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第十五話 業火の化身

デザイア一番の熱血漢、襲来!!

一人の少年が、業火の中をさまよっていた。

「父さん!!母さん!!どこ!?」

誰もに誇れる父と母を捜して。

「父さん!!母さ…ん…」

そして見つけた。怪物に首を掴まれていた父を。

「父さん!!」

叫ぶ少年。父は少年に向かって、何かを言おうとしている。しかし次の瞬間、


父の身体は炎上し、炭となって崩れた。



「うわあああああああああああああああああ!!!!」













「光輝!!光輝!!!」

誰かが自分を呼ぶ声を聞き、青年に成長した少年、光輝は目を覚ました。彼が今いるのは、地下模擬戦フィールドの休憩室。休んでいるうちに、少しうたた寝をしてしまったらしい。

「…さだめさん…?」うなされていた光輝を起こしたのは、今光輝と交際関係にある少女、さだめ。

「悪い夢でも見てたの?」

さだめは光輝を心配する。

「…うん、ちょっとね…」

「…もしかして…お父さんとお母さんの…?」

自分の両親が殺されたこと、それは彼女以外の人間に話していない。話す気が起きないからだ。というより、勇気がない。

「…うん…」

「そう…」

さだめは今まで、光輝が望むことは何でもしてきた。しかし、こればかりはどうしようもない。

「もう完全に吹っ切ったと思ってたけど、今になってまたこんな夢を見るなんてね…」

光輝を苦しめ続ける過去。しかし、すぐに彼は思った。

「…いや、吹っ切れてなんかいない。こんな所に、復讐目的で通ってる時点で…」

両親を殺したあの怪物を倒したい。そう思ったから、ここにいる。吹っ切れてなど、いない。

「光輝…」

さだめはまた心配した。いつか、光輝にのしかかっている重しが、彼を押し潰してしまうのではないかと。

「…ごめんね。行こっ!」

そんな彼女を心配させないために、光輝は笑顔を作って手を引き、模擬戦フィールドから出た。













「…ウォント?」

アプリシィは、ウォントを捜していた。

「どうしました?」

そこへ、メイカーがやってくる。

「メイカー。ウォントを知らないか?二時間ほど前から姿が見えないんだ。」

「それは妙ですね…一緒に捜しましょう。」

アプリシィはメイカーと協力して、フォビドゥーン中を捜し回る。


一時間後、二人は合流した。

「いませんね…」

しかし、ウォントは見つからない。ウォントが行きそうな場所は全部捜したが、いなかった。

「もしかしたら、ここにはいないのかもしれません。どこかに出掛けたのか…」

「…出掛けた…」

となれば、今度はウォントが行きそうな国を、行きそうな街を、全部捜さなければならない。さすがに範囲が広すぎる。


だが、アプリシィはウォントが行きそうな場所に、すぐ気付いた。


「…ヘブンズエデン。」

そういえば、この前コレクの借りを必ず返すと言っていた。一応コレクの説得には折れたが、ウォントは仲間想いな男。このままで終わるはずがない。

「ウォントは鬼宝院皇魔と、レスティー・エンプレスを殺しに行ったんだ。」

「とすると…少しまずくはありませんか?」

二人とも、ウォントの力を信用していないわけではない。というより、ヘブンズエデンを滅ぼすことに反対しているわけではない。どちらかといえばヘブンズエデンは邪魔だし、ウォントの行為には賛成してさえいる。


だが、ヘブンズエデンにはあのエドガーがいるのだ。もしエドガーが死ぬことになれば、世界中は大混乱に陥る。いずれは世界を支配することがデザイアの目的ではあるが、今はまだその時ではない。混乱を起こされてはまずいのだ。

「行ってウォントを止める。」

「では私も。」

「いや、俺一人でいい。」

「…そうですか?では、お願いします。」

「ああ。」

メイカーはあっさり聞き入れ、アプリシィはウォントを止めに行った。メイカーはアプリシィを見送りながら思う。

(もしあの二人の喧嘩に巻き込まれたら、私でも無事では済みません。任務は好きですが、厄介事は御免です)













放課後、光輝はさだめを連れて、ヘブンズエデンを出ようとしていた。今夜はさだめが夕飯の買い出しに出掛けるのだという。光輝はそれを手伝うつもりだ。

「ごめんね、付き合わせちゃって。」

「ううん、僕も暇だし。」

仲むつまじいカップル。



そのカップルに介入を仕掛ける者がいた。



「まさか先にお前と出くわすことになるとはな。」



二人の前に現れたのは、半袖の男。二人が全く見たことのない男だ。

「あの…どなたで?」

自分に話し掛けてきた男に、光輝は尋ねる。男は一瞬意外そうな顔をした後、何かを勝手に納得した。

「ああそうだったな。この姿でお前と会うのは初めてなんだ」

言った直後、男の全身が炎上する。

「!!」

その光景を見て、光輝の脳裏に悪夢がフラッシュバックした。間もなくして男の全身から吹き出していた炎は収まり、代わりに怪物が姿を現す。


炎を模した姿の怪物が。額には、エボリュータントの証たる、赤いオーブが付いている。怪物は名乗った。


「俺の名はウォント。四年前にお前の両親を殺した男だよ!」













「!!」

帰り支度をしていたゲイルは、何かを感じて手を止めた。

「どうしたんだ?」

「ゲイル?」

同じく帰り支度をしていた狩谷と空子は、ゲイルの様子に気付く。

「ほう、気付きましたか…」

エリックも何かに気付いたようだ。

「今、レーダーが異常な気温の上昇を確認した。」

ゲイルの頭の中のレーダーが、気温の上昇を感知した。夏が近いので、気温が上がること自体は珍しくない。だが、ゲイルのレーダーが感知した変化は、どう考えてもおかしかった。なぜなら、ほんの一瞬とはいえ、気温が70℃以上に上昇したから。これはおかしい。

