第十四話 デザイア、動く
今回は、あの組織とあの二人にスポットを当ててみました。
デザイアのアジトは、地下に存在する広大な神殿のような場所。ただ、ヴァルハラの城がクルセイドキャッスルと名付けられているように、このアジトにもフォビドゥーンという名前があった。
フォビドゥーンの奥には、謁見の間と呼ばれる場所がある。幹部四人や副首領が作戦会議を行う他、配下の戦士達に命令を下す部屋だ。現在副首領イズマは四幹部を集め、今後の方針について会議をしていた。
「今までは首領の思惑に従い待っていたが、ようやく我々が本格的に活動する時がきた。」
デザイアとヴァルハラは同盟関係にある。だが、今まで積極的な協力はしていなかった。せいぜい下っぱを送る程度だ。そんなデザイアが、なぜいきなりヴァルハラに協力するようになったか。その理由は、先日ヴァルハラがしたとある計画の失敗を知ったからだ。計画とは、ヘブンズエデンにボーグソルジャーを送り込んでアンジェを拉致し、その力を手に入れるというもの。計画は失敗し、ボーグソルジャーダースは死亡した。正確には完全な失敗というわけではないが、デザイア側はそれを知らない。まぁ、それはこの際よしとしよう。問題は、ヴァルハラが失敗をしたという点だ。結論から言うと、デザイアはヴァルハラに協力するつもりはない。ただヴァルハラは敵に回すにはあまりにも危険な組織であるため、うまく立ち回りながら利用してやろうという腹積もりだ。その一環として、まずヴァルハラが大きな失敗をするのを待つ。そして失敗したところで自分達の力を見せつけ、恩を売る。それがデザイアの首領、ルーラーの考えだ。これならヴァルハラは、デザイアを裏切れない。
「これで俺達も、ようやく派手に動けるってわけだな?」
ウォントは確認を取る。
「うむ。手間を掛けさせた」
頷くイズマ。
「大した手間じゃねぇって。首領を怒らせる方が怖いからな」
ルーラーの怒りを買った者は、皆処刑されている。幹部や副首領も、ルーラーの恐ろしさは身に染みて知っていた。
「それで、早速ヴァルハラから協力要請が来ているのだが…今回は誰が行く?」
「では、わしが行こう。部下二人と、兵を三十人ばかり連れていく。」
名乗りを上げたのは、コレク。イズマはコレクに、任務の場所を伝えた。
「場所はエジプトだ。とにかくエジプトに着けば、あとはヴァルハラからの使いが正確な場所まで案内してくれる。」
「わかった。」
出ていくコレク。
「俺達は?」
アプリシィが尋ねる。
「待機だ。幹部全員がここを留守にするわけにはいくまい」
「けっ!つまんね。」
「仕方ありませんよウォント。それに、現場監督ならコレクの方が適任です。」
「わかってるけどよぉ…」
不満を漏らすウォントを納得させるメイカー。
「では解散だ。各自の持ち場に戻れ」
今後の方針も決まったところで、イズマは幹部達を解散させる。
(白宮光輝は、コレクが戻ってから狩りに行くか)
そう思いながら、ウォントは自分の部屋に戻った。
*
ゲイルはアンジェ、狩谷、空子、皇魔、レスティー、エリックを連れて、エジプトに来ていた。理由は、エドガーに命令されたからだ。話によると、エドガーの知り合いの考古学者がエジプトに調査に来ており、護衛を頼みたいとのこと。最初はゲイル一人の任務だったが、エドガーから任務に仲間を連れて行くことを許可され、このメンバーにした。だが、皇魔とレスティーとエリックはゲイルが誘ったわけではなく、自分から同行を申し出てきたのだ。皇魔とレスティーは近々エジプトに行きたいと思っていたらしく、エリックは…説明するまでもない。
「あなたを殺す機会を伺うためです。」
それを聞いた狩谷は、目眩を覚えた気がした。ゲイルは平気だが、狩谷はそうではない。
「この先に、例の場所があるんだな。」
しかし悩んでいても始まらないので、とりあえず確認を取る。というのも、いくら歩いても砂漠しか見えないからだ。耐熱訓練をしているとはいえ、あまりこんな所には長居したくない。
「地図によると、もうすぐ見えてきてもいいはずだけど…」
空子は地図を見ながら言った。
「…ゲイル、エリック。お前らのレーダーでなんかわかんねぇか?」
「レーダーでは確かにこの方角に生命反応がある。」
「すぐ近くのようです。」
「でも何も見えないよ?砂ばっかり…」
アンジェはよく周囲を見回してみるが、本当に砂漠しかない。
