第12章 アポロの竪琴
こうして二人は屋上にたどり着いた。
クリスティーヌはつばめのように軽やかにその上を歩き、三つのドームと三角形の破風の間に広がる虚空を、二人の目がそっと掃った。彼女はパリの上空で思いきり息をつき、眼下に広がる谷全体が働き、動いているのを眺めた。
ラウルをそばに呼び寄せ、二人は肩を並べて、亜鉛の通りを、鉛色の並木道を歩いた。巨大な水槽に映る自分たちの二つの影を見た。そこには暑い季節になると、バレエの少年たちが二十人ほど泳いだり潜ったりして練習する、よどんだ水が満々とたたえられている。
影は二人の足にまとわりつくように後ろをついてきた。しかし二人の子供は、その存在に少しも気づかぬまま、とうとうアポロの強大な守護のもとに腰を下ろした。
アポロは青銅の大きな身振りで、巨大な竪琴を真紅の空の心臓部へと高く掲げていた。
それは華麗な春の夕暮れだった。沈む太陽から金と紫の薄紗の衣をまとったばかりの雲が、ゆっくりと流れていく。
クリスティーヌはラウルに言った。
「もうすぐわたしたちは雲より遠くへ、雲より速く、世界の果てまで行くの。そしてそのとき、あなたはわたしを置いていくでしょう、ラウル。でも、あなたがわたしを連れていこうとするその瞬間に、もしわたしが拒んだら——そのときは、どうか力ずくでわたしをさらっていって」
「気が変わってしまうのが怖いのかい、クリスティーヌ?」
「わからない」
彼女は奇妙な様子で首を振った。
「あの人は悪魔よ!」
そう言って身を震わせ、うめくように彼の腕の中に身を寄せた。
「もう地面の下で、あの人と暮らすのが怖くて……」
「どうして戻らなければならないんだ?」
「戻らなければ、恐ろしい災いが起きるかもしれないの!……でもわたしにはできない、できない!……地下に住む人を哀れむべきだとはわかっているけれど……でもあの人はあまりに恐ろしくて! それに時は迫っている。あと一日しかない。戻らなければ、あの人が声でわたしを迎えに来る。そして地下へ引きずり込み、死の頭をしたあの人が、わたしの前にひざまずいて『愛している』と言うのよ。そして泣くの! ああ、あの涙、ラウル、死の頭の二つの黒い眼窩から流れるあの涙を、もう二度と見たくない!」
彼女は苦悩に手をよじり、ラウルは彼女を胸に抱きしめた。
「いや、いや、もう二度と『愛している』などと言わせはしない。涙も見せない。逃げよう、クリスティーヌ、今すぐ逃げよう!」
そしてその場で彼女を連れ去ろうとしたが、彼女は押しとどめた。
「だめ、だめ」
悲しげに首を振りながら、彼女は言った。
「今はだめ。……あまりに残酷すぎる。……明日の晩、あの人にわたしの歌を聴かせてから……それから逃げましょう。真夜中ちょうどに、楽屋へわたしを迎えに来て。あの人は湖のほとりの食堂でわたしを待っているでしょう……そのとき、わたしたちは自由になる。あなたがわたしを連れていって。……約束して、ラウル。たとえわたしが拒んでも。なぜなら、もし今度戻ったら、もう二度と戻ってこられないかもしれないから」
彼女はため息をついた。
そのため息に、背後からもう一つのため息が応えたように思えた。
「聞こえた?」
彼女の歯が、ガチガチと鳴った。
「いや」とラウルは言った。「何も聞こえなかった」
「こんなふうにいつも震えているなんて、あまりに恐ろしい。……でもここには危険はないわ。わたしたちはここが家なの。空の上、外気の中、光の中にいる。太陽が燃え盛っている。夜の鳥は太陽を直視できない。わたしはあの人を昼間に見たことがない……きっと恐ろしいでしょうね!……ああ、初めて見たとき!……死ぬかと思った」
「なぜ?」
この奇妙な告白がどんな相貌を帯び始めているのか、ラウルは本気で怯えた。
「あの人を見てしまったから!」
今度はラウルとクリスティーヌが同時に振り返った。
「誰かが苦しんでいる」とラウルは言った。「誰かが怪我をしたのかもしれない。聞こえたか?」
「わからない」とクリスティーヌは認めた。「あの人がいなくても、わたしの耳はあの人のため息でいっぱいなの。でも、あなたが聞こえたのなら……」
二人は立ち上がり、あたりを見回した。
広大な鉛の屋根の上に、自分たち以外には誰もいなかった。
再び腰を下ろし、ラウルが言った。
「初めてあの人を見たときのことを話してくれ」
「三か月の間、声だけを聞いていたの。姿は見ていなかった。最初に聞いたとき、あなたと同じように、あの愛らしい声が隣の部屋で歌っているのだと思った。出ていってあちこち探したけれど、ご存じのとおり、わたしの楽屋はとても孤立しているの。部屋の外では声は見つからなかった。なのに部屋の中では、声はしっかりと続き、歌うだけでなく、本物の男の声のようにわたしの問いに答えてくれた。ただ違うのは、それが天使の声のように美しかったこと。
