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第129話:【テレビ取材というフラグ】

本日は2話更新になります。

なんとなくやりたくなってしまいました。


無事にダンジョンアタックの予選を終え

私は控室を出て「さて、これからどうしようかなぁ」とプラプラ廊下を歩いていた。


すると突然、カメラを持った一団とマイクを握ったレポーターに呼び止められた。


「あ、すみません! 『関東テレビ』ですが、いま少しお時間よろしいですか!?」


(げっ……テレビ局……)


昔からテレビ関係にはろくな思い出がないけれど

無下に断るのも角が立つ。私は即座に営業用の貼り付けたスマイルを浮かべた。


「はい、大丈夫ですよ〜」


「ありがとうございます! その制服はエシュ学園の生徒さんですね?

先ほどのダンジョンアタックの予選はご覧になりましたか?」

「はい! とっても白熱した良い試合でしたね!」


「素晴らしい! ズバリ伺いますが

 エシュ学園はこのまま本戦でも優勝できそうでしょうか!?」


目を輝かせてマイクを突き出すレポーター。

普通なら「絶対に優勝します!」と威勢よく答える場面なのだろうが、

私はサポート役として冷静に現実を分析した結果を口にした。


「あー……正直、優勝はちょっと難しいかもしれませんね」


「えっ!? エシュ学園の生徒なら『もちろん優勝です!』と

 おっしゃるかと思ったのですが……理由は!?」


「いやだって、1位と2位で抜けた他校のチーム

戦術も個人の実力も本当に素晴らしいんですよ。

本戦では予選以上に手の内を見せて本気を出してくるでしょうし

それを考えるとかなり厳しいんじゃないかなぁと」


「随分と身内に辛辣ですね!」

レポーターが驚いている。


「私、サポート役なので。現実から目を背けて身内を贔屓目ひいきめ

見るのは良くないと思うんですよね。私自身も今日のサポートで

反省点がたくさんありましたし、これから友人たちと反省会をしようと思ってるくらいです」


「なるほど……熱心ですね……」

「選手が命がけで真剣に戦っているのに

裏方の私たちが手を抜いたり現実逃避したら失礼ですからね!」


ニッコリ微笑む私に、レポーターは「ありがとうございました……!」と

お礼を言って立ち去っていった。よし、完璧な模範的インタビュー対応だ。


「……随分と丁寧に対応していたわね」


振り返ると、香澄ちゃんが呆れ顔で立っていた。


「あっちの対応が丁寧だったからね。相手に合わせて対応を変えるのは大人として基本でしょ?」

「まあね。ただ……あの対応だと……」


香澄ちゃんは何かを言いかけ、ハァと大きなため息をついて言葉を飲み込んだ。


「ん? 何か気になる言い方ね」

「多分、すぐに分かるわ。……まあ、あなたにとって望んでいない形になると思うけど」


「えぇ〜? まさかそんなことにならないでしょ!

たった数十秒の短いインタビューよ?

むしろ『自分の学校のチームをけなす性悪冷酷女』

としてカットされるか悪編されるくらいじゃない?」


私がフンッと胸を張ると、香澄ちゃんは痛いものを見る目で見つめてきた。


「……それが認識不足だって言ってるのよ。まあいいわ

 話題を変えましょ。これからどこ行くの?」


「香澄ちゃん、明日はいよいよ魔法戦の決勝でしょ?

