2話
思えばエレノアって不幸の塊のようなキャラクターだ。悪役令嬢ということもあってか周りに信頼されない。礼儀作法は完璧なのに国民の前でそれを生かさず「高慢で冷酷な令嬢」と言われる。
でも私はエレノアの事は嫌いじゃなかった。むしろ1番気になるし。それに作中で彼女の過去は何も明かされていないのだ。
だからこそ今10歳として転生して良かった。そして未来を知っている私なら、「国外追放」の未来を変えられる。
何としても今未来を変えて、前世とは違う愛され、必要とされる人生を送るんだ!
まずは父親と話ができないか試してみよう。
「あの、おとうー」
「パパー、お腹減ったよ〜」
話しかけようとしたのに…、異母妹のリリアに遮られた…。
「おおそうか、じゃあ朝ごはんを食べようか、おい、そこの娘」
「え?」
「何言ってるんだお前しかいないだろう?早く来い!」
なに?そこの娘?私を…?リリアより早く産まれてるし、名前すら呼びたくないの…?
「リリアに朝ごはんを食べさせろ」
「は…」
「何ボサっとしてるんだ!早く行け!!」
「はい…っ」
私はリリアを食堂へ連れていった。
本当に驚いた…。作中でも確かに父親のアメレッドは冷たい印象はあった。でもここまで格差が酷いなんて知らない…。
「お姉ちゃんはやくはやく〜!お腹空いた!!」
「うん…」
作中のリリアはもっと清楚な雰囲気があるのに…、今はただの駄々っ子だ。10年前だから仕方ないのだろうか。
ボーッとしながらご飯を差し出したら少しリリアの手に当たってしまった。
「熱ッ!!」
「あっ、」
「うぁぁぁぁん!」
あ、あああ、はっ…
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
「何やってる!!」
「パパぁ!熱いよぉ!」
私はただガタガタと震えながら立ち尽くすことしか出来なかった。
「お前!リリアの綺麗な肌が傷ついたらどうしようしてくれるんだ!!」
「す、すみません…、すみません…」
「チッ…、さっさと食べさせろ!リリアは腹が減ってるんだぞ!ごめんなリリア、もしまた何かされたらすぐ呼ぶんだぞ」
「うん…」
あんたが食べさせてるくせに…!
と思ったがエレノアの過去をよく分からない今は下手に動くべきではない。
「どうかされましたか?」
使用人だ。騒ぎを聞きつけて来たのだろうか。ていうかせっかく使用人がいるならその人に食べさせればいいのに…。
そうだ、私だって一応は令嬢なんだから頼もうかな。
すると父親は私の肩を掴みグイッと抱き寄せた。
「はは、すまないね、この子に妹の世話を任せてたんだ。まだまだ未熟だからな、騒がしくしてしまって申し訳ない。な?」
「…え?」
…気色が悪い…。さっきとはうって変わって猫撫で声で優しく話しかけてきた。まさか、使用人や他の人の前じゃいつもこんななの…?子煩悩で優しい父親を演じてるってこと?
ハッとして父親を見ると顔は笑っているが目は笑っておらず睨みつけている。「合わせろ」と言うことだろう。
「…はい、すみません、私もこれから姉として精進して参ります…。」
「そうですか、でしたらリリア様のお食事が終わったら洗い場までお皿を持ってきて頂けますか?」
「あ、はい…」
「では失礼致します」
使用人が部屋から出て行った瞬間、父親は私を突き飛ばした。
「うわっ…」
「ちっ、タイミングが悪ぃんだよ、こいつに触っちまったじゃねぇか汚ぇな…、すぐに手を洗わねぇと…」
本当に父親?それよりも同じ人間とは思えない…。
「おい、なにこっち見てんだ気持ち悪ぃな、とっととリリアに飯を食わせろ。」
父親はそう言い手を洗いに部屋を出ていった。
私は父親を睨みつけながらもリリアへと話しかけてみた。
「あの…、さっきはごめんなさい、次は必ずあなたに当てないように気をつけるね…?」
「うん…」
まだよく状況が分かっていないようだ。リリアは作中で17歳だから今は7歳だ。小さいから仕方がないのか…。
でも7歳にしては精神年齢は少し低いのではないか?前世の小学1年生より幼いとは思う。
でもその理由はかなり容易に分かる。父親に甘やかされているからだ。7歳で人にご飯を食べさせてもらうのも…。
まあでも物語が始まれば作中通りの性格になるからいいのか…?
それよりも私がこの10年どう過ごすかという所が大問題だ。こんな生活をずっとなんて耐えられない。そしてエレノアの結末である国外追放を何としても避けたい。
そのためには未来を知ってる私が、朝倉燈が物語を変えるしかないだろう。
まずは「エレノア」を変えないと。そのために出来ることはなんでもやる。
前世と同じ生活は御免な私は膨らむ気持ちを抑えつつそう思った。