父が死んだらすぐに送ってくれると約束してくれた『音楽の天使』を、わたしはまだ受け取っていなかった。ほんとうに、ヴァレリウスお母さまにも少し責任があると思う。わたしが話したら、すぐに『天使に違いないわ。とにかく聞いてみても害はないでしょう』と言ったの。
聞いてみた。すると男の声が答えた。
『そうだ、それは天使の声だ。お前が待っていた声、父が約束した声だ』
それ以来、声とわたしは親友になった。毎日レッスンをさせてほしいと頼まれ、わたしは承諾し、楽屋で指定された時間を一度も欠かさなかった。あなたは声を聞いたことがあるけれど、あのレッスンがどんなものだったか、想像もつかないでしょう」
「まったく想像もつかない」とラウルは言った。「伴奏はどうしていたんだ?」
「わたしの知らない音楽が伴奏してくれたの。壁の向こうから、驚くほど正確に。声はわたしの声を正確に理解し、父がどこで教えるのをやめたかも、正確に知っているようだった。
数週間のうちに、歌っている自分自身がわからなくなった。怖くさえなった。何か魔術が隠れているのではないかと恐れ始めたけれど、ヴァレリウスお母さまが安心させてくれた。
『あなたはあまりに無邪気な娘だから、悪魔に取り憑かれるようなことはないわ』
声自身の命令で、わたしの進歩は声とヴァレリウスお母さまとわたしだけの秘密にされた。奇妙なことに、楽屋の外では普通の日常の声で歌っていて、誰も何も気づかなかった。わたしは声の言うことをすべて聞いた。
『待っていなさい。わたしたちはパリを驚かせるから』
声はそう言った。
わたしは待ち、恍惚とした夢のような日々を送った。
そしてある晩、客席であなたを初めて見たの。嬉しくて、楽屋に戻ったときもその喜びを隠そうともしなかった。ところが声はすでにそこにいて、わたしの様子からすぐに何かがあったことに気づいた。どうしたのかと聞かれ、わたしたちの話を秘密にする理由も、あなたがわたしの心の中で占める場所を隠す理由もなかった。
すると声は沈黙した。
呼んでも答えず、懇願しても無駄だった。もう二度と来ないのではないかと恐ろしかった。ああ、むしろそうなっていればよかったのに!……
その夜、わたしは絶望的な状態で家に帰った。ヴァレリウスお母さまに話すと、『もちろんよ、声が嫉妬しているのよ!』と言った。そしてそのとき初めて、わたしはあなたを愛していることを知ったの」
クリスティーヌは言葉を切り、ラウルの肩に頭を預けた。
二人はそのまま、しばらく沈黙していた。
そして数歩先で、大きな黒い二つの翼の影が這うように動いているのに、気づかなかった。その影は屋根の上を、二人に触れるほど近くまで近づいてきて、覆いかぶされば二人を窒息させられるほどの距離だった。
「翌日」
クリスティーヌはため息をつきながら続けた。
「わたしは物思いに沈んだ様子で楽屋に戻った。声はそこにいて、深い悲しみを込めて話し、もしわたしが地上に心を捧げなければならないなら、声は天に帰るほかない、とはっきり言った。
しかもそれが、あまりに人間的な悲しみの響きを帯びていたので、その瞬間に疑って、自分の感覚が欺かれているのではないかと思い始めるべきだった。
けれど父の記憶と深く結びついた声への信仰は、揺るがなかった。再び聞けなくなることほど恐ろしいことはなかった。
あなたへの愛を考え、その無用な危険を悟り、あなたがわたしを覚えているかどうかさえわからなかった。何があろうと、あなたの社会的地位は、結婚などという可能性を考えることを禁じていた。
だからわたしは声に誓った。あなたは兄以上のものではなく、これからもそうであり、わたしの心は地上のいかなる愛にも耐えられない、と。
だからこそ、舞台や廊下であなたに会っても、認めようとも、見ようともしなかったの。
一方、声が教えてくれる時間は、神聖な狂乱のうちに過ぎていった。ついにある日、声が言った。
『もうお前は、クリスティーヌ・ダーエ、天上の音楽を少しばかり人間に与えることができる』
カルロッタがその夜劇場に来なかった理由も、わたしが代わりに歌うことになった理由もわからない。けれどわたしは、それまで知らなかった恍惚のうちに歌い、一瞬、魂が身体を離れていくように感じた」
「ああ、クリスティーヌ」とラウルは言った。「その夜、お前の声の一言一言に、わたしの心は震えた。涙がお前の頬を伝うのを見て、わたしも一緒に泣いた。どうして泣きながら、あんなふうに歌えたんだ?」
「気を失いそうだった」とクリスティーヌは言った。「目を閉じた。開けたとき、あなたはそばにいた。でも声もそこにいたの、ラウル!
