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サマーバケーションウォーズ PART3

宿命の戦い、再び。

「こっちです!!」

エリックは王女を連れて走る。

「さあ、早く!!」

「エリック、あなたは!?」

自分一人だけを行かせようとするエリックに、どうするのかと尋ねる王女。

「私はここで、敵の足止めをします。」

「そんな!!あれだけたくさんの敵を!?無茶だわ!!」

「無茶でも何でも、今はやらなければならない時です。我々の任務は、あなたを生かすことなんですから。」

「そうかもしれないけど、あなたはまだ子供よ!?子供にこんな危険な役目をさせるなんて…一緒に逃げましょう!!」

王女はエリックも一緒に連れて行こうとするが、エリックは首を横に振る。

「私は兵士です。兵士なら、与えられた命令を遂行すべき。子供であろうと大人であろうと、兵士になったならその原則には従わなくてはなりません。」

その結果死ぬことになったとしても、エリックに後悔はなかった。兵士として戦い、兵士として死ねることは彼にとって最高の名誉だったからだ。だが、今はまだその名誉をもらうわけにはいかない。生きて帰る。それも兵士が果たすべき任務だからだ。

「この先の安全は確保した!こっちだ!」

そこへ、ビリーからの報告が届く。

「さぁ行って!私も必ず追い付きます!」

「…わかったわ。死なないでねエリック!」

エリックに促された王女は別れを告げ、ビリーに続いて避難する。

「…私は死なない。」

近くの物陰に隠れたエリックはマシンガンをリロードし、

「答えを見つけるまで!!」

押し寄せてくる対立国の兵士達を攻撃した。



一時間と経たず王国の援軍は到着し、対立国の兵士は退却。エリックは自分達が勝利したのを確認してから、すぐビリー達に合流した。しかし、彼が見つけたのはビリーと、その仲間の兵士。それから、避難してきた国民だけだった。

「…エリック。」

ビリーは、エリックが捜している人物、王女のもとへ案内する。

「…!!」

エリックが見たのは、服のあちこちを血で赤く染めて息絶えている、王女の姿だった。

「すまねぇ…俺がついていながら…」

謝罪するビリー。しかし、

「貴様ァァァッ!!!」

エリックは許さなかった。

「なぜ…なぜ守らなかった!!何で死なせちまったんだよぉぉぉ!!!」

ビリーに両手で掴み掛かり、本来の口調に戻って激昂する。だが、王女はもう死んでしまった。エリックがいくら泣き叫ぼうと、ビリーを責め立てようと、彼女が生き返ることはないのだ。











エリックはそんな過去の記憶を、目を閉じて思い出していた。

「…どこに行くつもりですか?」

不意に尋ねるエリック。その瞬間に、ドアに向かおうとしていた空子が止まった。

「…起きてたの?寝てたかと思ったのに。」

「そんなうかつな真似はしませんよ。私が一体誰なのかまだ理解できていないようですね、このゴミが。」

エリックは今、ビリーのアジトで空子を見張っている。本当なら知り合い同士を会わせるのはタブーなのだが、ビリーはよほどエリックを信頼しているらしく、許可した。また、空子もエリックに逃がしてもらえるとは思っていない。エリックにはそういう情というものがないことを、知っていたからだ。任務は任務と、完璧に割り切っている。だから、いくら見逃してくれるよう頼んでも、無駄だ。

「心配しなくても大丈夫ですよ。あなたは大事な餌ですから、命の安全は保証します。」

「安心できるわけないじゃない!ゲイルを本気にさせるためにあたしを殺すとか、あんたなら平気でやりそうなのよ!」

エリックが空子を安心させようと声を掛けたが、空子は全く安心できない。エリックがどんなことを考えているのか、わからないからだ。普通の人には思い付かないような過激で残酷で恐ろしいことを、平然とやってのける人間だからである。

「…その手がありましたか…」

エリックが呟いた時、空子はしまったと思った。

「あなたを人質に取ってなお、ゲイルは本気にならなかった。となれば彼を本気にさせるようなことを、私に対して憎悪と殺意を抱くようなことをしなければなりませんね。」

「ちょ、ちょっとエリック!冗談よね!?それは冗談で言ってるのよね!?」

本気で考えているエリックを見て、空子は心の底から慌てる。もちろん、冗談であるはずはなかった。エリックは自分の目的を達成するためなら、人質も平気で殺す。それが例え自分の同僚であったとしても、容赦なくだ。

