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5話

「誰だ!!!!」


怒鳴られた。薄暗く姿がよく見えないが子供っぽい…?


「あなたこそこんな所で何をしているの!!まさか、不法侵入じゃないでしょうね!!」


一応公爵令嬢という威厳を持って言い返した。すると


「ッ…、ゲホッゴホッ…」


子供のような人は激しく咳き込み膝から崩れ落ちてしまった。


「えっ、ちょっと…!大丈夫ですか?!…えっ、」


私は慌てて駆け寄り驚いた。あまりに身体が痩せすぎている。この身体で大声を出していたならそれは負担が大きすぎることだろう。

そしてやはり子供の男の子だった。身長は私より少し高いか同じくらいか。歳上だろうか…?


「ゲホッ…、お水…」

「わ、分かったわ!」


ボソッと呟き、私は慌てて下からお水と、あと一応パンを1つ持ってきて少年差し出した。


「ありがとう…」


お水を飲み、咳も落ち着いたようだ。


「あなたお腹空いてる?良かったらパン食べて」

「…」


パンを差し出したが少年は怪しそうにこちらを見た。


「誰なんだお前は…」


お水を持ってきたのにまだ警戒心高い。やたらと用心深い人だな…。


「…申し遅れました。私はエレノア・ヴァレンティアと申します」

「ヴァレンティア…?!まさかアメレッド公爵のご令嬢ですか…?!」

「あぁ、まぁはい、一応…」


公爵令嬢と名乗ったらあの人は激怒しそうだが…、そう考えていると少年は慌てて膝まづいた。


「申し訳ございません!御無礼をどうかお許しください、エレノア様…!」

「ああいいんです気にしないで!私もさっき声を荒らげてしまってごめんなさい」

「そんな滅相も御座いません…、あの、差し支えなければエレノア様はどうしてこちらへ…?」


私はハッとした。この少年が疑問に思うのも当然だ。普通の令嬢がこんなにも荒れた部屋へ立ち入ることはないだろう。物を取りたいのなら使用人に頼むだろうし…。


「私は…、あ、よろしかったら持ってきたパン食べてください、食べながらでいいので聞いてくださいますか?」

「あ、ありがとうございます、こんな僕でよろしければお聞き致します」


ちょっと話そうか迷う内容だったので少し緊張した。でも現実でもそうだったように、思っていることは口に出さないと息が詰まる。私も誰かに話を聞いてもらいたいと思っていた。それに今は、むしろ初対面の知らない人の方が信頼できる。


「お恥ずかしいお話なのですが、私は立場としては公爵令嬢なのですが、父親に少々虐げられているんです」

「え…、そんな父親がいるんですか…?」

「意外と珍しくはないのですよ」


前世もそうだったから。分からない、普通の親が大半かもしれない。けれど私は冷たい父親しか分からない。


「でもそれを解消しようとお手伝いを申し出て、お父様にここの屋根裏部屋の掃除を言い渡されたんです」

「自分から申し出たとはいえ、こんな所の掃除を…?何がそんなに嫌っている理由なんでしょう…」

「よく分からないんです、とにかく妹を溺愛するばかりで…」


そういえば何故こんなにもエレノアを嫌うのか、それも分からないな…。でもエレノアの事はみんなどうでもいいから誰も気にしないのか…。


「…この家に仕えてる身ですが、公爵には憤りますね…、こんなにもお優しい令嬢なのに」

「あはは、パンと水を渡しただけですよ」

「いえいえ、それのみかと思われるかもしれませんが、私にとっては命の恩人です」


ちょっとスッキリした。やっぱり口にすることは大切なんだな…。

すると少年が立ち上がった。


「食料をくださったお礼に何か致します、なんでも命令して下さい」


少年は平然と言った。


「えっ、いや大丈夫ですよ!話を聞いて下さっただけで十分です!」

「いいえそんな、貴方様はこんな底辺な身分の者を助けてくださったんです 、…あでもエレノア様への対価に値するものがあるかどうか…」


…なんでそれが当たり前のように言うんだろう。きっとこの人が対価を払うのは今回が初めてでは無い。今までもきっと色んな人がこの人を助けてはいた。でもみんな見返りを求めていたんだろう。そしてこの人は毎回対価を払ってきた。その方法は物を渡すだけという単純なものではなく様々な方法で。


「本当に大丈夫です」

「いやでも…」


少年はまだ渋っている。こういう事はもっとハッキリ言おう。


「…見返りを求めた者は優しいとは言えないです、私は見返り無しに誰かに優しくして欲しかった、でもその為には自分だけがいい思いをするのは違います、だから今あなたにこうして助けたんです」

「あ…」

「優しさは連鎖すると言います、優しくしてもらったなら別の人の困ってる方へと優しさを繋いでいくのが世界が美しくある方法ですよ、だから今度はあなたが誰かを助ける番です、もちろん私はあなたが困っていたらまた助けます、見返りなんて要りません」


そう言うと少年はボロボロと涙を零した。


「そう…、そうですね…、そうか、あの人達は俺の事なんて考えていなかったんだ…」


やっぱり今まで見返り欲しさの人間に助けられてしまったのか…、そんな弱みを握られてまで…。


「たくさん泣いてください、心の中に溜めたままでは自分がどんどん辛くなるだけですから」

「はい…」


少年はしばらく静かに泣き続けた。

そして落ち着いたころ、私は少年に聞きたいことがあった。


「落ち着きました…?」

「はい、ありがとうございます」

「良かったです、今度は私が質問してしまうんですけどいいですか?」

「はい、もちろんです」

「良かった、最初から気になっていたんですけど、何故あなたは公爵家に…?」

長くなってしまうので切りが悪いですがここで終わります。

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