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イグニスドライブ PART3

今回、アンジェの正体が判明します。

ゲイル達は事の顛末を報告するため、一部は申し立てるため、理事長室を訪れていた。ちなみに、ゲイルの自己修復は完了している。

「貴様、どういうつもりだ?」

「何のことかね?」

「とぼけないで!どうしてゲイルを改造したのかって訊いてるのよ!」

「ヴァルハラに対抗するためだ。ウチの生徒は君達みたいに、飛び抜けて強い者がそんなにたくさんいるわけじゃない。それに、安定して戦える戦力を用意する必要があった。」

皇魔とレスティーの追及を、のらりくらりとかわしていくエドガー。もっとも、後に起きるヴァルハラとの決戦では、アデルではなくゲイルそのものが重要な存在である、ということは伝えなかったが。

「いいんだ。二人とも」

ゲイルは二人に、エドガーに詰め寄るのをやめるよう言う。

「…良いのか?お前は本当に納得しているのか?」

「いいも悪いも、今は重要な話じゃない。問題は、なぜダースがアンジェを狙ったか、だ。」

過ぎたことをいくら言っても始まらない。今できることの話をするべきと、ゲイルは割り切った。狩谷はエドガーに訊く。

「あんたなら知ってるんだろ?あの子…一体何者なんだ?」

「…本当は彼女自身の口から知らせるべきだったが、まぁ、今となっては私の口より話すほかない。」

やはり、エドガーはアンジェが何者かを知っていた。というより、エドガーに知らないことがない方が珍しいだろう。



そして、エドガーは語った。



「アンジェ・ティーリは…彼女は人間ではない。超越種族エンゼリオンと人間の間に生まれた…俗に言うハーフだ。」



「エンゼリオン…?」

「それって一体…」

光輝とさだめ。それからエンゼリオンという言葉を初めて聞く者のために、エドガーは詳しく教える。













エンゼリオンとは、かつてこの世界に栄えていたという古代生物のことだ。時間と空間を超越する能力を持ち、様々な世界を旅する生命体。そのため、正確にはこの世界の生き物ではない。ただ一時的に立ち寄った。それだけのことだ。アンジェはそのエンゼリオンを母に、人間を父に持つハーフなのである。だが、彼女の母はこの世界の人間から迫害を受け、それが元になって数年前に死んでしまった。

「迫害?どうして?」

空子は尋ねる。

「エンゼリオンの力は極めて強大だ。矮小な人間が束になったところで、決して太刀打ちできない。そんな存在を認められなかったんだろう」

アンジェは半分とはいえ、エンゼリオンの力を受け継いでいる。実はゲイル達も、その力の一端は既に見ていた。そう、彼女のアーミースキルである。あれはヘブンズエデンで身に付けられたものではなく、エンゼリオンが持つ超絶的な力の一部だ。アデルに匹敵するパワーや身体能力も、また然り。



しかし、アンジェはそんな力を持つ自分を嫌悪していた。



「人間ではなく、エンゼリオンにもなりきれない。そんな中途半端で危うい存在な自分に、コンプレックスを抱いていたんだ。」

エドガーは聞いていないが、彼女自身も相当な迫害に遭ったのだろう。


やがて父も病で亡くし、心の拠り所を失ったアンジェは、父の遺言に従い、ヘブンズエデンを訪ねてきた。

「彼とは少しばかり付き合いがあってね、もし自分が嫌いでどうしようもなくなったら、私を頼るよう言われていたらしい。彼女が私に会って、開口一番に言った言葉は何だと思う?」

「…いや。」

突然質問され、ゲイルは首を横に振る。エドガーは、アンジェが自分に一番最初に言ったことを教えた。

「『私を人間にして』だ。どれだけ自分に対して嫌悪感を抱いていたのか、よくわかる言葉だよ。」

それからはアンジェをヘブンズエデンに入学させ、直にアンジェを人間にする方法を研究していた。さすがのエドガーも、異なる生物とのハーフを人間にする方法は知らなかったのだ。

「検査の時もよく言っていたよ。死ねたら一番いいけど簡単に死ねる身体じゃないし、そんな度胸もないってね。」

一同はエドガーが言ったことに驚いていた。アンジェが人間でなかったことにも驚いたが、一番驚いたのは、あの明るさだけが取り柄のような少女が、そこまで思い詰めていたこと。

「彼女にも新しい心の拠り所が必要だと思った私は、メタルデビルズであるゲイルのことを教えた。状況は違うが、少しでも気休めになればいいと思ってね。」

「!!」

エドガーに言われて、ゲイルは気付いた。



アンジェがやけにゲイルに付きまとってきた理由。それは、彼女がゲイルを頼っていたから。



あの底抜けなまでの明るさは、全て演技。本当は助けを求めていたのだ。自分の心の拠り所になって欲しかったのだ。



「なのに君は…時々見てたけど、いつも彼女を遠ざけていたよね?助けて欲しがっていたのに、君は彼女の言葉を無視した。側についていて欲しがっていたアンジェの想いを、残酷なまでに踏みにじった。全く…ずいぶんと無慈悲な真似をしたものだね」

