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第四十六話 激闘!!黄金の魔人!! 後編

後編です。

武器を生成し、自在に操るコレク。超高温の炎を放つウォント。絶対零度を超える冷気を生み出すアプリシィ。望んだ兵器を無限に造るメイカー。理を操作し、世界の在り方すら歪めてしまうイズマ。デザイアの幹部達、そして副首領は非常に強力な特殊能力を持つエボリュータントとなった。こうなるとデザイア最強の首領ルーラーは、彼ら以上に強力で特殊な能力の持ち主なのだろうと予想するのが普通だ。


しかし、実はルーラーの能力はそこまで特殊なわけではない。


特殊なことは特殊だが、『~を操る』とか、『~を生み出す』とか、そういう能力とは全く系統が違うのだ。


大雑把に言うと、エボリュータント時のルーラーは人間体時よりも身体能力が強化されただけなのである。光線や光球、衝撃波は出せるが、特殊、とは言い難い。それぐらいの能力なら、下級のエボリュータントでも普通に使える。というより、幹部クラスなら使えて当たり前だ。特殊なのはここからである。それは、自分より弱い相手の特殊能力を無効化するというもの。エボリュータントになる前のルーラーは虚弱体質で、ゆえに覇気を練ることができなかった。身体が耐えられないのだ。だから、ルーラーは進化の宝珠に願った。強くなりたい。誰よりも、兄すら超えて強くなりたい。その結果生まれたのが、今のルーラー。誰よりも強くなりたいと願ったルーラーの肉体は通常のエボリュータントの数万倍以上に強化され、自分より格下の相手の特殊能力を受けなくなった。特殊能力と言うよりは、特性と言うべきか。とにかく、ルーラーは頑丈で馬鹿力なだけの、単純なエボリュータント。だが、その単純なエボリュータントを撃破できた者は一人もおらず、イズマに匹敵する実力を持つアーサーでさえ敗れたのだ。さらに言うと、単純な戦闘力だけならミレイヌを上回っている。ただ格下ではないため、彼女の次元操作を無効化することはできないようだが。


「それでもいずれ超える。私はルーラー。全てを超越し、打ち負かし、支配する!ゆえにルーラーなのだ!!」


ルーラーは剛造に向けて拳を放った。


「ぬうっ!!」


デザイア最強の拳。本来なら大陸一つ消し飛ぶような威力を秘めているものだが、力を一点に集約して放っているため、周囲に影響を及ぼすような無駄な破壊は起きない。力だけでなく、自分なりに技術も高めた。そんな攻撃をまともに受ければ、いくら剛造でも少し堪える。防御はしたが、彼の巨体が押された。


「はぁっ!!」


その間に、満夫が小太刀でルーラーを斬りつける。だが、ルーラーは右手だけで小太刀の斬撃を一撃ずつ丁寧に弾き、顔面目掛けて蹴りを放った。のけぞってかわしたが、あと0,01秒回避が遅れていたら首から上が弾け飛んでいただろう。パワーだけでなく、スピードも相当ある。


(それだけじゃない!!私が前に戦った時よりも、さらに強くなっている!!)


虚弱体質でさえなければ、ルーラーも強くなる素質は十分あったのだ。もちろん、進化の宝珠の力をすぐそばで受け続けていたというのもあるだろうが。二人は協力して攻撃するが、ルーラーはそれを容易く受け止め、かわして反撃してくる。


「ゲイル!!やっぱり助けに行こう!!このままじゃ剛造さんと満夫さん、殺されちゃうよ!!」


アンジェは状況がどれほど不利であるかを理解し、アデルにアインソフオウルモードの発動を促す。だが、アデルは動かない。


「ゲイル!!」


再び呼び掛けるが、それでもアデルは動かない。


「もういい!!ゲイルが戦わないなら、私一人で…!!」


アデルがあてにならないとわかったアンジェは、玉砕覚悟で突っ込もうとする。しかし、アデルはアンジェの手を掴んで止めた。


「ゲイル!?」


アデルの意図がわからず、彼の顔を見るアンジェ。と、彼女は気付いた。自分の手を掴むアデルの手が、微かに震えているということに。それを見てから、もう一度アデルの顔を見る。表情はわからないが、手の震えと伝わってくる気配から、飛び出したい気持ちを必死で抑えていることがわかった。