「あなたを殺せば、ゲイルは間違いなく本気になります。じゃあ殺しましょうか?そうですね、そうしましょう。」

「や、やめて…やめてよ…!!」

ホワイトスイーパーを出して迫ってくるエリックに、空子は後退りしながらやめるよう言う。彼女は死など恐れてはいないが、エリックに殺されるのだけは嫌だった。まだゲイルに自分の想いを伝えていないし、それにこんな狂人に殺されたとあっては成仏できない。その時、

「そのくらいにしときな。」

アメルダが入ってきた。彼女もビリーの仲間である。さっき連れていかれた時に聞かされた。

「そいつはまだ利用価値がある。いくらあんたがリーダーのお気に入りだろうと、勝手な真似したら許さないよ。それと、リーダーがお呼びだ。見張りはアタシがやるから、とっとと行きな。」

「…やれやれ。」

エリックはホワイトスイーパーを消す。

「まぁいいでしょう。ここで殺してゲイルに伝えるより、ゲイルの目の前で殺した方がインパクトが大きい。ひとまずは生かしておいてあげます」

エリックは残念そうに言ってから、部屋を出た。

「…ふぅ…」

生き延びたと安堵する空子。しかし、まだ助かったわけではない。ここは敵のアジトなのだ。

(何とか逃げる方法を考えないと…)




ビリーの部屋。

「さっきはよくやってくれたな。礼を言うぜ」

先ほどの作戦の功績を称え、握手を求めるビリー。しかし、

「…別に。というより、あなたの部下が邪魔で大変でした。私一人なら誰にも気付かれず簡単に済んだというのに」

エリックはその手を払いのけ、握手を拒否した。

「まぁそう言うなよ。せっかく集めたんだから、使ってやらなきゃな。」

「…で、そんな下らないことを言うために私を呼んだのですか?」

「まさか。次にどこをやるか決めたんだよ。次は、ブラジルだ。作戦開始時刻は、今までと同じ。わかったな?」

「わかりました。では私はもう戻ります」

早々に立ち去ろうとするエリック。その仕草は、どことなくビリーを避けているように見えた。まぁ、理由はわかっているのだが。

「…ったく、お前もいい加減過去を捨て切れねぇ男だな。もう過ぎちまったことだし、仕方ねぇだろう。」

「仕方ない?そんな一言で済ませられると思っているのですか?あなたのせいで私の経歴に傷が付いたのです。その罪は重いですよ」

「それだけでそこまで怒るか普通?他にも理由があるんだろ?仲直りしてぇって言ったじゃねぇか。何でも話してみろよ」

「…」

確かに、それだけではない。ビリーのせいで王女が死んだ。それによってエリックの経歴に任務失敗の烙印が押された。国は守れたから失敗ではないのだが、それはどうでもいい。個人的に、王女を死なせたくなかった。

「キャスリン王女はあなたが守れなかったせいで死んだのです。やはりあの時、私は最後まで彼女の側にいるべきだった。私がいれば守りきれたはずなのに」

「だから、んなこと言ったってどうにもならねぇって。死ぬ必要のない人間が死ぬなんてのは珍しくない…お前も傭兵ならそれくらいわかってるだろ?」

「…ええ、よくわかってますよ。あなたとこんな話をしたところで、何の意味もないということも。」

王女、キャスリンには絶対に生きて欲しかった。だが、死んでしまった。生きるべき者が死ぬのは、戦場ではよくあること。あの時はたまたまキャスリンだっただけの話。だが、エリックはまだそのことを割り切れなかった。

