第十六話 ヴァルハラ 前編
二つに分けました。
「まさかこのようなことになるとは…」
クルセイドキャッスルの自室で、マヴァルは焦っていた。理由は、コレクとウォントの敗北を耳にしたからである。
最近立て続けにボーグソルジャーを撃破しているメタルデビルズ達。もしかしたらボーグソルジャーでは倒せない相手なのかと思い、デザイアのエボリュータント達に期待していたのだが、エボリュータントどころか幹部二人が返り討ちにあったという予想外の結果に、マヴァルはいつになく焦っていたのだ。
(最初は取るに足らん連中だと思っていたが、いよいよ無視できなくなったな…)
いくら世界最高峰の頭脳を持つエドガーが造り上げた改造人間とはいえ、まさかここまでの強さを秘めているとは思わなかった。当初アデルやビャクオウを雑魚同然に見ていたマヴァルだったが、もはやこの二人は間違いなくヴァルハラの脅威。一刻も早く始末する必要がある。
(だが…)
それには問題があった。アデル達が倒したボーグソルジャーより強い者は、まだまだいる。しかし、デザイアの幹部を超える者はいない。となると、それに勝ったアデル達を倒せるボーグソルジャーも、いないと言える。しかも、どういうわけかこれだけの被害を出しているにも関わらず、ヴァルハラの盟主たるミレイヌは、メタルデビルズの撃破に対して消極的だ。このままでは、いずれヴァルハラが滅ぼされてしまう。
(…いや、さすがにそれは考えすぎか)
と考えて、マヴァルは首を横に振った。メタルデビルズは確かに強いが、それでもミレイヌに勝つことなどあり得ない。ミレイヌが敗れぬ限り、ヴァルハラは滅びないのだ。
(そうか。ミレイヌ様は自分が負けることがないとわかっていらっしゃるから、あそこまで消極的なのか)
崇拝する盟主は、メタルデビルズをいつでも潰せる小物としか見ていない。だから、連中の撃破を後回しにしているのだ、と、マヴァルはそう思うことにした。
(実際、連中を倒すより重要なことなど、山ほどある)
より多い兵力の確保、さらなる兵器の開発、デザイアとの和平。やるべきことは山積みだ。
(しかしこのままというのも…)
が、盟主を守る三将軍の一人としては、少しでも多くの災いを取り除いておいた方がいい。
(…やはりわしが赴くよりほかあるまい)
ボーグソルジャー達が敵わない以上、それより強い自分が出向くしかない。
(わしの身体はミレイヌ様に直々に改造していただいたのだ。そのわしの力が、デザイアの幹部どもなどに劣るはずはない)
ミレイヌは、ヴァルハラにおける人体改造技術の第一人者でもある。そのミレイヌに直接改造してもらった者のみが、ボーグジェネラルになるのだ。マヴァルは最古参メンバーの一人だが、旧型であれどその力はボーグソルジャー達より上。ミレイヌ自身の手による改造は、他の改造技術者達よりも遥かに優れているのだ。ゆえにマヴァル達ボーグジェネラルは、自分の力に絶対の自信を持っている。盟主からいただいた力が、敗れるはずはないと。
支度を整えたマヴァルは、誰にも見つからないように転移室を目指す。三将軍の一人が動くとなれば、それは尋常なことではないからだ。ミレイヌからも、クルセイドキャッスルを離れての行動は、なるべく自粛するよう言われている。だからこそ、気付かれないように仕事を終え、気付かれないように戻ってくる必要があるのだ。
そう思っていた矢先、
「マヴァル、どこに行くんだ?そっちは転移室だぞ?」
見つかった。幸いにもマヴァルを見つけたのは、同じく三将軍の一人、ゴーザだったが。
「…お前になら話しても構うまい。」
マヴァルはゴーザに、自分がメタルデビルズを倒しに行こうとしていることを伝えた。
「そうか。」
「ミレイヌ様に知られては事だ。内密に頼むぞ」
口止めし、再び転移室に向かう。だが、
「俺も一緒に行く。」
ゴーザはそう言って呼び止めた。
「…お前は自分が何を言っておるかわかっているのか?ヴァルハラの最高戦力が一度に二人も姿を消したら、さすがに怪しまれるじゃろうが。」
「メタルデビルズについては、俺も近々対処しようと思っていた。いい機会ができたから、一緒に行くと言っているだけだ。」
マヴァルはゴーザを押し留めようとするが、どうしてもとゴーザは聞かない。必死なマヴァルを見て、ゴーザはついていきたい本当の理由を言った。
「親父に無茶はさせられない。」
「…まったく、頑固な息子を持ったものだなわしは。」
マヴァルがミレイヌの次に信頼を置いている者は、ネイゼンでもフィスでも、他のボーグソルジャーやデザイアでもなく、ゴーザである。なぜなら、二人は血の繋がった親子だからだ。