と、皇魔とレスティーが歩みを止めた。
「…どうした?」
ゲイルが訊く。皇魔とレスティーは交互に答えた。
「ここだ。」
「ついたらしいわね。」
「…いや、なんも見えねぇけど…」
「よく見ろ。」
皇魔に促され、狩谷は目を凝らす。
しばらくして、何もないはずの砂漠の上に、揺らめくようにしてピラミッドが現れた。
「蜃気楼ね。」
レスティーが、このピラミッドが見えなかった理由を言う。そこへ、
「おーい!こっちこっち!」
と一同を呼ぶ声が聞こえた。見るとピラミッドの近くに、初老の男性がいる。彼が件の考古学者だろう。ゲイル達は男性のいる所にたどり着いた。
「君達がエドガーの教え子だね?私が依頼人のラッセルだ。」
ラッセルと名乗った学者は、任務について詳細を話す。
「君達に頼みたいのは、このピラミッドの調査の護衛だ。何せ王の墓だからね、どんなトラップが仕掛けられているかわからない。そこで、専門家の君達を呼んだってわけさ。」
ヘブンズエデンの訓練生はあくまでも傭兵であって学者ではないのだが、罠の突破についても確かに訓練は受けている。体力も上だ。
「わかりました。お引き受けします」
ゲイルが一同を代表して言った。
*
そして始まる大調査。ピラミッド内部は皇魔が簡単に通れるほど広く、地下深くまで続いていた。一同は現在、調査が終わっている場所まで案内されている。なんでもそれ以上先に進むのは危険と判断されているそうで、その先に進むためにゲイル達を雇ったというのが、本来の理由らしい。
「しっかし、意外だよな。お前らこんなことに興味あるなんてよ」
狩谷は皇魔とレスティーを見て言った。普段は暗殺任務に赴いている二人なので、こういった任務に参加する姿を見るのは、非常に珍しい。
「確か、前からエジプトに来たかったんだよね?でも何で?」
アンジェは質問した。答えたのは、レスティーだ。
「実は私達、ずっと前から『ある物』を探してるの。それがもしかしたら、エジプトにあるんじゃないかって。」
「ある物?」
「ええ。どんな物かはちょっと話せないけど、結構重要でなおかつ古い代物だから、こんなピラミッドとかお墓とか洞窟とか、そういう場所に隠されてることが多いの。」
「それで一緒に行きたいって言ったんだね。」
皇魔とレスティーは何かを探しており、それが見つかるかもしれないという理由で同行してきたようである。ただ、エリックはそれが何なのかを話せないということが引っ掛かった。まぁ、大体わかるのだが。
「家のことですか?」
エリックは皇魔に尋ねた。しばしの沈黙の後、皇魔は一言だけ返す。
「そうだ。」
やはりとエリックは思った。皇魔とレスティーは、少し複雑な家庭に生まれた身である。ゆえに、あまり無闇に語れないこともあるのだ。今回はそうだったらしい。
「私にはわかりませんね。何せ、家族がいないもので。」
エリックの両親は、彼が物心つく前に戦死している。そのため顔を知らないし、どんな人物なのかもわからない。本来受けるべき愛も、受けていない。だがエリックは親から愛をもらおうとは思っていないし、自分を生んだだけで十分と割り切っていた。かなり薄情ではあるが、それがエリック・アンダーソンという男なのだ。
「他人に理解してもらおうなどとは思っておらん。これは俺とレスティーだけが知っておれば良い話だ」
「…そうですか。」
実力はエリックの方が上だが、正直それはかなりの僅差だ。だから皇魔を怒らせれば、エリックでも無事では済まない。なのでこれ以上刺激しないよう、この話題については終わりにした。
「ここだ。」
ラッセルは歩みを止める。一同がたどり着いたのは、未だに終着点が見えない通路。どうやら、護衛が必要なのはこの先らしい。
「よく耳を澄まして。」
と、ラッセルが言った。言われる通り、聞き耳を立てる。
音が聞こえてきた。カンカン!ギュイイイン!と、工事のような音だ。
「これ…何かを掘ってる音…?」
空子は音を調べる。
「まさにそうだ。これは大がかりな発掘をする時に出る音だよ」
ラッセルが肯定した。
「とすると、誰かがこの先で発掘作業をしているということか?」
「ああ。だが、我々以外にこのピラミッドを調査しているチームはない。他に誰か派遣されてるって話も聞いてないしね」
ゲイルの疑問に答えるラッセル。しかし、それなら一体何者がいるというのだろうか?
