第四十五話 激闘!!黄金の魔人!! 前編
いろいろ悩んだ結果、今回は二つに分けることにしました。
フォビドゥーン、首領の間。
「…」
ルーラーはヴァルハラから送られてきた映像を見ていた。内容は、ガタノトーアを圧倒するアデル アインソフオウルモード。一通り見終わったルーラーは、次の映像を見る。内容はベルセルクを超える力を持つ、ビャクオウ ケイオスモード。
「…」
ルーラーは二つの映像を見た後、無言でそれを切った。
「いかがでしょうか?」
イズマがルーラーに尋ねる。彼の目からすれば、どちらも恐ろしく強大な存在だった。デザイアの奥の手を使っても、勝てるかどうか…。
「下らん。」
「…は?」
「下らんと言ったのだ。メタルデビルズがどれほどの力を付けようと、この私に敵うはずがない。ヴァルハラの盟主ごときに苦戦しておるようでは、な。」
しかし、ルーラーは二人の超パワーアップを、下らんの一言で片付けた。そこで、イズマは考え直す。確かにその通りだ。自分が絶対の信頼を置くデザイアの首領が、あんな子供に負けるはずがない。ルーラーさえ存命であるなら、デザイアは不滅だ。ルーラーがデザイアそのものなのだから。
「それよりも、気になるのは鬼宝院と霊宮寺だ。」
「それこそ恐るるに足らないではありませんか。奴らの強さは、メタルデビルズ二人を大きく下回っております。」
「実力ではな。だが、それで終わらぬのが奴らよ。」
デザイアでさえ長く続く戦いの中、鬼宝院家と霊宮寺家を滅ぼすことはできなかった。それは、単純な強さのみではない。何がなんでもデザイアを滅ぼそうという意思。その意思が、予想もできないような手を見せる。その手に何度も、何度も翻弄された結果、今に至るのだ。
「もし次に奴らが打つとすれば、最終奥義の伝授。何としても阻止しなければ…」
ルーラーは思案に入った。
*
ゲイル達は今、南海の孤島に来ていた。理由は、皇魔とレスティーがゲイル達の問題の解決を祝って、パーティーを開きたいと言ったからだ。つまり、この島は丸々一つが鬼宝院家の所有物なのである。
「解決したといっても、アザトースの関係だけだ。ヴァルハラもデザイアも、まだ残っている。」
「まぁいいじゃねぇか。せっかく祝ってくれるってんだから、祝ってもらえばよぉ。」
深刻な顔をしているゲイルの肩を叩く狩谷。
「あたしもすごく嬉しいわよ。でも…」
空子はある方向を指差した。
「…何であの人達まで参加してるの?」
その方向にいたのは、剛造と満夫。このパーティーはゲイル達だけが参加するはずだったのだが、なぜかあの二人も参加してきた。
「馬鹿息子の友達を祝うというのも、悪くはないと思ってな。」
「…ふん。」
皇魔は鼻を鳴らした。
「母様も一緒に来ればよかったのに…」
「そうもいかないさ。あいつにはあいつで予定があるんだ」
レスティーは照姫が来ていないことを残念がったが、照姫には別の予定が重なってしまったので仕方ない。
「ママ。あれは何?」
「ん?あれはね…」
アンジェに尋ねるネリー。彼女とナイアを置いていくわけにもいかないので、連れてきた。
「あれが、例のアザトースか。」
「で、こちらがナイアルラトホテップと。」
剛造と満夫は、ネリーとナイアを見る。光輝とさだめが、念を押すように言った。
「危険はありません。」
「アザトース…ネリーはあんな感じですし、ナイアさんはネリーに付きっきりですから。」
ネリーは普通とかなり違うとはいえ、やはり子供だ。ナイアはネリーに忠誠を誓っているので、ネリーが命令でもしない限り悪事は働かない。
「わかっておるよ。わしらも敵意のない者を討つような男ではない」
「忍とはいえ、不必要な戦いは避けたいしね。」