あなたのために恐ろしくなり、再びあなたを認めず、海であなたがわたしのスカーフを拾ってくれたことを思い出させられても、笑い始めた。……ああ、声は欺けない!……声はあなたを認め、嫉妬した!
『愛していないなら、避けたりせず、ほかの昔からの友人と同じように扱いなさい』
そう言った。
次々と場面を作られた。とうとうわたしは声に言った。
『もうたくさん! 明日ペロスに父の墓参りに行く。ラウル・ド・シャニー殿にも一緒に来てもらうつもり』
『好きになさい』と声は答えた。『だがわたしもペロスにいる。お前がいるところにはどこにでもいるからな、クリスティーヌ。もしお前がまだわたしに値するなら、もし嘘をついていなかったなら、真夜中ちょうどに、父の墓の上で、父のヴァイオリンで〈ラザロの復活〉を弾いてやろう』
だからあなたに手紙を書いたの。ペロスへ連れてきてくれた、あの手紙を。
どうしてあんなに欺かれてしまったのだろう? 声の個人的で利己的な面を見たとき、どうして偽物を疑わなかったのだろう?
ああ、わたしはもう自分の主人ではなかった。あの人の所有物になってしまっていたの!」
「だが結局」とラウルは叫んだ。「すぐに真実を知ったじゃないか! どうしてすぐに、その忌まわしい悪夢から逃れなかったんだ?」
「真実を知る? 悪夢から逃れる? でも、かわいそうな子、わたしが悪夢に捕らわれたのは、真実を知ったその日からだったのよ!……哀れんで、ラウル、哀れんで!
カルロッタが舞台でヒキガエルに変えられたと思い、シャンデリアが床に落ちて劇場が突然暗闇に沈んだ、あの恐ろしい夜のことを覚えているでしょう?
死傷者が出て、劇場全体が恐怖の叫びで鳴り響いた。
わたしの最初の思いは、あなたと声だった。あなたについてはすぐに安心した。お兄さまのボックスにいるのを見ていたから、危険はないとわかっていた。でも声は『その公演にいる』と言っていたから、まるで死ぬことができる普通の人間のように、本気で心配したの。
『シャンデリアが声の上に落ちたかもしれない』と思った。
わたしは舞台にいて、死傷者の中から声を探すために客席へ駆け込もうとしたとき、もし声が無事なら、必ず楽屋にいるはずだと思い、部屋へ走った。
声はいなかった。
扉に鍵をかけ、涙を浮かべて、もし生きているなら姿を見せてと懇願した。声は答えなかった。
しかし突然、長い美しい嘆きの声が聞こえた。それはわたしがよく知っている声だった。贖い主の声を聞いて、ラザロが目を開き、昼の光を見始めるときの嘆き。ペロスであなたとわたしが聞いた、あの音楽だった。
そして声は主導旋律を歌い始めた。
『来い! そしてわたしを信じよ! わたしを信じる者は生きる! 歩け! わたしを信じた者は決して死なない!……』
あの音楽がわたしに与えた効果は、言葉にできない。それはわたし一人に向かって、来い、立て、こちらへ来い、と命じているように思えた。
声は退き、わたしは従った。
『来い! そしてわたしを信じよ!』
わたしは信じ、来た……来て——そしてこれが異常なことだったのだが——楽屋が、わたしが動くにつれて、伸びていくように思えた……伸びていく……明らかに、鏡の効果だったに違いない……だって前に鏡があったから……そして突然、どうしてかわからないまま、部屋の外にいた!」
「何だって? どうしてかわからないまま? クリスティーヌ、クリスティーヌ、本当に夢を見るのはやめろ!」
「夢ではなかったの、あなた。どうしてかわからないまま、部屋の外にいたの。ある晩、わたしが部屋から消えるのを見たあなたなら、説明できるかもしれない。でもわたしにはできない。
ただ言えるのは、突然、前に鏡がなくなり、楽屋もなくなったこと。
暗い通路にいて、恐ろしくて叫んだ。遠くの壁の角に、かすかな赤い光があるほかは、真っ暗闇だった。
叫んだ。
わたしの声だけが響いた。歌もヴァイオリンも止まっていたから。
そして突然、手がわたしの手に置かれた……いや、石のように冷たく骨ばったものが手首を掴み、離さなかった。
また叫んだ。
腕が腰を抱き、支えた。少しの間もがいたが、やがて諦めた。
小さな赤い光の方へ引きずられ、そこで気づいた。大きな外套に包まれ、顔全体を隠す仮面をつけた男の手の中にいるのだ、と。
最後の力を振り絞った。
手足が硬直し、口が叫びのために開いたが、手がそれを塞いだ。
唇に、肌に感じた手……死の匂いのする手。
それから、わたしは気を失った。
目を開けると、まだ暗闇に囲まれていた。地面に置かれたランタンが、泡立つ井戸を照らしていた。井戸から飛び散る水は、ほとんどすぐに、わたしが横たわっている床の下に消えていった。
