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260607 梅雨
しとしとと降る雨の音を聞きながら、私は絵筆を走らせた。滲んで輪郭をぼやけさせた紫陽花の、青と紫の色合いが、複数の緑に彩りを添える。なかなかいい感じにできた、と自画自賛。だけど白色の下半分を埋めたところで、私の手は止まってしまう。
「何を書けばいいんだろうね。こういうとき」
季節のあいさつだろうか? それとも近況報告? 書き出しから定まらず、ペンをくるくると回してみる。うん。あいつにはどっちも似合わないな。
絵が好きだって、褒められた。だから絵ハガキを書いて送ってやろうとしたけれど、やっぱり文字のない絵ハガキなんてのはちょっとおかしい。なんて言葉を送ればいいかわからないから、わざわざメールじゃなくてハガキを買ってきたのに、やっぱりなんて書けばわからないのだ。
あのとき何と言えばよかったのだろう? 今更、何と言えばいいのだろう? どうせ叶わない、じゃなかったはずだ。本当は離れ離れになるのが嫌だっただけなのに。
雨が降る。しとしとと。呟いた声は雨音に塗りつぶされる。だけど私の耳にだけは、ちゃんと届いていた。ペンを握る。書き出しは決まった。