どうやら、わかってもらえているようだ。
「エリック。」
ナイアは、同じく招待されていたエリックに声をかけた。
「あんまり楽しんでないみたいだね。せっかくだし、もっとはめを外したら?」
「…任務以外でパーティーに参加したことがないので、どう楽しんだらいいのかわからないんです。」
エリックは、潜入任務や暗殺任務などでパーティーに参加したことはあったが、純粋に楽しむ目的で参加したことはない。だから、いざとなってみるとどうしたらいいのかわからないのだ。
「君も案外神経質だなぁ…こういうのはありのままでいいんだってば。」
「私から言わせればあなたのありのままがよくわかりません。」
「…」
ナイアは言葉に詰まった。彼女は混沌。すなわち、万物の全てだ。それを人間が真似しようと思っても無理である。
「…ですが、気遣いには感謝しましょう。」
だが、エリックはナイアに感謝する。前の彼ならここまで素直に感謝することはなかったはずだが、今の彼は以前の彼と違う。
「ほんとに変わったね、エリックって。」
「ああ。」
アンジェとゲイルはその変化を喜んでいた。
しかし、それも長くは続かなかった。
突如として爆発が起きたのだ。そして、
「楽しんでるところ悪いな。続きはあの世でやってくれや」
一般兵やエボリュータントなどの大部隊を引き連れたウォントが現れたのだ。いや、ウォントだけではない。四幹部が全員来ていた。
「あれは…ウォント!!」
「デザイアの幹部が、こんなに!?」
光輝とさだめは恐るべき戦力達の出現に驚く。コレクとメイカーが説明した。
「貴様らがこの島に来ておるという情報を入手したのよ。」
「剛造氏や満夫氏もいるというではありませんか。ただの兵士やエボリュータントでは荷が重いですからね、私達全員で来たわけですよ。」
デザイアから見れば、この二人は最危険人物。だから今回は特別に、幹部全員で来たのだ。
「せっかくのパーティーだってのに、空気の読めないやつらね!!」
「お前達の都合など知るか。」
レスティーの文句を一言で切り捨てるアプリシィ。彼からすれば、レスティー達の顔など見たくもなかったのだが、無視したら被害が増えるので出向いてきたのだ。
「親父、下がっていろ!奴らは俺が片付ける!」
「まぁそう言うな。わしも最近身体がなまっていたからの、ちょうど良い運動になるわ。」
皇魔は剛造を避難させようとするが、剛造は逆に戦おうとする。
「剛造様。」
そんな剛造を見て満夫は声をかけるが、
「構わん。この程度の雑魚を片付ける分にはな」
剛造は笑って言った。それにしても凄まじい。四幹部勢揃いのこの風景を前にして、雑魚の一言である。
「ずいぶんと甘く見られたものだ…やれ!!」
それに憤りを感じたコレクは、配下の兵達に命じて突撃させた。
「ナイア!!ネリーを連れて逃げろ!!」
「わかった。安全を確保し次第、ボクも助けに戻ってくるよ。」
「気を付けてね。」
「うん!!」
ゲイルとアンジェはナイアに、ネリーを連れて逃げるよう言う。ナイアはそれに従い、ネリーと一緒に転移魔術で逃げた。
「やはり私はこちらの方がいい。ビャクオウ、始動!!」
エリックはビャクオウに変身する。やはり慣れないパーティーを楽しむよりは、慣れ親しんだ戦いを楽しむ方が性に合っているようだ。
「ウォント…今日こそお前を倒す!!」
「光輝は私が守る!!」
武器を抜く光輝とさだめ。
「面白ぇ。ちったぁ楽しませろ!」
「死ぬのはお前達だ。」
エボリュータントに変身するウォントとアプリシィ。
「ったく、とんだパーティーになっちまったな!!」
「迎撃するわ!!」
戦闘の準備を整える狩谷と空子。
「行こう、ゲイル!!」
