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第五十三話 死力を尽くして

決戦、開幕。

ロシアのどこかに、山脈を吹き飛ばして作られた荒野があり、ヴァルハラのアジトクルセイドキャッスルは、その荒野の真ん中に存在するという。


「ここが、木林影斗が残した情報にあった場所なのよね?」


空子は辺りを見回しながら訊いた。影斗から受け取ったメモリーチップに記された情報が正しければ、ここにクルセイドキャッスルがあるはずだ。あるはず、なのだが…。


「…ないわね。」


どこまでも山と森林が続き、城どころか荒野すらない。少なくとも、空子の目にはそう見えた。


「いや、何かあるぜ。見えないだけでよ」


狩谷にも見えない。だが、彼の手の中にある黄の印は強い光を放ち、何かに反応している。


「ゲイル、アンジェ。見えますか?」


「ああ。見える」


「うん。」


だが、エリック、ゲイル、アンジェの三人は、目の前にあるものが明確に見えていた。かといって荒野も城も見えなかったが、代わりに不自然な空間の歪みが見えていたのだ。こんなもの、普通ならいくら特殊な存在である彼らでも見えない。普通なら。見えるのは、普通ではない理由があるためだ。そもそも、空間の歪みなど誰かが起こしでもしない限り起きない、起きていること自体が異常な現象。つまり、誰かが起こしている。そして、ヴァルハラ関係者でそんなことができる者など一人しかいない。すなわち、ミライの次元操作だ。空間を操って結界を張り、クルセイドキャッスルを隠している。歪みは結果的にできているものであり、この結界の先にクルセイドキャッスルがあるのだ。


「でも、このまま進んでもクルセイドキャッスルにはたどり着けない。」


アンジェはこの結界の機能を見抜いた。クルセイドキャッスルを隠すための結界なのだから、普通にたどり着かれては意味がない。ただの迷彩としてでなく、結界の向こうにたどり着けないような機能があるのだ。


「壊さなくちゃ!」


アンジェは拳に力を込めて、目の前の結界を殴り付けた。一瞬スパークが発生し、アンジェの拳は弾かれる。


「今の…!!」


「俺にも見えたぜ!!」


空子と狩谷にも、結界が見えた。


「アンジェ!!大丈夫か!?」


「う、うん。すごく強力な結界…全力でやったのに、跳ね返されちゃった!!」


腕を押さえるアンジェを支えるゲイル。ミライが張った結界なのだから、簡単に破れるはずはないだろうが。


「よし、今度は俺も一緒にやる。」


アンジェほどではないが、ゲイルもまた異質な存在。二人でやれば、あるいは…。


「うん。じゃあ行くよ!せー、の!!」


「はぁっ!!」


二人は同時に結界を殴った。今度は先ほどよりずっと大きく激しいスパークが発生する。だが、まだ結界は破れない。次の瞬間、エリックが何の前触れもなくホワイトスイーパーを出し、結界の、ちょうど二人の拳が接している部分に向けて発砲した。驚いて飛び退く二人。


「な、何するの!?」


「あまりに長かったので短縮させてもらいました。」


エリックがアンジェに答える。見ると結界には弾痕が残っており、そこから目の前の空間全体にヒビが広がっていく。そして、とうとう結界は砕け散った。向こう側には荒野と、巨大な城が見える。