(…言われてみれば、確かにそうだ)

ゲイルは思う。よく考えれば、アンジェは前から自分が人間ではないと言っていた。コンプレックスがあるような素振りも、見せていた。何も考えていないように見えて、苦しんでいたのだ。ずっとずっと、何年も前から…。

「…!!」

そう思うと、ゲイルはとても不快な気分になった。とにかくいても立ってもいられなくなり、ゲイルは理事長室を飛び出す。

「ゲイル!?」

「おい!どこ行くんだよ!」

空子と狩谷は、それを追いかけていく。

「理事長先生、そんな風に言うことないでしょう!?」

「ゲイルは今、ただでさえ追い詰められてるんですから!」

光輝とさだめも追いかけた。

「私は事実を言っただけなんだがね。」

エドガーはそれを見送り、残った二人に呟く。

「事実を受け入れられないことだってあるわ。変わらない事実を、目を背けることで変えようとする…」

その片方、レスティーが、現実というものを痛感して目を細める。

「だが、それだけでは何も変えられん。」

ともう片方、皇魔が歩き出した。

「行くの?」

「このままにしておくわけにはいくまい。」

「じゃあ私も。」

「好きにしろ。」

二人は揃って出て行こうとし、皇魔は背を向けたまま、エドガーに尋ねた。

「貴様はどう見る?ゲイルは立ち直れるか、否か。」

「聞くまでもないだろう?」

「…ふん。」

二人は、今度こそ出て行った。













「待てよゲイル!!」

狩谷はどこかに行こうとするゲイルの肩を掴んで止める。

「どこに行くってんだ?」

「決まっている。アンジェを助けにだ!」

「どこにいるかもわかんねぇんだぞ!無理だ!」

「とにかく捜す!こんな所ににいつまでもいられるか!」

「落ち着いてゲイル!!あたし達も一緒に捜すから!!」

空子も追いついてきて、一緒にゲイルを説得する。

「お前達の力など必要ない!アンジェは俺一人で助ける!」

「…本気で言ってんのか?」

突然、狩谷の声色が変わった。どことなく、怒っているような声だ。

「俺達の力が必要ないなんて、本気でそう思ってんのか?」

「…」

ゲイルは答えない。狩谷はそれに苛立ち、声を荒げた。

「どうしてお前は何でも一人で解決しようとするんだよ!!たった一人で全部背負って、それに押し潰されそうになって…バカみてぇじゃねぇか!!」

「お願いゲイル。これ以上思い詰めないで!」

狩谷と空子は勝手に自分を追い詰めているゲイルを、もう見ていられなくなっていた。このまま行けば、いずれゲイルの心は潰れてしまう。


「…俺は、ヘブンズエデンの訓練生、赤石ミライさんに命を救われた。」


そんな二人の想いが通じてか、ゲイルは自分の想いを話し出す。

「あの時死ぬべきだったのは、俺の方だった。だが、死ぬべき俺が生き残って、死ぬ必要のないミライさんが死んだ。なぜかわかるか?あの人は、俺の側にいたせいで死んでしまったんだ。」

それは、少し前に聞かせてくれた、ゲイルがヘブンズエデンに来た理由。

「俺はあの人の無念を晴らすために、ヘブンズエデンに入学した。だが、俺はあの時以来、自分の周囲に仲間を作るのが怖くなってしまったんだ。また同じことが起きるかもしれない、とな。」

だからこそ、ゲイルは孤独を選んで生きてきた。自分が一人でいれば、誰も巻き込むことはないから。

「ゲイルは死ぬべきなんかじゃないよ!」

そこへ、光輝とさだめが割り込んできた。

「そうだよ。ミライさんはゲイルに助かって欲しいから、自分を犠牲にしたんじゃないの?ミライさんの想いを受け継いだなら、そんなこと言っちゃ駄目だよ!」

「…それでも、俺は時々思うんだ。なぜ俺が生き残ってしまったのかと…」

当時のゲイルは、傭兵になろうとも思っていない、ただの中学生だった。しかし、ミライは傭兵。二人の生き方には、天と地ほどの差があった。

「もし死ぬなら、あの人のように誰かを守って死のうと決めている。だから、今回俺は一人でアンジェを助けに行くんだ。周囲を巻き込むのは、これで終わりにする。死ぬのは俺一人で十分ーーー」



その時、




バキッ!!!