「ああ。アデル、起動!!」
アンジェが覚醒し、最後にゲイルがアデルに変身して、戦いが始まった。
*
「ウオリャーッ!!」
「ぬぇい!!」
叫んで飛び掛かってきた兵士を殴り飛ばす皇魔。続いてエボリュータントが三匹襲い掛かってくるが、覇氣鎧装を発動し、
「怒涛炸裂拳!!!」
必殺の奥義でまとめて葬る。
「忍法・猛吹雪の術!!!鉄大砲の術!!!」
レスティーは猛吹雪で多数の兵士を凍らせ、大砲で砕く。エボリュータントに対しては闇影武装を使い、スピードで翻弄した後、小太刀で斬る。
「ハイスピードエッジ!!!」
複数の敵を風の刃で斬り裂く狩谷。他にもロックンロールハリケーンやエクストリームテンペストを使い、より多くの敵を倒す。
「所詮は数だけね!!あたし達だって強くなってるし、当然よ!!」
ギガトラッシュとライフイーターを併用しながら、空子も戦果を上げていく。
「ゲイル!!」
敵と戦いながら、アンジェはアデルを心配する。
「あの時は苦戦したが、今回はそうはいかないぞ!!」
コレクと戦うアデル。以前はイグニスドライブ付きでも苦戦したが、多くの戦いを切り抜けたことと再改造を受けたこともあり、通常形態のままでも互角に渡り合えていた。
「ほう…少しはやるようだな!!」
激しく打ち合う大剣とプライドソウル。と、
「もらったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アデルの背後からエボリュータントが襲ってきた。しかし、
「むっ!?」
コレクの目の前からアデルが消え、アデルの背後にいたエボリュータントが細切れにされた。コレクはアデルの気配を追い、そして見つける。
「ハスター…ドライブ…!!!」
黄色に染まったアデルを。彼はエボリュータントから攻撃を受ける直前にハスタードライブを発動、風を操ってエボリュータントを倒し、超スピードでコレクの正面から離脱したのだ。
「できる。だが、ここまでだ!!」
コレクはアデルに襲い掛かった。
「クトゥグアドライブ!!!」
アデルはモードを切り替えて迎え討つ。
「思えば私は最初からあなたが気に食わなかった。」
ビャクオウはメイカーと銃撃戦を演じる。
「それはそれは…ちょっと気になるので殺す前に聞いておきましょうか。なぜです?」
ガトリングとミサイルランチャーを乱射しながら、メイカーはなぜビャクオウが自分を嫌っているのか尋ねる。ビャクオウは爆煙に包まれて見えなくなった。
「教えてあげましょうか?理由は簡単です。」
そして気付いた時、メイカーは空中も含めて全方位を分身したビャクオウに包囲されていた。ビャクオウは答えながら、一斉にメイカーを攻撃する。
「オレ様とちょっとキャラが被ってるからだバカヤロォォォォ!!!!」
「ええええええ!!?」
この返答にはさすがのメイカーも驚き動揺し、かわすのも防ぐのも忘れて攻撃を喰らってしまう。よくよく考えてみれば、銃使い、敬語など、二人の設定はいくつか被る。
「真似してんじゃねぇぞゴミがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょっ…まっ…!!」
まだ反撃できないメイカー。ちなみに、ビャクオウはネタとしてこんなことを話しているわけではない。これもメイカーの動揺を誘うための作戦だ。それから、これはナイアの入れ知恵である。
「ウォントォォォ!!!」
怒る光輝は疑似進化し、ブルーライジングを発動させてウォントを斬りつけた。無論ウォントもただ受けるはずなどなく、片腕に炎を灯して防ぐ。
「久しぶりだな。あの彗星、お前らが壊したってことは知ってる。よくやったじゃねぇか」
「黙れ!!」