三年前、まだヴァルハラに加わっていなかった頃、マヴァルは山奥の小屋にゴーザと二人きりで暮らしていた。妻に先立たれ、自身も不治の病にかかり、余命が三日後にまで迫っていた時、マヴァルはミレイヌと出会って改造を施してもらい、命を救われたのだ。父を救ってもらったゴーザはその恩を返すため、自ら改造を志願。親子ともども、ヴァルハラに加入した。
「ミレイヌ様に万が一でも危害が加わってはならん。メタルデビルズは全力で抹殺する」
「俺と親父の二人がかりでなら、負けることはあり得ない。必ず勝てる」
マヴァルとゴーザ。二人の将軍は、転移室へと向かう。全ては盟主ミレイヌと、盟主が作り上げたヴァルハラを守るために…。
*
ヘブンズエデン。
ウォントの襲撃から、二日が経過した。光輝とさだめの二人は、何とか意識が回復したものの、まだ予断を許さない状況で、全治二週間を言い渡されている。
「しかし、ウチの医療システムが優秀でよかったよな。」
「ええ。普通の病院に任せてたら、全快までに半年はかかってたそうだもの。」
狩谷と空子は、友人が一命をとりとめたことに安堵していた。
「全身複雑骨折で破裂した内臓も多数…本来なら死んでいてもおかしくない。」
「あんなになるまで戦ってたってことは…本当に…死ぬつもりだったんだね…」
ゲイルとアンジェは光輝とさだめの症状を聞き、改めて光輝の憎悪と怒りと復讐心、それから大事な人を守りたいという想いを、そんな彼に命を預けたさだめの愛と覚悟の強さを、心の底から思い知る。
「…情けない話だ。本来お前達を守るべき立場にいるのは俺なのに、逆に守られるとはな。」
そして、反省するゲイル。自分の力が至らないばかりに、危うく仲間達を死なせてしまうところだった。
「お前一人の責任じゃねーよ。あいつはとんでもなく強かったし、相性も悪かった。」
「あたし達も、もっと強くならなくちゃ。」
「約二名が、もう行動を起こしてるけどね。」
アンジェが言った二名とは、皇魔とレスティーのことである。今のままでは力不足だと痛感した二人は、早速新たな暗殺任務に赴き、腕を上げていた。よって、今二人はここにいない。
「しかし、こんな時に限ってメイリン先生も室岡先生も出張かぁ…」
ヘブンズエデンの教師にも、任務はある。めったにないことだが、現在このクラスは担任副担任ともに出張に行っており、帰還にはあと三日か四日はかかるそうだ。メイリンはともかく、室岡のスキルがあれば、ウォントを倒せていたかもしれないが…。
「あのような連中に頼ることはありません。それに、白宮光輝と桐崎さだめのことも問題ではない。」
そう言ったのは、エリックだった。
「問題なのは、この私があんな愚か者との戦いで、あそこまで無様な姿を晒してしまったことです!全く腹立たしい!」
どうやら彼は、ウォントに自分の能力を完封されてしまったことがよほどショックだったようだ。ウォントの戦い方は確かにエリックのビャクオウには有効な戦法だったのだが、あんな工夫も何もない力任せな攻撃に敗れたこと、それが許せなかった。
「…あいつはほっとこうぜ。」
「…下手に慰めたりしてとばっちりもらいたくないし。」
エリックが苦手な狩谷と空子は、小声で耳打ちする。
「それより、光輝くん達のお見舞いに行こうよ。」
「そうだな。あの二人も寝てばかりで暇だろうし、話相手になってやるか。」
一人ぶつぶつ恨み言を呟いているエリックを華麗にスルーして、アンジェとゲイルは光輝とさだめの見舞いの話をしていた。
*
休養中の二人と会話をするため、四人は医務室に行った。
「おーっす。」
「お見舞いに来たわよ。」
狩谷と空子が挨拶する。
「やあみんな。来てくれて嬉しいよ」
光輝がベッドの上で横になったまま、笑顔で応対した。
「暇だったろう?だから話相手でもしてやろうと思ってな。」
「助かったよゲイル。寝てばかりっていうのも退屈でさ」
「逆に寝すぎてもう寝られないくらい。」
全身に包帯を巻かれてはいるが、光輝もさだめも元気そうだ。
「…あっ、そういえば皇魔さん達は?」
光輝はアンジェに訊く。
「もう新しい任務に行ってるよ。」
「…僕達のこと、心配とかしてなかった?」
「…」
アンジェは黙った。なぜなら、光輝の予想通り、皇魔はとても心配していたからだ。俺のせいで白宮達を危険に巻き込んでしまったと、ずっと気に病んでいた。
「…心配…してたんだね?」
「…うん。」
「…そっか…」
光輝はアンジェの表情から、答えを読み取る。
「…帰ってきたら、言っておかなくちゃね。僕のことは心配いらないって」
