イグニスドライブ PART4
アンジェ救出作戦開始!!
「侵入者発見。侵入者発見」
「迎撃セヨ。直チニ迎撃セヨ」
基地に奇襲をかけたアデル達を迎えたのは、おびただしい数のヘルポーン。アデルとて、これほどまでの数は見たことがない。だが、アンジェはこの軍勢の先にいる。
「強行突破だ!!」
アデルの掛け声で、一同はヘルポーンに向かっていった。
「はあっ!!」
まずは狩谷。正面からスタンロッドで殴りかかってきたヘルポーンを斬りつけ、
「オラァッ!!」
背後から来たヘルポーンの首を落とす。
「うおおっ!!」
今度はダークハンターの石突きを地面に刺し、自身はそれを軸にして両足蹴りをかます。続いてダークハンターを引き抜き、
「ロックンロールハリケーン!!」
巻き起こした突風で、ヘルポーン十体をまとめて吹き飛ばした。
「ふっ!!」
空子は走りながらギガトラッシュを撃つ。ヘルポーンはマシンガンでもダメージを受けないほど頑丈だが、ギガトラッシュはマシンガンと比較にならないほど強力な対戦車ライフル。なので、一発で複数撃破ということもできてしまう。また、その対戦車ライフルを走りながら撃つというのは当然離れ業であり、それを実行するために空子は脚力を鍛えている。だから、蹴りの威力も尋常ではない。
「やっ!!」
弾が切れたため、リロードしながら蹴りで応戦する空子。彼女の蹴りはヘルポーンの頭を粉々に破壊した。リロードが完了した空子は、またギガトラッシュを撃つ。彼女の切り札、レールガンアタッチメントは、まだ使わない。あれはバッテリーの持続時間が短いので、ここぞという局面でないと使えないのだ。
(でも十分!!)
しかし、ダースのような強敵が出てこない限り、使う必要はないだろう。
光輝は羅刹刃を使い、神速の斬撃で次々とヘルポーンをスクラップにしていく。
「光輝!!」
彼の背後から襲い掛かろうとしていたヘルポーンを、さだめのヴォルテクスが両断した。
「大丈夫!?」
「うん、ありがとう!!」
二人は互いの背中をカバーしながら戦う。
「一気に行こう!!」
「うん!!」
光輝とさだめは自分の武器を地面に突き刺し、
「「エレクトリックバイト!!!」」
全力で放電。二人の雷は地面を伝わり、多数のヘルポーンをショートさせた。
「覇道烈破!!」
皇魔は覇気を放ち、ヘルポーンを一掃した。背後から飛び掛かってくるヘルポーンは、拳一発で粉砕する。
「闘気創槍!!」
次に、覇気で赤い槍を作り出し、それを投げつけてヘルポーン二体を串刺しにした。だが、敵はまだまだ向かってくる。
「闘界覇神拳奥義!!」
それを見た皇魔は、両手に覇気を集中。
「砕滅轟波!!!」
破壊の奔流として解き放ち、正面のヘルポーンを全て消し去った。
「忍法・鉄大砲の術!!」
レスティーが両手を地面に両手を付けると、彼女の周囲の土が盛り上がり、いくつもの巨大な大砲を形成した。
「てぇーっ!!!」
それらの大砲は、レスティーの号令で一斉に砲撃を開始する。発射された弾は、全て鉄。凄まじいスピードで飛んでくる大質量に、ヘルポーンはどんどん倒されていく。
「まだまだ!!忍法・炎鬼童の術!!」
続いてレスティーが出したのは、全長4m近い、金棒を持つ巨大な鬼。だが、その鬼は金棒に至るまで全てが炎でできている。鬼は炎の金棒を振るって暴れ回り、最後に爆発してヘルポーンを巻き込んだ。
「これでトドメよ!!忍法・大津波の術!!!」
再び地面に手を付くレスティー。すると、今度は彼女の手元から大量の水が発生し、一瞬のうちに大波を起こして、ヘルポーンを洗い流してしまった。
アデルはプライドソウルで正面のヘルポーンを斬り倒し次に、剣で斬りかかってきたヘルポーンを拳で。槍で突撃してきたヘルポーンの攻撃をかわして蹴り飛ばし、
「エンドオブソウル!!」
必殺技を発動。だが、一体斬っただけでは終わらず、正面のヘルポーン全員を斬り捨てる。アデルのエンドオブソウルを喰らったヘルポーンは、例外なく爆発した。アデルは武器をチャウグナルファングに交換し、背後を向いて突撃をかける。
「ブラッディファング!!!」
赤く輝くチャウグナルファングの刃。アデルの行き先を埋め尽くしていたヘルポーンの軍勢は、あっという間にその乱舞の錆にされてしまい、爆散した。次に彼が目を付けたのは、遠くからバズーカやミサイルランチャー、レーザーなどの兵器を使って攻撃してくる軍団。アデルは素早く武器をダゴンとヒュドラに切り替え、
「ルルイエセメタリー!!!!」
エネルギー弾で消滅させた。
*
「…う…ん…」