「彼らの戦いを穢してはいけません。」


ビャクオウがアンジェに言う。


「エリック…?」


「彼らは今、己の全てを捨てて戦っているのです。そうしなければいけない何かを感じます。この高潔なる戦いを、絶対に穢してはなりません。ゲイルにはそれがわかっているようですね」


戦いにこだわりを持つビャクオウだからこそ、そのビャクオウと戦ってきたからこそアデルも気付くことができた。この戦いの意味を。


「…俺達が飛び出すのは、あの二人が負けた時だけだ。それまでは、絶対に誰も手を出すな。」


「う…」


「わ、わかったわ…」


アデルに言われ、狩谷と空子も踏みとどまる。


(…ふ…皇魔は良い友を持ったな…それで良い)


剛造は心中笑った。そうだ。それでいい。この因縁に、他者が関わってはならない。ましてやこれは、鬼宝院と霊宮寺の宿命を終わらせるための戦いでもあるのだ。


(そしてその宿命は、この一撃で終わらせる!!)


「受けよルーラー!!鬼神激動拳!!!」


剛造は必殺奥義を放った。幾度となく皇魔が仲間達に見せてきた技。剛造が放つとなれば、大きさも威力も桁外れとなる。


「パーフェクトスマッシャー!!!」


対するルーラーもまた、右手から強力なエネルギー波を出して拮抗する。しかし、鬼神激動拳の方が少しずつ押してきていた。


「首領!!」


「手を出すなイズマ!!これは私の獲物だ!!私の!!!私だけの!!!!」


イズマの加勢を言葉で制し、押し返そうと力を込めるルーラー。


「まだだ!!忍法・五行滅殺の術!!!」


そこで満夫が割り込み、光線で鬼神激動拳を押し込んだ。これによってパーフェクトスマッシャーは完全に押し負け、消し飛ぶ。


「ぬう!!」


そのまま向かってくる攻撃を、両手で掴んで止めるルーラー。


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


だが防ぎきれるはずもなく、大爆発が起きた。


しかし、


「ぬぅぅぅんっ!!!」


マントを払って煙を吹き飛ばし、無傷のルーラーが現れる。


「そんな!!」


「あれだけの攻撃を喰らって無傷だなんて!!」


驚く光輝とさだめ。


「少し驚いたが、遊びは終わりだ!!」


「!!剛造様!!」


剛造の前に飛び出す満夫。次の瞬間、ルーラーが消えた。と思った時には満夫の前に現れており、満夫の全身に拳の連打を叩き込んで吹き飛ばした。


「がはっ!!」


よほど激しい攻撃だったらしく、闇影武装が解除されてしまう。


「満夫!!おのれ!!」


拳を繰り出す剛造。ルーラーはそれを軽く片手で払うと、全身に力を込める。


「ハイパービルド!!!」


するとルーラーの全身の筋肉が膨張し、体格が倍近くなった。全身にエネルギーを行き渡らせることで、瞬間的に体格を膨れ上がらせ、強力な一撃を喰らわせるための技だ。


「死ね!!剛造!!!」


ルーラーが放った拳は剛造の高密度な覇気が生み出した鎧を紙のように容易く破壊し、剛造の脇腹を貫いた。


「ぐっ…うう…!!」


「もう一発!!!」


「ぐああっ!!!」


さらに放たれた二撃目の拳が、剛造の右の肺を貫通する。


「親父!!!」


「父様!!!」


皇魔とレスティーが叫ぶ。


「終わりだ。」


ルーラーは両腕を引き抜き、元の体格に戻って背を向けた。覇氣鎧装を解除された剛造の巨体が仰向けに、ゆっくりと倒れる。


「あ、ああ…!!」


両手で口元を覆うアンジェ。


「行くぞ、アンジェ。奴の相手をするのは、今だ!!」


悲しんでいる暇はない。今度こそ本当に、彼らが戦う時が来たのだ。


「うん!!行こう!!」


「「エルピスシステム、起動!!コード・アインソフオウル!!!」」


アデルはアンジェと融合し、アインソフオウルモードに。


「やれやれ、手間を掛けさせてくれる…シルバーキーシステム、始動!!コード・ケイオス!!!」


ビャクオウもケイオスモードになった。


「今度は俺達の相手をしてもらうぞ、ルーラー。」


「ふん、待っていたぞ。お前達は楽しめそうだ」


「その余裕…すぐに崩してあげます。」


構える三人。


「ふん、ならば我も参戦しよう。よろしいですかな?首領」


「うむ。構わん」


そこへ割り込むイズマ。だが、さらに割り込む者がいた。


「あなたの相手は私です。」


「む!?貴様、アーサー!!」


アーサーだ。空子が密かに連絡していたのである。


「ほう、久しいなアーサー。」


「首領。今一度、申し上げます。すぐにヴァルハラとの同盟を解消して下さい!」


「ならぬ。」


やはり聞く耳を持たないルーラー。


「やはり駄目か…ゲイル、アンジェ、エリック。イズマ様は俺がやる。君達は首領を!!」


イズマと戦い始めるアーサー。


「そういうわけです。行きますよ!」


ビャクオウはホワイトスイーパーとブラックインフィニティーの二丁で、射撃を行う。発射されるのは、凄まじいパワーが込められたエネルギー弾。しかも、全てが複雑な軌道を描いて襲ってくる。ケイオスモードとなったビャクオウは魔術も使用可能で、魔術で弾道を操作しているのだ。全方位から襲ってくるエネルギー弾などかわせるはずもなく、喰らってしまうルーラー。


「くっ…!!」


だが休む間もなく、アデルがプライドソウルで斬りかかった。


「ハァッ!!」


「うっ!!」


それを片手で防いだルーラーは、アデルを強引に払いのける。直後に武器をダゴンとヒュドラに切り替えるアデル。ルルイエセメタリーを発射する。だが、エネルギー弾はアデルの目の前に発生した空間の穴に吸い込まれて消えた。


「何?ぐわっ!!」


いぶかしむルーラー。と、また空間の穴が今度はルーラーの背後に出現し、出てきたエネルギー弾がルーラーを吹き飛ばす。前につんのめってきたルーラーに、即座に武器をチャウグナルファングに替えてブラッディファングを当てる。