光輝にとって、皇魔とレスティーは師匠のような存在だ。彼が訓練期間に、一番最初に模擬戦相手に選んだのが皇魔なのである。それはもう、完膚なきまでに打ちのめされた。以来、光輝はずっと皇魔に師事している。皇魔もそのことについては意識しているようで、レスティーと一緒に何かと気にかけてくれていた。今回は鬼宝院家と霊宮寺家、二人の家系に関わる相手。そこに光輝を巻き込んで大怪我させてしまったことを、皇魔は深く反省している。だが、自分は心配ないと、光輝はそう伝えたいのだ。
その時、
『ゲイル・プライド、エリック・アンダーソンの二人は、お客様が来ておられるので、至急玄関まで来て下さい。繰り返します。ゲイル・プライド、エリック・アンダーソンの二人は、お客様が来ておられるので、至急玄関まで来て下さい。』
校内放送が流れた。
「俺とエリックを?珍しいな…」
「行ってきなよ。僕達は心配ないから」
「…少し気になるが、そうさせてもらう。」
ゲイルは光輝に促され、医務室から出ていった。
「しかし、何だってあの二人なんだ?」
「さあ?」
狩谷と空子は肩をすくめるばかり。
「…何だか嫌な予感がする。私、行ってくるね!」
アンジェも出ていった。
「二人も行って!私達は大丈夫だから」
「あ、ああ。」
「じゃあお大事に!」
さだめに言われて、二人も追う。
*
ゲイルとエリックは、玄関に来ていた。だが、肝心の来客の姿がない。
「すみません。お客様が来ておられるというのは?」
エリックは受付嬢に尋ねる。
「あれ?今確かにそこにおられたんですけど…」
「…妙ですね…」
来客があったのは間違いないらしいが、いつの間にかいなくなっていたようだ。
「「!!」」
刹那、二人のレーダーが高いエネルギー反応を探知した。
「この反応…ボーグソルジャー!!」
エリックは反応を追って、玄関から飛び出していく。ゲイルも追いかけようとしたところで、アンジェ達が追いついてきた。
「ゲイル!」
「お前達も来たのか。だが、今回はここで待っていろ。」
「えっ!?」
「どういうこと!?」
ゲイルは驚いているアンジェと空子に、自分のレーダーがボーグソルジャーの反応を探知したことを教えた。
「なら俺達も行くぜ!」
「聞いていなかったのか?待っていろ。」
「行くって!」
「聞け!今回の相手はおかしいんだ!」
強引にでもついていこうとする狩谷を納得させるため、ゲイルは話をする。
ゲイルの頭の中には高性能なレーダーが搭載されており、それでボーグソルジャーの出現を察知することができる。実はそれだけでなく、出現したボーグソルジャーの力をある程度計測できるのだが、今回探知した力は、いつもと比べて明らかにおかしかった。
レーダーに引っ掛かったエネルギーが、通常のボーグソルジャーよりも遥かに大きいのだ。軽く見積もっても、ダースの二十倍以上。
「そんなとんでもないやつが近くにいるってのか!?」
「ああ。だから、お前達を守りきれない可能性がある。」
このエネルギー量は、以前戦闘を行ったデザイアの幹部達にも匹敵するほどだ。こんな相手と戦えば、苦戦は必至。しかし、
「私は行く。」
それでも、アンジェは同行を申し出た。
「私にはゲイルやエリックと同じくらいの力があるんだよ?大丈夫。もうダースの時みたいなヘマはしない」
「…確かにヤバい相手だが、だからこそみんなで行くべきだ。倒せなくても、陽動くらいはできるぜ!」
「あたしの援護だって必要なんじゃない?だからつれていってよね。足手纏いにだけは絶対にならないから」
全員が、既に覚悟を決めていた。
「みんな…」
ここまで強い覚悟を固めてくれているのに、それを無下にはできない。
「わかった。みんな、来てくれ!」
昔の自分なら、無理矢理にでも押し留めていただろう。だが、仲間というものの大切さを知った今では、アンジェ達の存在はなくてはならない。ゲイルは仲間達をつれて、先行しているエリックを追った。
*
エリックはボーグソルジャーの反応を追って、街を走っていた。
(逃げ回ってますね…)
反応は一ヵ所に留まらず、動き続けている。それこそ、エリックから逃げるように。と、反応が突然逃げるのをやめた。
(逃げられないとわかりましたか)
ここぞとばかりに追い詰めようと、スピードを上げるエリック。
だが次の瞬間、反応が消えた。
(何!?)
さらにスピードを上げて急行するエリック。やがて反応が消えた場所に到着し、周囲を見回した。
(…いない…)
ボーグソルジャーらしき者の姿は見えない。いや、人の子一人いなかった。
(隠れているのか?)