強引に羅刹刃を振り抜く光輝。ウォントはそれをかわして飛び退く。
「おいおい。こっちは労ってやってんだぜ?地球は消えずに済んで、俺達は今まで通り活動できるんだからな。」
「僕はお前に労ってもらうためなんかに戦ったんじゃない!!地球を守るため、さだめさんを守るため、そしてお前との決着をつけるために戦ったんだ!!」
光輝は羅刹刃を振ると同時に雷を放つ。ウォントは片手で雷を弾いた。
「言うじゃねぇかよ。だがなぁ、その程度じゃ無理だ!!」
炎を纏って接近し、拳を繰り出すウォント。光輝は羅刹刃で防ぐが、続いて放たれた蹴りに対応できず、吹き飛ばされてしまった。
「ぐあっ!!」
「こんな程度じゃ、お前は何一つ成し遂げられねぇよ!!」
「光輝!!」
「よそ見をするな。」
「!!」
光輝を心配するさだめだが、直後にアプリシィが放ってきた冷炎が邪魔をし、光輝の所まで行けない。
「今度は油断しない。この状況ならもしお前がまたあの力を使っても、今度は確実に始末できる。」
アプリシィの言う通りだ。旧き印を使えば、アプリシィが吸収したアフーム=ザーの力は防げるだろう。しかし、ここにいるのはアプリシィだけではない。ウォントも、他の幹部もいる。そもそも、あの力は自由に発現させることができないのだ。彗星の一件以来ずっと練習しているが、再び旧き印が手に浮かぶことはなかった。ナイアにも訊いてみたが、彼女は旧き印を嫌うためか話してくれない。
「今度こそ…終わりだ!!」
片手を氷剣に変え、斬り掛かってくるアプリシィ。しかし、その一撃を、割って入ってきた満夫が小太刀で防いだ。
「貴様…」
「私のことを忘れてもらっては困るぞ、アプリシィ。」
満夫はアプリシィに蹴りを喰らわせ、下がらせた。
「満夫さん!」
「…冷気を纏うあの炎…進化の宝珠とは別種の禍々しさを感じる。」
「アプリシィは、邪神アフーム=ザーを取り込んだんです。」
「アフーム=ザー…不浄なる極寒の帝王の力を得た、か…そうまでしてお前は何を望んでいる。一体何がしたいんだ?」
さだめからアプリシィの力の秘密を聞いた満夫は、アプリシィに尋ねた。
「俺の目的は一つだ。ウォントを、兄さんを守る。だから、兄さんを苦しめ続けている白宮光輝を殺す!!邪魔をするならお前達から先に排除するまでだ!!」
「なるほど、他の幹部も力を付けたようだが、わしとまともに戦えるようになったのは貴様だけらしいな。」
話を聞き、見るに見かねた剛造が乱入する。
「剛造さん!」
「剛造様!」
「二人とも、奴はわしに任せて、ウォントの方を倒せ。お前達では、今のアプリシィに勝てん。」
さだめはともかく、満夫ですらアプリシィには勝てないと言う剛造。なぜなら、幹部達の中で一番強い決意を持っているのはアプリシィだけだと思ったからだ。ウォントのためなら死ぬことも恐れず、邪神の力にさえ手を出した。これに勝つには、同じく強い決意が必要だ。悲しいが、決意では満夫より剛造の方が遥かに上なのである。
「…わかりました。行こう!」
「は、はい!」
従う満夫とさだめ。
「貴様には本気を出さねばなるまい。闘界覇神拳奥義・覇氣鎧装!!!」
アプリシィに対抗するべく、秘奥義を使いパワーアップする剛造。姿は皇魔のそれと何も変わらないが、術者が巨体なので、パワーアップ後の姿も大きい。
「親父も本気になったか。」
皇魔はそれを見て、心中ニヤリと笑った。剛造があれを使って倒せなかった相手は、ルーラーだけだ。いくら邪神の力を得たアプリシィとはいえ、ルーラーには遠く及ばない。この勝負、もはや見えた。皇魔はそう思ったのだ。
「行くぞ、アプリシィ!!」
「来い剛造!!今日でお前の図体も見納めだ!!!」