「うおおっ!?」


「ギャラクティックエンドブレイカー!!!」


ホワイトスイーパーからギャラクティックエンドブレイカーを撃つビャクオウ。


「もう一発!!」


時間差でブラックインフィニティーからもギャラクティックエンドブレイカーを発射し、ルーラーを吹き飛ばした。


「ふははは!!いいぞ!!あの出来損ないどもより数倍は楽しい!!」


だが、ルーラーはダメージらしいダメージを負っていない。だが、先ほどの剛造達の攻撃よりはダメージを受けているようだ。


「出来損ないだと!?」


『あの人達を馬鹿にするなんて…許せない!!』


「まだまだこれからです!!」


アデルとビャクオウは、さらにパワーを増大させてルーラーに挑んだ。


「シャドーラッシュ!!!」


ダークスに変身したアーサーは、自分の身体から影で作った腕を四本生やし、拳の連打を放つ。


「ブララララララララララララララ!!!」


賢者の杖でそれをさばいていくイズマ。


「消し飛べぃ!!」


少し距離を取ったイズマは、手からエネルギー弾を出す。


「シャドーシールド!!!」ダークスは腕を盾に変化させて、エネルギー弾を防ぐ。


「アンダーヘルニードル!!!」


「コメットボンバー!!!」


影の棘と降り注ぐ隕石。二人の力は拮抗していた。




「親父…!!」


「父様!!」


この激戦に乗じて、皇魔とレスティー達は倒れた剛造と満夫なそばまでたどり着いていた。


「すまんな、皇魔…わしらの手で、倒せればと思ったのだが…」


「ざまぁない。あっさり負けてしまったよ…」


剛造も満夫も、瀕死だった。気を操っているためかろうじて生きているが、ここから再度戦闘を行えるまでに復帰するのは、自力では不可能だ。


「心配しないで!!私の気を使えば…」


「俺も回復の魔術を…!!」


レスティーと狩谷は二人を助けようとする。と、


「それほどの傷、君達の力では治癒しきれない。」


ナイアが戻ってきた。


「遅れてすまない。お嬢様の守りを固めるのに少し手間取った」


「ナイアさん!!」


「どういうことですか!?私達じゃ治しきれないって」


光輝とレスティーは驚き、理由を訊く。


「単純な技量不足だよ。これを治すには治療魔術が一番だが、君達ではごく初歩的な魔術しか使えない。これほどまでに深い傷は、かなり高度な魔術じゃないと治せないんだ。」


「じゃあ、ナイアさんなら何とかできるんじゃ?」


「もちろん。今すぐ治してあげよう」


さだめが訊くとナイアは快く了承し、剛造と満夫に近付く。


しかし、剛造は片手を上げてナイアにかざした。


「…?」


意味がわからず止まるナイア。


「気持ちは嬉しいが、不要だ。」


なんと、剛造は回復を拒否した。


「な、何を言っているのだ親父!?」


「私もだ。必要ない」


「父様まで!?」


満夫までが拒否する。理由を、剛造が聞かせた。


「聞け皇魔よ。お前の闘界覇神拳は、まだ完全ではない。お前の闘界覇神拳を完全なものへと導くには、最終奥義が不可欠なのだ。それを今からお前に伝授する…!」


「最終奥義だと!?」


皇魔は闘界覇神拳に最終奥義があるということは知っていた。だが、どういうものかまでは知らない。今までずっと剛造が教えてくれなかったからだ。