隠れられそうな場所は、いくつかある。エリックが捜索に入ろうとした時、ゲイル達が追いついた。
「エリック!ボーグソルジャーは!?」
「ここで反応が消えました。恐らく近くに隠れているはずです」
ゲイルはエリックからの返答を聞き、周囲を警戒する。
「くそっ!どこだ!?」
狩谷はダークハンターを構え、空子はギガトラッシュを担ぎ、アンジェはアークスを剣に変化させて、それぞれ周囲に気を配っていた。
驚くほど生き物の気配がなく、不気味なほど静かで、聞こえるのは五人が武器を構える音と、衣擦れの音と、足音のみ。そんな状況でもエリックの心中は冷静そのもので、辺りに目を向けつつ考えていた。ヘブンズエデンの玄関に自分とゲイルを呼びつけたのは、ボーグソルジャーと見てまず違いない。ボーグソルジャーは二人を呼び出したあと、姿を消した。それからヘブンズエデンを離れ、自分の力を解放し、逃走の果てにここでまたいなくなった。
(私達を倒したければ、ヘブンズエデンに来た時点で、もうそうするべきだった。それなのに、なぜこんな意味のわからない真似を…?)
敵の不可解な行動に対して考えを巡らせるエリック。と、気付いた。気付いてしまった。敵の意図に。
(…誘われた…?)
ここまでに至る敵の行動は、もうこちらを誘導しているとしか思えない。この場所で反応が消えたことが、何よりの証拠。つまりここには、何かがある。何かしらの罠が。そして、自分達はそれにまんまと乗ってしまった。
「これは罠です!!離れますよ!!」
エリックがそう叫んだ瞬間、
近くの建物の窓を突き破って、何かが飛び出してきた。男だ。男が拳を振りかぶっている。
「くっ!!」
エリックは男の拳をかわしてホワイトスイーパーを抜き、鉛弾を見舞う。男は着地しつつ、それを片手で受けた。腕は無傷。ダメージを負った様子は全くない。
「エリック!!」
ゲイルはエリックを心配して駆けつける。
「こいつか!?」
狩谷達も来た。
「ああ、こいつだ!!」
ゲイルは肯定する。肯定しながら、戦慄していた。ゲイルとエリックのレーダーが探知したボーグソルジャーの反応は、この男から出ている。寸分違わぬ、同じ反応だ。
そう、同じ反応。それが問題だった。
普通、ボーグソルジャーはソルジャースタイルになると、戦闘力が大きく向上する。従ってエネルギー量も増大するのだが、この男から計測できるエネルギー量は最初感知した時と全く同じ。つまりこの男、人間体でありながら、ダースの二十倍以上の戦闘力を持ち合わせているのだ!
「私にもわかる。このボーグソルジャー、今まで戦ってきた相手とは次元そのものが違う!」
ここまで接近することで、アンジェにも男の強さがわかったようだ。
「お前は何者だ!!」
問い詰めるゲイル。
答えを返したのは、男ではなく、すぐ近くの建物の上からこちらを見下ろしていた、老人だった。
「その男の名はゴーザ。ヴァルハラの最高戦力、三将軍の一人、『闘将軍』のゴーザ。そしてわしは同じく三将軍の一人、『智将軍』のマヴァルだ。」
男について説明するついでに名乗った老人、マヴァルはゴーザの隣に降り立つ。
「三将軍だと!?」
ゲイルは以前、エドガーからミレイヌを守る最強の守護者達、三将軍について聞いていた。その内の二人が、今彼らの目の前にいるのである。
「わしの部下やデザイアの幹部どもがあまりにもふがいないのでな、わしらが直々に貴様らを潰しに来たというわけだ。」
今回来た目的の旨を説明をするマヴァル。
「そんな…!!」
「またボスかよ!!それも最高戦力って、大ボスじゃねぇか!!」
空子と狩谷は、再び敵組織の大物が現れたことにたじろぐ。しかも今回の敵はヴァルハラの最高幹部なので、コレクやウォントより強いということになる(コレク達の上にはまだ副首領のイズマがいるので、あれらはまだ最高戦力ではない)。
「なるほど、三将軍自らの台頭ですか。」
平静を装ってはいるが、エリックも内心はかなり焦っている。最高戦力と呼ばれる通り、その力はヴァルハラでもトップクラス。ビャクオウの力を完璧に使いこなしている彼でさえ、勝てるかどうかはかなり危うい。
「しかし、ずいぶんと回りくどいことをしましたね?我々を倒したいのなら、呼び出した時点で…いや、最初からヘブンズエデンごと叩き潰す方が早かったのに。」
なので、勝率を引き上げるために、マヴァルから少し話を聞くことにした。話の中から、何か勝つためのネタを引き出せるかもしれないと思ったからだ。
「今回わしらが貴様らを倒すことを、ミレイヌ様にはお伝えしていない。あくまでも、わしらの独断だ。ゆえに、あまり事を大きくするわけにもいかんのでな。」
マヴァルは乗ってきてくれた。チャンスとばかりに、エリックは話を続ける。
「つまり、ヘブンズエデンそのものは巻き込めないと?」
「当然だ。今やヘブンズエデンは世界的にも注目され、あらゆる組織が様々な意図で干渉している。そこが潰れれば、混乱は免れん。今はまだ、その時ではないからな。」
だからわざわざあんな面倒な手順を踏んで、彼らを誘き寄せたのだという。
「…話は終わりだ。三将軍が一度に二人も無言で姿を眩ましたとなれば、騒動になる。こちらもあまり時間がないのだ」
エリックの意図に気付いたらしく、話を打ち切るマヴァル。
(さてどうするか…)