「まさか墓荒らし?」
「けどこんな大がかりな墓の暴き方なんてするか?」
「それを調べたいんだ。でもかなり荒っぽい連中が相手になるかもしれないからね」
「とにかく行きましょう。手遅れになる前に」
空子、狩谷、ラッセル、エリックがそれぞれ疑問と結論を出し、一同は先を急いだ。
*
通路を進む一同。やがて、開けた場所に出た。
「!!」
出た瞬間、ゲイルは仲間達を通路に戻し、気配を消して中を伺う。
彼らが見たのは、機械の兵隊や鎧兜を着込んだ暴漢達が、つるはしやドリルなどを使って発掘作業をしているところだった。
「ヘルポーン!!」
「デザイアの兵士もいるわ!!」
狩谷と空子は小声で叫ぶ。
「な、何だ奴らは!?」
ラッセルも驚いた。彼はゲイル達を呼ぶまでここの調査をしていなかったため、この光景を見ていなかったのだ。
「わけは後で話します。それより…」
アンジェはラッセルを落ち着け、様子を見る。
「あいつらは何をしてるの?」
「ピラミッドは宝物庫のような所でもありますからね、何か価値のあるものでも探しているんでしょう。」
「間違いなく、ロクなものじゃないだろうがな。」
エリックとゲイルが見た限り、敵兵士達は空子の言う墓荒らしのようなことをしていた。もっとも、ヴァルハラにデザイアという二大犯罪組織が協力して探しているのだ。いいものであるはずはない。と、レスティーが何かに気付いた。
「皇魔!あれ!」
彼女が見つけたのは、杖をついている老人だ。現場監督をしているそれは、二人にとってとても見知った顔だ。
「コレク!!奴も来ていたのか!!」
「コレク?」
「それって誰?」
狩谷と空子が質問する。
「デザイアの幹部の一人だ。一見老いぼれた爺に見えるが、惑わされるな。とてつもない実力者だ」
二人には信じられない話だったが、皇魔が言うのだから間違いないだろう。
「しかし、コレクもいるということは…」
「うん。当たりかも…」
「当たりって、さっき言ってた?」
アンジェは訊く。
「うん。実は、私達が探してる物はデザイアも狙ってるの。」
「というより、俺達がデザイアの手に渡るのを阻止している。」
「でも、相手の中にコレクがいる以上、いきなり仕掛けるのは危険。もう少し様子を見た方がいいわ」
(コレクというのはそんなに強いのか…)
レスティーと皇魔の返答を聞き、ゲイルは戦慄しながらも攻撃の機会を伺う。
しばらくすると、
「コレク様!ありました!」
デザイアの兵士の一人が何か奇妙な物体を持ってきた。歯車のようにも見えるその物体を受け取ったコレクは、
「これか?」
二人の男性を呼ぶ。ヘルポーンではないので、ボーグソルジャーだ。
「ええ、これです。」
「間違いありません。ミレイヌ様がおっしゃられていた、オーパーツです。」
「ふむ…他に何かありそうか?」
コレクはオーパーツをボーグソルジャーに渡し、兵士に尋ねた。
「いえ、残念ながら…。」
「そうか…当たりかと思ったが、違ったか…」
残念そうなコレク。
「何か渡したわ!」
「よし、今だ!」
レスティーと皇魔は今がチャンスとばかりに飛び出した。ラッセルを残し、ゲイル達も続く。
「鬼宝院皇魔!!レスティー・エンプレス!!」
コレクは自分の仇敵が現れたことに驚いた。
「まさか貴様らが来ていたとはな…言っておくがここに『進化の宝珠』はないぞ。」
(進化の宝珠?)
ゲイルはコレクの口から飛び出した単語に疑問を抱く。
「なら今貴様がそこのボーグソルジャーに渡した物は何だ?」
「これか?これはヴァルハラのミレイヌ殿が探していたオーパーツだ。わしらデザイアには何の関連性もない」
「そうか。それを聞いて安心したぞ」
「なら、あとはあなたを倒すだけね。」
皇魔とレスティーは臨戦体勢に入る。
「できると思うか?よく見るがいい、この戦力差を!」
コレクが号令をかけると、兵士達が集まってきた。ざっと見ても百人以上はいる。だが、
「俺達の力を甘く見るな。」
「無視してもらっては困りますねぇ。」
こちらにはそれを挽回できるだけの戦力が、二人のメタルデビルズがいるのだ。
「貴様らなど眼中にない。ゴラン!リルレッド!」
「「はっ!」」
ゲイルとエリックがメタルデビルズだと知らないコレクは、構わずに二人の兵士の名を呼んだ。この二人だけは、鎧の形が他の兵士と違う。
「お前達の力を見せてやれ。」
「かしこまりました。」
「仰せのままに。」
快く応じる二人。すると…、
「ムゥゥゥン!!」
「オオオオオ!!」
二人が一瞬発光し、ゴランと呼ばれた兵士はハンマーを持った怪物に、リルレッドと呼ばれた兵士はトンファーを装備した怪物に変化した。どちらも元々巨漢だったのがさらに大きくなり、鎧兜も凶悪化している。ただし、その額には赤いオーブのようなものが浮き出ていた。
「こいつらもボーグソルジャーか!?」