アプリシィは剛造に向かって冷炎と吹雪を両手から放つ。
「ブルーフレイムブリザード!!!」
「奥義・砕滅轟波!!!」
剛造も両手から覇気を放って迎え討つ。冷炎と吹雪は徐々に押され始め、やがて剛造の覇気が押しきってアプリシィを吹き飛ばした。
「ぐあっ!!アフーム=ザーの力で強化された冷気でも、お前の覇気を凍らせることはできないのか!!」
「覇気とは己の覚悟、決意の具現化!!貴様の冷気が通じんのは、純粋に背負っておるものの大きさが違うからよ!!」
「…小さいと言うのか…俺の覚悟が取るに足らないものだと!!そう言っているのか貴様はァァァァッ!!!!」
激昂したアプリシィは、自分の片手に全冷気を集中させて突撃し、剛造もまた片手に覇気を込めて駆け出す。
「アイスエイジフィンガー!!!」
アプリシィが繰り出すは、アデルの腕をも凍らせ変身を解除させた、超越零度の掌底。一方剛造は、拳に込めた覇気を放出し、アプリシィのアイスエイジフィンガーを殴った。
「奥義・覇神滅拳!!!」
すると、アイスエイジフィンガーの冷気が消滅し、アプリシィはそのまま拳を喰らって吹き飛ばされた。
「があああっ!!!」
アプリシィは何が起こったのか理解できていない。剛造の拳を受けた瞬間に冷気が消し飛んだということはわかったのだが、なぜ冷気が消されたのかわからないのだ。
「打撃を強化するためと見せかけて込めた覇気を放出し、相手の力を消滅させて殴る。これぞ覇神滅拳!わしが新たに編み出した技だ」
「い、いつの間にそんな技を…!!」
盲点だった。まさか、そんな技が編み出されているとは思わなかった。
(これが、首領が歴代最強と認める鬼宝院家の現当主、鬼宝院剛造の実力か…!!)
圧倒的だった。あまりにも、圧倒的だった。
「光輝!!」
「さ、さだめさん…」
ウォントから激しい攻撃を受けて倒れた光輝を介抱するさだめ。
「二人はそこでじっとしていなさい。ウォントとは私が戦う」
満夫は二人の前に立ち、盾となる。
「忍法・闇影武装!!」
そして、当然彼もまた秘伝が使える。やはり姿はレスティーが使うものとさほど変わらない。しかし、レスティーを超える腕を持つ満夫が使うのだ。性能は段違いである。
「お前と正面きって殺り合うのも久々だな。十年ぶりぐらいか?」
「九年だ。」
「そうかい。だがな、お前はお呼びじゃねぇ。俺はあくまでも、白宮光輝に用があるもんでよ。」
「…お前が彼の両親を殺したという話は紗理奈から聞いている。彼が両親の仇を討とうと、躍起になっているのもな。だが、私もお前達デザイアと因縁のある者として、引くわけにはいかない。」
「…わかったよ。ならまず、お前から先に片付けてやらあ。」
ウォントとしては光輝を始末したかったのだが、どうも満夫は道を譲りそうにない。まぁ、彼も長きに渡る戦いの宿敵なのだから、当然と言えば当然だが。仕方ないので、満夫から先に倒そうとする。しかし、ウォントが構える前にもう満夫は動いていた。一瞬で目の前に接近し、ウォントを殴り飛ばしたのだ。続いて手裏剣が飛んでくるが、さすがにそれ以上喰らってやるほど馬鹿ではない。かわした。
「っとぉ…そうだったな。お前はそうだった。悠長に構えてなんかいたら、瞬殺されちまうぜ。」
満夫のスピードもレスティー以上。攻撃の威力もキレも、以下同文だ。余裕をかましていたら、いくら幹部とはいえ文字通り一瞬で殺られる。相手は霊宮寺家の現当主なのだということを思い出し、ウォントは気合いを入れ直した。
「これはもう決まったも同然ね。」
雑魚を蹴散らしたレスティーは、光輝とさだめのそばに立って戦いを見守る。だが、満夫の勝利は確信していた。
「…参る!!!」