「そうだ。最終奥義、『魂力こんりょく継承けいしょう』。己の生命力全てから覇気を練り上げ、それを他者に与える技だ。これは次代へと己の意志を託す技であり、使えば使用者は死ぬ。だから、わしが死にかける状況まで待つ必要があったのだ。」


「魂力継承は闘界覇神拳と、霊宮寺忍法共通の技だ。無論、私も使える。二人には、私達の意志を継いでもらいたいんだ。」


「ま、待て!!最終奥義の全容はわかった!!だが、なぜ死にかけるまで待たねばならん!?」


「そうよ!!それにいきなりこんな…」


状況が飲み込めない二人のために、剛造と満夫は話す。


「…わしは病にかかり、余命一年を宣告された。放っておいても近いうちに死ぬ。わしは無様に野垂れ死ぬより、戦って全てをお前に伝えてから死ぬ道を選んだのだ。」


「そうだったのか…親父…なぜ伝えなかった!?」


「伝えたところでどうなる?お前に余計な心配をかけるだけだ。」


「紗理奈、私達は霊宮寺家。鬼宝院家の分家の人間だ。分家は全てにおいて本家を優先し、永遠に支えねばならない。だから、私もまた剛造様とともに死ぬ道を選んだんだ。」


「…母様はこのことを知っていたのね?父様が死ぬと知っていて、わざと予定があるふりをしたのね!?」


「ああ。私がそう指示した。お前はまだ、霊宮寺家全体を統率するには未熟だ。当主のうちどちらかが残って、お前を次期当主に相応しい人間として育てねばならない。この最終奥義の伝授も、そのために必要なことなんだ。わかってくれ」


非情。剛造と満夫はあまりにも非情な決断を迫られ、結果今の状態となった。そして、彼らの息子達もまた、非情な決断を迫られている。


「さぁ皇魔。わしの意志を継いで戦え!お前を育ててきたのは、今という時に備えるためだ!わしの手を取れ!!」


「紗理奈、私の手を握るんだ。私の意志を受け継いで、この因縁を終わらせてくれ!」


決断を迫る二人。


そして、


「…わかった。俺も鬼宝院家の跡取り。その意志を受け継ごう!!」


「…はい。父様…!!」


二人は、互いの親の手を取った。


「「最終奥義・魂力継承!!!!」」


その瞬間に、二人は自分達の全ての生命力を燃やし尽くし、それを与えた。


「行け!!次代を担う若者達よ!!」


「これが、私達の全てだ!!」


二人の言葉を聞き、皇魔とレスティーは手を離す。




「くくく…やはり面白いな貴様らは。こんなに多彩な技を見せてくれるとは」


ルーラーは、まだまだ余裕だった。


「俺達の力は、まだまだこんなものじゃない!!」


アデルとビャクオウは、さらに力を増大させる。


「ほう、まだ強くなるのか。ますます面白いな」


本当に楽しそうに言うルーラー。


その時、


「なら、もっと楽しませてやろう。楽しむ余裕があるかは別だかな」


皇魔とレスティーが割り込んできた。


「皇魔!?レスティー!?」


「ゲイル、アンジェ、エリック。よくやってくれたな」


「あとは私達に任せて。ルーラーは、私達が倒す。」


「…言う通りにした方が良さそうですね。ゲイル、アンジェ、下がりますよ。」


「あ、ああ…」


『うん…』


ビャクオウに言われて、下がるアデル。


「ふん、貴様らの力は私には聞かんと言ったではないか。」


「黙れ。もうこれ以上、貴様と会話をするつもりはない。」


皇魔は再度覇氣鎧装を使い、ルーラーに殴り掛かった。


(む!?この速度は!!)