狩谷は二人の兵士の変貌ぶりに驚くが、レスティーは訂正する。
「違うわ!こいつらはエボリュータントよ!!」
「エボリュータント!?それって何!?ボーグソルジャーとは違うの!?」
「わけは後で話す。まずはこの場を切り抜けるぞ!」
空子は質問を連発するが、それよりここは敵を倒すべき。
「させんと言っておろう!!」
しかし、これだけでは終わらない。コレクもまた、甲冑を着込んだ西洋騎士のような怪物へと変化した。今まで持っていた杖も、両刃の大剣へと変わる。コレクも先の二人と同様に、額にオーブがあった。
「アデル、起動!!」
「ビャクオウ、始動!!」
ゲイルとエリックも、アデルとビャクオウに変身する。
「ほう、貴様らがメタルデビルズだったか。」
コレクはここにきてようやく二人の正体がメタルデビルズだと気付いた。
「コレク様。」
「我々も加勢致します。」
協力を申し出る二人のボーグソルジャー。メタルデビルズが出てきている以上、ヴァルハラの戦士としては見過ごせないのだ。
しかし、
「ここはわしらで十分じゃ。」
コレクは加勢を拒否した。
「なぜですか!?戦力はこちらの方が確実に上です!!」
「コレク様もおられますし、全員でかかれば絶対に勝てます!!」
「お前達はミレイヌ殿の元へオーパーツを届けるのだ。その方が効率が良い」
「「しかし!!」」
食い下がるボーグソルジャー達。それを見て、コレクは一喝した。
「まだわからんのか!!ここで連中を倒すより、お前達の使命の方が大切なのだ!!」
「…わかりました。ですが、ヘルポーンは置いていきます。」
「ご武運を!!」
コレクの説得に折れたボーグソルジャー達は撤退していく。
「待たせたな。では始めよう!!」
協力者を逃がしたコレクは、自分の大剣を構えた。その瞬間、兵士達が雪崩れ込んでくる。
「ヘルポーンぐらいなら…!!」
狩谷は正面から来たヘルポーン三体の首をはねた。
「あたし達でも!!」
空子が撃った弾丸は二発で、一発一発がデザイア兵とヘルポーンを五人ずつ撃ち抜いた。
「私も戦う!!」
アンジェも覚醒し、シャイニングフェザーストームで敵を一網打尽にする。ラッセルのことも気になるし、一刻も早く敵を殲滅して安全を確保しなければならない。
「ゲイル、エリック。お前達はエボリュータントを倒せ」
「コレクは私達が倒すわ。エボリュータントの倒し方はボーグソルジャーと変わらないから、いつも通りにやれば大丈夫よ!」
そのためにも、この場の親玉であるコレクを倒すべきだ。雑魚をメタルデビルズに任せ、皇魔とレスティーは因縁ある強敵との戦いに臨んだ。
「わかった!」
「やれやれ…」
アデルはゴランが変身したハンマーエボリュータントに、ビャクオウはリルレッドが変身したトンファーエボリュータントにそれぞれ向かっていった。
「どれほど腕を上げたか、見せてもらうぞ!!」
コレクは剣を振り上げ、皇魔が拳を振るのに合わせて振り下ろした。アデルに匹敵するパワーを持つ皇魔だが、コレクも四幹部最強の戦闘力を誇っており、パワーは皇魔よりも上で、皇魔の拳を徐々に押している。
「甘いわ!!」
しかし、皇魔もただでやられたりはしない。自分の中の覇気を全開にして、肉体を強化。すると、押し込んでいたコレクの剣が止まる。
「例え貴様が俺の力を凌駕していようと、俺には覇気がある!!覇気が尽きぬ限り、俺に敗北はない!!」
「愚か者め。わしも本気など出しておらんわ!!」
拮抗していた力だが、再びコレクが押し始めた。本気を出していないというのは本当なのだ。
「…はっ!」
と、殺気を感じたコレクは皇魔の拳をはね飛ばし、左へ飛び退いた。さっきコレクがいた場所を、鋭利な小太刀の刃が斬り裂く。
「相手が二人だってこと、忘れてるんじゃない?」
小太刀の持ち主はレスティーだ。
「…ふん。この武器では勝手が悪いな」
コレクは剣を消し去る。消し去って、自分の両肩に付いている剣の柄を取り外した。すると、何も付いていない剣の鍔から先に、刃が現れる。
「これならどうだ!!」
武器を双剣に持ち変えたコレクは、皇魔とレスティーに斬りかかった。
*
ハンマーエボリュータントと対決するアデル。
「グフフ…!!」
ハンマーエボリュータントは巨大なハンマーと持ち前のパワーを駆使して、アデルを襲う。
「ふん!!」
アデルはハンマーエボリュータントの攻撃を受け止めた。
「確かにパワーはあるようだ。だが…!!」
ハンマーエボリュータントのハンマーをはね飛ばし、ハンマーエボリュータントの胴体を何度も斬りつけ、蹴り飛ばす。
「スピードはまだまだだな。」
「くくっ!そんな攻撃が俺に効くか!」
倒れたハンマーエボリュータントは何事もなかったかのように起き上がり、また攻撃してきた。
(持久戦は不利…ならば…!!)