頭は黒い外套と黒い仮面の男の膝の上にあった。男はわたしのこめかみを濡らしており、その手は死の匂いがした。
押しのけようとして、『あなたは誰? 声はどこ?』と聞いた。
答えは、ため息だけだった。
突然、熱い息が顔をかすめ、暗闇の中に、男の黒い姿の横に白い形が見えた。
黒い姿がわたしを白い形の上に乗せた。喜ばしいいななきが、驚いた耳に届き、わたしはつぶやいた。
『セザール!』
馬が身震いした。
ラウル、わたしは半ば後ろに傾いて鞍に乗っており、それが『預言者』の白い馬だとわかった。何度も砂糖やお菓子を与えた、あの馬だ。
ある晩、劇場で馬が消え、オペラの幽霊に盗まれたという噂が立ったのを覚えていた。わたしは声を信じていたが、幽霊は信じたことがなかった。
しかし今、震えながら思い始めた。わたしは幽霊の捕虜なのだろうか、と。
声に助けを求めた。
声と幽霊が同一人物だなどとは、決して想像もしなかったから。
オペラの幽霊のことは聞いたことがあるでしょう、ラウル?」
「ああ。でも『預言者』の白い馬に乗っていたとき、何が起きたんだ?」
「動かず、身を任せた。黒い姿がわたしを支え、逃げる努力をしなかった。
奇妙な安らぎの感情がわたしを包み、何か強い薬の作用を受けているのではないかと思った。
感覚は完全に働いており、目は暗闇に慣れてきた。ところどころに不規則な光が差していた。
わたしたちは狭い円形の回廊にいるのだと考えた。おそらくオペラ座全体を巡っているのだろう。
地下は広大だ。わたしは一度あの地下室に降りたことがあるが、三階で止めた。さらに下に二階あり、町を収めるほど広い。
しかし目にした人影に、逃げ出してしまった。
あそこには真っ黒な悪魔たちがいて、ボイラーの前に立ち、シャベルや熊手を振り回し、火を掻き立て、炎を掻き混ぜ、近づきすぎると突然、炉の赤い口を開いて脅かす。
セザールが静かにわたしを背に乗せて運ぶ間、遠くにそれらの黒い悪魔たちが、炉の赤い火の前に小さく見えた。現れ、消え、また現れ、わたしたちが曲がりくねった道を進むにつれて。
やがて完全に消えた。
黒い姿はまだわたしを支え、セザールは案内もなく、確かな足取りで歩き続けた。
この騎乗がどれほど続いたか、およそのことさえ言えない。ただ、何度も回転し、螺旋階段を下りて地球の心臓部へと進んだように思えたことだけは覚えている。
そのとき頭がくらくらしていたのかもしれないが、そうは思わない。いいえ、心ははっきりしていた。
ついにセザールが鼻を上げ、空気を嗅ぎ、少し足を速めた。
空気に湿り気を感じた。
セザールが止まった。
暗闇が晴れた。
一種の青白い光が、わたしたちを囲んでいた。
わたしたちは湖のほとりにいた。
鉛色の水が遠くまで、暗闇の中へと広がっていた。しかし青い光が岸を照らし、埠頭の鉄の輪に繋がれた小さなボートが見えた!」
「ボートだって!」
「ええ。でも、地下の湖もボートも存在することは知っていたし、超自然的なものは何もないことも知っていた。
けれど、あの岸に着いたときの特別な状況を考えてみて!
男の姿がわたしをボートに乗せたとき、薬の効果が切れたのかどうかわからないが、恐怖が再び始まった。
不気味な護衛は、それに気づいたに違いない。
セザールを戻し、蹄が階段を上がる音を聞きながら、男はボートに飛び乗り、繋いでいたロープを解き、オールを握った。
素早く力強い漕ぎで進み、仮面の下の目は一瞬もわたしから離れなかった。
わたしが話した青白い光の中を、音もなく水を滑り、また暗闇に入り、岸に着いた。
そして再び男の腕に抱き上げられた。
声を上げて叫んだ。
そして突然、光に眩んで沈黙した……そう、まばゆい光の真ん中に下ろされたのだ。
飛び起きて立ち上がった。
わたしは応接間の中央にいた。
そこは花以外のもので飾られ、整えられ、家具が置かれているように思えた。
豪華で、ひどく俗っぽい花々。
絹のリボンでバスケットに結ばれた、大通りの店で売っているようなもの。あまりに文明的な花々で、初演のあと楽屋で見つけるものと同じだった。
そしてそれらの花々の真ん中に、腕を組んだ仮面の男の黒い姿が立っていて、言った。
『恐れるな、クリスティーヌ。危険はない』
それは声だった!
怒りは驚きに等しかった。
仮面に飛びかかり、引き剥がして声の顔を見ようとした。
男は言った。
『危険はない。仮面に触れさえしなければ』
そして優しく手首を取り、椅子に無理に座らせ、それからわたしの前にひざまずき、もう何も言わなかった!