「ぐうっ!!」


ルーラーは皇魔の拳を防御して、軽く吹き飛んだ。かわせなかったのだ。皇魔の拳は、威力も速度も先ほどの数百倍近く上昇している。


「貴様…この短時間に何をした!?」


「言ったはずだ。貴様と会話をするつもりはないと!!」


皇魔は闘界覇神拳奥義、怒涛炸裂拳を使う。


「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


ルーラーも拳のラッシュを放つ。パワーもスピードも、完全に互角だ。


「パーフェクトスマッシャー!!!」


「覇道烈破!!!」


覇気と光線がぶつかり合う。こちらも互角だ。だが、戦う相手は皇魔一人ではない。レスティーが背後からルーラーを斬った。


「ぐおっ!?」


これによりルーラーのパーフェクトスマッシャーは途切れ、皇魔が覇道烈破を押し込む。ルーラーは吹き飛ばされたが、レスティーは直前で離脱したため無傷だ。


「き、貴様もか…!!」


今の小太刀の一撃も、今までなら全く気にならなかったはずだ。しかし、ルーラーはダメージを受けた。このことから、レスティーもパワーアップしたと伺える。次の瞬間、レスティーが消えて、ルーラーの目の前に現れた。ルーラーの動体視力でも、かすかにしか見えないほどの速度だ。そのままレスティーは、ルーラーに拳と小太刀、蹴りの応酬を浴びせる。


「うおお…!!」


何のダメージも受けなかったほど軽いはずのレスティーの攻撃には確かな重みがあり、ルーラーはガリガリとダメージを受けていく。と、攻撃を受けながらルーラーは見た。倒れている剛造と満夫を。


「そうか!!貴様ら、魂力継承を!!」


ルーラーも、その技については知っている。だから、そうとしか考えられない。闘界覇神拳も霊宮寺忍法も、どれだけ修練を積んだところで、単体では絶対に完成させられない。前伝承者の生命エネルギーを受け取り、その想いを継承することによって初めて完成するのだ。ましてや、剛造と満夫から力を与えられた二人である。強くならないはずがない。


「すごい…こんなに強くなるなんて…!!」


だが、これは予想外だ。アインソフオウルモードとケイオスモードを使ったアデルとビャクオウの二人がかりでさえ仕留めきれなかったルーラーを仕留めかけていることに、空子は驚いている。


「これが…完成されたあいつらの力か…!!」


今までは未完成だった。完成することによって全く別物と呼べるほどに強くなった皇魔とレスティーを見て、狩谷も驚いていた。


「首領!!」


「ぐわっ!!」


ルーラーの危機を見てダークスを大きく弾き飛ばしたイズマは、レスティーにエネルギー波を放って距離を離させ、ルーラーの前に立つ。


「首領、ここは退くべきです!!今のあやつらの力は、もう今までの餓鬼ではありません!!我らデザイアにとって、最も危険な存在です!!」


「…ふん。既に勝機は逸したか」


イズマから説得されて、撤退の意思を示したルーラー。


「だが覚えておれ。このままでは済まさぬ。貴様ら一族は、私の手によって根絶やしにされる運命なのだ!!」


ルーラーはイズマとともに引き上げていった。


「よくやったな皇魔、レスティー。これほどとは思わなかった」


「こんなに強かったんだね。びっくり」

アデルは変身を解く。


「…ふん」


ビャクオウも変身を解除した。


「皇魔さん、レスティーさん。剛造さんと満夫さんが…」


光輝の言葉を聞き、皇魔とレスティーは強化を解除して駆け寄る。


「親父!!」


「父様!!」


二人は己の全生命力を渡してしまったことにより衰弱しきっていたが、まだかろうじて生きていた。


「ここまで弱りきってしまっては、もうボクの魔術でも治せない。できるのは、最期を看取ることだけだよ。」


ナイアは既に自分でも救えないことを伝え、背を向ける。彼女の力を使えば、剛造の病は治せたろう。しかし、彼の魂力継承がなければ、皇魔の闘界覇神拳は完成しなかった。必要な死だったのだ。それに、人間は時として自分の命よりも誇りを優先することがある。同じ人間の魂を持つ者として、その誇りを穢すことだけは絶対にしてはならないと、彼女の本能が悟っていたのだ。