アデルは一度距離を取り、プライドソウルにエネルギーを注入。
「エンドオブソウル!!」
必殺技を放った。
「小賢しいわ!!」
ハンマーエボリュータントもハンマーを振り下ろす。だが、アデルのエンドオブソウルはハンマーを斬り裂き、ハンマーエボリュータントの胴体に傷を付けた。しかし、まだ終わらない。
「アクセラレーションパンチ!!」
アデルは傷目掛けて渾身の拳を叩き込んだ。
「ぐわあああああああああああ!!!」
二重に必殺技を受け、ハンマーエボリュータントは爆発する。
*
ビャクオウはトンファーエボリュータントに向けてホワイトスイーパーの弾丸を放つ。
「そんな弾は止まって見えるぞ!!」
トンファーエボリュータントはトンファーで弾を弾き、ビャクオウを殴り付けた。
「ぐうっ!!」
「どうした?メタルデビルズとはこの程度か!?その雄々しい姿は飾りか!?」
勢いに乗ったトンファーエボリュータントは、さらに攻撃を続ける。
「よくも私の美しい純白の装甲に傷を…!!」
「白が好きらしいな?ならば白旗でも上げるがいい!!」
さらに殴るトンファーエボリュータント。
「あっ…」
その戦いを遠巻きに見ていた空子は、思わず片手で自分の口を押さえた。
「とどめだ!!」
最後の一撃を放つトンファーエボリュータント。
だが、当たる寸前でビャクオウの姿が消えた。代わりに、
「…おい。」
背後からビャクオウの声が。
「てめぇ今なんつった?白旗?白旗つったのか?」
驚いて振り向いたトンファーエボリュータントが見たのは、怒りのオーラを立ち昇らせるビャクオウ。口調も態度もガラリと変わっており、まるで別人だ。
実は、これが本来のエリックである。普段は礼儀正しくかつ爽やかな振る舞いで隠しているが、本来エリックは非常に凶暴な性格の持ち主で、怒りが頂点に達すると、隠していた全ての自分をさらけ出すのだ。今回なぜエリックがここまで怒っているかというと、その理由はトンファーエボリュータントが出した白旗の話題にある。純白を勝利の象徴と認識しているエリックは、敗北の象徴である白旗を何よりも嫌う。目にすることはもちろん、話題にしただけでも怒り狂うほどだ。本人曰く、白旗はどんなに汚いゴミよりも嫌いらしい。
「わざわざ分身の相手させてやってりゃ付け上がりやがって…舐めてんじゃねーぞゴミがァッ!!!」
トンファーエボリュータントの油断を誘うために今まで分身を使っていたのだが、遂にこらえきれなくなったのでこうして出てきたのだ。怒るビャクオウの力は分身とは比べものにならないほど強く、あっという間にトンファーエボリュータントをズタズタに斬り裂き、
「エンドオブファンタズマ!!!」
「があああああああああああ!!!」
必殺技で仕留めた。
*
「ふん、少しは腕を上げたらしいな。だがその程度では…」
コレクは皇魔とレスティーを追い詰めていた。
「強い…!!」
「ちぃっ!やはり秘奥義を完成させねば勝てぬか…!!」
「死ねぃ!!」
二人にとどめを刺そうとするコレク。
だが、その凶刃をアデルが防いだ。
「俺の仲間に手を出すな。」
「メタルデビルズか…よかろう、その二人よりは楽しめそうだ。」
標的をアデルに切り替える。しかしその直後、
「むっ!?」
コレクはビャクオウの射撃を飛び退いてかわした。
「俺様は今てめぇの部下のせいで機嫌が悪いんだ。とっととぶっ殺してやるよ」
「ふむ、二人か。良いぞ、わしを楽しませろ!!」
未知の相手に精神を高揚させたコレクは、二人のメタルデビルズを迎え討った。
「はあっ!!」
「おらっ!!」
「ぬんっ!!」
二人の攻撃を、それぞれ双剣で受け止める。
「軽いわ!!」
そして弾き返す。
「だったら…!!」
アデルはクトゥグアドライブを発動し、チャウグナルファングを装備。
「パワーで勝負だ!!」
コレクに斬りかかった。
「望むところ!!」
しかし、コレクはそれを簡単に防ぎ、
「おおおおおお!!!」
凄まじい乱舞でアデルを圧倒していく。
(パワーだけじゃない!!スピードも上か!!)