その謙虚さが少し勇気を取り戻させ、光がわたしを現実の生活に戻した。
どんなに異常な冒険であろうと、今やわたしは、死すべき、見える、触れられるものに囲まれていた。
家具、カーテン、ろうそく、花瓶、バスケットの花々——どこから来て、いくらしたかまでほぼわかるようなもの——が、わたしの想像力を、少なくともオペラ座の地下室には似つかわしくない、普通の応接間の限界に閉じ込めた。
わたしは、神秘的な方法で、地上から五階下のオペラ座の下に住み着いた恐ろしい変人を相手にしているに違いない。
そして声、仮面の下で認めた声は、わたしの前にひざまずいており、男だった!
そしてわたしは泣き始めた。
まだひざまずいている男は、涙の原因を理解したに違いない。
『本当だ、クリスティーヌ!……わたしは天使でも、天才でも、幽霊でもない……わたしはエリックだ!』」
クリスティーヌの語りは、再び中断された。
背後の反響が、彼女のあとを追うように、その言葉を繰り返したように思えた。
「エリック!」
何の反響か?
二人は振り返り、夜が訪れているのを見た。
ラウルは立ち上がろうとする仕草をしたが、クリスティーヌはそばに引き留めた。
「行かないで」と彼女は言った。「ここで全部知ってほしいの!」
「でも、なぜここで、クリスティーヌ? 風邪をひくといけない」
「わたしたちが恐れるのは落とし戸だけよ、あなた。ここは落とし戸から何マイルも離れている……それに劇場の外であなたに会うことは許されていないの。今はあの人を刺激するときではない。疑念を起こさせてはいけない」
「クリスティーヌ! クリスティーヌ! 何かがわたしに告げている。明日の晩まで待つのは間違いで、今すぐ逃げるべきだと」
「あの人が明日、わたしの歌を聞かなければ、無限の苦しみを味わうことになると、わたしは言っているの」
「あの人に苦しみを与えずに、しかも永久に逃れるのは難しい」
「そのとおりよ、ラウル。確かにわたしの逃亡で、あの人は死ぬでしょう」
彼女は低い声で付け加えた。
「でもそれは両刃の剣……わたしたちは殺される危険もあるの」
「それほどまでに愛しているのか?」
「わたしのために殺人も犯すでしょう」
「でも住んでいる場所はわかる。探しに行ける。エリックが幽霊ではないとわかった今、話をして、答えを強制することもできる!」
クリスティーヌは首を振った。
「いいえ、いいえ! エリックに対してできることは、逃げることだけよ!」
「ではなぜ、逃げられたときに、あの人のところへ戻ったんだ?」
「戻らなければならなかったから。どうやってあの人のもとを去ったかを話せば、わかるでしょう」
「ああ、憎い!」ラウルは叫んだ。「そしてお前は、クリスティーヌ、お前も憎んでいるのか?」
「いいえ」とクリスティーヌは単純に言った。
「もちろん憎んではいない……なぜなら愛しているからだ! お前の恐れ、恐怖、すべてはただの愛で、しかも最も洗練された種類の、自分自身にさえ認めない種類の愛だ」
ラウルは苦々しく言った。
「考えると身震いする種類の……想像してみろ。地下の宮殿に住む男を!」
そして薄笑いを浮かべた。
「では、わたしにあそこへ戻れと言うの?」
若い娘は残酷に言った。
「気をつけて、ラウル。言ったでしょう。もう二度と戻らないわ!」
二人の間に、恐ろしい沈黙が落ちた。
話す二人と、背後で聞く影の、三人の間に。
「それに答える前に」
ラウルはついに、非常にゆっくりと言った。
「憎んでいないのなら、どんな感情を抱かせるのか知りたい」
「恐怖よ!」と彼女は言った。「それが恐ろしいところなの。あの人はわたしを恐怖で満たし、しかも憎めない。
どうして憎めるでしょう、ラウル?
湖の家で、地下で、わたしの足元にいるエリックを考えてみて。
自分を責め、自分を呪い、許しを乞うの!……欺瞞を告白する。
愛している!