「あれがクルセイドキャッスルか…!!」


狩谷は遂に姿を現した敵の居城を睨み付けた。


「…行こう。」


ゲイルは仲間達を連れて、クルセイドキャッスルを目指して歩き出す。




「!!」


玉座に座っていたミライは目を見開く。


「いかがなされましたか?」


最終作戦が始動してもそばにいたフィスは、頭をもたげて尋ねた。


「私の結界が破られました。」


「ミレイヌ様の結界は味方の識別を持たない者を通さない。ここにたどり着くには転移を使うか、結界を壊すのみ。それを行うということは…」


ゴーザが淡々と話すと、ミライは立ち上がり、力を使った。




クルセイドキャッスルに向かって進み続けるゲイル達。


「何をしに来たのですか?ゲイル。」


その時、空に巨大なミライが出現した。これもまた、次元操作の応用である。ゲイルは答えた。


「あなたを止めに来た。」


「ほう…殺しに来たのではなく、止めに?言っておきますが、殺す以外の方法で私を止めることなど、できませんよ。あなたもわかっているはず」


ゲイルはミライを止めに来た。だがやはりミライの決意は固く、止まるつもりはないと言う。


「ミライさん!!ゲイルの気持ちも考えてやってくれ!!」


「あたし達はあなたと戦いたくありません!!こんな馬鹿なこと、今すぐやめて下さい!!」


ミライを説得しようとする狩谷と空子。しかし、


「私は愚か者と会話をするつもりはありません。どうしても私を止めたいというのなら、この私のもとにたどり着くことです。」


ミライは聞く耳など持たずに消えてしまい、代わりにクルセイドキャッスルから無数のヘルポーンとボーグソルジャー、リバイバルソルジャーが出撃してきた。飛行ユニットを取り付けた者や軍用ヘリ、戦車に乗っている者もいる。ビッグクルセイドも見えた。


「やはり戦うしかないのか…」


「わかりきっていたことです。今さら驚いたりしませんよ」


ゲイルは説得に失敗したと悟り、ミライの決意の固さを改めて知った。だがエリックの言うように、戦闘を想定していなかったわけではない。というより、予想通りと言った方がいいだろう。


「アデル、起動!!」


「ビャクオウ、始動」


ゲイルとエリックはアデルとビャクオウに変身。アンジェは覚醒し、狩谷は黄の印をエルダーキングに変化させ、


「メシアジャケット!!!ハイパーギガトラッシュ!!!」


空子はメシアジャケットとハイパーギガトラッシュを装備した。


「突破するぞ!!」


まずはミライのもとへたどり着くこと。アデルは仲間達に号令をかけ、突撃した。











アラスカに到着した皇魔達。アラスカの荒野の真ん中に、周囲の荒れ果てた光景に似つかわしくないものがある。機械でできたゲートだ。ゲートは多数のエボリュータントが守っているので、間違いなくフォビドゥーンへの入り口だと判別できる。


「あれがフォビドゥーンへの入り口…」


「よし、突入しよう!!」


意気込む光輝とさだめ。だが、皇魔が待ったをかけた。


「普通に乗り込んでもフォビドゥーンまでは時間がかかりすぎる。今は、少しでも時間が惜しい状況だ。」


「確かにそうだが、フォビドゥーンへの入り口はあそこしかない。どうするつもりだ?」


アーサーは元デザイアなだけあり、フォビドゥーンへの行き方を熟知している。しかしそんな彼でさえ、あそこには普通に乗り込むしかないとわかっていた。入り口が一つしかないのだから仕方ない。


「こうするのだ。」


おもむろに拳を振り上げる皇魔。


「え、まさか…」


レスティーは皇魔がやろうとしていることを想像し、冷や汗をかいた。そして、その想像は的中する。


「ふんっ!!!」


皇魔は地面を殴り付けた。剛造の覇気によって、さらにこの二週間の修行によって力を高めた皇魔の拳は、彼らがいる地面を破壊するには十分すぎた。


「やっぱり…」


「えええええええええええええ!!?」


「きゃあああああああああああ!!!」


「おお、なるほど!」


レスティーは頭を押さえながら、光輝は驚愕し、さだめは悲鳴を上げ、アーサーは納得して、皇魔とともに砕けた地面の下へと落ちていった。だがさすがに落下死ということはなく、五人ともちゃんと着地した。