次の瞬間、満夫が消えた。そして再び現れた時、
「忍法・瞬獄殺!!」
「ぐああああああ!!!!」
ウォントの全身に裂傷が走り、ウォントは倒れた。
「な、なに?一体何が起きたの!?」
「ぜ、全然見えなかった!!」
困惑するさだめと光輝。だが、レスティーだけには見えていた。満夫は、瞬獄殺を使ったのである。瞬獄殺は元々満夫の忍法であり、精度もレスティーのものとは比べものにならないくらい高い。相手に対応できるだけの余裕を全く与えず、次に現れた時には既に息絶えている。それが、瞬獄殺。しかし、
「うぐ…ぐ…!!」
ウォントはまだ死んでいなかった。幹部クラスエボリュータントは生命力も高いので、全身に攻撃を受けた程度では死なない。
「次の一撃で、今度こそお前の首をはねる。」
構える満夫。満身創痍のウォントには、次に放たれる一撃をかわせるだけの余力はない。
「兄さん!!」
アプリシィは兄を気遣うが、彼も彼で余裕がない。他の幹部もメタルデビルズの相手をしており、兵士はもう駆逐されてしまった。
だが、ここで予想外の事態が起きる。
「楽しそうではないか。我々も混ぜてはもらえんかな?」
二人の男が現れたのだ。驚いてそちらを見る一同。剛造と満夫はさらに驚愕した。
「き、貴様は…ルーラー!!!」
「イズマ…!!」
そう、ルーラーとイズマだ。
「首領!!副首領!!」
コレクも驚いている。こんなことは聞かされていない。まさか首領と副首領が、二人揃ってこの戦場に現れるなど。
「貴様がルーラーか!!」
「ここで会ったが百年目!!」
「い、いかん!!待て皇魔!!」
「よすんだ紗理奈!!」
剛造と満夫の制止も振り切り、早速挑み掛かる皇魔とレスティー。デザイアは巨大な組織だが、所詮ルーラーを核に集った烏合の衆だ。すなわち核であるルーラーを倒せば、デザイアは壊滅する。ルーラーが自ら出張ってくるという、一族が長く続けてきた戦いに終止符を打つ絶好のチャンスが訪れ、二人とも気持ちが焦っていたのだ。
そんな簡単に倒せる相手ではないということくらい、わかっていたはずなのに。
「無礼者め!!」
「待てイズマ。」
イズマを止めて進み出たルーラーは、まずレスティーの蹴りを避けずに首で受け、その足を片手で掴むと、レスティーを地面に叩きつけた。
「がっ…!!」
それからレスティーを蹴り飛ばし、続く皇魔の拳を右に動いてかわす。次に繰り出される拳と蹴りを、同じように左右に動いてかわし、皇魔の胸板に軽く拳を叩き込む。
「ごあっ…!!」
それだけで、皇魔が数メートルほど飛んだ。
「久方ぶりの戦いだ。私にも少しは楽しませてくれ」
「…承知しました。」
ルーラーからの頼みを承認し、一歩下がるイズマ。
「お前達はフォビドゥーンに戻れ。後は私が引き受ける」
「は、はっ!」
「か、かしこまりました!」
「き、帰還します!!」
「ご武運を…!!」
コレク、メイカー、ウォント、アプリシィはそれぞれ頭を下げ、フォビドゥーンに帰還していった。これで残ったのは、ルーラーとイズマのみ。だが、この二人の実力は、先ほどの幹部達とはまさしく格が違う。下手を打てば、この二人だけに全滅させられる可能性まであるのだ。
「さあどうした鬼宝院と霊宮寺の末裔よ。まだ私は本来の力を使ってさえいないぞ?他の者も遠慮なくかかってくるといい。デザイアの首領と正面から戦える機会など、滅多にあるものではないからな。」
「調子に乗るな!!貴様は今日、この場で死ぬのだ!!」
「そして、私達の因縁に終止符を打つわ!!」」
ルーラーに挑発され、率先して挑む皇魔とレスティー。
「皇魔さん!!お手伝いします!!」
「私も!!」
光輝とさだめも攻撃を仕掛けるが、ルーラーは腕組みをして四人の攻撃を最小限の動きでかわしてしまう。