「なんか、校庭が騒がしいけど…」

アンジェは何やら騒動が起きているらしい校庭を見る。

「私のレーダーも、気温の上昇を感知しました。場所は確かあの辺りです」

エリックのレーダーも感知していた。

「皇魔!!」

と、レスティーがなぜか慌てている。

「この力の波動…まさか奴が…!!」

皇魔も何かを感じたようだ。

「行くぞレスティー!!もし奴ならまずい!!」

「ええ!!」

二人は校庭に向かって駆け出した。

「俺達も行くぞ!!」

「おう!」

「わかったわ!」

「うん!」

ゲイルも狩谷、空子、アンジェを連れて校庭に行く。

「ふっ…」

エリックもゲイル達を追いかけていった。













謎の怪物の襲来にパニックになる訓練生達。そんな中、光輝は落ち着きすぎているくらい冷静に、怪物と対峙していた。

「どう…して…」

いや、冷静になってなどいない。

「一体…どうして…」

それは、光輝が怪物の正体を知っていたからだ。ウォントと名乗ったこの怪物は、光輝の両親の仇。ずっとずっと前から、追い求めていた相手。それが何の前触れもなく突然目の前に現れたから、動揺している。

「今回の目的はお前じゃないんだが…まあいい」

ウォントが光輝に出会ったのは、全くの偶然。本来このヘブンズエデンには、皇魔とレスティーを殺しに来た。しかし、光輝は前々から始末しておこうと思っていた相手でもある。

「ついでに殺っとくか。」

「!!」

ウォントがその言葉を発した時、光輝の思考は引き戻された。

(父さんと…母さんの…)

そして、改めて認識する。今目の前にいる相手が、どういった存在であるか。


(仇!!!)


認識して抜刀し、


「うわあああああああああああああ!!!!」


咆哮を上げて斬りかかった。

「光輝!!」

思わず名前を呼ぶさだめ。

「ああああああああああああああ!!!!!」

だが、光輝には彼女の声が聞こえていない。四年という歳月を経て呼び覚まされた憎悪に、我を忘れているのだ。

「光輝!!駄目!!」

さだめは無策に突っ込んだ光輝に呼び掛けるが、光輝は止まらない。止まらずに、

「アアアッ!!!!!」

羅刹刃を振り下ろした。ウォントはそれを、左腕一本で受け止める。

「やっと思い出したか。」

それから、左腕の力だけで光輝を押し戻した。光輝はウォントの力を利用して跳躍し、距離を取って身構える。

「光輝!!」

さだめは光輝を援護するために駆け寄った。そこへ、

「白宮!!桐崎!!」

「光輝くん!!さだめちゃん!!」

皇魔とレスティーも着く。ゲイル達もだ。

「ふん。本命もご登場だな」

役者は揃ったと鼻を鳴らすウォント。

「やはり貴様だったか、ウォント!」

「久しぶりだな皇魔、レスティー。てめぇらにやられたコレクのお礼参りに来てやったぜ」

皇魔とレスティーはデザイアの幹部全員と戦闘済みで、気配でどんな幹部が現れたかを察知することができる。もっとも察知できるのは、変身した時に放たれる気配のみだが。

「皇魔くん、レスティーちゃん!こいつもデザイアの幹部なの!?」

ウォントが放つ尋常ではない力を前にして、空子は尋ねた。

「そうだ!!奴の名はウォント!!」

「コレクと同格の相手よ!!」

「こんな短期間で、二人目の幹部が攻めてきやがるとはな…!!」

狩谷は立て続けに戦うことになったデザイアの幹部という存在に、もううんざりしていた。以前のコレクとの戦いで、この幹部達の力はよく熟知している。あんな強敵との戦いは、一度で十分だ。

「いずれにしても、いつかは戦う相手です。なら、今ここで潰しておきましょう。」

「…そうだな。」

ゲイルはエリックの意見に賛成だった。いつか、ヴァルハラの盟主と直接対決を行う日が必ず来る。その時には、盟主の取り巻きどもとも戦うということ。そうなれば、当然それらと同盟を結んでいるデザイアとも戦うことになる。後になって幹部を全員相手にするよりも、今のうちから一人ずつ潰していった方がいい。それだけ強いのだから。

「できると思うか?仮にも俺は、デザイアの幹部だぜ!」

ウォントは再度自身の身体を炎上させる。

「デザイアの中で身分が高いということは、それだけ首領に認められているということだ。ルーラー様から深く信頼されている者は、より強力な進化を授かる!俺みたいにな!!」