「な、何だ!?」「て、敵だ!!」「敵襲ーっ!!敵襲ーっ!!」


そびえ立つフォビドゥーンと、慌てふためく敵の目の前に。


「奇襲成功だ。騎乗猛進撃!!!」


皇魔は騎乗猛進撃を発動し、紅帝王に乗ってエボリュータント達を蹴散らし始めた。


「岩盤ぶち抜いて奇襲とか…」


「皇魔らしいと言えば、らしいよね…」


光輝とさだめは呆れている。地下にあるフォビドゥーンに対してはショートカットもできる一石二鳥の有効な奇襲だが、こんな奇襲方法は皇魔以外に思い付かないだろう。


しかし、皇魔の奇襲も長くは続かなかった。フォビドゥーンの正面入り口から衝撃波が飛んできたのだ。


「ぬう!?」


衝撃波は皇魔に激突した。しかし幸いなことに、皇魔も紅帝王もダメージを受けていない。だがその直後、進撃が止まった皇魔に向かって誰かが突進してくるのが見えた。老人だ。老人は手にしていた杖を、おもいっきり横に引いた。見えたのは、白刃。杖は仕込み杖だった。老人は跳躍し、皇魔に斬りかかった。腕で仕込み杖の一撃を受け止める皇魔。もうわかるだろうが、老人の正体はコレクだ。


「待っておったぞ小僧ども。上を破壊してくるというのは予想外だったがな」


コレクは怪人体に変身すると仕込み杖を双剣に変え、皇魔を斬った。紅帝王を犠牲にして跳躍、回避した皇魔は着地し、


「決着をつける時が来たな、コレクよ。今日こそ引導を渡してくれる!」


覇氣鎧装を発動し、コレクと打ち合いを始めた。だが、待っていた幹部はコレクだけではない。レスティー達のもとへ、大量のミサイルが飛んでくる。


「くっ!!」


光輝は羅刹刃から雷を出して、ミサイルを全て撃ち落とす。


「防がれましたか。残念残念」


するとメイカー人間体が、両手にミサイルランチャーを持って出てきた。


「メイカー!!」


「人間体のままで兵器生成を!?」


驚くレスティーとアーサー。メイカーは笑って説明した。


「我々は既に、首領の手によって最終強化を終えています。おかげで人間体のままでも、ある程度エボリュータントの力が使えるんですよ。」


メイカーは説明しながら、サングラスを投げ捨てた。その下には、冷酷に見下しながらも愉悦に微笑んでいる双眼があった。


「無論、エボリュータント時の力も強化されていますよ。あなた方を皆殺しにできる程度にはね」


言いながら怪人体に変身するメイカー。レスティーも闇影武装を使う。


「三人とも、ここは私と皇魔に任せて、先に行って。こいつらを片付けたら、すぐにあとを追うわ。」


「わかりました!」


「気を付けてね、レスティー!」


「どうか無事で!」


駆け出す光輝達三人。


「行かせませんよ!!」


武器をガトリング砲に切り替えて攻撃するメイカー。だが、すぐにレスティーが煙玉を投げつけて炸裂させる。当然この程度、レーダーがあるメイカーにとっては目眩ましになどならない。だが、ほんの一瞬だけメイカーがひるんだ。一瞬でも動きを止められれば、レスティーにとっては十分だ。その一瞬でメイカーに急接近し、小太刀でガトリング砲を破壊。


「行って!!」


光輝達を行かせる。


「味な真似を…」


「さあ、始めましょう!!」


互いに因縁を持つ二人もまた、戦いを始めた。




二人の師匠に幹部と大勢のエボリュータントを任せ、フォビドゥーン内に突入した光輝達。アーサーの案内もあって、迷うことなく進んでいく。


「二人とも大丈夫かな…」


不安になるさだめ。確かに皇魔達は強いが、あれだけの数のエボリュータントのうえに幹部を二人も同時に相手にするのだ。不安にもなる。だが、光輝は不安になどならなかった。