アンジェは見たこともない施設の中で目を覚ました。動こうとしたが、動けない。身体が何かの装置に拘束されている。びくともしない。もがいても無駄だとわかったアンジェは、気持ちを落ち着けることにした。そして、ゆっくりと記憶の糸を辿る。ジャンパーホールに入ったあの後、彼女はすぐ気絶させられたのだ。
「…ここがヴァルハラの基地…?」
「正確には、ヴァルハラがいくつも所有する拠点の一つだ。」
アンジェの呟きに答える形で、声が聞こえた。声の主は、ダースだ。
「拠点の一つ?」
「当然だろう?万が一にも本部で暴れてもらうわけにはいかんからな。」
確かにそうだ。ヴァルハラにとってエンゼリオンのハーフであるアンジェは魅力的な存在だが、同時に危険な存在でもある。
「今その装置でお前の力を読み取り、データ化しているところだ。終わればすぐにでも自由にしてやる」
アンジェを拘束している装置は、どうやらアンジェの力のデータを得るためのものらしい。ただ、自由というのが少し気になる。普通に帰してくれるのか、それとも死んで自由になるという意味なのか。
「だが、ただ待つのも退屈だろう。面白いものを見せてやる」
そう言って、ダースは近くにある機械を操作した。すると、二人の目の前にモニターが現れる。モニターには、ヘルポーン相手に奮闘するアデル達の姿が映っていた。
「ゲイル!!それにみんな!!」
(発信機に気付いて来てくれたんだ!!)
「お前を助けに来たんだ。よかったな、仲間想いな連中がたくさんいる。」
アンジェの顔に生気が宿り、ダースはアデル達の戦いを嘲笑う。
「全て無駄になるがな。何せここは宇宙だ」
「…えっ!?」
アンジェはダースの言葉に驚く。モニターに映っている光景は確かに荒野だが、今自分がいる場所は宇宙だというのだ。
「ど、どうして…」
「お前は発信機を持っていたろう?それを利用させてもらった。」
ダースは、アンジェが発信機を持っていることに気付いていた。
「あの基地にあるのはお前が持っていた発信機と、爆弾のみだ。」
「爆弾!?」
「基地の戦力がゼロになると爆発するよう設定してある。爆弾の威力は、半径6kmが塵になる程だ。さすがのメタルデビルズも、これには耐えられまい。」
アンジェを気絶させて連れてきたのは、宇宙基地に連れていくことを隠すためだけでなく、発信機を奪って罠を仕掛けるためでもあったのだ。
「奴らの戦闘力は予想以上だ。間もなく基地の戦力はゼロになり、奴らは吹き飛ぶ。」
「そんな…!!」
「助けに行くか?お前ならば容易いだろう。もっとも、力を使えれば、の話だがな。」
「…!!」
ダースは見抜いていた。アンジェが本来の力を使えば、この宇宙基地を破壊してアデル達を救いに行くのは簡単だ。しかし、彼女は自分自身の存在にコンプレックスがあるため、自ら力を封じている。アンジェがそのコンプレックスを乗り越えない限り、封印を解くことはない。
(お前は絶対に封印を解かん。ミレイヌ様が確信しておられるのだからな)
そして、ダースはミレイヌから聞いていた。
『コンプレックスやトラウマなどの精神的苦痛は、そう簡単に解決できません。人や場合によっては、死ぬまで治らないこともあります。劇的な何かがない限り、アンジェ・ティーリが己の過去を乗り越えることはないでしょう。』
(ミレイヌ様の確信は絶対だ。アンジェ・ティーリ、お前は決して仲間を救うことはできん)
ダースは、そう確信していた。
だが、それは裏切られることになる。
アンジェがダースに気付かれないよう、自分が持つ力の一つを、発動していたからだ。
*
アデル達は飛び出してきたヘルポーンを一通り片付け、基地の内部に潜入していた。
「どうだ!!アンジェは見つかったか!?」
アデルはヘルポーンを倒しながら、全員の無線に連絡を入れる。と、狩谷から返答があった。
「発信機の反応だとこの辺り…なん…だ…が…」
狩谷の言葉が途切れ途切れになり出す。
「どうした狩谷!?アンジェはいたのか!?」
急かすアデル。
「…いや、アンジェはいなかった。代わりにとんでもないもんを見つけちまったけどな」
狩谷の報告の内容は、巨大な爆弾を発見したというものだった。その側に発信機があったらしい。
「爆弾!?」
「発信機に気付いてたのか!!」
「じゃあ、罠!?」
空子、光輝、さだめが反応する。
「どうやら敵も馬鹿ではないらしいな…レスティー。爆弾の凍結を頼めるか?」
「任せて!」
皇魔はレスティーに爆弾を凍結するよう言う。彼女の忍法をもってすれば、それくらいは造作もない。
「しかし、これで振り出しに戻ったな…」
考え込む皇魔。これでアンジェを追う手掛かりはなくなってしまった。
(ちっ!どうすれば…)
アデルもアンジェを捜す方法を考える。
その時、
(ゲイル!!)