結局、ネタは引き出せなかった。ミレイヌに教えていない独断だということはわかったが、それだけでは何にもならない。
(普通に戦って勝つしかない、か)
「ビャクオウ、始動。」
エリックはビャクオウに変身した。
「相手がボーグジェネラルなら、遠慮する必要はない。アデル、起動!!」
ゲイルもアデルに変身する。
「んっ!!」
アンジェも覚醒した。
「…スタイルコンバート」
それを見たゴーザは小さく告げる。すると、ゴーザの身体が一回り大きくなり、鎧を着た四本腕の大男の怪物になった。
「スタイルコンバート」
今度は、マヴァルが黒い炎となる。その炎を、人間大サイズのクリスタルが覆った。クリスタルの中から、炎の中から赤く光る目が睨んでいる。
「それがお前らの正体か!!」
先手必勝とばかりに風の刃を放つ狩谷。と、ゴーザの四本腕にそれぞれ湾曲した剣が現れ、ゴーザは刃を叩き潰した。
「コレクと同じ能力!?」
空子はギガトラッシュの銃口を向ける。
「ゴーザの力をあのような男と比べるでない!!出せる武器は剣と槍と斧だけだが、パワーは数段上だぞ!!」
寡黙なゴーザの代わりにマヴァルが説明する。
「さあ殺せゴーザ!!ミレイヌ様の障害を片付けるぞ!!」
「わかった。」
「来るぞ!!」
アデルが警戒するよう呼び掛け、戦いは始まった。
*
いつものように、玉座に腰掛けているミレイヌ。側にはフィスが寄り添って眠り、ミレイヌはその頭を優しく撫でていた。
「マヴァル!ゴーザ!」
そこへ、ネイゼンが入ってくる。
「あらネイゼン。」
「ミレイヌ様。ここにマヴァルとゴーザは来ておりませんか?」
「いえ。」
「そうですか…」
「あの二人がどうかしたので?」
フィスは目を覚まし、ネイゼンに尋ねた。
「いないのだ。城中を捜したが、どこにも…」
「部屋にはいないのですか?」
今度はミレイヌが尋ねる。
「もちろん捜しました。しかし、影も形もないのです。」
「それは困りましたね…急遽デザイアとの会談が決まったので、出席してもらいたいのですが…」
どうやら、マヴァルとゴーザがいないらしい。
「まったく、自分達の立場が理解できていないのですかな?三将軍がミレイヌ様に何の断りもなく、二人も姿を消すなど…」
ネイゼンは愚痴をこぼす。しかし、
「なら、迎えに行きますか。」
ミレイヌは二人がどこに行ったのかわかったようだ。
「やはりご存知で!?」
「いいえ。ですが、簡単な予想はできますよ。恐らくあの二人は今、ヘブンズエデンにいます。」
「!?」
「なんと!?」
これにはフィスもネイゼンも驚いた。
「私がメタルデビルズに対してあまりにも消極的なので、痺れをきらして滅ぼしに行ったのでしょう。まぁ、私なりの段取りがあったから泳がせていた、と説明しなかったのが原因ですが。」
全てお見通しだった。
「しょうのない連中だ。今行って連れ戻して参ります!」
慌てて出発しようとするネイゼン。が、
「私も行きます。」
なんと、ミレイヌが同行を申し出てきた。
「…は!?今何と!?」
「だから、私も行くと言ったのです。言ったでしょう?迎えに行きますか、と。」
確かに言った。
「しかし…ヴァルハラの盟主であるあなた様が直々に動かれるというのは…」
「事は一刻を争います。それに、私もメタルデビルズの力を直に体感しておきたいのです。」
「ならば私も行きます。ミレイヌ様をお守りするのが、トップソルジャーの勤めですから。」
フィスも同行する。
「ふふふ。久しぶりですね、全員で出掛けるのは。」
ミレイヌは童心に帰った気分を味わっていた。
*
「おおおっ!!」
「らああっ!!」
斬りかかるアデルと狩谷。
「ふん。」
ゴーザはそれを、腕を二本ずつ使って受け止め、跳ね返した。
「クリスタルスティング!!」
マヴァルは自身の身体から、クリスタルの刺を発射する。
「このっ!!」
空子はそれをギガトラッシュで横から撃って弾き飛ばし、
「シャイニングフェザーストーム!!」
アンジェが光る羽で反撃した。しかし、
「クリスタルスティンガー!!」
今度は大量のクリスタルが放たれ、アンジェのシャイニングフェザーストームは物量負けしてしまう。
「くっ!」
仕方なく回避。
「だったら…!!」
アンジェはアークスを弓に変形させ、
「プラチナアローシューティング!!!」
光の矢を射る。マヴァルはそれに対応して、八つのクリスタルを生成。クリスタルは正面に円を描くようにして陣形を組み、円の中にはエネルギーフィールドが生まれ、
「クリスタルリフレクション!!!」
アンジェの矢を跳ね返した。
「なっ!?」
「ちっ!!」
ビャクオウがアンジェを突き飛ばしたおかげで、大事はない。だが、背後にあった建物が一軒、塵になった。
「奴の相手は私がします。あなた達はゴーザを」
「一人でなんて無茶だよ!!」
「あなた達がいては邪魔なんです!!言うことを聞きなさい!!」
「…わかった。」
ビャクオウの強い口調に、アンジェは渋々従う。
「良いのだぞ?何人がかりで来ても。わしには勝てんがな」
挑発するマヴァル。
「ご冗談を…!!」
ビャクオウはそれに乗らず、一人でマヴァルに挑んだ。
「くっ!!」
マヴァルが言った通り、ゴーザのパワーはコレクよりもさらに上だ。だが、
(こいつ相手なら、イグニスドライブが使える!!)