「平気さ!皇魔さんとレスティーさんだもん!」


皇魔とレスティーだから。たったそれだけの理由で、光輝は安心していた。それほどまでに二人を信頼していたのだ。それに、このフォビドゥーンの最奥部には彼らの一族が大昔から戦ってきた怨敵、ルーラーがいる。ルーラーに比べればあの幹部やエボリュータント達は前座、ウォーミングアップの相手にすぎないのだ。そんな連中に負けるはずがない。


「…ちょっと待って下さい。」


光輝はアーサーに言って止まってもらった。


「どうかしたのか?」


「光輝?」


いぶかしげに光輝を見る二人。もう自分達はデザイアのアジトに、敵の居城にいる。倒すべき相手のすぐ近くまで来ているというのに、なぜ待つ必要があるのか。


「妙だと思いませんか?普通敵のアジトっていえば、兵士で満たされているはずなのに、誰も僕達を仕留めに出てこない。」


そうなのだ。フォビドゥーンに侵入してから、光輝達はエボリュータントどころか一般兵にさえ遭遇しなかった。待ち構えている様子もないし、そもそも気配が感じられない。




「雑魚の相手なんかしたってつまらねぇだろ?だから全員革命の実行に出払ってもらった。ここにいる兵士は外の連中で最後さ」




それには、すぐ先の部屋から姿を現したウォントが答えた。アプリシィも一緒だ。


「ウォント!!アプリシィ!!」


驚く光輝に、アプリシィは答える。


「俺達幹部はお前達を迎撃するために残っている。そしてお前達は、俺達の予想通りに現れてくれたというわけだ。」


幹部と最低限の兵士だけの待ち伏せ。光輝達の実力を、ルーラーは把握している。だから兵士ではなく、幹部を迎撃に当たらせた。無駄だから、時間稼ぎもできずに全滅することがわかっているからだ。


「…アーサーさん、ここは僕とさだめさんが引き受けます。先に行って下さい」


「勝てるのか?相手は最終強化を施された幹部だ。俺も一緒に…」


「いいえ。あの二人だけは、僕達が倒さないといけないんです!」


「…わかった。必ず来てくれ!」


アーサーはウォントとアプリシィの隣を通って奥に進んでいった。ウォントもアプリシィも、アーサーの行動に対して何もしない。当然だろう。光輝が皇魔とレスティーに全幅の信頼を寄せているように、この二人もまたルーラーとイズマの実力を信頼している。それに、彼らの目的はアーサーを始末することではないのだ。


「…この時が来るのをずっと待っていた。」


両親の仇を討てる。ずっとずっと、本当にずっと待ち望んでいた状況が遂に訪れ、光輝はそっと呟いた。


「…ケリ着けるか。」


ウォントもまた呟き、アプリシィと二人で怪人体に変身する。そうなのだ。彼らには何よりも優先すべきことがある。ルーラーの守護よりも大切なこれに比べれば、裏切り者の処刑など眼中にない。その目的は、


白宮光輝と桐崎さだめ。二人と戦い、決着をつけること。


「さだめさん。もう一度だけ、僕と一緒に戦ってくれ。これが最後でいい」


光輝はルーラーではなく、ウォントとアプリシィと戦いに来た。だから、ここで全ての力を使いきってもいい。元々ルーラーと皇魔とレスティーの関係には、入り込めない。だから、これが最後でいいと言ったのだ。