そしてウォントが位置する幹部という身分は、デザイアの中で上から三番目。一番上が首領で、二番目が副首領なため、ウォント達はデザイアで三番目に強い存在なのである。

「わかるか?俺は部下のエボリュータントや一般兵、ヴァルハラのボーグソルジャーよりも強いんだよ!!」

「だろうな。だが、俺達もそいつらより強いということを忘れるな!!アデル、起動!!」

負けじと言い返したゲイルはアデルに変身し、

「ビャクオウ、始動。」

エリックもビャクオウに変身した。

「まぁ、お前らも俺達デザイアの邪魔にはなるだろうな。ついでに殺るか!!」

元々、コレクをあそこまで叩きのめしたのは皇魔とレスティーだけではない。アデルとビャクオウ、さらに言えばアンジェ、狩谷、空子の三人も、コレクとの戦いに参加している。特に二人のメタルデビルズは、以前からデザイアの脅威となることがわかっていた。ならば、全員潰すまで。


しかし、


「みんな!!手を出さないで!!」


そう言ったのは光輝だった。

「光輝くん!?」

突然の物言いに驚くアンジェ。

「お前、俺達の話聞いてなかったのかよ!?全員がかりで行かなきゃ勝てない相手なんだぜ!!」

「そうだとしても、こいつだけは僕の手で倒さなきゃいけない!!」

突然わけのわからないことを言い始めた光輝を説得しようとする狩谷だが、光輝の決意は固い。

「こいつは…こいつは…」

なぜ自分がウォントの撃破に固執しているかを教えるため、光輝は自分とさだめだけが知っている事実を話した。



「こいつは四年前、僕の両親を殺したんだ!!」



全員が耳を疑った。光輝の父隼人と、母優子の死因は、事故のはずである。

「どういうことだ光輝!?」

「あの事件は事故じゃなかったの!?」

アデルとアンジェが訊く。

「表向きではそうだよ。でも、僕はあの日見たんだ!!こいつが父さんと母さんを殺すところを!!」

「…どういうことだウォント!!」

「正直に白状しなさい!!」

自分達ですら全く知らなかった皇魔とレスティー。当時の事情を一番よく知っているはずのウォントへ、二人は問いかけた。

「そいつの言う通りだ。四年前、あの研究所で俺は、白宮夫妻を殺した。」

「何のために!?どうして光輝の両親は死ななきゃいけなかったの!?」

次に質問したのは、光輝の痛みを誰よりも知るさだめ。

「ウチの首領が白宮夫妻の研究に興味を持ってな、その成果をもらいに行ったのさ。もっとも俺達デザイアは犯罪組織だから、そんな連中に『ハイわかりました』、なんて簡単に技術を渡すバカはそうそういない。断られたよ」

「だから殺したの!?」

「抵抗するなら無理矢理にでも奪って研究所ごと滅ぼせ、そう命令されたからな。仕方ねぇだろ?言われた通りにやらなきゃ、俺が首領に殺されるんだ。」

どのみち、ルーラーは隼人と優子を生かしておくつもりなどなかった。だからデータだけもらってあとはお払い箱、というわけである。

「そんな理由で殺したのか!!父さんと母さんを!!」

「そんなって…理由としては十分すぎると思うぜ?少なくとも、俺達の首領としてはな。第一…」

ウォントは一度言葉を切り、それから改めて告げる。


「それはお互い様じゃねぇのか?」


意味がわからなかった。一体、何がお互い様だというのか。

「どういう意味だ!?」

「今のお前は傭兵だろ?なら当然、お前も大勢の人間を殺して、その刀の刃にたくさんの血を吸わせてきたってわけだ。」

ウォントは光輝に、今自分が言ったことの意味を説明する。

「お前が殺したやつのことを大切に思ってたやつだっているかもしれないし、そのことでお前を恨んでるやつだっているかもしれない。なのに、お前は自分の気持ちだけを優先して俺に復讐しようとしてる。」

「…それは…!!」

「今のお前が俺に思ってるみたいに、お前に復讐したいって思ってるやつもいるかもしれない。お前、まさかそんなことも考えずに傭兵になったのか?そんな当たり前のこともわからずに、今まで戦ってきたのか?」

光輝は黙ってしまった。よく考えれば、ウォントの言う通りだ。傭兵として戦っていれば、少なからず死者は出る。それがどんな悪人であろうと、その死者を大切に思っている者はいるはずだ。光輝はそれを顧みず、ただ復讐したい一心で殺しを重ねてきた。

「他人が死んでもかまやしねぇが、自分の身内が死ぬのは嫌。通るかよ、んな自己満足。通りもしねぇ道理ばっか重ねて、自己満足のために戦ってきたようなやつが、復讐なんてする権利を持ってると思ってんのか?」

「う…あ…」

呻く光輝。ウォントが並べる正論の前に、彼はそれくらいしかできることがない。そして、遂にウォントは決定的な事実を教えた。



「てめぇが傭兵になって殺しの道を歩み始めた時から、俺に復讐する権利なんてなくなってたんだよ!!」



言い返せなかった。ずっと捜し続けてきた憎い相手にこうまで言われて、全く反論できなかった。

「僕は…」

確かに、復讐という行為は自己満足だし、ならば自分はそれを満たすために戦ってきたということになる。そんな勝手な自分に、本当にウォントを殺す資格があるだろうか。


そう思った時、


「惑わされるな、白宮。」


引き戻してくれたのは、敬愛する友、皇魔だった。

「奴の言っていることは正論に聞こえる。だが、奴の行いも間違いであることを忘れてはならん。」

「ウォントはルーラーの意思に従って、憎悪と悲しみを撒き散らしている。ここであいつを倒さないと、数えきれない人が光輝くんと同じ思いをすることになるのよ。」

皇魔とレスティーは光輝を諭す。復讐は肯定できることではないが、ウォントのやっていることも肯定はできない。デザイアとはテロ組織なのだ。無差別に、無慈悲に殺戮を繰り返す連中と、光輝が同じになるはずはない。

