10話
なんでアルベルトが...
アルベルトは私と父親の方をチラッと見ただけで直ぐにそっぽを向いた。
この少年、
アルベルト・ジョーンズは13歳。この物語の男性主人公で私の婚約者であり、リリアに恋をする人物。婚約するにはまだまだ早い、けれどこの時点で決まるって言うの...?
なぜこんなに早い時期に顔を合わせるのか...。
ジョーンズ家は公爵家でヴァレンティア家とかなり昔から繋がりがあるらしい。ただしそれは良い繋がりとはお世辞でも言えない。何かと言うと、その昔、エレノアとアルベルトの曾祖父あたる者がそれぞれの当主だったとき、ジョーンズ家VSヴァレンティ家は領地を巡って戦争が起きたのだ。その戦争は5年と続き、初めはヴァレンティア家が押していたものの、ジョーンズ家に逆転され、敗戦となった。その後条約も結び改めて戦争が全て終結した。戦争は昔の話で今はもうこうして互いのパーティーに参加している………
というのは建前である。
それにアルベルトは私の婚約者とはいえ、貴族ものの話なら全てがそうであるように政略結婚だ。政略結婚とはお互いの利害が一致して初めて政略結婚となる。それは親の利害の一致の話であり、子供の気持ちは尊重されない。
だが私の父親のアメレッドは政略結婚すらも建前であった。
「いやぁ本当にお久しぶりですなぁジョーンズ公爵、なかなかお会いしなかったのでもうお亡くなりに…、いやいや冗談ですよ!笑」
「ははは相変わらずお上手ですなヴァレンティア公爵、なかなかお会いできないのも仕方がないですよ、何せ領地が広いせいでヴァレンティア家が遠くなってしまったんですからな!」
怖っ…、お互いに目が笑ってない。父親同士が心の中で冷戦を繰り広げている中、ジョーンズ公爵夫人は冷や汗をかいている。それもそうだ、今にも戦争が起こりそうなんだから。
「ほらエレノア、婚約者なんだからアルベルト君と話してきなさい」
「はいお父様…」
いやきもっ…。家じゃ名前も呼びたくないくせに、いざ呼ばれるとキモイ。さすが外面だけはいい男。
いや、そんな事よりアルベルトとの仲を深めることが重要だ、それは恋愛的な意味でなくてもいいから。
さもなくば私はこの人に婚約破棄される。国外追放が原因で。恋愛的でなくてもいいのはどういうことかと言うと、まず考えて見てほしい、私の婚約者である彼は主人公、でも私は脇役扱い。それはなぜなのか。
答えなんて超簡単リリアと恋に落ちるからだ。確かに愛のない結婚とはいえ相手の妹となんて禁断の恋だ。
原作の中だとエレノアはアルベルトに惚れている。だからこそアルベルトが惚れているリリアを妬む。だから嫌がらせする。そんなことをしてもアルベルトの心は動かないのでさらに突き放され冷遇される。
あまりに単純な流れだ。読者からすればエレノアはなんて愚かに見えることだろうか。
だからもう恋愛的でなくてもいい、今は信用を得て国外追放の未来を回避することの方が重要だ。
それにしてもなんでエレノアはこの人に惚れたんだろう?確かに今のエレノアより3歳歳上だから少しばかり大人びて見える。まあシンプルに私のタイプじゃないのか。この人より私はリノアスの方が好みなんだよねー、後は優しいし。まあそれだけじゃ幸せにはなれないか…。そんな甘くは無いのよねこの世界。
考え事はこのくらいにしておいてとりあえずアルベルトに話しかけることにした。
「お初お目にかかります、アルベルト様、私エレノア・ヴァレンティアと申します、どうぞよろしく」
私は自分が知ってる最大限丁寧な敬語で挨拶をした。しかし彼はこちらを見向きもしなかった。するとアルベルトは立ち上がり、ジョーンズ公爵の方へと向かっていった。普通に無視された。
「父上、私は納得できません、なぜこのヴァレンティア家の娘と婚約しなければ行けないのですか?」
「…失礼なことを言うな、それにこれはお前が口を出すことではない」
ジョーンズ公爵は真顔でそう言った。てか政略結婚させられてるのはお互い様なのに…。
すると公爵夫人が声をかけてきた。
「あなたがた、これからダンスのお時間だそうよ」
「おおそうか」
このパーティーは舞踏会ということもあり、ダンスをみんなそれぞれ始めだした。
みんなやっぱ自分のパートナーと踊ってるな…、ペアルックみたいなドレスの方も…ん?パートナーって事は私これからアルベルトと踊らなきゃいけないの…?