「戦うよ、何度でも。光輝が望むなら!」


「…ありがとう!」


旧神の因子を完全にコントロールし、旧き印を出現させ、さらに疑似進化した。




アーサーが進んだ先。


「…」


そこには、イズマが無言で待ち構えていた。


「イズマ様…」


「…覚悟はできておるか?」


何の、とは答えない。全て、決めてきたことだ。


「…はい!!」


「そうか。ならば死ねぃ!!」


アーサーはダークスに変身し、イズマも怪人体に変身して、親子の悲劇の戦いが始まった。











「まずあたしから!!」


空子はハイパーギガトラッシュを構え、設定を光線モードに切り替える。そしてエネルギーをフルチャージし、


「ポジトロンボイス!!!」


引き金を引いて超弩級の光線を発射。多数の敵を薙ぎ払った。それにしても凄まじい規模と破壊力だ。単体でのパワーなら、アデルのワールドエンドブレイカーやビャクオウのギャラクティックエンドブレイカーを確実に上回っている。ちなみにエネルギー系の射撃をどうやって行っているのかというと、実弾とは別にマガジンが装着されており、そこにあらかじめチャージしておいたエネルギーを使って発射する、というものだ。マガジンのエネルギーを使い果たした場合、また次のマガジンを装着することにより再度射撃が可能になる。マガジン一個分のエネルギーを全部費やした砲撃を行った空子は、中身がなくなったマガジンを排除した。同時に、エイボンブックに収納してあったマガジンが自動で装填される。このマガジンも他の弾薬と同じ扱いだ。


「どうエリック?これでもまだあたしが弱いって言えるかしら?」


生まれ変わった相棒を使いこなしてみせた空子は、得意になってビャクオウに尋ねた。


「確かに、弱いと言ったことは取り消すべきでしょうね。」


ビャクオウの目から見ても、空子は弱くなどなかった。彼女はもう、アデル達の仲間としてふさわしいだけの実力を身に付けていたのだ。


「ですが…」


しかし、それを知ったうえでビャクオウは百体に分身し、ギャラクティックエンドブレイカーを一斉射撃。


「その程度ではまだまだ、私の領域には届きませんよ。」


「…あっそ。」


格の違いを改めて見せつけた。


「ラァッ!!」


狩谷はエルダーキングの一振りで数体のリバイバルソルジャーを斬り倒し、続く敵の二陣を手から出す暴風で吹き飛ばす。暴風にはかまいたちが混ざっており、巻き込まれた敵は例外なく細切れにされた。エルダーキングの切れ味と、それを振るう狩谷自身の身体強化。さらに強力な真空波の使用。以前はここまでできなかったはずだが、これもハスターとシュリュズベリィとの修行の賜物だ。


