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第14話―2

「みなさん、どうか順番にお願いします」

 女の子たちがわらわらと教室を飛び出していったかと思えば、女の子たちは見事に会長とあたしの横を通り過ぎて、その少し後ろで立ち止まった。


「……は?」

 会長が振り向く動きに合わせて、あたしも背後を見る。そこには、サインやらなんやらに応じるジェラルドさんの姿があった。


「おや、髪切られたんですか? きのうまでの長さもお似合いでしたが、その長さもまた一段とあなたの魅力を引き立てていますね」


「おや、あなたは毎期テストで上位の成績を収めている方ではありませんか。あなたのような優秀な方は、ぜひとも我が黒衣会に入っていただきたいですね」


「そのネイル、とてもお綺麗だ。……え、あなたがご自分で塗ったんですか? 美しいうえに器用だなんて、放っておけないな……」


 女の子たちの手をとって、そのひとたちの目を見つめるジェラルドさん。もちろんひとりひとり丁寧に言葉を投げかけている。


 どうやらあの女の子たちの目当てはあたしたちの後ろを歩いていたジェラルドさんだった、というオチらしい。


「……なにあのクッサいセリフ……」

「女の子は結構そういうセリフ好きですよ、人によりますけど」

「は? 君もそういうのが好きなの?」

「そうは言ってないです」


 会長ってば早とちりしすぎだけど、やっぱりまだ思考が正常じゃないみたいだな。


「やっぱりなにも言わないひとよりかは言ってくれるひとがいいんじゃないですかねー」

 ジェラルドさんと女の子たちの大群から離れつつ呟く。


「……へー……。……僕もああいうのやったらいいの?」

「でもジェラルドさんの後釜狙うんじゃ遅いですよ。それじゃあジェラルドさんでいいやってみんななっちゃいますし」


「……君にしてはまともなこと言うね」

「会長がいま変なだけですよう」


 ひととおり会話を終えると、会長はあまりひとが通らない階段の踊り場で不意に足をとめ、その場でうずくまった。


「ウッ、うわぁあああん! やっぱり僕はだれからも必要とされてないんだあああ!」

「あ、我慢してたんですね会長っ、あれは空元気だったんですね……!」


 期待していたこととは違う出来事が起こったわりには、会長はいつもどおり喋っているな、と思っていた。けれどもやっぱりしんどいみたいで、うずくまって膝に顔をうずめるなり泣き叫び始めた。


「そんな、女の子たちからフラれたくらいで、だれからもってわけでは……」

「いいや、彼女たちだけじゃないね! 教師陣からも見放されてるんだ! 生徒たちからの声が大きいって言ったって、僕を期待してくれているなら僕の今後に賭けてくれたっていいじゃないか……! それなのに、あっさり意見を飲んだりして! なんてすばらしい民主主義の学園なんだ……!」


「文句言いつつ褒めてる……。会長、情緒大丈夫そうですか……?」

 会長がべったりと床に伏せた。髪とか服にゴミつきそうだけど、平気かな。


「うっ、ひぐ、うぅううううう……。よかれと思ってやってきたことが全部裏目に出た……。僕の約三年間は無駄どころかこの学園のマイナスでしかなかった……。僕はゴミ、塵芥、ううんそれ以下……」


「かいちょーよくいままで我慢してましたねー! もう我慢できなくなっちゃったのはしょうがないですから、いまのうちに吐き出しちゃいましょー。ここあんまり人通らないみたいだし!」

 あたしは屈んで、会長のふわふわの髪を掴むようにしてちょんちょんと撫でる。


 会長と結構長い間過ごしてきて、会長は脈絡があったりときにはなかったりして、ときどきこういう状態になるのはわかっているから、あたしも変に焦ったりせず、会長を見守ることに徹する。


「ホントはあたし、グレッグ先輩が現れたときとか、セシル先輩が情報を売ったってわかったときには会長こういうふうになっちゃうんじゃないかと思ってたんですからねー」

「……後輩にそんなふうに思われて情けなさすぎるだろ、僕……。消えたい……。ここ高めの階だよな……。でもどうせ、せいぜい骨折程度なんだろうなあ……」

 会長、舞踏会に行った日もそういうこと言っていた気がする。やっぱり降りたり落ちたりするのが好きなのかな?


「会長が痛いのお好きならとめないですけど」

「……とめなさい」

「えっと、じゃあ、やめてください!」

「棒読みなんだよ、ったく……」

 渋々といった感じで会長が起き上がる。


「はー……、近々グレッグとやらに録音された音声も流出するんだろうなぁ……。そうしたら僕はおろか白亜会ともどもお終いだよ……。長い歴史にほかでもない僕が終止符を打つことになるなんて……」


「まだいちおー終わったわけじゃないですし、会長いまでもじゅうぶん頑張ってますけど、あとちょっとだけ踏ん張ってみましょうよー」

「頑張ってなんかいないよぉおおおお」

「じゃあもっとなんかできるってことですか?」

「できないッ、僕にできることなんかひとつもない……!」

「きょうは長めですねー。むりもないですけど!」


 こういうときセシル先輩がいてくれればなー、と思うんだけど。最近の会長はセシル先輩と必要最低限のことしか話していないようなのだ。やっぱりセシル先輩が情報を売った、という事実が会長の尾を引いているらしい。


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