アデルの頭の中に、誰かが語りかけてきた。
(アンジェ!?)
そう、アンジェだ。これがエンゼリオンの能力の一つ、テレパシーである。
(ゲイル、聞こえる!?)
(ああ!お前なのか!?)
(私は宇宙にいるよ!そこにある爆弾は、基地の戦力がゼロになると爆発するから気を付けて…あああああああ!!!)
(アンジェ!?)
テレパシー先のアンジェが、突然悲鳴を上げた。それっきり、アンジェの声は聞こえなくなってしまう。
「アンジェ!!どうしたアンジェ!!」
「どうしたんだ!?」
アデルの様子に驚いた狩谷が尋ねる。
「…今、アンジェの声が俺の頭の中に聞こえた。」
アデルは今アンジェが伝えてくれた情報を教える。
「宇宙!?あの子は宇宙にいるの!?」
空子はアンジェの居場所に驚く。
「でも宇宙なんてどうやって捜せば!?」
光輝は混乱する。
「…そうだ!!」
アデルは閃き、エドガーに連絡した。
「理事長!今俺達がいる基地の真上に、人工衛星はないか!?」
「調べてみるよ。」
エドガーは素早くコンピューターを操作し、基地の真上を調べる。
「…確かにあるようだが、それがどうかしたのかい?」
「その衛星に、アンジェの反応は!?」
「…ビンゴだ。この衛星の内部に、確かに彼女の反応があるよ。」
決まりだ。
「俺が行って、アンジェを助けてくる。」
アデルは、自分がアンジェを助け出すと名乗り出る。
「おいおい本気かよ!?」
「そもそも宇宙でしょ!?」
狩谷と光輝は心配するが、
「大丈夫だろう?理事長。」
アデルはエドガーに確認を取る。
「もちろんだ。というより、単独で大気圏を突破できる装備を着けておいて、大気圏外で戦えないわけがないだろう?」
大丈夫そうだ。
「聞いての通りだ。今から行ってくる!爆弾は任せたぞレスティー!!」
「了解!!」
アデルは基地に仕掛けられた爆弾をレスティーに任せ、イタカウイングを最大出力にして飛ぶ。
基地の天井全てをぶち抜いて、アデルは宇宙に到達した。
*
「あああああああああああああ!!!!」
アンジェはダースから、責め苦を受けていた。テレパシーを使っていたことがバレたのだ。ダースが機械を操作すると装置に高圧電流が流れ、アンジェを苦しめる。
「貴様何を伝えていた?言え!!」
「あああああああ!!!うあああああああああああ!!!!」
悲鳴を上げながらも電流に耐えるアンジェ。
その時、
「急速接近スル物体ヲ確認。」
宇宙基地のアナウンスが、何かの接近を告げた。
「何?」
ダースは一度電流を切り、モニターに接近する対象を映し出す。
「あれは!!」
ダースは驚いた。
宇宙基地に接近する物体の正体は、アデルだったのだ。
「見えた!!アンジェの反応もある!!」
「そのまま衛星を破壊したまえ。」
「!?だがそんなことをすれば…」
アデルは突然のエドガーの通信に耳を疑う。衛星を破壊すれば、アンジェが宇宙に放り出されてしまう。
「心配しなくていい。彼女は、宇宙に出ても死なないよ。」
「本当だろうな!?」
「ウソをついて何になる?」
「…信じるぞ、理事長!!」
エドガーがウソをつくメリットはない。まだ半信半疑だが、ダースがアデルを迎え入れるはずがないので、強行突破することにした。
「アデルだと!?まさか貴様…!!」
アンジェがテレパシーで何を伝えていたのかを知り、ダースはアンジェを睨み付ける。
「…ゲイ…ル…」
アンジェは息も絶え絶えに、モニターを見つめた。
「アクセラレーション…!!!」
アデルは右拳にパワーを込めつつ、衛星に接近。アンジェの反応目掛けて、
「パァァァァァァァァァァンチッ!!!!」
突撃しながら拳を叩き込んだ。
アデルの拳は衛星の外壁を貫通し、その外壁を経由したアデルは一気に飛び込んで勢いのまま、アンジェを捕らえている装置を破壊した。
「貴様性懲りもなく!!」
怒りのダースは変身し、右腕を剣に変えて斬りかかる。アデルはアンジェを抱えてそれをかわし、