「どうにも力が有り余っちまってな。暴れさせてもらうぜ!!」


そのうえ、狩谷の肉体はウボ=サスラの細胞が混ざっているため、素での力もかなり強い。この程度の雑魚に苦戦することは、まずないだろう。


「シャイニングフェザーストーム!!!プラチナアロースプレッド!!!」


二種類の必殺技を使って、多数の敵を殲滅していくアンジェ。


「バルザイの偃月刀!!」


討ち漏らした相手は、剣に変化させたアークスとバルザイの偃月刀の二刀流で仕留める。


「ダゴン!!ヒュドラ!!」


アデルはダゴンとヒュドラを出して、エネルギー弾と実弾を乱射する。敵の数が多いので、狙いを付ける必要はない。


「ルルイエセメタリー!!!」


さらに巨大なエネルギー弾を発射し、武器をチャウグナルファングに切り替え、ブーメランの要領で投げる。これによって、全てのビッグクルセイドが破壊される。


「クトゥグアドライブ!!!」


さらに全身を炎化し、残った敵を焼き滅ぼした。


「行くぞ!!」


雑魚を全滅させたアデル達は、今度こそクルセイドキャッスルに乗り込んだ。



内部の敵を蹴散らしながら進むアデル達。すると、


「ここから先は通行止めだ。」


ゴーザが立ち塞がった。


「闘将軍ゴーザ…出てきやがったな!!」


早速挑む狩谷。


「スタイルコンバート」


ゴーザはジェネラルスタイルに変身し、四本腕に剣を生成して、狩谷の攻撃を受け止めた。


「おおおああああああああ!!!」


だが、狩谷はまだ止まっていない。


「!!」


咆哮を上げながら踏み込み、ゴーザをすぐ横の壁に押し付けたのだ。これにはゴーザも驚いた。


「狩谷!!」


「行け!!俺はこいつに借りがある!!お前はミライさんに自分の意志をぶつけてこい!!」


「くっ…わかった!!」


「死ぬんじゃないわよ!!」


アデルと空子はアンジェとビャクオウを連れて、先を急いだ。ゴーザは四本腕を振るい、狩谷を遠ざける。


「お前にはこれほどの力などなかったはず。たった二週間で何をした?」


「知りてぇか?ならゆっくり話してやるから、俺と勝負しやがれ!!」


「いいだろう。」


狩谷とゴーザは戦いを始めた。



待ち伏せていた雑魚を倒しながら、奥へ奥へと進むアデル達。


「やはり来たか。スタイルコンバート」


今度はマヴァルが待ち受けていた。ジェネラルスタイルへと素早く変身し、クリスタルの雨あられを放つ。


「ライフイーター!!」


空子はライフイーターを出し、ハイパーギガトラッシュと併用してクリスタルの連射と拮抗した。


「みんな行って!!立ち止まってる時間なんてないでしょ!!」


「すまない!!」


空子はマヴァルとの対決を引き受け、アデル達を先へと進ませる。


「わしの相手は貴様か小娘。貴様の弾が尽きるのが早いか、それともわしが撃ち抜かれるのが早いか。比べるまでもないと思うがな」


「当然でしょ!!勝つのはあたしよ!!」


二人の戦いは、弾幕勝負へともつれ込んだ。




一体どこにこれだけ潜んでいたのかと疑問に思うほどの敵を処理しつつ、アデル達はさらに奥へと向かう。


「来たか、小僧ども。」


三将軍最強の男、ネイゼンはその途中で仁王立ちしていた。


「彼は私が相手をしましょう。少し、思うところがある相手なので。」


「ああ。任せる」


アデルはビャクオウの実力を信頼している。だから、安心して任せることができた。アンジェとともに駆け抜けるアデル。ネイゼンは手を出さず、ただビャクオウを見ていた。


「止めないのですか?」


「無論だ。ミレイヌ様は、あの二人との対決を望んでおられる。わしはただ、そのための露払いをするのみだ。」


「なるほど。」


ビャクオウはホワイトスイーパーを構え、


「スタイルコンバート」


ネイゼンはジェネラルスタイルに変身した。











ミライは、目を閉じてアデル達の到来を待っていた。


その脳裏には、自分の生き方を教えてくれたとある男との出会いが、思い出されている。




『どうした?何をそんなに悲しんでいる?』


それは、世界を平和にする方法がないということがわかり、絶望していた時だった。ミライは話し掛けてきた男に、全てを話した。


『なるほど、世界を平和にしたいのにその方法がわからないと。言っておくが、そんなものはないぞ。必ず争いが起きるよう、世界はできているのだ。』


『そんな!そんなこと、理不尽すぎます!』


彼女はただ、世界から悲劇をなくしたかった。全ての人に、笑っていて欲しかった。だが、必ず誰かが悲しまなければならない。世界はそんな風にできているのだと、男はそう言った。