巨大で悲劇的な愛を、わたしの足元に置く。
愛のためにわたしをさらった!……愛のために地下に閉じ込めた!……
でもわたしを尊重する。
這い、うめき、泣く!……
そしてわたしが立ち上がり、『自由を今すぐ与えなければ、軽蔑するだけだ』と言ったとき……あの人は差し出した……神秘の道を見せると申し出た。
ただ……ただ、あの人も立ち上がった。
そしてわたしは思い出した。
天使でも、幽霊でも、天才でもないが、声のままだったことを。
歌ったから。
そしてわたしは聴き……とどまった!……
その夜、もう言葉は交わさなかった。
あの人がわたしを歌で眠らせた。
目が覚めると、一人で、簡素な家具の小さな寝室のソファに横たわっていた。
普通のマホガニーのベッド、古いルイ・フィリップ様式のチェスト。その大理石の上に置かれたランプが、部屋を照らしていた。
すぐに自分が捕虜で、部屋からの唯一の出口が、非常に快適な浴室につながっていることに気づいた。
寝室に戻ると、チェストの上に、赤いインクで書かれたメモがあった。
『親愛なるクリスティーヌ。運命について心配する必要はない。世界であなたより良い、より尊敬する友人は、わたし以外にいない。今、この家であなたは一人だ。この家はあなたの家だ。わたしは買い物に出て、あなたが必要とするものをすべて取りに行く』
わたしは狂人の手に落ちたと確信した。
小さな住居を走り回って逃げ道を探したが、見つからなかった。自分のばかげた迷信を責め、罠に落ちたことを責めた。
笑いと泣きを、同時にしたくなった。
エリックがわたしを見つけたのは、そんな心境のときだった。
壁を三度ノックしたあと、わたしが気づいていなかった扉から静かに入ってきて、それを開けたままにした。
腕いっぱいに箱や包みを抱え、のんびりとベッドの上に並べるエリックに、わたしは罵倒を浴びせ、もし正直な男の顔を覆っているなら仮面を脱げと叫んだ。
あの人は穏やかに答えた。
『エリックの顔を見ることは決してない』
そして、この時間になってもまだ着替えていないことを非難し、親切にも午後二時だと教えてくれた。
三十分やるからと言い、話しながらわたしの時計を巻き、時刻を合わせてくれた。
そのあと、食堂へ来るようにと言った。美味しい昼食が待っている、と。
わたしは非常に怒り、顔の前で扉を叩きつけ、浴室へ行った。
再び出てきたとき、すっかり気分がさっぱりしていた。
エリックは愛していると言ったが、わたしが許すとき以外は決してそう言わない、残りの時間は音楽に捧げる、と言った。
『残りの時間とはどういう意味?』と聞いた。
『五日』と、あの人は断固として言った。
そのとき自由になるのかと聞くと、
『自由になるよ、クリスティーヌ。五日が過ぎれば、わたしを見ないことを学ぶだろう。そして時々、哀れなエリックに会いに来るだろう!』
と言った。
向かいの椅子を指さされ、小さなテーブルで、わたしはひどく動揺しながら座った。
しかし、エビを少しと鶏肉の翼を食べ、トカイを半杯飲んだ。あの人は、自らケーニヒスベルクの地下室から持ってきたものだと言った。
エリックは食べも飲みもしなかった。
国籍を尋ね、エリックという名前がスカンジナビア起源を示していないかと聞いた。
あの人は、名前も国もなく、たまたまエリックという名を取っただけだと言った。
昼食のあと立ち上がり、指先を差し出し、住居を案内したいと言ったが、わたしは手を引っ込め、叫んだ。
触れたものが冷たく、同時に骨ばっていたから。
そして手が死の匂いがしたことを思い出した。
『ああ、許してくれ!』
あの人は、うめいた。
そして、わたしの前で扉を開けた。
『これがわたしの寝室だ。見たいなら。かなり奇妙だ』
その態度、言葉、姿勢が自信を与え、ためらわずに入った。
死人の部屋に入るような気がした。
壁はすべて黒で覆われていたが、通常その葬儀用の張り地を引き立てる白い縁取りの代わりに、〈ディエス・イレ〉の音符が何度も繰り返された巨大な五線譜があった。
部屋の中央には天蓋があり、そこから赤いブロケードのカーテンが垂れ下がり、天蓋の下には開いた棺があった。
『ここで眠るんだ』とエリックは言った。『人生ではすべてに慣れなければならない。永遠にさえも』
その光景に動揺し、顔を背けた。
それから壁の一面を占めるオルガンの鍵盤を見た。
譜面台には、赤い音符で覆われた楽譜があった。見る許可を求め、読んだ。
『勝利のドン・ファン』
『そうだ』と、あの人は言った。『時々作曲する。二十年前に始めた。終わったら、あの棺に入れて持っていき、二度と目覚めないつもりだ』
『できるだけ、あまり取り組まないほうがいい』と、わたしは言った。
あの人は答えた。
『時々、十四日十四夜続けて取り組み、その間、音楽だけで生き、それから何年も休む』
『〈勝利のドン・ファン〉から何か弾いてくれない?』
喜ばせようと思って、わたしはお願いした。
『決して頼んではいけない』
あの人は陰鬱な声で言った。