恐るべき戦士コレク。この強敵に対処するには、一つしか方法がない。
「イグニスドライブ!!」
イグニスドライブを発動し、同じく乱舞で拮抗する。そして、アデルに気を取られているコレクの背後に、
「間抜け。」
ビャクオウがエネルギー弾を撃ち込んだ。
「ぐうっ!!」
コレクの体勢が崩れる。
「ブラッディファング!!!」
その隙を逃さず、アデルは必殺技を放った。砕け散るコレクの双剣。
「ごおおっ!!」
コレクの胸には×印状の傷が付く。
「まだだ…!!」
しかし、この程度で倒れるコレクではない。瞬時に体勢を立て直して距離を取る。それからコレクが刀身のなくなった双剣を一回振ると、砕けたはずの刃が再生した。
「受けよ!!」
再び双剣を振るコレク。すると、今度は空中に多数の武器が現れた。剣、刀、槍、斧、ナイフ、矢、ハンマー、とにかくたくさんある。コレクには自在に武器を精製する能力があるのだ。そしてそれらの武器は、
「飛翔群殺!!!」
コレクが技名を叫ぶと同時に、アデルとビャクオウ目掛けて襲い掛かる。アデルはそれを炎化して回避し、ビャクオウは自分に飛んでくる最小限の武器を叩き落とした。
「閃光破斬!!!」
コレクは次なる一手として、双剣にエネルギーを込め、光の斬撃を放つ。
「ギャラクティックエンドブレイカー!!!」
ビャクオウはそれを撃ち落とし、
「はあああああああああああ!!!」
アデルは二つの必殺技の衝突を掻い潜って、コレクに斬りかかった。
「すごい…あのコレクを相手に、ちゃんと戦えてる…!!」
レスティーは今まで仕留めるどころか追い詰めることさえできなかった仇敵が苦戦している状況を見て、ただ呆然としていた。しかし、皇魔はそれだけとして見てはいない。
「レスティー、合わせろ。今がコレクを倒す最大の機会だ!!」
そう、今こそコレクを倒すチャンス。 自分達の最強の一撃を叩き込めば、倒せるはずだ。皇魔は自分の右拳に、全ての覇気を集める。
「ええ!!」
レスティーも了承し、気を練り上げて性質変化させる。皇魔の拳は赤く発光し、レスティーの正面には赤、青、緑、黄、金の五つの光球が生まれ、五芒星を作り出す。
そして、皇魔が叫んだ。
「ゲイル!!エリック!!下がれ!!」
その声を聞いて、二人は下がった。残ったコレクに向けて、
「奥義・鬼神激動拳!!!」
皇魔は拳を、
「忍法・五行滅殺の術!!!」
レスティーは五芒星に掌底を繰り出した。
皇魔の拳からは巨大な覇気の玉が放たれ、五芒星からは五つの光が合わさった光線が発射される。二つの攻撃はコレクへと一直線に飛んでいき、
「ぐおわあああああああああああああ!!!!」
大爆発を引き起こした、
「どうだ…?」
皇魔とレスティー最強の攻撃。間違いなく直撃した二つの攻撃。その結果を知るべく、アデルは目を凝らす。しばらくして、
「くっくっくっ…」
煙の中から、コレクが姿を現した。
「良い。良いぞ!!これほどまでに心躍る戦いは久しぶりだ!!これならわしも全力を出せそうじゃな!!」
「な、何!?」
イグニスドライブを発動したアデルでさえ、今の攻撃を受ければ無事では済まない。コレクはそれに耐え抜き、しかも今まで全力を出していなかったとまで言った。もう絶望感しかない。
「タフな野郎だ。ま、それでこそ殺し甲斐があるってもんだけどな。」
しかし、ビャクオウはその絶望感を打ち破る言葉を発した。
「死なねぇってんなら死ぬまでやってやるだけの話だ。」
ビャクオウの心は、まだ折れていない。
(そうだ!!ダメージはある!!なら、必ず勝てるはずだ!!)