「光輝はあの人とは違う。少なくとも、私はそう思ってる!」

さだめはそう信じていた。だが、ウォントはそれを笑い飛ばす。

「ははははははははは!!何が違うってんだ?どっちにしたって人殺しだろうが!お前と俺は一緒だ。何も変わりはしねぇよ」

「うっ…」

再び揺らぎかける光輝の心。だが、

「お前もそうなんだな。」

アデルがウォントを見て、静かに言う。

「何の話だ?」

「俺は光輝のように、復讐のために戦ってきた者を知っている。そして復讐される側の人間は、自分の行為を悪いとは思っていなかった。復讐する側の人間が、どんな思いで戦ってきたかも知らずに。お前も、そのされる側の人間と同じ思考の持ち主だと言っているんだ。」

(ゲイル…!)

狩谷は、アデルが自分と猪頭の関係の話をしていることに、すぐ気付く。猪頭は自分が罪を犯したという認識がなく、ただ快楽のままに同じことを繰り返していた。それを思えば、ウォントも猪頭と同じ思考と言える。

「お前のような者に、光輝が味わった苦しみはわからないはずだ。自分が犯した罪を棚に上げて、他人の罪を責め立てているようではな。」

「…」

今度はウォントが黙った。一応、罪の意識はあるのだろうか。

「…キリがありませんね。こんな不毛な会話は、さっさと終わらせましょう。」

その流れをぶった切ったのは、ビャクオウ。

「復讐などという話に興味はありません。私は潔癖症ですが、美談はそんなに好きじゃないんです。」

「…そうだな。俺もくだらない話をするために来たわけじゃない。お前らを殺しに来たんだ」

「死ぬのはあなたですよ!」

ビャクオウとウォントは、勝手に戦いを始める。

「空気の読めねぇやつ…」

「とにかく、やるわよ!」

狩谷と空子も参戦した。

「よし、やるぞ!!」

「うん!!」

次にアデルとアンジェが挑み、

「白宮、無理をするな。奴は俺とレスティーで倒す!」

「さだめちゃんは光輝くんの側についててあげて。まだ動揺してるみたいだから」

「う、うん。」

最後に皇魔とレスティーが向かう。

「…僕は…どうすれば…」

動揺が治まらない光輝。

「大丈夫だよ、光輝。」

そんな彼氏を、さだめは優しく慰めた。

「光輝は、光輝がやりたいことをやればいいから。」













「ふっ!!」

ビャクオウがホワイトスイーパーから発射した弾丸は、寸分違わずウォントの急所目掛けて飛んでいく。

「ラァッ!!」

だが、ウォントもただで喰らったりはしない。全身から大量の火球を飛ばし、弾丸を相殺する。しかし、ウォントの火球の量は、ビャクオウが撃った弾を遥かに上回るため、

「くっ…」

ビャクオウは必然的に回避するしかない。

「聞いてるぜ。お前、ヴァルハラの拠点をいくつも落としたんだってなぁ?だが、連中も馬鹿じゃない。お前の能力のデータは、ちゃんと取ってる。」

そして、そのデータはデザイアにも送られている。

「お前の能力は幻覚、分身、変身の三つ。そいつを破るには、こいつが一番手っ取り早い!!」

そう言いながら、ウォントは再度全身から火球を撃った。ウォントの取った戦法は、物量作戦。本体も分身も幻もまとめて撃破し、なおかつ能力を使う隙を与えない。炎を操るエボリュータントたるウォントが、最も得意とする戦い方だ。

「奴は炎使いか…!!」

狩谷はウォントの能力を見て、自分のアーミースキルの使用を思い留まった。何せ、狩谷のスキルは風。炎に風をぶつければ、逆に勢いを強めてしまう。

「だったらこれはどう!?」

空子はギガトラッシュの照準をウォントに合わせ、引き金を引いた。発射された弾丸は音速を超え、ウォントの心臓を狙って飛ぶ。

「無駄だ!!」

ウォントが睨み付けると、凄まじい熱が発生する。その熱にあてられた弾は、一瞬で蒸散してしまった。

「俺が操れる熱量は、最大で8000万度だ!!金属だろうと一瞬で蒸散する!!」

「くっ!!これでは近付けない!!」

ウォントが振り撒く熱に翻弄され近付けないアデルは、舌打ちする。

「私なら…!!」

しかし、アンジェの身体はどんな熱にも耐えられるため、アークスを双剣に変化させて突撃した。

「それがどうした!!」

ウォントは苦もなく迎え討つ。確かにアンジェならばウォントの炎にも耐えられるのだが、基本的な身体能力は、ルーラーの側で進化の宝珠の力を受け続けてきたウォントの方が上。