『モーツァルトなら弾いてやる。泣くだけだが。でもわたしのドン・ファンは、クリスティーヌ、燃える。しかも天からの火に打たれない』
そのあと、応接間に戻った。
住居全体に鏡がないことに気づいた。それを指摘しようとしたが、エリックはすでにピアノに向かっていた。
『わかるだろう、クリスティーヌ。近づく者すべてを焼き尽くすほど恐ろしい音楽がある。幸い、お前はまだその音楽に達していない。達すれば、きれいな血色をすべて失い、パリに戻っても誰もお前だとわからないだろう。オペラから何か歌おう、クリスティーヌ・ダーエ』
最後の言葉を、まるでわたしに侮辱を投げつけるように言った」
「どうしたの?」
「言葉に込められた意味を考える暇もなかった。
すぐに〈オセロ〉の二重唱を始め、すでに破局がわたしたちに迫っていた。
わたしはデズデモーナを、それまで見せたことのない絶望と恐怖で歌った。
一方、あの人は、復讐の魂を一音ごとに雷のように轟かせた。
愛、嫉妬、憎しみが、悲痛な叫びとなって、わたしたちの周りに爆発した。
エリックの黒い仮面は、ヴェネツィアのムーア人の自然な仮面を思わせた。
あの人はオセロそのものだった。
突然、仮面の下を見たいという衝動に駆られた。
声の顔を知りたくなり、まったく制御できない動きで、素早く指が仮面を引き剥がした。
ああ、恐怖、恐怖、恐怖!」
クリスティーヌは、彼女を恐れさせた幻影を思って言葉を止めた。
夜の反響が、エリックの名を繰り返したのち、今度は三度うめいた。
「恐怖!……恐怖!……恐怖!」
ラウルとクリスティーヌは互いにしっかりと抱き合い、澄み渡った穏やかな空に輝く星々を見上げた。
ラウルは言った。
「奇妙だな、クリスティーヌ。この穏やかで柔らかい夜が、こんなに嘆きの音で満ちているなんて。わたしたちと一緒に悲しんでいるように思える」
「秘密を知れば、ラウル、あなたの耳もわたしと同じように、嘆きでいっぱいになるわ」
彼女はラウルの守る手を自分の手に取り、長く身震いしながら続けた。
「ええ、百まで生きても、あの恐ろしい光景が目の前に現れたときに発した、超人的な悲嘆と怒りの叫びを、いつも聞くでしょう。
ラウル、あなたは死の頭を見たことがあるでしょう。何世紀も経て、乾き、しぼんだもの。
そして、もし悪夢の犠牲者でなければ、ペロスであの人の死の頭を見たかもしれない。
最後の仮面舞踏会では、赤い死が人々の間を徘徊するのを見た。
でも、それらの死の頭はすべて動かず、無言の恐怖は生きていなかった。
でも想像してみて、もしできるなら。
赤い死の仮面が突然生き返り、四つの黒い穴——目、鼻、口——で、悪魔の極限の怒り、強大な激怒を表現するのを。
しかも眼窩からは、一筋の光も出ない。
あとで知ったことだけれど、燃える目は暗闇でしか見えないのよ。
わたしは壁に倒れかかり、あの人は歯を鳴らしながら近づいてきた。
わたしがひざをつくと、狂った支離滅裂な言葉と呪いを吐きかけた。
身を乗り出して叫んだ。
『見ろ! 見たいんだろう! 見ろ! 目を肥やせ、魂をわたしの呪われた醜さで満たせ! エリックの顔を見ろ! 今こそ声の顔を知ったな!
聞くだけでは満足できなかったのか? どんな顔か知りたかったんだな!
ああ、女というものは好奇心が強い!
さて、満足したか? わたしはとてもハンサムな男だろ、え?
女がわたしを見たなら、お前のように、その女はわたしのものだ。永遠に愛する。
わたしは一種のドン・ファンだぞ、わかるか!』
そして身長いっぱいに伸び、手を腰に当て、肩の上の醜いものを振りながら吼えた。
『見ろ! わたしは勝利のドン・ファンだ!』
そして顔を背け、慈悲を乞うと、残忍にそれを引き寄せ、死んだ指をわたしの髪にねじ込んだ」
「もうたくさんだ! もうたくさんだ!」
ラウルは叫んだ。
「殺す。神の名において、クリスティーヌ、湖の食堂がどこにあるか教えてくれ! 殺さなければ!」
「ああ、静かにして、ラウル。知りたいなら!」
「ああ、知りたい。どうして、なぜ戻ったのか知りたい!……でも、いずれにせよ殺す!」
「ああ、ラウル、聞いて、聞いて!……髪をつかんで引きずり……そして……そして……あまりに恐ろしい!」
「それで? 言え!」
ラウルは激しく叫んだ。
「早く言ってくれ!」
「それから、あの人はわたしに向かって、シューッと言った。
『ああ、怖がっているな、そうか?……そうだろうとも!……もしかして、もう一つの仮面があると思っているのか、え? そしてこれ……これ……わたしの頭が仮面だと思っているのか?
では』
と吼えた。
『もう一つのように引き剥がせ! 来い! 来い! 命令だ! お前の手! お前の手! 手をよこせ!』
そしてわたしの手を掴み、恐ろしい顔に押し込んだ。
わたしの爪で、死人のような恐ろしい肉を引き裂いた。
冷たい、死人の肉のような顔を、わたしの爪で引き裂いた!
『知れ』
そう叫びながら、喉が炉のように脈打ち、喘いだ。
『知れ、わたしは頭から足まで死でできており、お前を愛し、崇拝し、決して、決してお前を離れない死体なのだ!