「…しばらく一人にさせて下さい。」

今度こそ出ていく。

「…はぁ…実力は確かなんだがマジで面倒なやつだな。」

ビリーはそれを見送ってから呟いた。











ビッグデュエルの警護に失敗したゲイル達は、再びヘブンズエデンに戻っていた。空子がいたこと、エリックが敵に雇われていたことを報告する必要もある。

「そうか、彼が雇われていたのか…では失敗してもしょうがないね。」

エドガーは、不思議と三人を咎めなかった。いや、不思議でも何でもない。エリックの力を知る者なら、自然とそう答える。エドガーとて例外ではない。

「まさか空子まで一緒にいるとは思わなかったぜ。わかってたらもっとしっかり準備して、ギガトラッシュも持っていってたんだが…」

「そんなのわかるわけないよ。空子を拐った相手と繋がりがあるなんて、普通は思わない。」

狩谷は後悔していたが、アンジェの言う通り、誰がこんなことを予想できただろうか。

「…エリックがあそこまで俺を殺したいと思っていたとは…」

それも予想外だった。そもそも、エリックがビリーと呼んでいたあの男に空子を拐うよう進言したのは、エリックなのだ。全ては、ゲイルと本気の殺し合いをするため。ゲイルが引けない状況を作って、自分と戦うよう仕向けるため。

「とにかく、君達は次の指示があるまで待機していたまえ。」

エドガーから指示を受けて、三人は下がる。残るビッグデュエルは、あと二機。どちらを狙うかわからないし、戦力を割くわけにはいかない。エリックが相手では、些細な判断ミスが命取りだ。慎重な行動が必要となる。

「ああ狩谷。」

と、エドガーは狩谷を呼び止めた。

「無事空子を救い出すことができたら、彼女にこれを渡してくれ。」

エドガーが渡したのは、腕時計のような形をしたブレスレットだ。

「…これは?」

「彼女に頼まれていたものだ。とにかく、渡せばすぐわかる。」

「なら渡しとくよ。そうだ、ギガトラッシュも頼む。」

「それは彼女を救出してから私が送るよ。かさばるだろう?」

「あ、そっか。じゃあ」

狩谷は納得してから、今度こそ理事長室を出た。











夜。

「ブラジルから緊急連絡だ。今襲撃されているらしい」

エドガーから連絡が入った。

「やっと来たか!待ちくたびれたぜ!」

「今度こそ空子を助けよう!」

「ああ。だが、ビッグデュエルを守ることも忘れるな。」

三人は決意も新たに出発する。


「ちっ!さすがに二度もうまくはいかねぇか!」

今度は施設の外に転送された三人。

「仕方ない。正面から蹴散らすぞ!!」

「うん!!」

ゲイルを先頭に、テロリストを倒しながら地下へ向かう。テロリスト達は歴戦の強者といった感じで、かなり練度がある。しかし、ゲイル達はこれよりもっと強力なボーグソルジャーやエボリュータントとの戦いに勝ってきたのだ。いくら練度が高いとはいえ、負けはしない。

「むしろいつもより手応えがなくて、拍子抜けって感じだな!」

狩谷は銃を撃ちながら突撃してきたテロリストを二人、ダークハンターで斬りつける。次々とテロリストを倒しながら地下を目指す三人。だが、

「…ボーナスステージは終わりみたいだよ。」

アンジェが言った通り、快進撃は終わりを告げた。なぜなら、エリックが待ち構えていたからだ。

「…エリックは俺が抑える。お前達は行け」

「わ、わかった。」

「気を付けてね!」

ゲイルはエリックと向き合い、狩谷とアンジェがエリックの脇を駆け抜ける。その場にはエリック一人しかおらず、またエリックも追わなかったため、二人は楽に先に進むことができた。

「追わないのか?」

「必要ありません。あの二人くらい、うまく片付けられるでしょうし。」

エリックは元々、ビリーの仕事に乗り気ではなかった。いや、どちらかと言うと引き受けたくなかった。にも関わらず引き受けたのは、ゲイルと殺し合う状況を作るためだ。

「それより嬉しいですよ。ようやく本気になってくれたんですね」

本当はゲイルの目の前で空子を殺し、自分への敵意を煽るつもりだったのだが、結局ビリーとアメルダに強引に止められてしまった。が、そんなことをしなくてもやる気になってくれたので、喜んでいる。