アデルは希望を持ち、武器をダゴンとヒュドラに持ち換えた。
「わしには勝てぬ。だが、わしとこれだけの戦いをしてくれた礼はせねばな!!」
再度閃光破斬を撃つべく、双剣を振りかぶるコレク。
だがその時、
「プラチナアローシューティング!!!」
コレクの腕に光の矢が刺さった。
「ぬうっ!?こ、これは…!?」
「エクストリームテンペスト!!!」
「ハウリングシュート!!!」
驚くコレクに、風と銃弾が飛んできた。
「ぐっ!!」
コレクは矢を引き抜き、双剣で風と銃弾を斬る。
「てめぇの部下は全滅したぜ!!」
「あとはあなただけよ!!」
狩谷と空子が言い放った。見ると、確かにヘルポーンもデザイア兵も全滅している。
「なるほど、これは確かに分が悪いな。」
いくらコレクでも、この人数を相手にするのは得策ではない。
「あの二人も逃げきった頃だろう。ならば、退散させてもらうとするか。」
言うが早いか、コレクは自分の周囲に大量の武器を出現させ、飛翔群殺を放った。
「くっ!!」
アデルはそれをルルイエセメタリーで迎撃する。だが、コレクの姿はもうなかった。
「逃がしたか…」
アデルは変身を解き、膝をつく。
「ゲイル!!大丈夫!?」
アンジェは駆け寄り、ゲイルに肩を貸した。
「恐ろしい相手だった。一対一で戦っていれば、間違いなく返り討ちにされていたところだ。」
さすがはデザイアの幹部。その実力は伊達ではない。
「しかし、あいつら一体何者なんだ?エボリュータントって…」
狩谷は皇魔とレスティーに尋ねた。
「それを話すと長くなる。まず鬼宝院家の始まりから話さねばならんからな」
「だから、帰ってから話すわ。こんな所に長居したくなんかないし」
「…確かにな。」
皇魔とレスティーの意見を聞いた狩谷は納得し、ひとまずラッセルを回収してからヘブンズエデンに帰ることになった。ラッセルは、
「君達はいつもあんな戦いをしていたのかい?」
と、とても驚いていたという。
*
「帰ったぞ。」
フォビドゥーンに帰還したコレクは、謁見の間に到着。
「…ぐっ!!」
到着してすぐ倒れた。
「コレク!?」
「!!」
「大丈夫ですか!?」
ウォント、アプリシィ、メイカーの幹部四人は、慌ててコレクを助け起こす。
「大丈夫じゃ。休めば治る」
コレクは自分がヘブンズエデンの訓練生達と戦ったことを話した。
「じゃあ奴らが…許せねぇ!!」
「ウォント!!どこに行くつもりですか!?」
「決まってんだろ!!ヘブンズエデンに行って奴らを始末してくる!!」
仲間想いなウォントは、コレクをここまでボロボロにした皇魔達が許せなかったのだ。
「よせウォント。」
「コレク!!だが…!!」
「良いのだ。戦う機会は、必ずまた来る。奴らとの決着を急ぐ必要はないのだ…」
「…わかったよ。」
ウォントはコレクの説得を聞き入れ、思い留まった。
(あの攻撃が効いたか…)
コレクが倒れたのは、皇魔とレスティーから受けたあの同時攻撃が原因だ。その前にアデルから技を喰らったのも、少なからず影響している。
(これは次が楽しみだな…)
強い相手との戦いを望む武人気質なコレクは、次に仇敵達と戦える日を心待ちにするのだった。
*
ヘブンズエデンに帰った皇魔とレスティーは、光輝とさだめも呼んで約束通りデザイアのことについて語ることにした。だがそれにはまず、鬼宝院家について語らなければならない。
鬼宝院家は、1200年もの伝統を誇る拳法の名門家だ。そして、その初代当主は二人いた。兄の鬼宝院拳壱と、弟の鬼宝院闘弍だ。
鬼宝院家に伝わる暗殺拳、闘界覇神拳は拳壱が編み出したものである。しかし、闘弍はそれを学ぶことができなかった。なぜなら、闘弍は覇気を持たなかったからである。正確に言えば、気を練り上げる術すら修得できなかった。他の誰もが拳壱の指導で覇気を身に付けていく中で、彼だけはそれができなかったのだ。
「それに劣等感を覚えた闘弍は、家にあった進化の宝珠と不老長寿の秘薬、神夜の製法を盗んで失踪した。」
「…そういや、あのコレクってやつも進化の宝珠がどうのって言ってたな。何なんだそりゃ?」
狩谷は二人に訊く。
「その名の通り、生物を進化させる力を持った宝石だ。資料が残っていないため家にあった経緯は不明だが、とにかくそれがあった。」
「そして、それを使って進化した怪物が、超進化生命体エボリュータントよ。」
闘弍は進化の宝珠を使ってエボリュータントに進化し、ルーラーと名乗ってデザイアを結成した。小さじひとさじ服用すれば百年寿命が伸びる秘薬、神夜を使うことで、ルーラーは1200年前から今に至る時間まで生きながらえているそうだ。
鬼宝院家の人間は、裏切り者であるルーラーを滅ぼすため、代々デザイアと戦ってきた。だが移ろい行く時の中で、鬼宝院家に変化が訪れる。覇気を練れぬ代わりに、気を自在に性質変化させる者が現れ始めたのだ。そこで鬼宝院家は、覇気が扱える者と気を性質変化させる者とを分け、両面からデザイアを殲滅する作戦を提案した。結果、気を性質変化させる者は鬼宝院家の分家の人間となり、霊宮寺家と名乗る忍の一族になったのだ。