「アクセラレーションキック!!!」
エネルギーを込めたキックを叩き込んでやった。
「ぐおあっ!!!」
ダースは蹴り飛ばされ、背後にあった別の装置に叩きつけられる。装置は大爆発を起こし、ダースは爆炎の中に消えた。その爆発によって、衛星全体が連鎖爆破を起こしていく。このままでは、二人も巻き込まれてしまう。
「くっ!!」
アデルは思わず、アンジェを抱えたまま宇宙に飛び出した。間もなくして、衛星は完全に崩壊する。
*
エンゼリオンは、どんな過酷な環境にも瞬時に適応できる。それが例え宇宙空間のような空気のない場所でも、太陽のような高い気温の空間でもだ。アンジェもそれを受け継いでいるため、生身のまま宇宙に飛び出しても死なない。
「…理事長から聞いたが、本当に大丈夫らしいな。」
「…うん。私は簡単には死なない身体だから」
なんとかアンジェを救出したアデル。だが、雰囲気は悪い。
「…聞いちゃったんだ…?」
「…ああ。もうみんなお前の正体を知っている」
「…そう…でも、よく助けに来てくれたね。どうして?」
「…お前が俺を頼ってくれたからだ。」
アデルは変身を解く。彼もまた、空気を使わずに活動できる存在。
「俺は今まで、俺に近寄ってくる者を遠ざけていた。失うのが怖かったからだ」
だが、ゲイルに救ってもらいたいと頼ってくる者もいる。アンジェがその例だ。それすら拒み続け、また自分のせいで人を死なせるところだった。誤ちを繰り返すところだった。
「もう拒まない。俺のせいで誰かを死なせたくないから」
「…乗り越えたんだね。良かった…」
ゲイルの言葉を聞いたアンジェは満足そうな笑みを浮かべ、それからまた悲しそうな顔をする。
「私ね。小さい頃自分の力のせいで、友達を大怪我させたことがあるの。それ以来、自分が大嫌いになっちゃった。」
なぜ自分だけがこんな力を持って生まれてきたのか、アンジェは理解できなかった。ただ、普通の女の子として生きたかっただけなのに。
「ゲイルは自分の過去を乗り越えられた。でも、私にはできなかった。だから…」
「殺して欲しいとでも言うつもりか?」
「もう生きていたくないの。こんなに苦しい思いをするくらいなら、死んだ方が」
勝手に死を望むアンジェ。そんな彼女の頬を、ゲイルの平手が打った。
「…ゲイル…!?」
「乗り越えられなかっただと?何でそう判断できる?お前はできるはずだ!俺が過去を振り切れたのは、お前のおかげでもあるんだから!!」
「私の…?」
「そうだ!!お前が俺を変えた!!お前が、きっかけを作ってくれたんだ!!」
アンジェがいつも積極的にゲイルにアピールしたおかげで、頼ってくれたおかげで、ようやく気付くことができた。いつまでも過去から目を背けている場合ではないと。
「俺はお前を受け入れる!!だから死にたいなんて言うな!!」
アンジェだから、助ける決意ができたと言っても過言ではない。
「…本当に…いいの…?」
アンジェは信じられなかった。幼い時から周囲に疎まれ、自分でさえ嫌っていたこの私を、本当に受け入れてくれるのか。
「一緒に生きても…いいの…!?」
「当たり前だ!!!」
アンジェはゲイルの返答に、嬉しくて涙を流した。
「ありがとう…ありがとう…ありがとう…!!」
何度も何度も礼を言うアンジェ。
だが、それも長くは続かなかった。
「貴様らぁぁぁぁぁぁァァァァァァァッッ!!!!」
ダースが追いかけてきた。死んだと思われた彼は、生きていたのだ。
「ここにいろアンジェ!!」
「ゲイル!!」
「アデル、起動!!」
ゲイルはアンジェを離し、アデルに変身してプライドソウルで迎え討つ。
「決着をつけるぞダース!!!今度こそお前を倒す!!!」
「それはこちらの台詞だ!!!これで三度目!!!次はない!!!」
宇宙を舞台に始まったダースとの最後の戦い。
勝つのはアデルか?ダースか?
次回、イグニスドライブ最終章!!
お楽しみに!!