能力がコレクと同じだったのが幸いした。ウォントと同じだったら打つ手がなかったが、ゴーザにならイグニスドライブが通用する。
「イグニスドライブ!!」
早速イグニスドライブを発動したアデルは、ゴーザに斬りかかった。だが、
「!?」
攻撃が当たる寸前に、ゴーザが消える。そして消えたと思った瞬間、背後に回り込んでいたゴーザに斬られた。
「ぐわっ!!」
凄まじいパワーの斬撃を受けて、アデルの背中に裂傷ができる。
「高速…移動…!!」
アデルが目で追いきれないほどの、超高速移動。ゴーザは、それをやってのけたのだ。
「パワーだけじゃない!!スピードも桁外れ!!」
小細工なしの、単純な力押し。それはアデルの力をも圧倒し、アンジェを戦慄させた。
「それで終わりか。」
「…まだだ!!」
挑発されたアデルは右拳にエネルギーを込め、突撃する。
「アクセラレーションパンチ!!!」
「エクストリームテンペスト!!!」
突っ込むアデルの背後から、狩谷が竜巻を放った。中に混じっている真空の刃はアデルを傷付けることなく、竜巻で保護しながらアデルとともにゴーザへ襲いかかった。ゴーザは無言で四本の腕のうち二本で風を斬り刻み、もう二本を交差させて、アクセラレーションパンチをガードする。
「!!」
アデルの拳はゴーザをその場から動かすことも叶わず、弾き返された。
「…舞い踊れ」
ゴーザは剣にエネルギーを込め、
「デストラクションダンス!!!」
アデルと狩谷に向かって滅茶苦茶に振り回した。剣からはエネルギーの刃が放たれる。
「ブラッディファング!!!」
アデルは武器をチャウグナルファングに替えて迎撃するが、一撃一撃の威力がとてつもなく重く、受けきれなくなったため、炎化して逃げた。狩谷はもう逃げているので、当たることはない。
だが、アデルが炎化した瞬間に、ゴーザが前進してきた。そして、
「うぐっ!!」
ゴーザは剣を全て使って刺突を繰り出し、その剣はアデルの四肢に突き刺さる。物理攻撃に対してほぼ無敵と言える状態の炎化。だが、それは炎になっている間だけ。それから、炎から実体に戻るコンマ数秒の間、完全に無防備になる。ゴーザはアデルが実体を取り戻す絶妙なタイミングで攻撃することで、アデルにダメージを与えたのだ。
「ハイスピードエッジ!!」
しかし、訓練生組もやられっぱなしではない。無論反撃する。まずは狩谷が風の刃を飛ばしてゴーザの背中を斬りつけ、
「そこっ!!」
斬りつけた箇所に空子がギガトラッシュの弾を命中させ、
「レイブレード!!」
最後にアンジェが剣に戻したアークスで同じ場所を斬った。この三連撃が効いたのか、ゴーザの力が少し弱まる。その隙を突いて離脱したアデルは、武器をダゴンとヒュドラに持ち替え、
「ルルイエセメタリー!!!」
必殺技で、ゴーザを撃った。
「…」
しかし、ダメージはない。
「クリスタルスティンガー!!」
無数に発射されるクリスタルをかわしながら、ビャクオウはマヴァルを銃撃する。
「そのような豆鉄砲で傷を負うわしではないわ!!」
マヴァルがそう言った通り、そのボディーには傷一つ付いていない。どんな材質のクリスタルなのだろうか。
「ちょこまかと鬱陶しいやつめ!!」
なおも銃撃を続けるビャクオウを倒すため、再度クリスタルスティンガーを発動するマヴァル。だが、ただやみくもに撃ったわけではない。行く手を阻むようにビャクオウの正面へ、退路を断つように背後へ、回避を防ぐように真上へ、着弾箇所を調整して、それらの方向へ同時に撃つ。こうすることで、ビャクオウは壁に縫い付けられるような形となり、逃げ場をなくした。
「もらった!!」
智将軍さながらの戦法を見せたマヴァルはとどめを刺すべく、自分の上にクリスタルでできた特大の槍を出現させ、
「クリスタルランス!!!」
ビャクオウに向けて飛ばす。無惨にも、ビャクオウは上半身と下半身を真っ二つにちぎられてしまった。
「やったぞ!!」
しかし、マヴァルが喜んだのもつかの間、死んだはずのビャクオウは、空中に溶けるようにして消滅する。今マヴァルが倒したのは、ビャクオウがデビルズエイリアスを使って生み出した偽者。戦いの最中にイリュージョンナイトメアを使用し、入れ替わっていたのだ。そして本物は、
(終わりです!!)
