14話
「リノアス!!」
私は屋根裏部屋への階段を駆け上り彼の名前を叫んだ。
でも彼はそこにいなかった。
「嘘だよ…、だって昨日まで普通に喋って…、明るく楽しそうに一緒にいたのに…」
信じたくない、目の前の光景はきっと夢、そう信じたいけど、今は現実。リノアスがいないことも事実。信じられないけど信じるしかない。
他の解雇された使用人たちは今さっき出ていくところだった…。もしかしたら彼はまだいるかもしれない。
そう思い私は屋根裏部屋を駆け下りた。必死に使用人達の後を追いかけようと。でもそんな淡い願いは儚く消え散った。どこにもいない。他の使用人はもうとっくに出た後のようだし、全てのフロアを見て回っても見つからない。
「嫌…、嫌だ…、なんで…」
涙が零れ落ちた。今まで泣かないようにしてきたのに。国外追放される未来より辛いことはないと思っていたから。信用していた人が、この世界で唯一の味方がいなくなったことで気づいた。私の中で彼がどれほど大きな存在か。
前世の時から、友達がいなかった私は、自分を知ってもらおうとしなかった。私の居場所はなかった。
でも彼のお陰で自分が少し好きになれている気がした。彼はいつだって私を認めていてくれたから。
私は途方に暮れながら、彼の面影を探して屋根裏部屋に戻った。私が屋根裏部屋に行けば、いつもパッと顔が明るくなって、それで他愛の内話をしたりして…。そんないつもの日常を求めた。
「リノアス…」
やっぱりいない。
私は隅にしゃがみ込んだ。そこがリノアスとよく話すエリアだったから。そういえば昨日リノアスは、最後に何か言おうとしてなかった?どんな前置きか忘れちゃったけど…。
それにどうして自分の解雇の話をしてくれなかったの…?そしたらこんな急に別れにならなかったのに。…もしかしたら最後にそれを言おうとしてたのかな。でもあのタイミングは仕方がない。使用人さんも私に用があって、リリアだってあの時は既に寝ていた。本当にこれは運だった。もう少し早く行っていれば。もう誰も責めることはできない。
悪役令嬢だと運ですら味方してくれないのね。
すると足元に紙切れが一枚落ちていることに気がついた。そこには急いで書いたのか殴り書きのような筆跡があった。
『突然こんな事になって大変申し訳ございません、どうかお幸せに』
…リノアスだ、リノアスしかいない。私はもっと涙が溢れた。私こそごめんなさいリノアス…、あなたの話をもっと聞かなくて…。
お幸せにって書いたのは、私が昨日婚約の話をしたからよね。あなたは本当に優しいのね。この紙もきっと書く時間があまりなかったのかしら、なのに頑張って書いてくれたのね。この手紙は一生大事にする、あなだと思って。
ありがとう、私の大切な人
朝だ。とても天気がよく、洗濯日和の日。
「お嬢様、起きてください」
「んんー…もう起きる時間なの…?」
「そうですよ早く起きてください、それに今日はお嬢様のお誕生日ですよ」
「あっ、そうだった、もう大人になると誕生日の実感湧かなくなってくるのよね」
「…まぁとにかく、20歳のお誕生日おめでとうございます、エレノアお嬢様」
あれから10年が経った。
「ええ、ありがとう」
物語が始まる年だ