「…なぜ奴らに空子を拐うよう指示した?そこまで俺と殺し合いたかったのか?」

ゲイルは気になっていたことを訊いた。

「ええ。こうでもしないと、あなたは本気にならないでしょう?」

「…」

やはりそうだった。エリックがゲイルに対して抱く執念は、並大抵のものではない。異常と言える。異常としか言えない。

「苦労しましたよ?彼らでも拐える人間を選ぶのは。何せ、一応は仕事ですから。」

自分の力をビリーに見せつけつつ、人質を拐う。それには、ビリーの手下達でも拐える相手を選ぶ必要があった。ビャクオウの分身を使って拐う手もあったが、どうせなら思い知らせてやりたかったのだ。お前を殺すためなら、こんな回りくどい方法だって平気で使うんだぞと。

「そこで私が選んだのが、夏原空子です。彼女はあなたのことを大切に思っていましたし、何よりも…」

エリックは自分が空子を選んだ理由を言う。


「弱かったですから。」


そう言った瞬間、ゲイルが斬り掛かってきた。慌てることなくホワイトスイーパーで受け止めるエリック。

「訂正しろエリック!!空子は弱くなんかない!!」

ゲイルは怒っていた。エリックに殺しのターゲットにされても怒らなかったが、空子を弱いと侮辱されたこと。それが彼の逆鱗に触れた。

「私は私の目から見た正直な感想を言っただけです。あなたの意見など聞いていません」

しかし、エリックは訂正などしない。それがさらにゲイルを怒らせ、ゲイルは力任せにプライドソウルを振り抜いた。予想外の力を発揮されたことに若干驚きながらも、エリックはそれをかわして後退する。

「…いいだろう。そんなに望んでいるならやってやる」

目に怒りをみなぎらせ、ゲイルはエリックを睨み付けた。

「お前の好きな殺し合いだ!!空子を侮辱したこと、後悔させてやるぞエリック!!」

その明らかな殺意の視線を、正面から受け止めるエリック。彼は今、かつてない歓喜を味わっていた。

「後悔などしません。この状況こそ、私がずっと望んでいたものなのですから!!」

「ほざくな!!」

ゲイルは怒り、エリックに突撃する。エリックはそれを迎え討つべく、ホワイトスイーパーを発砲。ゲイルはその弾幕を掻い潜り、最小限の攻撃をプライドソウルで弾き飛ばして、エリックに斬り掛かる。エリックはそれを防いで、ゲイルの足に足払いを放った。ゲイルは素早く跳躍してかわす。そこで、エリックが再びホワイトスイーパーを向けた。ゲイルはまだ空中にいるので、身動きが取れない。と、ゲイルはエリックに踏みつけるような蹴りを放つ。その蹴りと同時に目の前の空間が爆発し、爆風を利用して後退。エリックは攻撃目標を見失って、それでも発砲する。銃声が虚しく響いた。

「そんな避け方をするとは…少しは学んだようですね。」

対するエリックは色彩を発動して自分を透明にし、ゲイルに襲い掛かる。

「おおおおおお!!!」

ゲイルは視界を熱源探知モードに切り替え、レーダーもフル活用して、エリックの攻撃に対応する。はたから見れば、ゲイルが一人で踊り狂っているようにしか見えないこの光景。だが、そこでは厳然と死闘が演じられていた。やがて、

「はぁっ!!」

「ぐうっ!!」

ゲイルがエリックを弾き飛ばし、エリックは壁にぶつけられたダメージで迷彩を解除した。

「はあああああああ!!!」

「うおおおおおおお!!!」

二人は同時に斬り掛かり、一度だけ互いの刃をぶつけた。二人の一撃には人知を超越した怪力が込められており、怪力同士がぶつかった結果、衝撃波が巻き起こる。しかし、つばぜり合いはすぐに終わった。

「アデル、起動!!」

「ビャクオウ、始動!!」

人知を超えた力の全てを解放し、メタルデビルズに変身する。そこからまた、乾坤が始まった。











二人のメタルデビルズが激闘を行っている間に、格納庫にたどり着く狩谷とアンジェ。

「よお、また会ったな。残念だが、ビッグデュエルはもう頂いたぜ。」

そこにはビリーと空子、空子を人質に取っている兵士が二人いる。格納庫には本来あるべきビッグデュエルがなく、またビリー本人が言ったので、もう奪われた後だったようだ。

「おっと。こいつを死なせたくなかったら動くなよ?俺達が引き上げるまでいい子にしてな。」

「くっ…!!」

ビリーが空子の額に拳銃を突き付けたこてで、狩谷の動きが止まる。

「ククク…ヘブンズエデンの訓練生、こいつは使えるぜ。これでようやく、エドガーの弱みが握れたわけだな。」

見事に狩谷とアンジェの行動を封じることができたのを見て、ビリーは下品な笑いを浮かべた。

「あの天才科学者がいくら狂ってるって言っても、所詮は人間だ。自分の教え子を失いたくはないだろう。ひょっとして世界初なんじゃねぇか?あいつの弱みを握れた男なんてよ。」