「皇魔…見事だったぞ。やはり、お前でなければならなかったようだ…」


「紗理奈…これなら安心して、任せられるね…」


剛造と満夫の二人は最期の言葉をかける。


「親父…」


「…わしはな、後悔などしておらん。鬼宝院の人間として生き、鬼宝院の人間として死ねることを、誇りに思っておる。だがそれ以上に嬉しいのは…」


剛造は残された力を振り絞り、皇魔の頭を撫でる。


「お前の父親になれたことだ。すまなかったな、今までわしはお前に厳しく当たりすぎた。だが仕方なかったのだ…愚かで不器用な父親から、お前に最後の頼みをしよう。もはや闘界覇神拳を継ぐのはお前のみ…」


「…わかっている。闘界覇神拳は、俺の代で終わりだ。」


皇魔は剛造に皆まで言わせず、悟って自らその先を紡いだ。闘界覇神拳は、戦いのための技。しかし、今はもうその技を使って戦う時代ではない。闘界覇神拳の現在の存在理由は、デザイアへの対抗手段であるということのみ。デザイアが消えれば、もう闘界覇神拳を継がせる必要はないのだ。殺戮のための技の継承を止めること。それが、鬼宝院家の願いだった。


「…そうだ。それで良い…こんなことは、お前にしか頼めんのだ。息子であるお前にしかな」


もう、鬼宝院家には皇魔しかいない。剛造は自分の使命を息子に託した。


「ありがとう。わしの息子でいてくれて…」


剛造は人生の最後に、息子へ精一杯の優しさを与える。息子の皇魔も、その父親の優しさに応えた。


「…俺も、あなたが父親でよかった。あなたは、俺の永遠の誇りだ!」


その言葉を聞いて満足した剛造は、


「…ありがとう」


と一言だけ呟いて目を閉じた。同時に、皇魔を撫でていた手も落ちる。


「…安らかに眠れ。親父」


皇魔にとって父であり、師であり、鬼宝院家の全てであった漢、剛造は逝った。しかし、彼の想いだけは、皇魔の中で新たな使命となって生き続けるのである。


「紗理奈…私も照姫も、お前を霊宮寺の忍として育てたことを後悔していた。お前には、普通の女の子として育って欲しかったと…」


満夫は、ずっと聞きたいと思っていたことを、レスティーに、自分の娘に訊く。


「なぁ紗理奈。お前は、どう思っているんだ?お前を忍として育てた私達を、恨んでいるのか?」


答えを聞くのが怖くて訊けなかったことを訊く。レスティーは、霊宮寺紗理奈は答えた。


「…恨んでなんかいません。私は、忍になれて幸福でした。私は今でも、そしてこれからも、父様と母様が大好きです。」


紗理奈は自分を今の自分にした満夫と照姫を恨んでなどいなかった。むしろ、彼女は感謝していたのだ。彼らが自分をここまで強くしてくれたおかげで、かけがえのない仲間達に出会えた。皇魔に会えた。そして何より、父と母が歩んだ道を一緒に歩めたことが嬉しかった。


「…ああ…そうか…よかった…私達は…間違っていなかったんだな…」


満夫の中から、全ての迷いが、悔いが消えた。


「紗理奈…照姫を…母さんを頼んだぞ…お前が…あの人を守るんだ…紗理奈…私の愛しい…紗理奈…」


笑顔を浮かべて娘の名を呼び、息絶える満夫。


「…父様…?」


既に亡き父に問いかけ、返答がないのを確認し、


「…父様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


紗理奈は満夫の胸に頭を押し付けて泣きわめいた。




「ねぇ狩谷。」


空子は狩谷に尋ねた。


「これで本当によかったの?もっと別の道だって選べたんじゃ…」


「…さぁな。俺にはあいつらみたいに立派な使命があるわけでも、深い因縁があるわけでもないからわかんねぇよ。」


因縁はあったが、それはもう断ち切った。それに、皇魔達のようにスケールが桁外れだったわけでもない。だから、わからなかった。


「そうだな。俺もそうだ」


と、ゲイルが割り込んだ。


「…だが、彼らはきっと幸せだった。そう、思いたい」


鬼宝院と霊宮寺。共通の使命に生きた者達。その使命のために死ぬことができた剛造と満夫は、二人の魂を受け継ぐことができた皇魔とレスティーは、きっと幸せだったのだと、ゲイルは思いたかった。


「…」


光輝は沈痛な面持ちをしている。


(僕が…)


いつしか彼は、自分と皇魔の生き方を重ねていた。


(僕が戦う理由は…!!)





大きな犠牲を払いつつも、どうにかルーラーを撃退できたゲイル達。次回は光輝とさだめのパワーアップ回です。お楽しみに!

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