『…だが、一つだけ世界を平和にする方法がある。』


しかし、男の話は終わっていなかった。


『えっ?今、あなたはそんな方法はないと…』


『あまりにつらい選択を迫られることになる方法だから、言わなかっただけだ。』


『どんな選択にも耐えてみせます!!教えて下さい!!』


やっと希望の光が見えて、ミライは土下座して頼み込んだ。男はその方法を教える。


『簡単だ。世界を滅ぼせばいい』


『は!?』


『必ず争いが起きるという法則は絶対に変えられん。だが、その法則がある世界そのものを壊せば、争いは起きん。争う者が誰もおらんからな』


『で、ですが、それでは平和の意味などないのではないですか!?』


ミライは男の提案に猛反発した。確かに誰もいない世界では争いなど起きないが、それでは彼女が何よりも守りたいと願っている笑顔まで失われてしまう。


『どのみち争いが起きれば死ぬ。ならば争いで苦しんで死ぬよりも、最初から生まれぬ方が幸福ではないか。』


『そ、それは…』


『笑顔よりも幸福だ。お前は笑顔などという自己満足のために、数多の人間を不幸にするつもりか?幸福を願えぬ者に、平和をもたらす資格などないぞ。』


『…笑顔よりも…幸福…』


『そうだ。笑顔など、一瞬しかもたぬ幸福の思い出にすぎん。思い出となる刹那の幸福よりも、思い出にならず持続する永遠の幸福だ。それこそが、真の完全平和なのだ。そしてその完全平和こそ、全世界と全生命の滅亡。滅びこそが幸福、死滅こそが唯一の救済。』


『滅びこそが…幸福…死滅こそが…唯一の…救済…』


気付けばミライは、男が言ったことを復唱していた。男は満足そうに笑みを浮かべる。


『そうだ。お前はそれをもたらしたいのだろう?』


男の問いに対してミライは頷く。


『その方法を知りたいのだろう?』


また頷く。


『よかろう。ならば耳を貸せ』


男はミライに囁き、完全平和をもたらす方法を教えた。




「ミレイヌ様!ミレイヌ様!!」


フィスの声で、ミライは我に返る。


「どうしたのですかぼーっとして。」


「…昔を思い出していました。思えば、ここまで長かったなと。」


その時、


「ミライさん!!」


ドアを突き破って、アデルとアンジェが飛び込んできた。


「待っていましたよ、ゲイル。」


アデルを歓迎するミライ。


「…?あれは…?」


と、アンジェはミライの玉座の背後にある、巨大な機械に気付いた。


「これに気付きましたか。これはディメンションチャージャー。戦闘を行った際に発生するエネルギーを、世界中から回収して集める装置です。この機械がクロノクライシスの要となる、最重要なファクター。」


ミライは説明する。ルーラーが協力的だと言ったのは、戦ってくれるから。ただ戦ってくれればいい。そのエネルギーを集め、クロノクライシスは発動するのだ。


「そうか。なら、その機械を壊せば、クロノクライシスは失敗するんだな!?」


アデルはミライに訊く。


「ええ。ですが、それは絶対に叶いません。」


「この私がいる限り、ね。」


ミライとアデル達との間に、フィスが割って入った。


「まず私と戦ってもらうわ。」


「お前に用はない!!」


「そこをどいて!!」


アデルとアンジェはクロノクライシス計画を阻止すべく、ミライとフィスに戦いを挑んだ。











フォビドゥーンの前では激戦が続いていた。


「ふん、剛造の力を受け継いだだけはあるということか。」


皇魔とコレクの戦いは拮抗していた。だが、皇魔はコレクに言い放つ。


「貴様は俺の敵ではない。」


「何?」


「まだわからんのか?俺が本気になっておらんということに。」


皇魔は、コレク相手に本気になってなどいなかった。彼は幹部すら遥かに凌駕するほど、強くなりすぎてしまったのだ。拮抗していた理由は、ルーラー戦前の肩慣らしだからである。


「…ふん。つまらんはったりを言いおって!」


だが、コレクはそんなことを信じていない。当然だ。彼はクリスマスでの戦いを合わせて、二段階強化を受けているのである。他の幹部よりも強いのだ。


「よかろう。貴様の自信が本当かどうか、この技で見極めてやる!!」


コレクは双剣を合体させて大剣に変化させ、さらに巨大化させた。その大きさは、数百mにも及ぶ。


「界滅剣!!!」


これぞコレクの最終奥義、界滅剣である。巨大化させた剣にエネルギーを込めて斬る、それだけの単純な技。しかし、最終強化まで受けたコレクのそれは尋常なパワーでなどあるはずはなく、恒星八つを紙のように両断してしまえる、まさしくその名の通りに世界を滅ぼせてしまう威力なのだ。


