいけどちゃんと公爵令嬢としての威厳を持たないと!ーー
メッッッッロ!!と本心が叫んだ。最初は威厳を…とか思っていたけど中身はただの一般人なのでそんな事は秒で吹き飛んだ。それに推しに弱いのでそれであっさり許してしまったのである。
お近付きになりたいだなんて!どれだけ私をした勘違いさせたいのよこの人たらし紳士!
私は前世でもSNSによく流れてきた外国人のメロさにハマっていたので、今のこういう生のメロさにはめっぽう弱いのだ。誰にでもメロいだなんて…、ずるい!
「エレノア様?どうされました?」
「あっ、ううん!なんでもないわ!」
そうして今手入れの休憩中にリノアスと話していた。
「僕嬉しいです、こうして二人っきりでエレノア様と共に居られることが!」
リノアスがキラキラの満面の笑みでそう言う。
めっちゃ絵になる。なんで小説に出てないのか意味わからないぐらい絵になる。
あれからちゃんと食事を与えているおかげか、段々と肉付きも良くなり身長も少し伸びてきた。どうしよう、ますます絵になるじゃない!
そんな目の保養に癒されているおかげか、父親に虐げられたりしても大丈夫なメンタルが手に入ってきていた。
次の日
さあ早く庭の手入れに行かないと!またリノアスが待っているはずだし。
そう考えウキウキで庭へ向かおうとすると、
「おい」
後ろから誰かが呼び止めてきた。
父親だ。
「…ご機嫌麗しゅうお父様、如何なさいました?」
朝からなんでこの父親の姿を見なきゃいけないのよ!!と内心キレた。
「とっとと準備しろ、くだらないパーティがある、社交界の人間共にまで見捨てられるぞ」