「な、なんてやつだ!!皇魔達を圧倒してやがる!!あいつはまだ、エボリュータントに変身してさえいねぇってのに!!」
狩谷が言った通り、ルーラーはエボリュータントに変身していない。それで、下級のエボリュータントより遥かに強い皇魔達四人を完全に圧倒している。ミレイヌを彷彿とさせる強さだ。
「何とも弱すぎて話にならんな。お前はそれでも、あの剛造の息子か?お前もだぞ霊宮寺の小娘。それに弱い者には弱い仲間しか集まらんらしいな」
ルーラーは四人の攻撃をかわしながら、四人をそれぞれ罵倒する。
「その程度の力しかないのなら、消え失せるがいい!!」
ルーラーは跳躍して一度包囲から脱出し、着地してから、
「ハァッ!!」
片手からエネルギー波を出して四人を吹き飛ばした。
「ぐはっ!!」
「ぐうっ!!」
「うあっ!!」
「きゃあっ!!」
吹き飛ばされる四人。だが、
「ちょっと何ボーッとしてるのよ狩谷!!あたし達も戦うわよ!!」
空子が動いた。ギガトラッシュとライフイーターを、ルーラー目掛けて乱射する。
「文明の利器を使ってこの程度か。救いようがないな」
しかし、全ての銃弾は加速して狂いなくヒットしているにも関わらず、ルーラーはダメージを受けていなかった。
「そ、そうだ!!ぼさっとしてる場合じゃねぇ!!」
「ハウリングシュート!!!」
「エクストリームエクスタシー!!!」
空子は狩谷と協力し、必殺技を使ってルーラーを攻撃する。
「させぬ!!」
だが、即座にイズマが変身して飛び出し、バリアを張って防いでしまった。
「イズマ…」
「申し訳ありません。」
「…まあ良い。許そう」
いかに手出しをしないように言われたとはいえ、副首領という立場である以上首領に危害が加わるようなことがあれば助けなければいけない。ルーラーもそれは理解しているので、許した。
「アンジェ、やるぞ。アインソフオウルモードだ!!」
「うん!!」
「やれやれ…私も本気を出すとしましょうか…!!」
互いに手を繋ぐアデルとアンジェ。ブラックインフィニティーを出すビャクオウ。アインソフオウルモードとケイオスモードの二人がかりなら、ルーラーにも勝てるはずだ。
「ふん、お前達は遊べそうだな。来い!!メタルデビルズの全力を見せてみろ!!」
挑発するルーラー。しかし、
「その必要はない。」
その前に剛造と満夫の二人が立ちはだかった。
「お前達は無関係だ。この件に関しては手出し無用に願う」
「な、何を言っているんですか!?」
「奴の力を見ただろう!!ここはゲイル達と協力して、全員でかかれば…!!」
「わかってくれ。奴は因縁深き我らが倒さねばならぬ相手…これ以上他者の手を借りるわけにはいかんのだ」
剛造はここに来て、アデル達に不干渉を命じた。空子と狩谷は剛造はどういう神経をしているかわからず、勝つ方法を言う。しかし、剛造はそれでも不干渉を貫いた。そんな彼の態度を見て、ルーラーが自ら現れたという今の状況を見て、満夫は感じていた。
(遂に、この時が来たか…)
彼らはある決意をしていた。それは、ヤディス=ゴーが地球に接近した時のこと…。
*
「満夫。照姫。わしは近いうちに死のうと思う」
即席で作られた宴会の席で、剛造は二人に語った。
「と、突然何を!?」
「剛造様!?」
唐突にわけのわからないことを言われて混乱する二人。剛造は詳しく聞かせた。
「わかってしまったのだ。わしはデザイアを滅ぼせん。その前に、わしの命の灯火が尽きそうだからな。」
「そんな…まだあなたは現役のはず!」
剛造は確かに老齢だが、満夫が見た感じ、そんな近いうちに死ぬほど老いているようには見えない。と、嫌な予感が照姫の脳裏をかすめた。