「うおりゃああああああああああああ!!!!!」


コレクは天高く跳躍して、界滅剣を振り降ろす。だが、


「なっ…!!!」


直後に飛んできた巨大な覇気の玉によって界滅剣は消滅し、コレク自身も大ダメージを受けて地面に落ちた。


「ば、馬鹿な…!!」


変身が解除され、よろめきながら立ち上がったコレクが見た先には、皇魔が。


「闘界覇神拳奥義・鬼神激動拳。言ったはずだ。貴様は俺の敵ではないと」


「…み、見事…!!」


最終奥義を破られ致命傷を負わされたコレクは、皇魔の実力を賞賛して倒れ、息絶えた。




「はぁ…はぁ…」


レスティーは荒い息継ぎをしながら、メイカーと対峙していた。


「やれやれ、その程度ですか。期待外れですが、長い因縁のある相手です。最期くらいは、派手に散らしてあげましょう!!」


言ったメイカーは、全身に兵器を装備する。だが、それだけではない。レスティーの周囲にも多数の兵器が現れ、彼女を包囲した。


「ダスト・トゥ・ダスト!!!」


メイカーが射撃を開始すると同時に、全ての兵器が射撃を始める。これがメイカー最大の必殺技、ダスト・トゥ・ダストだ。自身の兵器と、相手を包囲した兵器の一斉射撃で、逃がすことなく相手を消滅させる技だ。


「あっはっはっはっはっはっは!!!!あーっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!!!」


狂ったように笑いながら射撃を続けるメイカー。そのまま、二分が経過した。あれだけの火力の攻撃を二分も続けていれば、いくらレスティーでもまさしく塵が塵になるくらいに消滅する。案の定、レスティーがいた場所には死体も残っていなかった。


「ふふふ…ちょっと派手にやりすぎましたかね?ふふふ…!!」


勝ち誇るメイカー。


だが、次の瞬間、


「ぐふっ!?」


彼は全身に斬撃のダメージを受けて倒れた。


「忍法・瞬獄殺。」


気付けば、彼の目の前には消滅させたはずのレスティーがいた。


「な、なぜ!?あなたは消滅させたはず!!それに私の装甲は…!!」


レスティーはメイカーの質問に一つずつ答えていくことにした。


「あなたが殺ったと思ったのは、変わり身よ。」


「か、変わり身!?」


「弱ってたように見えたのも演技。あなたをさっきみたいに、油断させるためにね。」


そう、レスティーは変わり身の術を使って丸太と自分を入れ替えていたのだ。ダスト・トゥ・ダストで消滅させなければ、丸太の存在を確認し、油断することもなかったのに。それから、弱っていたように見えたのも、さらなる油断を誘うための演技だ。


「それから、あなたの装甲の話だったわね?装甲が反応できないほどの速さで斬っただけよ。」


メイカーの全身はレスティーのスピードに対処するため、指向性爆発反応装甲で包まれている。だが、レスティーはその装甲が反応する以上のスピードを身に付けてしまっていたのだ。


「こ、こんなことが…!!」


「優位な立場に立てば立つほど、単純な罠に引っ掛かりやすい。覚えておくことね」


レスティーは勢い良く跳躍。


「忍法・五行滅殺の術!!!」


必殺の忍法を浴びせた。


「ぐあああああああああああ!!!!」


メイカーは避けることもできず、消滅させるはずの相手に逆に消滅させられてしまったのだった。


「背中の傷の借り、返させてもらったわよ。」


「レスティー、無事か?」


「当然!さ、早く行きましょう!」


それぞれ幹部を倒した皇魔とレスティー。既に雑魚は全滅させているので、憂いはない。先に進んだ三人の安否が気になった二人は、急いでフォビドゥーン内部へと乗り込むのだった。

無事それぞれの敵のアジトに乗り込んだ訓練生達。因縁に決着をつけるべく、激闘を繰り広げる光輝とウォント。そしてヘブンズエデンにもまた、変化が訪れようとしていた。


次回、『後悔が終わる時』。


お楽しみに!

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