マヴァルの背後から飛び掛かっている。マヴァルはまだ、気付いていない。
「エンドオブファンタズマ!!!」
ビャクオウはマヴァル目掛けて、エネルギーを込めたホワイトスイーパーの刃を振り下ろそうとした。
しかしその直後、マヴァルの身体から大量のクリスタルの槍が突き出してきた。
「ぐおおっ!!?」
咄嗟に身体をよじって直撃だけは回避したが、かすっただけでも身体にはあちこち裂傷ができており、たまらずビャクオウは飛び退いた。
「クリスタルランスカウンター。わしに死角はないぞ」
マヴァルは全身のどこからでも攻撃を仕掛けることができる。身体の全てが正面であり、背後であり、側面であり、上であり、下であり、武器なのだ。
「クリスタルランスアーム!!」
突き出してきた槍は集合し、伸びる。反対側からも、同じように槍が突き出し、集まり、伸びる。その様は、まさにクリスタルの槍でできた、腕だった。
「死ねい!!」
マヴァルはその腕を鞭のように振るい、槍のように突き、ビャクオウを攻撃する。凄まじい切れ味を持つその腕は、かすっただけでコンクリートもアスファルトも金属も削り取ってしまう。うかつに喰らえない攻撃を、どうにかかわし続けるビャクオウ。
「ランスアームクラスター!!」
それを見たマヴァルは、腕を切り離して射出する。腕は見当違いの方向に飛んでいったが、その後空中で爆発。
「ぐああああっ!!!」
クラスター爆弾のように弾け飛んだクリスタルが、周囲もろともビャクオウを襲い、ボロボロにした。
アデル達も、またボロボロになっている。あれからゴーザに有効なダメージを全く与えられず、一方的に攻撃され続け、戦闘不能になるのも間近な状態。アデルにおいては、いつ変身を解除されてもおかしくなかった。既にイグニスドライブが解除されている。
「ここまでやってもまだ倒れないか。さすがに俺達の部下を撃破し続けてきただけはある。デザイアの幹部が苦戦したのも理解できるな」
ゴーザは声に感情を込めず、ここまで生き残ったことを賞賛した。
「だが、俺は奴らとは違う。その程度の力は通用しない」
言いながら、四本の剣を前に向ける。すると、
「思った以上に長引いたが、これで終わりにする。」
ちょうど砲台になるような形で、剣の間の中央にエネルギーが集まり始めた。
(決めるつもりか…!!)
アデルは危機を感じる。しかし、何ができるとも思えない。あれだけやって全く通じなかったのだから。
(唯一方法があるとすれば…)
アデルはこの危機を突破する方法を、一つだけ思い付く。先日ウォントとの戦いで使用できるようになった、ワールドエンドブレイカーだ。直撃させれば、ウォントでさえ一撃で人間態に戻す超大技。だが、ゴーザはウォントよりも遥かに強い。当てられたとしても、倒せるかどうか…。
「ゲイル。何か方法があるんだね?」
と、アンジェが訊いてきた。
「…ああ。だが、通じるかどうかはわからないぞ。」
「方法があるなら、遠慮しないで使って。私達はちゃんと協力するから」
「…わかった。なら下がっていてくれ。巻き込むかもしれない」
「うん。」
アデルの言い付けに従い下がるアンジェ。アデルはブラスターモードのプライドソウルを出し、エネルギーを込めつつ、ゴーザに向ける。
(もう一度イグニスドライブを使う余裕はない。これで決まってくれ!!)