「その忍の一族が私。レスティー・エンプレスは偽名で、本名は霊宮寺紗理奈っていうの。」
本名を明かしたレスティー。霊宮寺家の人間は、偽名を付けることが多いのだという。
「でも呼びにくかったらレスティーでもいいわよ。」
「じゃあ、いつも通りレスティーで。」
アンジェはレスティーと呼ぶことにした。
「見た感じでは、敵は全てがエボリュータントというわけではなさそうでしたが?」
エリックが質問する。
「進化の宝珠の力を受けている者は、デザイアの兵士全員ではない。ルーラーに認められた者だけが、エボリュータントに進化できるのだ。」
「…確かに、一斉決起でもされたら厄介よね。」
空子は納得した。
「でも、肝心なのはここからよ。」
レスティーは話を続ける。進化の宝珠は、一つだけではないらしい。
「進化の宝珠は世界中の遺跡や洞窟とかにたくさんあって、デザイアはそれを集めているの。」
進化の宝珠は融合して力を強める機能があり、それをもっともっと強化するためらしい。
「それを皇魔さんとレスティーさんが阻止してたってわけなんですね?それにしても、1200年前から生きてる敵か…」
「二人とも、今までそんな相手と戦ってたんだ…」
光輝とさだめは、ずっと皇魔とレスティーが重ねていた戦いの壮絶さに身震いする。
「ヴァルハラと戦う以上、ヴァルハラと同盟を結んでいるデザイアとも戦うことになる。厳しいな…」
ゲイルは、二つの巨大組織を相手にする自分を想像した。
「お前達が無理に相手をする必要はない。これは俺とレスティーの…鬼宝院家と霊宮寺家の問題だ。」
「自分達の尻拭いくらいは、自分達でやらなきゃね。」
皇魔とレスティー、そしてデザイアの間に存在する関係はとてつもなく深い。他者が介入する余地など、ないのだ。
しかし、
「それでも、何か協力できることがあったら言ってくれ。」
「俺達は仲間だ。なら、何でも協力するぜ!」
ゲイルと狩谷が、いや、この場にいる全員が、二人の戦いに協力すると約束してくれた。
「相手が何者だろうと関係ありません。敵なら倒す、それだけです。」
一名は少し違うが。
「みんな、ありがとう!」
仲間がいてくれることに安心し、礼を言うレスティー。
(とはいえ、このままではまずい)
しかし、皇魔は危機を覚えていた。雑魚はともかく、幹部クラスのエボリュータントは恐ろしく強い。アデルでさえ単独では敵わないのだから、このまま戦っても勝ち目は薄いだろう。
(一刻も早く、闘界覇神拳の秘奥義を完成させねば…!!)
大切な仲間を守るため、皇魔は今以上に強くなることを誓った。
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フォビドゥーン。
謁見の間のさらに奥、すなわちこのアジトの最奥部に、一つの部屋があった。首領の間である。この部屋の中央に椅子があり、そこにどこかの王を彷彿とさせる服を着た男性が腰掛けている。この男性こそが、デザイアの首領にして最強のエボリュータント。ルーラーだ。
「お疲れですか?」
頬杖をついて目を閉じているルーラーに、イズマが語りかけた。
「…いや、昔を思い出していた。」
ルーラーは目を開け、眠っていたわけではないことを言う。
「ミレイヌ殿から通信が入っていますが…」
「繋げ。」
「は。」
イズマは通信を繋ぐ。すると、ルーラーの目の前にモニターが現れた。
「突然申し訳ありません。先ほど、発掘に協力していただいたオーパーツが届きましたので、お礼の通信をさせてもらいました。」
「そうか、無事で何より。」
「今回は本当にありがとうございました。」
「良い。これからも友好な関係を築こうではないか」
「はい。では…」
通信が終わり、モニターが消える。
「報告は以上です。」
「よし、下がれ。」
「は。」
部屋を出ていくイズマ。それを確認してからルーラーは席を立ち、
「メタルデビルズ、か…」
椅子の後ろへと歩いていく。
「何者が来ようと無駄なこと。」
あるのは、壁。その壁の隣に、スイッチがある。ルーラーがスイッチを押すと、壁が消えて台座が現れた。
「これがある限り…」
台座の上には、赤くて丸い宝石が浮いている。この宝石が、進化の宝珠だ。
「私は無敵だ。」
進化の宝珠が放つ怪しげな光を見て、ルーラーはほくそ笑んだ。
第三勢力デザイアの本格始動というわけで、今回はいつもより多めのボリュームです。いやぁ長かった。
さて、次回はどうするか…展開はいろいろ決まっていますが、どういう順番で書こうかまだ決めてません。じっくり考えてから決めようと思うので更新が遅くなるかもしれませんが、お楽しみに!
では、次回でお会いしましょう!




