260429 お姫様 途中書き
自分は籠の中の鳥だ。そのような思いに耐えきれなくなり、ルーシーは城を抜け出した。お供にメイドひとりだけを連れ、世界にはきっと自由と未知があるのだと信じて。けれどそんなルーシーの幻想はあっさりと打ち砕かれる。これまで見えてこなかった世界の汚い部分が姿を現す。自分は籠の中の鳥で、今までの人生もそしてこれからの人生も、およそ自分ではない誰かの意思で決められてしまう。それは確かに本当で、けれど閉ざされた籠の中は、険しい外の世界と比べてずっと豪華で快適だった。
外の世界で生きていくことはできない。現実に折られたルーシーは結局城へと戻る。実はメイドが護衛を兼ねていて、さらに複数の家来がこっそり周囲を固めていたことにはついぞ気づかぬまま、ルーシーの社会見学は3日で終わった。
帰ってきて、その後しこたまに叱られたルーシーは、言いつけられた課題を片づけながら考える。世界の厳しさを知った。実際のところそれはごく表面的な部分でしかなかったけれど、城の中のほんの限られた部分だけで生きてきたルーシーにとっては世界観そのものを変えてしまうほどに劇的なものだった。あるいは、これまで家庭教師に教えられてきた様々な事柄に、現実感が伴ったとも言える。
ルーシーは世間知らずだが馬鹿ではない。世界の厳しさを目にしたことで、自分に何ができるのかと考え出す。ただ、頭はよくても無鉄砲であった。貧しい人のための炊き出しを、と思いつき、すぐに実行に移すよう臣下に指示を出した。執行部はこれを対民衆政策の一環になると判断して見送り、ルーシーの命令は実行された。
確かにそれは、意味のあることではあった。施しに救われたものもいた。けれどそれは、すべてを解決することにはならなかった。国の飢えをすべて取り払うことなど最初から不可能で、しかも指示のどこかで役人が中抜きしたせいでルーシーの想像したほどの規模にもならなかったのだ。ルーシーは中抜きをたいそう怒って必ず捕らえると奮起したが、これは叶わなかった。あとで知ったことだが、国の役人はある程度の不正は見逃されるのが普通だったため、中抜きの捜査もほとんど行われていなかったのだ。国の仕事を回せるくらいに教育を受けた人材は貴重で、不正を行ったものを片っ端から処罰していては、まともに国が成り立たなくなるのである。
その後もルーシーはいろいろなことを考えつき、実行に移したが、それらは根本的な解決に至るものではなかった。国民はルーシーを慈悲深い姫だと敬ったが、実態を知る王家や臣下からすれば、いつものわがままだと流すようなものでしかなかった。
しかしルーシーは、無鉄砲なところはあっても愚かではない。自分が周りからどう思われているかや、指示したことの効果なども次第に理解していくと、やがて自身の在り方も問い直すこととなる。結局のところ自分の行いは人気取りでしかなかった。けれど、得られた人気は武器ともなる。
失敗を経て立派なお姫様になる予定が時間切れで終わった