「そんなもんじゃなぁ!!」

「あうっ!!」

簡単に殴り飛ばされた。

「貴様の相手は!!」

「私達よ!!」

続いて挑むは皇魔とレスティー。二人が同時に打ち出した拳を、ウォントは同じく拳で迎撃する。

「ここまで来るのに苦労したぜ!何せコレクには止められてるからな!お前らとの決着を急ぐなって!!」

ウォントは自分の全身から吹き出る炎を爆発させ、皇魔とレスティーを吹き飛ばす。

「だが、それで終わらねぇのがこの俺よ!!コレクの目を盗んでここに来れる機会が来るのを、ずっと待ってたってわけだ!!もっともそのせいで、こんな時間になっちまったがな!!」

「責任転嫁か?貴様らしくもない!!」

「あなたとの決着は、ここでつけるわ!!」

「やれるもんならやってみな!!」

覇気を込めた皇魔の拳、活性で切れ味を上げたレスティーの小太刀、そしてウォントの炎がぶつかり合う。

「おおお!!!」

そこにアデルも斬り込む。背後からはビャクオウの銃撃。四方八方からの攻撃が、ウォントを追い詰めていた。




…ように、見えた。




「うぜぇっ!!!」




ウォントが一喝すると再び炎の爆発が起こり、四人を吹き飛ばした。

「覇道烈破!!」

すかさず覇気で攻撃する皇魔。

「はっ!!」

ウォントはそれを同等の威力の炎で相殺した。

「大津波の術!!」

レスティーが仕掛けたのは、津波を放つ術。

「あなたの弱点よ!!」

ウォントの弱点属性の攻撃。

「狙いは悪くねぇ。だがな!!!」

しかし、ウォントはそれを上回る炎で津波を掻き消した。

「あああっ!!」

「そんな程度じゃ、俺の炎は消せねぇよ!!」

全身を業火に焼かれるレスティー。

「レスティー!!」

「だ、大丈夫!!これ…くらい…!!」

皇魔が心配するが、レスティーは新たに生み出した水を使って、自身の炎を消す。

「あの勢い…まるでイグニスドライブ!!いや、それ以上か!!」

アデルはウォントの強さを前にイグニスドライブを使いかけたが、やめた。炎の力はウォントの方が上だし、炎に炎で立ち向かっても呑み込まれるだけ。アデルとビャクオウ、双方の能力を封じることができるウォントは、最悪の相手と言えた。

「あたしには何もできないの!?」

空子は焦る。彼女の攻撃はウォントの熱によって、目標に届く前に蒸散してしまう。そこで、狩谷が突破口を見出だした。

「空子!ハウリングシュートだ!」

「っ!そうか!」

空子はレールガンアタッチメントを使い、ウォントにハウリングシュートを撃つ。

「無駄だっつってんだろ!!」

再び弾を睨み付けるウォント。そして、

「うそ!!」

ハウリングシュートの弾さえ、蒸散してしまった。

「そんな…!!」

これで本当に打つ手がない。

「…こうなったら…」

狩谷は次の作戦を考える。

「空子、もう一度ハウリングシュートだ。ただし、今度は俺も協力する。」

「えっ!?」

「お前のハウリングシュートを、俺の風で加速させるんだ。そうすれば、熱のバリアをぶち抜ける!」

だが、これを実行するためには二人の呼吸を合わせる必要がある。途中で気付かれて攻撃されてもまずいので、足止めも不可欠だ。

「じゃあ、足止めは私がやる!」

その役を買って出たのは、アンジェ。

「情けねぇが、俺は今こんなことでしか協力できない。準備ができたら、合図するぜ!」

三人は、時を待つ。そして、

「やれ!!」

狩谷が合図した。

「みんな下がって!!」

アンジェがアデル達を下がらせ、

「シャイニングフェザーストーム!!!」

ウォントを攻撃する。

「うおっ!!」

炎を受け付けない無数の羽が、ウォントにガードに徹することを強いり、それ以外の行動を許さない。

「今だ!!」

さらなる狩谷の合図。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

空子は引き金を引き、発射された弾は狩谷の風で加速する。

「ぐああああああ!!!」

弾は熱のバリアを突き破り、ウォントは昏倒した。

「てめぇら…!!」

だが、致命打を与えるには至っていない。すぐさま起き上がり、

「…遊びは終わりだ。」

自分の両手を横に広げる。

「オオオ…!!!」

ウォントの両手に、凄まじい熱量を込めた炎が集まっていく。その炎は形を光球に変え、サイズと熱量を増大させていった。

(何だこのエネルギーは!?)