見ろ、今は笑っていない。泣いている。お前のために泣いている、クリスティーヌ。
仮面を引き剥がしたお前は、だからもう二度とわたしを離れられない!
わたしがハンサムだと思っていた間は、戻ってこられただろう。戻ってくると知っていた。
でも今、わたしの醜さを知った以上、永久に逃げ出すだろう。
だからここに閉じ込める!
なぜ見たがった? ああ、狂ったクリスティーヌ、見たがった者よ!
わたしの父でさえわたしを見たことがなく、母はわたしを見ないように、最初の仮面を贈ってくれたというのに!』
ついにわたしを離し、床を這い回り、恐ろしいすすり泣きを発した。
そして蛇のように這い、自分の部屋に入り、扉を閉め、わたしを一人で考え込ませた。
やがてオルガンの音が聞こえ、エリックがオペラ音楽について軽蔑的に語った言葉の意味が、わかり始めた。
今聞こえるものは、それまで聞いたものとはまったく違っていた。
あの人の〈勝利のドン・ファン〉——あの瞬間の恐怖を忘れるために、傑作へ逃げ込んだに違いないと、わたしは疑わなかった——は、最初、長い、恐ろしく、壮大な一つのすすり泣きのように思えた。
しかし次第に、人間が耐えうるあらゆる感情、あらゆる苦しみを表現した。
わたしは酔い、わたしたちを隔てる扉を開けた。
入るとエリックは立ち上がったが、わたしの方を向く勇気はなかった。
『エリック』
わたしは叫んだ。
『恐れずに顔を見せて! あなたは最も不幸で、最も崇高な人間だと誓う。もし再びあなたを見て身震いするなら、それはあなたの天才の輝きを思っているからよ!』
するとエリックは振り返った。
信じたから。
わたしも自分を信じた。
足元に倒れ、愛の言葉を……死んだ口で愛の言葉を……
そして音楽は止んだ。
ドレスの裾に接吻し、わたしが目を閉じているのに気づかなかった。
これ以上、何を話せるでしょう、あなた。
もう悲劇を知ったわ。
それは二週間続いた。
二週間の間、わたしはあの人に嘘をついた。
嘘は、それを吹き込んだ怪物と同じくらい醜かった。
でもそれが、自由の代償だった。
仮面を焼かせ、歌うときでなくても、飼い主のそばに座る犬のように、わたしの目を追うよう、うまく仕向けた。
あの人は忠実な奴隷で、尽きることのない細やかな気遣いを払ってくれた。
次第に自信を与え、湖岸を散歩させ、鉛色の水の上でボートを漕がせるまでになった。
捕囚の終わり頃には、スクリブ通りの地下通路を閉ざす門から外へ出してくれた。
そこで馬車が待っていて、ブーローニュの森へ連れていってくれた。
あなたに会った夜は、ほとんど致命的だった。
あの人は、あなたに対して恐ろしいほど嫉妬深く、すぐに遠くへ行くと嘘をつかなければならなかった。
そしてついに、二週間のあの恐ろしい捕囚のあと——その間、わたしは憐れみ、熱狂、絶望、恐怖に交互に満たされた——『戻ってくるわ!』と言ったとき、あの人は信じた」
「そして戻ったんだな、クリスティーヌ」
ラウルはうめいた。
「ええ、あなた。
そして言わなければならないのは、自由にしてくれたときの恐ろしい脅しが、約束を守らせたのではなく、墓の敷居で発した悲痛なすすり泣きだったということ。
あのすすり泣きが、別れを告げるとき、自分が気づいていた以上に、この不幸な男にわたしを結びつけたの。
哀れなエリック! 哀れなエリック!」
「クリスティーヌ」
ラウルは立ち上がりながら言った。
「お前はわたしを愛していると言う。でも自由を取り戻してから、わずか数時間で、エリックのところへ戻ったじゃないか! 仮面舞踏会を思い出せ!」
「ええ。そして、あなたと過ごしたあの時間を、ラウル……二人とも大きな危険を冒して……覚えている?」
「あの時間、お前の愛を疑った」
「まだ疑っているの、ラウル?
では知って。
エリックへの訪問のたびに、恐怖が増したの。訪問のたびに、落ち着かせようと望んだのに、かえって愛で狂わせたから!
そしてわたしはとても怖い、とても怖い!……」
「怖がっている……でも、わたしを愛しているのか? もしエリックが美男子だったら、わたしを愛するかい、クリスティーヌ?」
彼女も立ち上がり、震える両腕を青年の首に回し、言った。
「ああ、一日の婚約者よ。もし愛していなかったら、唇を与えはしない!
取って。
初めてで、最後の」
彼は彼女の唇に接吻した。
しかし二人を囲む夜が裂け、嵐の接近のように逃げた。
エリックへの恐怖で満ちた目が、姿を消す前に、高い上空に、燃える目で二人を見つめ、アポロの竪琴の弦にすがりついているように見える、巨大な夜の鳥を示した。