残ったエネルギーを全て込めたアデルは、
「ワールドエンド…」
引き金を引いた。
「ブレイカァァァァァァァァァァ!!!!」
「クワトロインパルス!!!」
ゴーザも光線を撃つ。威力は互角だ。
「だがこのままじゃ…!!」
狩谷は、ワールドエンドブレイカーの方が少しずつ押し負けてきているのを見た。
「狩谷!!あれをやるわよ!!この前ウォントとの戦いで編み出した、合体技!!」
「よぉし!!」
「私も…!!」
空子はレールガンアタッチメントを取り付けてスイッチを入れ、アンジェはアークスを弓に変化させて矢をつがえる。そして、
「「スーパーソニックハウリング!!!」」
空子が撃った弾を狩谷が風で加速させ、弾は見事ゴーザの顔面に命中し、攻撃を中断させてのけぞらせた。
「プラチナアローシューティング!!!」
さらにアンジェの矢が胸に当たり、ゴーザは完全に体勢を崩す。
「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
最後に、ワールドエンドブレイカーの閃光がゴーザを呑み込んだ。
「ゴーザ!!」
それを目の当たりにするマヴァル。
「貴様ら…!!」
続いて、立っているのもやっとな状態のビャクオウを見た。
「早急に片付けてくれる!!」
マヴァルは憤り、アンジェの矢を跳ね返したあのエネルギーフィールドを出現させる。だが、これは防御のためのフィールドではなく、攻撃のためのフィールド。
「ダークフレイムブラスター!!!」
フィールドからは黒い炎が溢れ出し、ビャクオウを焼き殺した。しかし、
「さすがに私も余裕がなくなってきましたよ。」
これも分身で、本体は…いや、本体がどこにいるかはわからなかった。
なぜなら、マヴァルの周囲をビャクオウが埋めつくしていたからだ。その数、およそ五十七体。これらは分身で、本体はこの内のどれか一体だけ。
「本当は百体全員を出したかったのですが、さすがに面積が足りません。」
天に、地にひしめくビャクオウ達は、全員が展開したホワイトスイーパーをマヴァルに向け、
「ギャラクティックエンドブレイカー!!!」
一斉に攻撃した。
「…」
直撃。ワールドエンドブレイカーは、確かに直撃した。アデルはその結果がどうなったのか、注視している。
ゴーザは、仰向けにひっくり返っていた。それだけ。それだけである。間もなくゴーザはゆっくりと起き上がり、ゴキッ、ゴキッ、ゴキキキッと首を回して、アデル達を見た。
「そんな…!!」
アンジェは絶望する。
「あれだけの攻撃を喰らったってのに、大して堪えちゃいねぇ…!!」
「不死身だっていうの…!?」
全力を尽くしても通じなかった。その事実に、狩谷も空子も打ちのめされた思いがした。
(どうだ!?どうなった!?)
ビャクオウも、自分の奥の手がどんな結果をもたらしたか注視している。普段なら、分身して必殺技を使っても何ら支障はない。だが、その分身の数が五十体以上ともなれば、話は別だ。さすがに疲れる。結果は…
「ふん、小賢しい真似をしてくれる!!」
ゴーザとほぼ同じだった。こちらはマヴァルの全身を構成するクリスタルがあちこち少しだけ欠けているが、すぐに再生してしまう。
「やれやれ…これで倒せればよかったんですが…」
疲労を感じながらも、ビャクオウは諦めていない。
「今度は無理にでも、百人でやらせてもらいますよ!」
「やはり、イグニスドライブを使わなかったのは問題だったな。」
そして、アデルもまた、諦めていなかった。
「みんな、少しだけ時間を稼いでくれ。そうしたら強引にでもイグニスドライブを使って、もう一度ワールドエンドブレイカーを叩き込む!」
「おう!」
「「うん!」」
まだ、二人のメタルデビルズの心が折れていない。それだけで希望を取り戻した三人は、返事をした。
その時、
「そこまでだ!!」
顎髭を生やした巨漢が乱入し、ゴーザとマヴァルを止めた。マヴァルは巨漢の名を呼ぶ。
「ネイゼン!!貴様何のつもりだ!!」
これに一同は驚いた。ネイゼンとは、ヴァルハラの三将軍の一人、『大将軍』のネイゼンのことである。
「それはこちらの台詞だ!!ミレイヌ様に一言も申さず勝手な真似を!!」
「黙れ!!こやつらを生かしておけば、必ずミレイヌ様に害が及ぶ!!全てはミレイヌ様のため!!邪魔をするなら貴様とて容赦はせんぞ!!」
ネイゼンの説得には応じず、マヴァルはネイゼンもろともアデル達を始末しようとする。だが、ネイゼンは一歩も退くことなく言った。
「その言葉、もう一度言ってみるがいい。ただし、あの方に向けてな。」
そして、空を見る。
「あっ…あ…!!」
マヴァルは、空から降りてくる者を見て震えていた。
「!!!」
ゴーザにも動揺が見られる。三将軍の二人をこれほど怯えさせる存在は、一人しかいなかった。アデル達も、恐る恐る空を見る。
空からは、一頭のグリフォンが悠々と舞い降りてきていた。
そのグリフォンの背中に腰掛けている者がいる。仮面を着けているので顔はわからないが、体型やドレスを着ていることから、女性であることがわかった。
「あれが…」
狩谷は、もうこの女性が何者か気付いている。
「ヴァルハラの盟主…」
アンジェは呟き、アデルは畏怖の念を抱きながら、その名を呼んだ。
「ミレイヌ…!!」
前々回から続くボスラッシュ。今回は、ヴァルハラ編です。展開が早すぎてせっかく登場した新キャラエリックや新技ワールドエンドブレイカーのすごさが上手く演出できていませんが、代わりに敵組織の幹部連中の強さや、それを相手にすることがどれだけ絶望的かを演出してみました。やっぱりバトルものの大ボスともなれば、これくらい主人公勢との力の差がないとつまらないですよね。
そして降臨した今作のラスボス、ミレイヌ。次回はその圧倒的な力の一端をお見せしますので、お楽しみに!
では!!