アデルのレーダーが、太陽をも超えるエネルギー量を計測していた。狙いは、間違いなく狩谷達。

「まずい!!」

アデルは三人を守るため、飛び出した。

「おのれ…!!」

「させないわ!!」

「世話の焼ける…!!」

皇魔、レスティー、ビャクオウも、仲間の盾になるために飛び出す。

「アトミックブレイズ…!!」

両手を合わせてエネルギーを融合させるウォント。そして、



「バーストストリィィィィィィム!!!」



エネルギーは超巨大な光線として発射された。太陽を遥かに凌駕するエネルギー量を圧縮した光線だ。直撃すればただでは済まない。

「ルルイエセメタリー!!!」

「ギャラクティックエンドブレイカー!!!」

「鬼神激動拳!!!」

「五行滅殺の術!!!」

当然迎撃する。しかし、

「まだまだぁァッ!!!!」

ウォントはさらにエネルギーを上昇させ、アデル達の迎撃を破った。

「クトゥルフサンクチュアリ!!!」

すかさずバリアを張るアデル。だが、

『ぐああああああああああああ!!!!!』

『きゃあああああああああああ!!!!!』

ダメージは幾分か軽減できたものの、それでも恐るべき威力の光線が、一同を吹き飛ばした。ようやく混乱が治まり、援護に回ろうとしていた生徒達もろとも…。













「あ…あ…」

巻き込まれなかったのは、光輝とさだめだけ。二人は少し距離が離れた所にいたため、無事だったのだ。不思議なことに、ウォントは今まで二人を狙わなかった。いや、わざと狙いから外していた、と言うべきか。ウォントは光輝に見せつけたいのだ。自分がどういう相手に復讐しようとしていたのかを。

「パワーが落ちていたとはいえ、アトミックブレイズ・バーストストリームを喰らって死なない相手は久しぶりだな。」

アデル達が威力を軽減していたおかげで、彼らはどうにか生きている。しかし、

「けどこんなもんか。ヴァルハラはこの程度の連中相手に何を苦戦してやがったんだ?」

もう、戦える状態ではなかった。たった一撃大技を撃たれただけで、全員が満身創痍だ。

「つ、強すぎる…こんなの…勝てるわけない…!!」

さだめはデザイアの幹部にして光輝の宿敵、ウォントの圧倒的な実力に恐怖した。

(…でも…)

光輝はさだめと同じくらい、ウォントの力に恐怖している。だが、

(みんなを…さだめさんを…)

恐怖を超える勇気が、彼を奮い立たせた。

(守らないと!!)

羅刹刃を握り、ウォントに近付いていく。

「ほう、戦えるのか?豆腐メンタルな自己満足野郎のくせに。」

ウォントは光輝を蔑んだ。しかし、光輝はそれを受け止める。

「今もお前に復讐したいって気持ちは消えてない。それが自己満足だってこともわかってる!でも…」

認めて、告げた。

「仲間を、大切な人を見捨てて逃げるほど、僕は愚かじゃない!!だからお前と戦う!!」

復讐のためだけでなく、守るために戦うと。

「…安心したぜ。どうやらお前は、ただの自己満足野郎じゃないらしいな。」

ウォントはそれを聞き、両腕を横に広げた。

「来いよ。その決意に免じて、一撃だけ防御も回避もせずに受けてやる。」

謎の挑発に罠かと疑う光輝は、警戒したまま攻撃しない。

「心配すんな。罠なんかじゃない」

対するウォントは、無防備なまま。仕掛けてみるまでわからないが、攻撃してくる気配はない。

(なら…)

光輝はウォントの申し出に応えることにした。

(一撃。その一撃に、全てを懸ける…!!)

このチャンスを逃せば、恐らくもうウォントを倒すことはできない。そう思った光輝は、羅刹刃に自分が出せる限界の雷を載せる。


そして、


「うおおおおおおおおおおおおお!!!」


駆け出し、


「サンダーブレイクブレード!!!」


斬り込む。


「ぐおおっ!!!」

本当に防御も回避もしなかったウォントはこの一撃を受け、剣圧に押されて大きく下がる。だが、踏みとどまった。

「…それがお前の覚悟か。なかなか熱かったぜ」

ダメージはあるが、決定打には程遠い。

「…本当だったのか。」

「言ったろ?罠なんかじゃないって。」

光輝はウォントが予想以上に律儀だったことと、今の一撃で仕留められなかったこととで焦っていた。

(仕方ない。だったら…!!)

普通に戦って倒すしかない。

「わかってるとは思うが、サービスは一度きりだ。ここからは、本気で行く。」

「ああ。」

ウォントから念押しされてしまった。これでもう、最大級の一撃を叩き込む機会はない。普通に戦う以外には。そして、ウォントは光輝の限界の一撃を受けて死ななかった。こうなれば、限界以上の攻撃が必要だ。

(限界なんて超えてやる!!)

決意した光輝は、ある技を発動する。


「ブルーライジング・MAX!!!」


自身の生体電気を増幅して、身体能力を極限まで強化するブルーライジング。しかし、今発動したブルーライジングは、生体電気をさらに増幅し、身体能力を限界以上に強化する、上位バージョン。

「うおっ!?」

光輝の全身から溢れてきた、青い生体電気。そして光輝自身の気迫に、ウォントが怯む。

(この俺が怯んだ!?こいつ、まさか…)

そのウォントの反応を無視して、光輝は羅刹刃を突き付ける。

「お前を倒す。今度こそ!!」

次の瞬間、


光輝が消えた。


「ちっ!!」

ウォントは自分の背後に拳を放つ。そこには、光輝の姿が。

「おおおっ!!!」

繰り出される超音速を越えた速度の刃を、ウォントはさばき、迎撃する。

「…」

さだめは、光輝の姿を黙って見ていた。しかし、それもすぐ終わる。

「それが、光輝の決めたことなんだね。」

彼女もしたのだ。

「なら私は、どこまでもついて行くよ。」

命を捨てて戦う決意を。

「ゴールドライジング・MAX!!!」

同じ効果を持つ技を発動し、さだめはウォントの背中をヴォルテクスで斬りつけた。

「ぐあっ!!!」

ダメージを受けるウォント。しかし、これも決定打には至らない。

「…お前、白宮光輝と一緒にいた女だな?お前は関係ない。だから逃げてもよかったんだぜ?」

「逃げません。それに、関係大アリです。仮にも光輝の彼女ですから」

「…なるほど。」













「すげぇ…」

狩谷は、協力して戦う光輝とさだめの強さに、目を奪われていたのだ。皇魔とレスティー、二人のメタルデビルズを合わせても敵わなかったウォントと、互角の戦いを展開している。