 最後の仕上げの練習、お付き合いしようか?」

「そうね! ぜひ付き合ってもらうわ」



というわけで、ふたりで訓練場へと向かった。


扉を開けた瞬間、周りの生徒たちから「うわ、可愛い……」「あの子たちマジで美少女だな……」

といった熱視線と囁き声が飛んできたが、私は完全無視。


訓練場の端っこのスペースを確保し、香澄ちゃんに向き合った。


「いい? 私が前に教えた魔法は合計3つ。それを出せるように徹底的に練習しましょ」

「ええ。予選は余裕があったから良かったけど

決勝は人数も増えるって翔先輩も言ってたし、余裕なんてなさそうだものね」


「よし、じゃあスパルタで行くわよ! ちなみに『広範囲探知』の方は

精霊ちゃんに索敵させて伝えてもらえばいいだけだから

このあと空き時間に自主練すればできるようになるわ」

「分かったわ」


「じゃあ次は『加速』ね。前見た感じ綺麗にできてたけど

 修正点を挙げるなら『体の外側だけじゃなく、内側にも魔力を纏わせること』かな」


「内側も? 外側に纏わせた魔力を使えば十分なんじゃないの?」


「私みたいな精霊と契約してない凡人は外側だけでいいんだけど

香澄ちゃんは『精霊使い』でしょ? 『外側は精霊用』『内側は自分用』って

役割を明確に分けておくの。そうすれば

戦闘中にいちいち精霊ちゃんと相談せずに即座に発動できるでしょ?」


「……なるほど! 役割分担ね。全然気づかなかったわ……!」


「そして最後は……切り札の『属性二重纏い(デュアル・エンチャント)』よ!

武器に魔力を纏わせて威力を跳ね上げるやつね」


「ねえ、属性は精霊の属性だけでダメなの?」

「雷とか弱点属性を突かれたら逆に大ダメージ喰らうでしょ?

初見の相手には、まず無属性魔力で薄く覆って、その下(内側)に水属性を仕込むの

。攻撃の途中で属性を切り替えれば、相手は対応できずにガードを崩されるわ」


「なるほど……言われてみればそうね。

教えてもらった時は時間がなくて理由まで聞けなかったけど……

でも、どうしてこれが『切り札』なの?」


香澄ちゃんの素朴な疑問に、私はニヤリと黒い笑顔を浮かべた。


「単純よ。無属性の魔力被膜に『触れた相手の魔力をわずかに奪う』っていう技術を習得してもらうから」

「えっ……!?」


「香澄ちゃんの愛剣を軸にして『ウォーターシールド』を展開してみて?

シールドに当たった相手の攻撃魔力をそのまま吸収して自分の糧にできるわ。

つまり、シールドをずっと展開し続けられるし

こちらは無限に反撃できるのよ。……相手からしたら、嫌すぎない?」


香澄ちゃんの顔が引きつった。

「……なにそれ、チートすぎるわね……」


「そうよ! 私には精霊がいないからジリ貧で防御し続けるしかないけど

香澄ちゃんには水精霊クアがいる。ふたりで役割を分担すれば

よほどのことがない限り負けないわ。相手の魔力は減っていくのに

こちらは実質『魔力無限』なんだから」


「理論は痛いほど分かったわ……! 早速練習しましょ!」


「よーし、じゃあ私が軽く銃を撃つから、シールドで防いで吸収してみてね」


私は体力を節約するため、魔導銃を1丁だけ両手で構えた。


「お願いね、クア!」

『わかったーッ!』


「それじゃ、行くわよー!」


パンッ! パンッ! パンッ!


私が放つ魔力弾を、香澄ちゃんは水シールドで受け止める。

最初は魔力の吸収タイミングが合わず苦戦していた香澄ちゃんだったが

みっちり1時間が経過した頃には

見事に魔力を吸い取ってシールドを自動維持できるようになっていた。


「はぁ……っ、はぁ……っ! 出来た……わ……!」

肩で激しく息を吐き、汗だくでその場にしゃがみ込む香澄ちゃん。


精霊眼せいれいがんって……めちゃくちゃ疲れるのね……っ」


「まあ、慣れよ慣れ」

私は何気なくポンポンと肩を叩き――ハッと立ち尽くした。


(……待って? 精霊眼を使うと体力がゴリゴリ削られる……?

もしかして……私が普段から異様に体力がない(貧弱な)のって

四六時中『魔力眼』をつけっぱなしにしてるせいじゃ……!?)


脳裏に衝撃の真実が走ったが、見なかったことにしてそっと意識の奥底へ追いやった。


「よ、よし! 休憩挟んだら、香澄ちゃんが満足するまでとことん付き合うわよ!」

「ええ! 絶対に明日の決勝、勝ってみせるわ!」


こうして、夕闇が迫る訓練場で、私の指導は続くのであった。

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