「そんな!ひどい!!」

「ゲス野郎が…!!」

アンジェと狩谷はビリーを睨み付けるが、ビリーは全く動じない。世界中のどの権力者でさえ不可能だった、エドガーの弱点を突くという行為。それができたことに比べれば、全然気にならないのだ。

「…舐めるんじゃないわよ…」

しかし、空子は唐突に呟き、それから狩谷達に向かって叫んだ。

「あたしに構わずこいつを倒して!」

「黙りな!!」

「うっ!!」

ビリーは空子の顔を殴りつけ、強引に黙らせる。

「空子!!てめぇ…そこを動くな!!今すぐぶっ殺してやる!!」

「お前こそ動くな!!こいつを殺すぞ!!」

狩谷は動こうとするが、再びビリーが空子に拳銃を向けたので、思いとどまる。

(どうしよう…私の能力はもう知られちゃってるし…)

さすがに同じ手は二度も通じないだろうと、次の作戦を考えるアンジェ。今下手に動けば、空子を殺されてしまう。

(何か…何かないの!?)

どうすれば一発で空子を救えるのか、全力で考える。


その時、


「はああああああああああ!!!」


いきなりある人物が現れ、ビリーに斬り掛かった。彼が振るった日本刀は、ビリーの拳銃を破壊し、さらにビリーを蹴り飛ばす。

「がっ!?」

だが、まだ終わらない。

「やぁっ!!」

もう一人現れ、空子を捕らえている二人をハルバードで倒した。アンジェは二人の名を呼ぶ。

「光輝くん!!さだめちゃん!!」

そう、現れた二人は、光輝とさだめだった。

「理事長先生に呼ばれたんだ。間に合ってよかったよ」

光輝はビリーに羅刹刃を向けて警戒しながら言い、

「エリックが相手じゃ苦戦するから、行って助けてあげて欲しいってね。」

さだめは空子を保護してから、ゆっくり後退する。

「援軍を用意してやがったか…」

倒れてしまったビリーは、まるでダメージを受けていないかのように立ち上がる。今のはただの牽制なのだが、それでもここまで平然としているのに、光輝は少し驚く。だが、空子はもう取り返したのだ。あとはビリーを倒し、ビッグデュエルを取り返すだけ。

「お前の負けだ。ビッグデュエルを返してもらう!」

しかし光輝は、いや、この場にいる全員が知らなかった。

「俺の負けだぁ?」

ビリーにまだ奥の手が残されていたなど。

「読みが甘いんだよ!!」

ビリーは怪物の姿になった。背中に二本の剣を背負い、両手にバルカン砲が設置されたガントレットを装備した怪物へと。驚き動きが止まった光輝を、お返しとばかりに蹴り飛ばすビリー。

「ぐあっ!!」

「光輝!!」

光輝を気遣うさだめ。

「読みも甘けりゃ詰めも甘いねぇ。」

「えっ!?きゃあっ!!」

その直後、さだめは物陰から飛び出してきたアメルダに殴られ、空子をひったくられた。

「あっ!!」

「空子!!」

空子を救おうと駆け出す狩谷だが、アメルダも怪物に変身する。両腰にショットガン、マシンガン、ライフル、ピストルを一丁ずつ装備した怪物に変身したアメルダは、そのうちのピストルを抜いて空子のこめかみに押し付けた。

「これで振り出しに戻ったねぇ。」

楽しそうに笑うアメルダ。狩谷は歯ぎしりして、渋々止まる。と、

「ぐああっ!!」

すぐ近くの壁を破って、アデルが吹き飛ばされてきた。壁に空いた穴から、ビャクオウが悠々と出てくる。

「おおエリック。そっちももうすぐ片付きそうだな」

「その声…ビリー?その姿は?いや、それより、なぜあなたは私がエリックだとわかったのですか?」

ビリーはビャクオウがエリックだと見抜いた。しかし、これはおかしい。エリックは今まで、一度もビャクオウに変身した姿をビリーに見せなかった。だから、ビャクオウの正体がエリックだということは知らないはずなのだ。