「まさか…病を!?」
「…絹恵と同じ病だ。医者からは、もってあと一年と言われた。」
剛造の妻、絹恵は皇魔を産んだ影響で、元々低かった体力がさらに落ちてしまい、不治の病にかかって死んでしまった。剛造もまた同じ病にかかり、死にかけていたのだ。ゆえに悟った。老いて病にもかかり、弱りきってしまった今の自分では、幹部連中には勝ててもルーラーには全く通じないということが。そもそも、ルーラーと戦える機会が訪れるかどうかさえ、危うい。もしかしたら、戦うこともできずに死んでしまうかもしれないのだ。
「わしは近い将来、どうにかしてルーラーを誘き出す。そして、皇魔に最終奥義を教える。次代を息子に託すことにしたのだ」
闘界覇神拳を修得した者は、人生の最後に必ず最終奥義を使わねばならない。そしてこの最終奥義を使うことは、そのまま死に繋がる。近いうちに死のうと思うというのは、このことだった。
「…なら、私もお供します。」
「あなたまで!?」
満夫は、剛造とともに命を捨てると宣言した。
「…私も、薄々感付いてはいました。我々では、デザイアを打ち倒せぬと。剛造様に勝てぬ我々が、デザイアに勝てる道理がどこにありましょう。」
霊宮寺家にもまた、最終奥義が存在する。こちらもまた、使用に死を伴う技だった。
「なら私も!」
「お前は残るんだ。今の紗理奈は、皇魔君と比べてまだまだ未熟。お前が導いてやらないと、間違いなく潰れてしまう。」
「うっ…」
照姫は、それ以上何も言えなかった。確かに、幼少より孤独に慣れている皇魔と比べると、紗理奈はまだまだ弱い。
「わかってくれ。私達は霊宮寺の人間だ。時には、命を投げ出す覚悟も必要なんだよ。」
「…わかっているわ。」
「…すまんな、二人とも。」
剛造は自分に釣られるような形で決意させてしまったことを詫びた。
*
(そして、千載一遇のラストチャンスは訪れた!!)
そう思っていたところに、このパーティーの話だ。自分達が子供達とともに出席するという情報が伝われば、ルーラーは間違いなく現れる。そして、ルーラーは現れた。
(まずは正面から挑む!!ここでルーラーを倒せれば、最終奥義を使う必要はなくなるんだ!!)
それで駄目なら最終奥義を使うしかないが、まず挑むことが大事だ。
「驚いたぞ。まさか貴様が自分から出張ってくるとはな、ルーラー…いや、鬼宝院闘弐。」
「その名は捨てた。今の私はルーラー。もう鬼宝院の者ではない」
剛造はルーラーの真の名を言った。だが、兄に強い憎悪を抱いているルーラーは、既に鬼宝院の家を捨てた身。だから、名前も捨てた。
「お前達の始末はイズマや幹部達に任せてもよかったのだが、奴らではお前達に勝てん。だから私自ら始末しに来たというわけだ」
「殊勝なことだな。それでこそ、一組織の首領よ。」
「…とはいえ、片手間で始末できるほど弱い相手でもない。お前達には本気を出すとしよう」
ルーラーは閃光とともに、エボリュータントの姿へと変身した。その姿は、黄金を基調とした筋骨隆々の魔人。はためくマントが、威厳を象徴している。
「来い!!」
ルーラーは二人を挑発した。剛造は満夫に軽く目配せし、尋ねる。
「満夫、後悔はしておるか?」
「…いえ。既に覚悟はできています!」
「…すまん。」
剛造は満夫の返答を聞き、二人で構えを取る。
「親父…!!」
「父様…!!」
決して見逃さないようにする皇魔とレスティー。
「…」
イズマもまた、黙って見守っていた。
はい、とうとうルーラー自らの台頭です。ミレイヌの時もそうだったし、一組織のボスと戦うなら二つに分けようかということで、前後編に分けました。次回はいよいよ…お楽しみに!