「二人とも、あんなに強かったの!?」

空子も驚いていた。

「…白宮も桐崎も、やる時はやる。だが…」

二人の実力を誰よりも認めていた皇魔。だが、彼は一度、あの技を見たことがある。

「あれは、自身の肉体の限界を遥かに超えた力を引き出す技。ゆえに、長くは持たぬ。」

そう、強力すぎるため、危険を伴う技なのだ。今も一つ動作を行う度に、二人の身体は悲鳴を上げ続けている。

「拮抗しているように見える戦いだけど、このままだといつか二人の身体が強化された能力に耐えられずに潰れて、命を落とすわ。」

レスティーは二人の戦いの行方を推察した。

「でも、二人はそれがわかってるみたい。」

アンジェはなんとなく、そう感じている。光輝とさだめから放たれる気迫が、そう感じさせた。

(こいつら、死を覚悟してやがる)

それはウォントも感じている。彼もルーラーから渡された神夜によって二百年以上生きているため、経験でわかるのだ。そして、死を恐れない兵士がどれほど恐ろしい存在か、それもよくわかっている。身体に何が起きても構わないと割り切っているため、どんな無茶でもしてくるのだ。事実、二人とも命を捨てる覚悟で戦っている。

「なら俺も、その覚悟に応えてやらないとな!!」

全力を出すつもりはなかったが、それはやめた。死をも覚悟して向かってくる戦士に対して、それはあまりにも無礼。全力の覚悟には全力で応える。それが、ウォントのポリシーだ。



しかし、それを認めない者がいた。



「…ふざけるな…」



アデルだ。既に修復を終え、立ち上がっている。

「その二人は、ここで死ぬべき人間じゃない。命に代えても、俺が必ず守る!!」

「ゲイル…!!」

アデルはまだ諦めていない。その事実に希望を持つアンジェ。

(だがどうする!?どうすれば奴を倒せる!?)

確実に、一撃で倒さなければ、ウォントは逆上して襲いかかってくる。そうなったらひとたまりもない。


その時、


「ずいぶん苦戦しているようだね。」


エドガーから通信が入った。

「理事長!?」

「今リミッターを一つ解除した。これなら勝てるはずだ」

「…!!」

アデルの頭の中に、流れ込んでくる。新しい技の使い方が。

「…よし!!」

アデルはプライドソウルをブラスターモードに変形させ、ウォントに向けた。プライドソウルの刀身に、エネルギーが集束していく。

「っ!!てめぇ!!」

しかし、攻撃する前にウォントに気付かれた。

「うわっ!!」

「きゃあっ!!」

光輝とさだめは跳ね飛ばされ、ウォントはアデルが行おうとしている攻撃を潰すべく、炎を放とうとする。



その刹那、別の方向からエネルギー弾が飛んできてウォントに着弾。

「な、何ぃぃぃ!!?」

ウォントの身体は着弾した箇所から凍り付き、その場に縫い付けられた。

「冷凍弾です。私の存在を無視しすぎですよ」

撃ったのはビャクオウ。ホワイトスイーパーは様々な種類の弾を生成し、自在に撃つことができるのだ。

「へっ!舐めるなよ。こんな氷、すぐに溶かして…」

「なら、数をぶつけるまでです。」

全身から熱を発して氷を溶かそうと抵抗するウォント。だが当然それをさせるビャクオウではなく、次々と冷凍弾を撃ち込んでウォントを完全に凍らせた。

「急ぎなさい!!彼の炎が相手では、あまり時間稼ぎはできませんよ!!」

「わかった!!」

チャージは完了している。アデルはプライドソウルの引き金を引き、


「ワールドエンドブレイカァァァァァァァァァァ!!!!」


その刀身の切っ先から光線を発射した。

「ぐおあああああああああああああ!!!!!」

それを喰らった氷は砕け、大きく吹き飛んだウォントは人間態に戻る。

「人間の姿に戻った!!」

「今ならとどめを刺せるよ!!」

人間態の時も相当な耐久力を持つエボリュータントだが、変身時ほどではない。光輝とさだめの力でも、十分に倒せる。

「喰らえウォント!!」

光輝が羅刹刃に雷を載せ、

「これで終わりだ!!」

さだめも同じくヴォルテクスに雷を宿し、

「「バスターブリッツ!!!」」

呼吸を合わせてそれぞれの雷をウォントに飛ばした。

(まずっ…!!)