「もう教えてやってもいいか。俺達のスポンサーは、ヴァルハラだ。」

ビリーは語る。自分達を雇ったのはヴァルハラで、それからボーグソルジャーに改造してもらったと。

「だから俺はお前らのことを知ってるし、アデルを抹殺するようにも言われてる。当然お前もな」

何かのスイッチを出し、

「ってことで、お前も死ね。」

押した。それと同時に施設のあちこちが爆発し、炎に包まれていく。

「俺の部下達に爆弾を仕掛けさせた。間もなくこの施設は爆発し、お前はそれに巻き込まれて死ぬ。当然俺達は逃げさせてもらうぜ。先に行け、アメルダ。」

「了解リーダー。」

「ゲイル!!狩谷!!みんな!!」

ビリーはアメルダを先に転移装置で逃がした。空子も一緒に。

「うっ…くっ…」

アデルはビャクオウとの戦いでかなりのダメージを受けたが、何とか立ち上がる。

「こんなもので私が死ぬと思っているのですか?」

「ああ、死ぬだろうなぁ。」

互いに余裕のビャクオウとビリー。しかし、ビャクオウの余裕は、

「そうだ、冥土の土産に教えてやるよ。キャスリンを殺したのは、対立国の兵士じゃねぇ。」

ビリーが真実を打ち明けた時に崩れた。

「この俺だ。」

「ッ!?」

実はビリーは、対立国からキャスリンを暗殺するよう命令され、城を守る兵士に偽装して送り込まれた殺し屋だったのだ。

「貴様が…貴様が彼女を殺したのか!?」

「だからそう言ったじゃねぇか。よかったな?これでお前、ようやくキャスリンに会えるぜ。あの世でだけどな!ハッハッハッハッ!!」

ビリーも逃げてしまう。

「キャスリンって…?」

「よくわからないけど、今はそんなことを話してる暇はないよ!」

さだめはビリーが言っていたキャスリンが誰か気になったが、光輝の言う通り、今はおしゃべりに興じている暇はない。あちこちから火の手が上がり、施設は爆発寸前だ。ここも持ってあと数分だろう。

「急いで逃げよう!!」

アンジェは覚醒し、瞬間移動を使おうとする。しかし、

「お前達は先に行け。」

アデルは逃げるのを拒否した。視線の先には、ビャクオウの姿が。

「俺は奴と決着をつけてから行く。」

「な、何言ってんだよ!?もう戦う必要は…」

狩谷は止めかけたが、ビャクオウはホワイトスイーパーをアデルに向け、逃がすつもりはないという意志表示をする。

「お前もいい加減にしろよ!!裏切られたんだぞ!?」

「…元々あの男は関係ありません。私はゲイルと決着をつけるために、話に乗ったのですから。」

狩谷の言うことを聞こうとしないビャクオウ。

「…行こう。私達には入り込めない」

アンジェは諦めた。そう、入り込む余地などない。この二人の因縁には、誰も立ち入れないのだ。

「…死なないでね…」

アンジェは一言だけ言い、

「…ああ。」

アデルの了承を待ってから、狩谷達と瞬間移動で逃げた。

「お前がそうなってしまった原因は俺にある。そのことについて俺は、ずっと罪悪感を感じていた。だが…」

アデルはプライドソウルの刃に手を当てる。

「今は怒りしか感じない。」

「…それでいい。それでいいんですよ」

ビャクオウもホワイトスイーパーの刃に手を当てる。二人は互いの武器の刃をゆっくりと撫でてエネルギーを込め。




それからぶつかった。




「エンドオブソウル!!!」

「エンドオブファンタズマ!!!」




何度も何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も、何度でもぶつかり合う。




そして、




「ワールドエンド…!!」

「ギャラクティックエンド…!!」







「「ブレイカァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」」








二人が必殺の光線を撃つのと、施設が爆発で粉々に吹き飛ぶのは、同時だった。








次回に続く!!

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