狩谷が、ゲイルの顔面に拳を叩き込んだ。




「ぐあっ!!」

倒れるゲイル。

「…お前が俺達のことを考えてくれてるのは嬉しいよ。今なら、お前が俺達を遠ざけようとしてたのも納得できる。けどな!!」

狩谷はゲイルの胸ぐらを掴み、叫んだ。



「お前じゃなきゃ救えないやつだっているんだ!!いい加減気付けよ!!」



ゲイルは、自分が近くにいると人が死ぬと曲解していた。だから、狩谷達から距離を置いていた。しかし、狩谷はこう言ったのだ。離れていては、助けられない者もいると。近くにいるからこそ、守れる者もいると。

「ずいぶんと情けない顔付きになったな、ゲイル。」

そこへ皇魔が来た。

「俺達は貴様に気を配られるほど弱くない。そのようなこともわからんとは…貴様は所詮、その程度だということだな。」

「!!」

彼らは、最初からゲイルに心配される必要はなかった。既に覚悟ができているからだ。

「死など恐れてはおらん。そう覚悟したからこそ、俺達はここにいるのだ。」

「ゲイルが命を懸けるなら、あたし達も命を懸ける!仲間だから!!」

皇魔と空子から言われて、ゲイルはようやく気付く。距離を置く必要などなかった。彼らは、絶対に死なないと。

「で、アンジェちゃんのことはどうするの?」

今度はレスティーが割り込んできた。

「ここまでやられて、黙ってるの?」

「…当然助け出す。」だが、先ほどまでと答えは違う。



「俺達全員の力でだ!!」













完全に立ち直ったゲイルを連れて、一同は理事長室に戻った。

「やはり、戻ってきたね。」

「ああ。心配をかけた」

エドガーは最初から心配などしていないが、それでも嬉しかった。

「でも、問題はアンジェさんがどこにいるかだよね…」

「うん。何か手掛かりでもあれば…」

光輝とさだめは、アンジェの行方を捜す方法を模索する。と、

「そのことなら心配はいらない。」

エドガーが手元にキーボードを出し、何かのスイッチを入れた。間もなくして部屋が暗転し、モニターが現れる。映されたのは、何かの地図。地図の中心には赤い点があって、明滅を繰り返していた。地名も映っている。

「ヴァルハラがアンジェを狙ってくることは予想できていたからね。こういう状況を想定して、彼女には私特製の発信機を持たせている。」

「理事長先生グッジョブ!!」

エドガーのナイスプレーに、レスティーがテンションを上げてサムズアップした。

「でも、何だってヴァルハラはアンジェちゃんを狙うんだ?」

ゲイルが出て行ったのを追いかけたせいで、エドガーから聞けなかったことを狩谷が尋ねた。しかし、エドガーの前に皇魔が言う。

「大方、アンジェの力を欲してだろう。理事長の話が正しければ、エンゼリオンの力は相当なものだからな…」

「…まぁそんなところだね。」

「アンジェが何をされるかわからないわ。居場所がわかったんだから、早く助けに行きましょう!理事長先生、ありがとうございました!」

空子の号令で、一同は発信機が示す地点に行くため、転移装置のある部屋まで行く。

「ゲイル。」

しかし、ゲイルが最後に部屋を出ようとした時、エドガーが彼を呼び止めた。

「何だ。」

「…私がなぜすぐにアンジェの居場所を教えなかったかわかるかい?」

「…いや。」

「君に彼女という存在を再確認してもらうためだ。これは私の予想だが、恐らく彼女は君以外の者に救われることを望んでいない。」

それは、他の者に救われることで自分の正体を露見する可能性があるから。アンジェは自分自身が大嫌いなのだ。もしそうなったら、一体どうなってしまうことか。

「…私が言うのも変な話だが、心の底から私を頼ってきてくれたのは彼女が初めてなんだ。だから、どうしても助けて欲しい。」

「…理事長…」

「…聞かせてくれ。アンジェを助けに行く理由を…」

同情か、単に仲間としてからか。




そしてゲイルは、自分がアンジェを助けに行く理由を言った。




「ーーーーーー」




「…君らしい答えだ。」




エドガーはゲイルの答えに満足し、アンジェを救いに行く姿を見送った。













一行がたどり着いたのは、だだっ広い荒野。崖の下に基地があるのが見える。

「あそこにアンジェがいるのか。」

「発信機の反応はそこからしている。間違いはない」

ゲイルはエドガーと連携を取り、アンジェの位置を割り出す。

「…しかし、本当にいいのか?」

ゲイルは改めて仲間達に尋ねた。

「愚問だぜ、ゲイル。」

「あたし達は仲間なんだから。」

狩谷と空子は意気込む。

「…それにこんな決着、あたしは認めない。」

空子が何か言った。

「みんなで助けよう!」

「きっとうまくいくよ!」

光輝とさだめが励まし、

「ただの付き添いだ。気にするな」

「ちょっとおせっかいだけどね♪」

皇魔とレスティーが協力する。


これだけの面子がいるのだ。恐れるものなど、何もない。

「…アデル、起動!!」

ゲイルはアデルに変身し、仲間とともに奇襲をかけた。



(待っていろよ、アンジェ!!)





次回、突入!!

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