いくらウォントでもこれを喰らえば耐えられない。


しかし、ウォントの前に一人のエボリュータントが現れた。氷を模した、全身クリアブルーのエボリュータントだ。

「アイスバーグ・フォートレス」

エボリュータントが手を前に向けると地面からいくつもの氷が突き出し、バスターブリッツを防いだ。

「アプリシィ…!!」

ウォントはエボリュータントの名を呼ぶ。

「あれは…!!」

「デザイアの幹部、アプリシィ!!」

レスティーと皇魔が、現れた者が何者かを言う。

「ここにきてまた幹部かよ…!!」

「これってやっぱり…すごくまずいよね…」

狩谷とアンジェは危機感を覚えた。今の状況で幹部を二人も相手にしては、勝ち目はない。あのアプリシィという幹部も、ウォントに匹敵する力を持っているはずだ。


しかし、


「ウォント、退くぞ。」


アプリシィに、戦闘の意思はなかった。

「今ヘブンズエデンを潰すのは得策じゃない。それに、コレクの目を盗んで来たんだろう?なら、気付かれないうちに帰った方がいい。」

「…ああ。」

ウォントはあっさり承諾した。

「つーわけだからお前ら、次に会う時までにもっと強くなっとけよ。」

「…帰還する。」

アプリシィは吹雪を発生させ、吹雪が晴れた時、二人の姿は消えていた。

「助かった…のか…?」

「…そうみたいね。」

狩谷と空子は、幹部達が帰ったのを確認する。

「…情けない話だ。」

「私達が見逃してもらうなんてね…」

皇魔とレスティーは、屈辱を感じていた。もしあのままアプリシィとまで戦うことになっていたら、確実に全滅していたからだ。

「…助かったぞ、エリック。よく奴を足止めしてくれた」

アデルは変身を解き、ビャクオウに礼を言う。

「本当は私が倒したかったのですが、パワーはあなたの方が上ですからね。それに、私はリミッターをかけずに力を制御しましたから、始めから全開なんです。」

「…すごいね。」

変身を解いたビャクオウの天才ぶりに、アンジェは呆れている。



と、



ーーー…っーーー



「!?」

声が聞こえて、ゲイルは振り向いた。

「ゲイル?」

「どうかしたのですか?」

アンジェとエリックが尋ねてくる。

「…いや、何でもない。」

(どういうことだ?俺にしか聞こえなかったのか?)

誤魔化しながらも、今の声に疑問を感じるゲイル。




その時、光輝とさだめが倒れた。




「光輝!!さだめ!!」

「光輝くん!!さだめちゃん!!」

慌てて駆け寄るゲイルとアンジェ。光輝とさだめは、気絶していた…。













二人が気絶した原因は、能力強化技で肉体を酷使しすぎたせい。今は医務室で、並んで仲良く横になっている。全身の骨があちこち複雑骨折を起こし、内臓もいくつか破裂していたが、ヘブンズエデンの医療システムによって、意識が覚醒するまでに回復した。

「…光輝。」

「…なに?」

さだめは光輝に話し掛ける。

「前に私が話した、この学園に来た理由のこと、覚えてる?」

「…覚えてるよ。」

さだめは当初、母と同じ科学者になるつもりだった。だが、母を守るための力を欲して傭兵になったのだ。

「私が力が欲しいって思ったきっかけはね、不謹慎だけど、白宮研究所の爆発なんだよ。」

あの時のさだめは、光輝の両親の研究所が爆発した理由は、事故だと思い込んでいた。しかし、それでもああいう事故が起きた時、南樹を守りたい。そう思ったのだ。

「だから、光輝が来た時は運命なんじゃないかって思ったの。白宮研究所の所長の息子さんが、私と同じ学園に入学して、私と同じクラスに入ったから。」

「…そうだったんだ…」

そして今、二人は交際関係。あまりにも重なりすぎた偶然。確かに、これは運命かもしれない。だから、さだめは死ぬ覚悟を決めて戦った。自分の運命の相手と一緒に戦って死ねるなら、本望だった。

「さだめさん。」

今度は光輝が話し掛けた。

「僕ね、君が一緒に戦ってくれた時、すごく嬉しかったんだ。例え負けても、君と一緒に死ねるなら、それでもいい。そう思ったくらいに」

光輝はみんなを守るために戦ったと言っていたが、実際にはさだめのために戦ったという気持ちの方が大きい。

「それでね、さだめさん。お願いがあるんだけど…」

「なに?」

「…次にウォントと戦ったら、また君の命を僕に預けてもらってもいいかな?」

さだめにしか、自分が最も愛する者にしか頼めないお願いを、光輝はする。彼は気付いてしまったのだ。自分一人が死ぬ気で戦っても、ウォントには絶対に勝てないと。だから、一緒に死ぬ気で戦ってくれる存在が必要だった。あまりにも身勝手な願い。それに対する答えは、

「いいよ。いつでも、何度でも、光輝のためなら、私は自分の命なんていらない。」

OKだ。さだめは、愛に殉じる覚悟をしていたのだ。

「ありがとう。」

光輝は心から、さだめに礼を言った。





はい、というわけで終了です。


光輝の両親の仇、ウォント。今回はこの強敵との戦いを描きました。



実際、復讐が正義か悪かは難しいテーマです。ちなみに、僕はやり方次第だと思いますね。


やったらやり返される。読者の皆さんも、それをよく考えて行動して下さい。



そして、ゲイルが耳にした声の主は一体何者か。これも重要な伏線ですので、よく覚えておいて下さい。


次回は遂に、奴らが来る!!お楽しみに!!

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